さまよう綸◆◆若頭からの求愛…迷惑だわ◆◆ 【完結】

Side Masamune 6

　その日に備え仕事を滞りなくこなし、彼女を探すことも諦めない。どこかで死体が発見されたという知らせには特徴が似ていないことを確認するまで心臓が捻り潰されたように痛い。そんな事を繰り返しながら、信頼できる数名と情報はずっと綸を探した。身元のわからない女が病院に行っていないか、見かけない女がいないか、住み込みで働いていないか…そして40日ほど経った日

「社長、綸さんを見つけました。海の旅館の女将の遠縁ということで一緒に住んで仕事を手伝っています」

　高須不動産、俺が代表を務めるうちのひとつで土地の売買を中心にしている。あちこちの土地に目を光らせている情報通の幹部数名にも話をしておいたところ、仲居の話が回り回って漏れ聞こえてきたので現地に行き確認して来たという。良かった…本当に良かった…胸が熱くなるというのはこういうことか…言葉しか知らなかった。

　待ってろよ、綸。

「正宗、綸ちゃんのいる旅館を調べた」

　翌朝の土曜日、潤が資料を差し出す。まずどこの組とも関係がないことを確認し、不動産会社の名前で予約を入れる。実際にはその会社の者ばかりでなく今回探してくれていた者を連れて行くので、半分以上が組の人間だ。

　そのため貸し切りを申し出るが、人数分で貸し切り状態でOKだという。人の良い経営者だな。だから身元のわからない綸をおいてくれているのかもしれないな。