ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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からくり奇譚 編

066. 門前宿

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「「「 ……… 」」」

 ヨウゲン───陽元国はガナ・スティナ大陸の南東に浮かぶ島国である。
 王政ではあるが王に実権はなく、長い戦乱を勝ち抜き世を平定させた栄山家が大将軍という地位に就き、実質的な支配をしていた。
 陽元国は十七の藩という領地に分かれており、それぞれに大名という統治者がいる。
 ユーゴ達が上陸した漁村は陽元国の最北を治める松風藩の中にあり、村の名を奉ヶ崎まつりがさきという。

「「「 ……… 」」」

 その奉ヶ崎まつりがさきに上陸したユーゴ達は、その風景に絶句していた。
 立ち並ぶのは、黒黒とした重厚感ある瓦が葺かれて障子戸が設えてある平屋の木造家屋。
 それらは土塀や生け垣で囲まれてある。
 黄昏時の村には、ところどころに提灯の明かりが灯り、日本人であるユーゴの郷愁を誘った。
 
「ここは、江戸……か?」

「THE・江戸時代って感じだな」

 呆気にとられているフィールエルの言葉を、ユーゴが肯定した。

「ほら、なにしてんのアンタたち。行くわよ」

 パレアだけは何の感慨もなく、ユーゴ達を急かしてさっさと先を歩き出した。

「パレア・シンクロン。貴女はもしかして、ヨウゲン国に来たことがあるのか?」

「パレアでいいわよ。【聖戦の聖女】フィールエル。アタシ、こう見えてもアンタたちより随分歳上なんだから、色々な国を回ってるのよ」

 そういったパレアの服装は、いつの間にか着物に変わっていた。

「分かった、パレア。ボクもフィーでいい。ところでいつの間に着替えたんだ?」

「これは【換装】の魔術よ。異空間に収納してある服や装備品と入れ換えられるのよ。とりあえず日も暮れるから、まずは宿を取るわよ」

 船から幾つかの大きな樽をおろして作業している船乗り達に別れを告げ、ユーゴ達は港から町へと続く門へと向かった。
 ユーゴと聖女の三人は、ベルタリオから渡された、メナ・ジェンド発行の証明書を門番に提示し、パレアはパレアで自前の通行許可証を提示した。

「パレア。お前、そんなの持ってたのか?」

「魚人は陸とは表向き不干渉の姿勢だけど、それでも陸で情報収集くらいはするわ。そのために色々と用意してるのよ」

 ドヤ顔のパレアの案内で、ユーゴ達は宿に向かった。
 その道中、一行は信じられない物を目撃した。

「これ、中は電球だな」

 ユーゴが提灯の中を覗き込んで言った。

「店の看板も光っている。外装はプラスチックではなく障子紙だが、これも電灯なんだな」

 フィールエルも道の左右をキョロキョロと見回して言った。

「サ、サムライが自転車に乗っています」

 ネルもいま見た物のミスマッチ感に慄いている。

「ふーん。しばらく来ない内に結構変わったわね、この国も。あ、ここよ」

「門前宿って名前か。わかりやすいな」

 ユーゴ達が宿の暖簾を潜ると、

「ようこそいらっしゃいました。……あ、はれちゃんじゃありませんか」

 女将と思われる中年女性が、パレアを見て相好を崩した。

「久しぶりね、女将! 突然で悪いんだけど、四人泊まれる? 女三人、男一人」

「ええ、大丈夫ですよ。最近は海の魔物が暴れてて、外国からのお客さんが少なかったから。それにしてもお晴ちゃん、あなた十年前とちっとも変わらないじゃアリませんか。羨ましいわ」

 頬に手を当てため息をつく女将に、パレアは苦笑して言う。

「まぁ人間じゃないからね。じゃあ世話になるわね、女将」

「ええ。ではお部屋にご案内しますね」

 仲居に部屋へと案内される途中、ユーゴはこっそりとパレアに耳打ち。

「おい、パレア。お前この宿の連中に、自分が人間じゃないって説明してんのか?」

「してるわよ。この国も亜人が稀にいるもの。ガナ・スティナ大陸ほどじゃないけどね。こっちじゃ精霊や魑魅魍魎なんて呼ばれているわ。アタシは水の精霊って信じ込ませてんの」

 亜人が少ないのは良い情報だ。
 少なくとも、この国に被転送者がいるとして、それは亜人である確率が激減したからだ。
 人間だと思って探していたら実は亜人として転生しているというパターンで無駄足を踏みたくはない。
 やがて通された部屋は、ユーゴが一人部屋、女子三人は大部屋だった。
 夕食は用意まで少し時間がかかるというので、ユーゴは少しゆっくりすることにした。

「お客様。お茶と茶菓子をお持ちいたしました」

 すると障子の外から聞き覚えのない若い女の声が。仲居だろう。

「ん? ああ、入ってくれ」

 若いが艶っぽい声。ユーゴはどんな娘だろうかと少し期待した。
 スーッと障子を開けて這入ってきたのは、仲居の作業着に身を包んだ金髪のギャルだった。

「やおぴー (←挨拶)!久しぶり、ユーくん。元気してたー!?」

「すみません、間に合ってます」

「嘘つけー。間に合ってないっしょ」

「あ、チェンジで」

「ウチに会えなくて寂しかったー? んんー?」

「メンタル鋼かよ。声色変えて変な小芝居入れてきやがって。おいやめろ、ウザいやつがウザい絡みすると更にウザい。マイナスとマイナスを足してもよりマイナスにしかならねぇんだよ」

「ひどくない? あーあ。ウチ今日はせっかくお風呂に入ってきたんだけどなー?」

 胸元を少し開けさせ、何やら意味深な事を呟いた女神。しかもユーゴをチラ見して。
 そんな女神にユーゴは、

「でもマイナスとマイナスをかけ合わせればプラスになるよな。今のユーラ、凄く輝いてるぜ」

 目をキラキラさせて掌を返した。

「うわ。あからさま過ぎでしょ。てかどーゆーフォロー、それ? まぁ元々すぐ帰るつもりだけど」

「だと思ったよ。で、今日は何だ? 何かわかったのか?」

「うん。何も分からなかったことが分かった」

「なんだそりゃ。何も進展がなかったってことか」

「そうだけどそうじゃなくて、ウチが分かんなかったってことが重要なの!」

「……?」

 首をひねるユーゴに、ユーラウリアは人差し指をビシッと突きつけた。

「言わなかったっけ? ウチの神としての権能の話」

「ああ……たしか “宇宙” と “電脳” だっけか?」

「あと実は ”ギャル” っていう概念も司ってんだな、これが」

「ひとまず “ギャルを司る女神” についてのツッコミはまた今度にして、続きを聞こうか?」

「うん。これから話すことは初めて話すんだけど、ウチらの一派と、ウチらといま対立関係にある一派って、言ってみれば新しい神対古い神っていう構図なんだよね」

「へぇ。新しいって、何が新しいんだ?」

「一言で言えば “概念” 。例えば地球にある神話って、大地とか海とか太陽とか、自然への畏敬とかの概念が神格を得てるわけ。人がまだ自然を身近なものとして感じ、敬っていた時代のね。それから何千年も掛けて人同士の戦いや歴史、災害などが英雄として物語として描かれ、これも神格化する。これらが古い神ってことだね。ただ、人間が文明を発達させ、神という存在の成り立ちを理解するにつれ、新しい神はほとんど創造されなくなった。ここまではオケ?」

「まぁ、何となくは。つまり俺等が聞いたことのある天照大神とかアルテミスとか、そういう神々のことだな」

「そゆこと。でもそれは地球っていう世界の話で、他の時空───異世界では地球では創られなかったような神も誕生している。それがウチらなわけ」

「確かに地球にはギャルの女神なんて居ねぇからな。ギャルの世界でトップクラスに人気で、神みたいに崇められている女とかはいるが。……あ、そうか。そういう女が……」

「そゆこと。流石はユーくん。察しがいいねー。確かにウチっていう神格の素の一つになったのは、そいういう娘。それが何千年も人の口を伝播するうちに、他の概念とくっついてウチっていう女神になったんだよね」

「マジか……」

 ユーゴはよく考えたら、この女神という存在がどういうものなのかを知らなかった。
 一番付き合いが長い存在なのに。

「で、本題に戻るんだけど、さっきユーくんが言ったように、ウチが司る権能のひとつに “電脳” があります。本来の電脳の概念は、解かりやすく言えばパソコンとかインターネットとかで、ウチはそういうのに強いって感じ。で、さらにウチの場合は異世界間を繋いだり、その世界に存在する生物非生物の情報を読み取ったりできるものなんだよね。つまり、そのウチが何もつかめなかったってことが問題なの」

「なんでだよ」

「だって、古い神々にはこんなことできる神は居ないはずなんだよ。 “電脳” なんて概念は無いんだから。なのに、専門のウチの追及をかわすことができる」

「新しい概念の神にしか出来ない事ができる。つまり、新しい神でユーラと同じことが出来る神が、古い神に協力してるってことか?」

「いえーす。ウチら新しい神の中に、裏切り者がいまーす」


──────to be continued

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