黒猫と異世界転移を楽しもう!

かめきち

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第1章 異世界転移と旅立ち

第1話 異世界転移の始まり

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 見渡す限りの草原、太陽の方向にうっすらと森の様なものが見える・・・

  「はぁ?」

 呆気にとられながらも自分の事を思い出してみる。


 「おれは城之内康人じょうのうちやすと、38歳独身、今日はいつも通り車で出勤しようとしたが、道路の真ん中に猫らしき動物が倒れているのを発見し、助けられないかと思い近づいて抱えてから・・・ 記憶がない・・・」


 (初めまして)

 どこからか子供のような声が聞こえて、キョロキョロしていると、

 (こっちですよ)

 左下の方から声が聞こえ顔を向けると、真っ黒で毛並みがキレイな猫がこっちを向いていた。

 (城之内康人様、初めまして、私はアリス、神様からのお願いで、この剣と魔法の世界でのサポートをさせていただきます。前の世界では本当にありがとうございました。)

 「は・はじめまして」

 とりあえず挨拶は返したが、目の前で猫が話をしているし、頭の中は「???」状態のままポカーンとしていたら、猫が話し始めた。

 (城之内様は地球で私を助けてくれたのですが、神様がこちらの世界に私と一緒に転移していただきました。神様がギフトを授けてくださったので、これからの人生を楽しみましょう。)

 「助けた? こちらの世界に転移?」

 異世界転移は以前から携帯でライトノベルを読んでいたし、38歳になってもほんの少し、本当に少しだけ厨2病を患っていたので理解できるが、まさか現実にありえるとは思わない。
 頭の整理をしようと黙って考えていると猫が、

 (地球で道路に寝転がっていた猫は私です。地球では猫でしたが1匹で寂しく亡くなるところを不憫に思ったこちらの世界の神様がこちらの世界に転移し治療までしていただきました。城之内様はその転移に巻き込まれたそうです。地球のときはありがとうございました。)

 猫が頭を下げた後、説明をされているが、自分の頭を整理する為に話しかけてみた。

 「ちょっと待ってくれ。確かにキミのような黒猫を抱えたまでは記憶にある。その猫がキミだとしてもなぜ異世界に?しかも巻き込まれた?」

 (はい、神様は道路で冷たくなっていく私を見かねて異世界にて転移させてくださったのです。その時に城之内様は巻き込まれて転移されました。)

 「えーっと、本当は神様が猫のアリスを助けようとしていたが、おれも助けようと抱きかかえた為に巻き込まれて、異世界に来たと言う事か?」

 (そうです。私は転移したときにこの世界の知識とギフト、丈夫な身体をもらいました。)

 なんとなく嬉しそうに説明をしてくれるが、おれって神様の邪魔をして巻き込まれたのか・・・

 (神様以外では、城之内様しか私に手を差し伸べてくれなかったので、ものすごく嬉しかったです。本当にありがとうございました。)

 そう言われれば、全く無駄なことをしたとは思わない。

 「いや、大丈夫だよ。それでおれはこの世界で生きていくのか?地球では仕事も残っているんだが。」

 両親を含む家族はいないが、仕事に穴を開けてしまっては困るし、そもそも帰れるのか?

 (申し訳ありませんが、地球には帰れません・・・)

 泣きそうな声で最後はつぶやくように言って、うつむいてしまった。

 「神様が転移出来るのなら、地球に転移も出来るんじゃないのか?」

 (神様が話して下さった内容では、世界を移動するのは一度しか魂が耐え切れないそうで、地球に戻ることは魂が無くなるということだそうで・・・)

 「と言う事は、地球に戻ってもおれじゃなくなるのか・・・」
 「この世界で生きていくしかないのか・・・」

 おれがさすがに暗い顔で俯いて考えていたら、すすり泣くような声が聞こえてきた。

 (申し訳ありません、私が転移したばっかりに、唯一手を差し伸べてくれた城之内様を巻き込んでしまって・・・)

 しゅんとした猫を見つめながらいろいろと考える。

 出来ることなら帰りたい、毎日仕事をして、仕事をして、たまに飲みに行って、仕事をして、彼女が出来ても仕事が忙しすぎて振られて、仕事をして、仕事をして・・・

 「・・・異世界の方がいいかも・・・」

 (えっ!?)

 ビックリした猫はクリクリした目をまん丸にさせて、おれを見ている。

 「いや、地球では管理職だったこともあって、休みの記憶がないくらい毎日仕事に追われていたんだ。あのまま地球にいたら過労死していたかもしれん。こっちの世界ではおれは何か役割とかはあるのか?」

 (いえ! 魔王もいますが勇者もいます、城之内様は何も役割は無いそうです。神様がおっしゃるには自由にしていただいてもかまわないということですが、神殿に一度は挨拶に来て欲しいとのことでした。)

 「地球では自由があまり無かったからな、それならこっちの世界で本当に自由に生きてみたいな。」

 おれがそうつぶやくとアリスがホッとしたような顔でお礼を言ってきた。

 そういえば・・・・
 
 「猫がしゃべってる!!!!!!」

 (今ですか・・・・・・)

 猫にじと目で突っ込まれながら、説明をしてくれた。

 (私は転移していただいた時に、病気を治していただいて、人間並みの知能もこの世界の知識もギフトもスキルもいただきました。スキルの一つに念話と言うのがあります、その念話で城之内様とは会話しています。城之内様にも念話のスキルがありますので話しかけるように思っていただくと声に出さずに会話できます。)

 ってことは今まで1人で猫に話しかけていたのか・・・
 草原で周りには猫しかいないが、気が付いたら恥ずかしい・・・ 
 気を取り直して、念話で会話してみる。

 《聞こえてるか?》

 (聞こえてますよ。)

 《考えは分かるのか?》

 (いえ、余程強い叫びは聞こえることがありますが、基本的には話しかけるように意識を向けていただかないと聞こえません。)

 《分かった。それとこの世界をサポートしてくれると言う事だが、アリスはそれでいいのか? せっかく病気も治してもらって生きやすくしてくれたのだろう?》

 おれがそう問いかけると、アリスは近くまで近づいてきてハッキリと言った、

 (神様のお願いでもありますが、城之内様は地球で私に優しくしてくれた唯一の人でもありますし、異世界転移に巻き込んでしまったこともあります。精一杯サポートさせていただければありがたいです。もし邪魔になったときは言って下さい。)

 最後の方は悲しそうに話しかけていたが、

 「同じ地球から来た同士だ。仲良くして一緒にこの世界を楽しもうな。」

 おれが笑顔で話かければ、猫の顔がすごく嬉しそうに見えた。 


 「まずおれの名前だが、城之内様はやめてくれ。城之内は長い名前だからヤストで呼び捨てでいいからな。」

 (わかりました。ヤストの同士になれて幸せです。)

 「おれも相棒が出来た感じで嬉しいよ。異世界転移と言えばやっぱりチートとかはあるのか?」

 異世界転移・転生と言えば全属性魔法を使えてチートで無双とか、ユニーク魔法で成り上がりとか、ステータスがずば抜けていて王になるとか、ハーレムでウハウハ生活とかを想像してしまう。
 おれが妄想に耽っていると、妄想が念話で漏れていたのかアリスがジーとこっちを見ている。
  
 (チートになるギフトはいただいていますよ。それも含めて説明させて下さい。まずは・・・)


 アリスの話を要約すると、

 この世界は「アルナイル」と言う世界

 剣と魔法の世界で、現代日本のような技術力はない

 大きな「アルニナム大陸」の中に3つの大きな国、大小様々な村、外洋に小島がある

 今いる場所は、大陸の左下にあたる「レグルス王国」領地の「マハシム村」近くの草原
 
 と言うことだった。


 (説明もですが、日が暮れてしまえばこの辺りで一夜を過ごす事になってしまいますので、まずは村に向かいませんか?)

 確かにスーツのまま野宿も嫌なので、素直にアリスに着いて歩くことにした。
 
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