171 / 224
part 15-12
しおりを挟む
「まず漁師はベーリング海のカニ漁。荒波と風で船が揺れ海に投げ出されて死ぬ可能性があるが一攫千金とも言われる。500キロにもなるカニ捕獲のカゴがぶつかって怪我、下手すれば打ちどころ悪くて死ぬだろうがな。怪我もずっと船上にいて治療も出来ないが…じゃんけんでの勝利を祝おうか?」
ここで勝ち誇った表情の勇もすぐに堕ちるんだが…
「漁師もいろいろ、弁護士もいろいろ…ピンキリ」
俺がそう言うと二人が引き攣った顔を俺に向けた。
「悪質な弁護士は着手金を受け取ったのに何もしない場合がある。不当な費用を後になって請求したり…そういうことをギリギリのところで続ける弁護士が手を貸してくれと言う訳だ…うちのような集団に。よほど危ないところから狙われていると容易に推測出来る。人が去って一人になった事務所から転出することまでは聞いている。男色だとも公言している弁護士のことだ、一緒に逃げてくれる男が欲しいんだな」
そこまで俺が言うと
「迎えが来ました」
外から組員の声がして俺は奥に下がる。開いた扉に向かって福嶋が
「こちらです」
勇を示すと、両脇を抱えるように舞生と空雅が立たせて扉まで連れて行った。
「どうもお世話さまでした」
という声と、ガチャン…という太い首輪が勇の首で施錠される音が同時に聞こえ、勇の頭からネックウォーマーを被せて首輪を隠したプロレスラーのような大男弁護士が俺に向かって一礼して出て行った。
「耕介さんは空港へ。アラスカまでの渡航費はうちへの借金ですので、こちらへ世界のどこからでも入金をお願いします。当然利子が増えていくので早く返済された方がいいですが…若」
返済先を書いた紙を耕介に渡した福嶋が俺を見る。
「彼が命を落とせば返済されませんがよろしいですか?」
「その場合はかまわない。カニ漁の船に乗らないなど、血判状に背いた場合はどこまでも追いかける」
「承知。その場合はチャイニーズマフィアなど、あらゆるツテを使って返済を求めましょう」
「ん」
ここで勝ち誇った表情の勇もすぐに堕ちるんだが…
「漁師もいろいろ、弁護士もいろいろ…ピンキリ」
俺がそう言うと二人が引き攣った顔を俺に向けた。
「悪質な弁護士は着手金を受け取ったのに何もしない場合がある。不当な費用を後になって請求したり…そういうことをギリギリのところで続ける弁護士が手を貸してくれと言う訳だ…うちのような集団に。よほど危ないところから狙われていると容易に推測出来る。人が去って一人になった事務所から転出することまでは聞いている。男色だとも公言している弁護士のことだ、一緒に逃げてくれる男が欲しいんだな」
そこまで俺が言うと
「迎えが来ました」
外から組員の声がして俺は奥に下がる。開いた扉に向かって福嶋が
「こちらです」
勇を示すと、両脇を抱えるように舞生と空雅が立たせて扉まで連れて行った。
「どうもお世話さまでした」
という声と、ガチャン…という太い首輪が勇の首で施錠される音が同時に聞こえ、勇の頭からネックウォーマーを被せて首輪を隠したプロレスラーのような大男弁護士が俺に向かって一礼して出て行った。
「耕介さんは空港へ。アラスカまでの渡航費はうちへの借金ですので、こちらへ世界のどこからでも入金をお願いします。当然利子が増えていくので早く返済された方がいいですが…若」
返済先を書いた紙を耕介に渡した福嶋が俺を見る。
「彼が命を落とせば返済されませんがよろしいですか?」
「その場合はかまわない。カニ漁の船に乗らないなど、血判状に背いた場合はどこまでも追いかける」
「承知。その場合はチャイニーズマフィアなど、あらゆるツテを使って返済を求めましょう」
「ん」
77
あなたにおすすめの小説
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる