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加減を知らない子供の親も加減を知らない
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「おじちゃん本当にごめんなさい。僕、ちゃんと罰を受けるね」
「いやいや、良く…はないけどもう過ぎた事だし気にしないで……って、罰を受ける?どういう事だい?」
貴族な部屋で立派なソファーに腰掛け美味い紅茶をおかわりする事数回。グランツさんが話してくれた内容を聞き終わる頃には泣きじゃくっていたカレド君も落ち着き改めて謝罪をされた。その謝罪の中に小さな子が口にするには些か聞き捨てならない単語があり思わず聞き返した。するとグランツさんが何だか辛そうに眉間にシワを寄せ口を開いた。
「神の力を使い何の咎もない者を殺めたのだ…カレドはこれから神の力を封印し、永久凍土の牢獄に千年投獄させる」
「はあっ!?牢獄!?千年!?いやいやダメでしょ!こんな小さな子をそんなところにぶち込むとか何考えてるんですか!罰とか…そんなの俺を神の力ってやつで生き返らせてくれれば済む話しじゃないですか」
「俺だって可愛い息子を牢獄などに入れたくはない!…しかし、神の力を正当な理由無く使う事は許されん。それに本来なら罪人に対して使う『天罰』の力で死んでしまった貴殿を同じ世界、同じ時代にもう一度生き返らせる事が出来ない」
「え?そうなの?…いやいやそれでもダメですって!死んじゃった俺がカレド君を許しますよ!だから投獄なんて絶っっっ対ダメです!」
聞いてしまったヘビーな話しに俺は断固抗議した。確かにカレド君が『天罰』の力を使ったせいで俺は死んでしまったが、だからってこんな小さな子を投獄するんなんて絶対ダメだ。永久凍土の牢獄?絶対寒いじゃん風邪引くとかのレベルじゃないじゃん。しかも千年って…死ぬぞ。あ、神は寿命が長そうだから死なないのか?いやいやとにかく…ダメ、絶対。
「まさか貴殿がここで取り乱すとは…だが、罪には罰だ」
「いや百歩譲っても、永久凍土とか千年とか重すぎますよ!力封印して自宅謹慎くらいで良いじゃないですか」
「それでは罰にならんだろう。神たるものが息子可愛いさに、罪に目をつぶるわけにはいかん」
「そんな……」
「…おじちゃん、僕 平気だよ?父様や母様と一緒に居られないのは寂しいけど…僕が悪いんだもん。寒いところで千年くらい我慢できるよ。だから…大丈夫だよ」
子供といえど神という立場のカレド君に対しての、ただの人間からしたら重すぎる罰に割り切れず肩を落とした俺に向かって、辛いはずなのにカレド君は懸命に笑みを浮かべて言った。……健気かよっ!可愛いすぎだろ!カレド君が謝りもしないような躾のなってないクソガキだったら牢屋でもなんでもぶち込んどけ!ってなるけど…自分の罪を認め反省し罰を受け入れるその姿は、まさに健気そのもの。そんな健気な息子の台詞にグランツさんは泣きそうな顔でカレド君を胸に抱き寄せた。
たしかにちょっとやらかしちゃったけど、少し接しただけの俺でもカレド君が素直ないい子なのがわかる。グランツさんも口では厳しい事を言っているけどカレド君を溺愛してる親バカっぷりが言葉の節々に現れてるし。…うん、やっぱりこんないい子を親元から離して投獄なんて絶対ダメだ。なにか他の罰じゃダメなのか?何か、何かないか__
「…グランツさん。確認したいんですけど、俺は地球でもう一度生き返る事は出来ないんですよね?」
「…あぁ。本当に申し訳ないが、それは出来ない。すまない。」
「じゃあ、地球とは違う星、違う世界…たとえば魔法が使えたりモンスターが居るような場所が存在して、そこに生まれ変わる事…えぇっと『転生』って出来たりしますか?」
「出来る。…というか、此度の詫びとして貴殿に転生の話しもするつもりだった。無論、出来るだけ貴殿の要望を叶えるつもりだ」
まじか!アニメや漫画程度の知識しかないけど『転生』が出来るなら話しは早いぜ。上手くいけばカレド君の『罰』になりえるかもしれない。しかも俺の要望聞いてくれるって…なら、言うだけ言ってみるか!もしダメだったら他の方法考えよう。
「あの、俺 魔法が使えてモンスターとか魔物が居る世界があるならそこに転生したいです!それと、カレド君も俺と同じ世界に」
「ふぇ?…僕も……?」
「…は?いや、待ってくれ。貴殿が望む世界は確かに存在するが…何故カレドもその世界になんだ?」
俺の要望にカレド君はきょとんと、グランツさんは意味が分からない様子で聞き返してきた。なんで俺が転生を望む世界にカレド君もかって?それは…
「まず、カレド君の力を封印した上で魔法やらモンスターやらが存在する世界に放り出す。それはとても危険な事です、なんてったってカレド君はまだ子供です。力が使えなければ直ぐに死ぬような目にあったり過酷な状況を強いられるのは目に見えてます。でも、罰を与えるという意味でこれほど適した事はないと思うんですよ」
「…ほぉ、それは何故だ?」
俺の転生への要望…というか、もはや提案にグランツさんの目付きが変わった。たぶんグランツさん、俺が言いたい事を察したな。それでも俺の口から言わせるのはあくまで、俺の『転生』への『要望』を叶えるため。だから俺は、俺の望みを叶えてもらうために言葉を続ける。
「だって、カレド君を永久凍土ってとこに投獄したとして寒いだけでそこまでの危険はなさそうだし。それに千年なんて月日…神様からしたら一眠りしてたらあっという間なんじゃないかなーって。それなら、力を使えない状態で危険な世界に放り出された方がよっっっぽど罰になると思うんですが…どうですか?」
「…確かにその方が千年投獄などより余程辛い罰になるな」
「では、カレド君への罰はそれにしませんか?それと、転生するにあたって俺の身体を出来るだけ強くして欲しいんです。戦えたり色んな魔法が使えたり、自分の身は自分で守れる程度に…もし誰かが危険な目あっていたら助けられる程度に。これが俺の望みなんですけど、いけます?」
「__ふっ、あぁ大丈夫だ。貴殿の望みは必ず叶えよう。…そしてカレド、お前の此度の罰は千年投獄ではなく、より過酷なものとする__神の力を封印し人と変わらぬ身で異界を旅せよ。」
「…?あの、父様?」
「カレド、武藤殿が行く世界にお前も行くんだ。良いな?」
「…!…はいっ!」
俺がカレド君への罰の変更と 願望を伝えれば、探るような目付きで見ていたグランツさんはその目を細め口角を上げ俺の望みを叶えてくれると言い、抱き寄せていたカレド君に向き直り千年投獄ではない新たな罰を告げた。最初は事態が飲み込めず不安げなカレド君だったが、再度グランツさんに告げられると彼が言わんとする事を理解したようで元気よく返事をした。
よっしゃ!これでカレド君が千年投獄なんてふざけた罰を受けずに済む。まぁ力は封印されて只の子供の身になるんだけども、そこはノープロブレム。神様パワーで強くなる俺がカレド君と一緒に旅をします!…ん?それじゃ罰にならないって?いやいや何をおっしゃる、カレド君はか弱い子供の身で危険極まりない世界に放り出される罰を受けるんだ。それに俺が勝手に付いて行くだけなんだから何の問題もないわけだよ。うんうん…ん?屁理屈?…ほら、捉え方なんて人それぞれだから。気にしたら負けだよ君。
「では、武藤殿。貴殿はどのような力を望む?言ってみてくれ」
「あ、はい、えっと…___」
グランツさんに声をかけられた俺はこの際だからと、今まで見てきたアニメや漫画の知識から便利だと思う能力をあれこれ伝えてみた。例えば、四次元ポケットみたいな何でも入る鞄とか生き物以外なら何でも作り出せる魔法とか、何でも鑑定出来る魔法とか…他にもいっぱい。…いや、さすがにあれもこれもなんて無理だって分かってるよ?グランツさんには、こういう事が出来たら良いですねー、って感じで言ってるだけだよ?でも言うだけはタダじゃん?
…はっ!そうだ!一番重要な事を言ってなかった!これが叶うなのら他はどうでもいい!
「グランツさん!今まで言った望みは無理だったらいいんで、これだけは叶えて欲しい事があるんです!」
「いっそあぁするか…ん?それはどんな望みだ?」
「他の望みは叶わなくても良いから、俺の背を高くしてください!!!」
「………背を、高く……ふっ」
おい待て、なんで笑った。笑い事じゃねぇんだよ、切実なんだよこっちは。グランツさんは背が高いから分からないだろうけど、男で低身長である事がどれだけ惨めで周りから馬鹿にされる事か。付き合ってた女に『産まれてくる子が可哀想』って言われる程だぞ?…ちきしょう。神様だろうと文句いっちゃる。
「…グランツさん、笑うとか酷いですよ。俺がこの身長で今までどれだけ苦労してきたか…」
「いや、すまん。貴殿を笑ったのではなく、他の望みは叶わなくても良いと言った事がなにやら可笑しくてな」
「……本当ですか?」
「あぁ。人というのは欲の深い者だと思っていたが、全ての望みを叶えてくれとは言わずそれだけで良いと言い切った貴殿が…なんと言えばいいのか…そうだな、俺は貴殿が気に入った」
「へ?あ、それはどうも。ありがとうございます?」
笑われた事にジト目で文句をこぼせばグランツさんから返ってきた言葉は、俺の身長を笑ったわけではないと。それでも疑うようにジト目で見続ければ何故か俺を気に入ったと言ったグランツさんにうっかり疑問系でお礼を言ってしまった。え?俺、神様に気に入られたの?凄くね?
「では、貴殿の願いはそれで全てか?」
「え、あ、はい。他には…もうなんにも思い付かないですね。そうだグランツさん、俺かなり色んな事言っちゃいましたけど叶えてもらえるのってどれになりますか?」
「ん?それなんだがな、俺の神としての力以外を貴殿に転写する事にした。そうすれば貴殿の望む力を全て叶えられるからな」
「ああ、なるほ…ど………え?」
「転生の際に、貴殿の肉体を異界の星に適応するように構築しなおすので負担にはならんから安心してくれ。もちろん貴殿の望む背丈でな」
「あ、え?ありがとうございま…え?」
「では、武藤殿。此度は本当に申し訳なかった。第二の生は貴殿に幸多からんことを」
「え?ちょ、ま___」
なんだか聞き流せない衝撃的な事を告げられ困惑する俺を余所に、さくさくと話しを進めるグランツさんが指を鳴らすと俺の身体が足元から透けて消えていった。
待って、神の力以外を転写ってなんぞ?俺の望みが全て叶う?え?あんな事やそんな事出来たら良いなが出来たらちゃうの?………やり過ぎだよ!いや、言ったのは俺だけどもッ!全部叶えくれるなんて思わないじゃん!?え?許されるの?そんな事して大丈夫なの?グランツさーん!!
なんて心の中で叫んでいる俺の身体がどんどんと消えていくと同時に意識も遠くなっていき、グランツさんの『息子を頼む』と言う声を最後に俺の意識は完全に途切れた。
「いやいや、良く…はないけどもう過ぎた事だし気にしないで……って、罰を受ける?どういう事だい?」
貴族な部屋で立派なソファーに腰掛け美味い紅茶をおかわりする事数回。グランツさんが話してくれた内容を聞き終わる頃には泣きじゃくっていたカレド君も落ち着き改めて謝罪をされた。その謝罪の中に小さな子が口にするには些か聞き捨てならない単語があり思わず聞き返した。するとグランツさんが何だか辛そうに眉間にシワを寄せ口を開いた。
「神の力を使い何の咎もない者を殺めたのだ…カレドはこれから神の力を封印し、永久凍土の牢獄に千年投獄させる」
「はあっ!?牢獄!?千年!?いやいやダメでしょ!こんな小さな子をそんなところにぶち込むとか何考えてるんですか!罰とか…そんなの俺を神の力ってやつで生き返らせてくれれば済む話しじゃないですか」
「俺だって可愛い息子を牢獄などに入れたくはない!…しかし、神の力を正当な理由無く使う事は許されん。それに本来なら罪人に対して使う『天罰』の力で死んでしまった貴殿を同じ世界、同じ時代にもう一度生き返らせる事が出来ない」
「え?そうなの?…いやいやそれでもダメですって!死んじゃった俺がカレド君を許しますよ!だから投獄なんて絶っっっ対ダメです!」
聞いてしまったヘビーな話しに俺は断固抗議した。確かにカレド君が『天罰』の力を使ったせいで俺は死んでしまったが、だからってこんな小さな子を投獄するんなんて絶対ダメだ。永久凍土の牢獄?絶対寒いじゃん風邪引くとかのレベルじゃないじゃん。しかも千年って…死ぬぞ。あ、神は寿命が長そうだから死なないのか?いやいやとにかく…ダメ、絶対。
「まさか貴殿がここで取り乱すとは…だが、罪には罰だ」
「いや百歩譲っても、永久凍土とか千年とか重すぎますよ!力封印して自宅謹慎くらいで良いじゃないですか」
「それでは罰にならんだろう。神たるものが息子可愛いさに、罪に目をつぶるわけにはいかん」
「そんな……」
「…おじちゃん、僕 平気だよ?父様や母様と一緒に居られないのは寂しいけど…僕が悪いんだもん。寒いところで千年くらい我慢できるよ。だから…大丈夫だよ」
子供といえど神という立場のカレド君に対しての、ただの人間からしたら重すぎる罰に割り切れず肩を落とした俺に向かって、辛いはずなのにカレド君は懸命に笑みを浮かべて言った。……健気かよっ!可愛いすぎだろ!カレド君が謝りもしないような躾のなってないクソガキだったら牢屋でもなんでもぶち込んどけ!ってなるけど…自分の罪を認め反省し罰を受け入れるその姿は、まさに健気そのもの。そんな健気な息子の台詞にグランツさんは泣きそうな顔でカレド君を胸に抱き寄せた。
たしかにちょっとやらかしちゃったけど、少し接しただけの俺でもカレド君が素直ないい子なのがわかる。グランツさんも口では厳しい事を言っているけどカレド君を溺愛してる親バカっぷりが言葉の節々に現れてるし。…うん、やっぱりこんないい子を親元から離して投獄なんて絶対ダメだ。なにか他の罰じゃダメなのか?何か、何かないか__
「…グランツさん。確認したいんですけど、俺は地球でもう一度生き返る事は出来ないんですよね?」
「…あぁ。本当に申し訳ないが、それは出来ない。すまない。」
「じゃあ、地球とは違う星、違う世界…たとえば魔法が使えたりモンスターが居るような場所が存在して、そこに生まれ変わる事…えぇっと『転生』って出来たりしますか?」
「出来る。…というか、此度の詫びとして貴殿に転生の話しもするつもりだった。無論、出来るだけ貴殿の要望を叶えるつもりだ」
まじか!アニメや漫画程度の知識しかないけど『転生』が出来るなら話しは早いぜ。上手くいけばカレド君の『罰』になりえるかもしれない。しかも俺の要望聞いてくれるって…なら、言うだけ言ってみるか!もしダメだったら他の方法考えよう。
「あの、俺 魔法が使えてモンスターとか魔物が居る世界があるならそこに転生したいです!それと、カレド君も俺と同じ世界に」
「ふぇ?…僕も……?」
「…は?いや、待ってくれ。貴殿が望む世界は確かに存在するが…何故カレドもその世界になんだ?」
俺の要望にカレド君はきょとんと、グランツさんは意味が分からない様子で聞き返してきた。なんで俺が転生を望む世界にカレド君もかって?それは…
「まず、カレド君の力を封印した上で魔法やらモンスターやらが存在する世界に放り出す。それはとても危険な事です、なんてったってカレド君はまだ子供です。力が使えなければ直ぐに死ぬような目にあったり過酷な状況を強いられるのは目に見えてます。でも、罰を与えるという意味でこれほど適した事はないと思うんですよ」
「…ほぉ、それは何故だ?」
俺の転生への要望…というか、もはや提案にグランツさんの目付きが変わった。たぶんグランツさん、俺が言いたい事を察したな。それでも俺の口から言わせるのはあくまで、俺の『転生』への『要望』を叶えるため。だから俺は、俺の望みを叶えてもらうために言葉を続ける。
「だって、カレド君を永久凍土ってとこに投獄したとして寒いだけでそこまでの危険はなさそうだし。それに千年なんて月日…神様からしたら一眠りしてたらあっという間なんじゃないかなーって。それなら、力を使えない状態で危険な世界に放り出された方がよっっっぽど罰になると思うんですが…どうですか?」
「…確かにその方が千年投獄などより余程辛い罰になるな」
「では、カレド君への罰はそれにしませんか?それと、転生するにあたって俺の身体を出来るだけ強くして欲しいんです。戦えたり色んな魔法が使えたり、自分の身は自分で守れる程度に…もし誰かが危険な目あっていたら助けられる程度に。これが俺の望みなんですけど、いけます?」
「__ふっ、あぁ大丈夫だ。貴殿の望みは必ず叶えよう。…そしてカレド、お前の此度の罰は千年投獄ではなく、より過酷なものとする__神の力を封印し人と変わらぬ身で異界を旅せよ。」
「…?あの、父様?」
「カレド、武藤殿が行く世界にお前も行くんだ。良いな?」
「…!…はいっ!」
俺がカレド君への罰の変更と 願望を伝えれば、探るような目付きで見ていたグランツさんはその目を細め口角を上げ俺の望みを叶えてくれると言い、抱き寄せていたカレド君に向き直り千年投獄ではない新たな罰を告げた。最初は事態が飲み込めず不安げなカレド君だったが、再度グランツさんに告げられると彼が言わんとする事を理解したようで元気よく返事をした。
よっしゃ!これでカレド君が千年投獄なんてふざけた罰を受けずに済む。まぁ力は封印されて只の子供の身になるんだけども、そこはノープロブレム。神様パワーで強くなる俺がカレド君と一緒に旅をします!…ん?それじゃ罰にならないって?いやいや何をおっしゃる、カレド君はか弱い子供の身で危険極まりない世界に放り出される罰を受けるんだ。それに俺が勝手に付いて行くだけなんだから何の問題もないわけだよ。うんうん…ん?屁理屈?…ほら、捉え方なんて人それぞれだから。気にしたら負けだよ君。
「では、武藤殿。貴殿はどのような力を望む?言ってみてくれ」
「あ、はい、えっと…___」
グランツさんに声をかけられた俺はこの際だからと、今まで見てきたアニメや漫画の知識から便利だと思う能力をあれこれ伝えてみた。例えば、四次元ポケットみたいな何でも入る鞄とか生き物以外なら何でも作り出せる魔法とか、何でも鑑定出来る魔法とか…他にもいっぱい。…いや、さすがにあれもこれもなんて無理だって分かってるよ?グランツさんには、こういう事が出来たら良いですねー、って感じで言ってるだけだよ?でも言うだけはタダじゃん?
…はっ!そうだ!一番重要な事を言ってなかった!これが叶うなのら他はどうでもいい!
「グランツさん!今まで言った望みは無理だったらいいんで、これだけは叶えて欲しい事があるんです!」
「いっそあぁするか…ん?それはどんな望みだ?」
「他の望みは叶わなくても良いから、俺の背を高くしてください!!!」
「………背を、高く……ふっ」
おい待て、なんで笑った。笑い事じゃねぇんだよ、切実なんだよこっちは。グランツさんは背が高いから分からないだろうけど、男で低身長である事がどれだけ惨めで周りから馬鹿にされる事か。付き合ってた女に『産まれてくる子が可哀想』って言われる程だぞ?…ちきしょう。神様だろうと文句いっちゃる。
「…グランツさん、笑うとか酷いですよ。俺がこの身長で今までどれだけ苦労してきたか…」
「いや、すまん。貴殿を笑ったのではなく、他の望みは叶わなくても良いと言った事がなにやら可笑しくてな」
「……本当ですか?」
「あぁ。人というのは欲の深い者だと思っていたが、全ての望みを叶えてくれとは言わずそれだけで良いと言い切った貴殿が…なんと言えばいいのか…そうだな、俺は貴殿が気に入った」
「へ?あ、それはどうも。ありがとうございます?」
笑われた事にジト目で文句をこぼせばグランツさんから返ってきた言葉は、俺の身長を笑ったわけではないと。それでも疑うようにジト目で見続ければ何故か俺を気に入ったと言ったグランツさんにうっかり疑問系でお礼を言ってしまった。え?俺、神様に気に入られたの?凄くね?
「では、貴殿の願いはそれで全てか?」
「え、あ、はい。他には…もうなんにも思い付かないですね。そうだグランツさん、俺かなり色んな事言っちゃいましたけど叶えてもらえるのってどれになりますか?」
「ん?それなんだがな、俺の神としての力以外を貴殿に転写する事にした。そうすれば貴殿の望む力を全て叶えられるからな」
「ああ、なるほ…ど………え?」
「転生の際に、貴殿の肉体を異界の星に適応するように構築しなおすので負担にはならんから安心してくれ。もちろん貴殿の望む背丈でな」
「あ、え?ありがとうございま…え?」
「では、武藤殿。此度は本当に申し訳なかった。第二の生は貴殿に幸多からんことを」
「え?ちょ、ま___」
なんだか聞き流せない衝撃的な事を告げられ困惑する俺を余所に、さくさくと話しを進めるグランツさんが指を鳴らすと俺の身体が足元から透けて消えていった。
待って、神の力以外を転写ってなんぞ?俺の望みが全て叶う?え?あんな事やそんな事出来たら良いなが出来たらちゃうの?………やり過ぎだよ!いや、言ったのは俺だけどもッ!全部叶えくれるなんて思わないじゃん!?え?許されるの?そんな事して大丈夫なの?グランツさーん!!
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