ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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からくり奇譚 編

077. 巫女の爆弾発言

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「よ、ヨメ……ですか?」

「そうです、嫁です。私は嫁に行きます」

 信衛、小姓、女中二人は揃って首を傾げた。
 ヨメ? はて、そんな地名は何処に有ったかいな、と。

「姉上。ちなみにどなたかとご一緒にいかれるのですか?」

「何を異なことを。女子おなごが嫁に行くといえば、男性の元に一人で嫁ぐと決まっています」

「ああ、なるほど……え!? そっちの嫁ですか!?」

「どっちの嫁だと思っていたのです?」

「いえ、気が動転しました。しかしいったいぜんたい、急にどうして。いままで縁談は『私はお嫁になんか行かない! 一生進ちゃんと暮らすんだから!』などと聞き分けのないことを言って全て断っていたのに」

「確かに、私にもそのような子供じみたことを言っていた時期がありました」

「というか昨日も聞きましたけど。ともあれ、嫁がれることは喜ばしいことです。して、相手は何処のどなたですか?」

 信衛としては、義兄となるものが誰なのかということが、やはり気になる。
 しかも藩主の姉の婚姻ともなれば、それで政略図が変わる可能性が大いにあるのだ。気にならないほうがどうかしている。
 通常は “家” の意向で嫁ぎ先が決まるものだが、この姉に関しては誰も口出しが出来ない。
 何故ならば雪は国持大名である九能家の長女。しかも陽元国最強の戦闘力を持ち、高位の巫女でもある。そんな彼女には将軍である栄山の殿でさえも気を使うのだ。
 おまけに重度のブラコンであるので、九能姉弟の父も、いやがる娘に嫁に行けとは終ぞ言えなかった。
 いま周囲に可能なのは、せいぜいが縁談話を持ちかけるくらいである。

「それは……」

 信衛の質問に、雪は恥ずかしげに言いよどんだ。
 赤くなって横を向いている姉を見て、これは本気かもしれない、と内心驚いた信衛。
 やっと我が姉にも───まともな───春が訪れたのだ。乙賀の娘ではなく。
 これは弟として全力で応援せねばなるまい。

「それは?」

「……さきほどの、たかとうゆうご様です」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「あれが城? むちゃくちゃ派手な外観だな」

 全てが朱に塗られた九能城を観て、ユーゴは思わず感想を漏らした。

「でも海の中じゃ黒くなって目立たないわよ。海中で目立ちたいなら黄色か白にしなきゃ」

 ユーゴの横では、パレアが意味のよく分からない感想を述べた。
 
「前藩主の九能真条様が、大層派手好きなお方でしてな。別名、暁城とも呼ばれております。さて、到着いたしましたので、これより我が殿の元へ案内つかまつる」

 橋を渡って外堀を越え、門を潜ると、一人の少女が彼らを待ち構えていた。

「待たせたようだな、蘭菊よ。いまお客人をお連れした由、殿に報告をするのだ」

 尚勝に蘭菊と呼ばれた少女は「御意」とお辞儀をした後、客人であるユーゴ達を見渡した。
 なんだ、こいつ? 
 ユーゴは目の前の少女に違和感を覚えた。
 いや、ユーゴだけではない。フィールエルもネルも、パレアも蘭菊を見て怪訝な表情を浮かべた。
 見た目はパレアとそう変わらぬ年格好である。
 おかっぱ頭をした可愛らしい顔つき。着物は、上等ではないが決して粗末でもない、総柄の小紋である。下働きの少女が着用するには過分に思われた。
 思ったのは、当たり前だがユーゴではない。フィールエルである。前世の彼女はお茶の家元の家系に生まれ、着物に関して知識があったのだ。
 しかし何か違和感がある。人の形をしているが、そこはかとない不自然さが。
 彼らの表情にでていた怪訝さを感じ取り、尚勝が少女を紹介する。

「ああ、これ……もとい、は蘭菊。こう見えて人間ではありません」

「人間じゃ……ない?」
 
 見た目は限りなく人間に近い、亜人のようなものだろうか?
 ユーゴの疑問に、尚勝が頷く。

「蘭菊は我が主、九能信衛様がお造りになられたからくり人形でござる」

「か、からくり人形……」

 そうか、これが噂の【自ら動き喋る機械人形】か。
 実物を見ても、ユーゴたちは蘭菊が機械仕掛けの人形であるとは───いや、人間でないとは信じがたかった。
 肌や髪の質感も、瞬きの仕方も、口の動かし方も、多少ぎこちなくとも本物そっくりである。
 “からくり人形” などという枠に入れてはいけない。もはやヒューマノイドと言っても差し支えないだろう。
 凄まじいまでの技術力。地球でもこのように高度な自立思考型のヒューマノイドは未だ開発されていない。
 これが信衛の手によるものなのならば、なるほど、これが彼のチート能力ということなのだろう。

「いま殿からお返事がありました。すぐに御殿の大広間にお連れするようにとのことです」

「心得た。では皆様、こちらへ」

 再び尚勝の先導で進み、一行は城内に這入った。
 回廊を進むと、庭木だろうか、キンモクセイのような甘い香りが漂ってきた。

「すごく綺麗です」

 ネルが感極まったような声を上げた。
 庭園は美しく整えられ、無駄がない。
 大きな紅葉の木が一本あり、下からライトアップされ、幻想的な雰囲気を醸し出している。

「こちらにお入り下さい。主がお待ちです」

 そういって尚勝が案内したのは、広大な大広間だった。
 奥の方の一角は一段高くなっていて、敷かれている畳の数は、数えるのも馬鹿らしくなるほど。
 その手前には小さな椅子が四脚置かれている。正座の文化がない外国人に配慮して用意されたものだった。
 壇上には既に信衛が座して待っていた。

「ようこそ、はるばるおいでくださいました。改めまして九能家現当主の信衛です。こんな高いところから失礼します。威厳だ礼儀だと周りがうるさくて」

「構わねぇよ。一国一城の主ってのはそんなもんだ」

「お客人。無礼な態度はお控えなされ」

 ユーゴのぞんざいな物言いに、近侍が気色ばむ。

「構わぬ。彼らは拙者と姉上が招いた客人で、外国からの旅行者である。文化の違いにいちいち目くじらを立てては、我らの度量が知れよう」

「これはしたり。さすがは殿。左様でございますな。失礼いたしました」

「それでゆうご殿。本日わざわざお越しいただいたのは、先ほどお話ししたように、飛田屋錦兵衛の件です。とはいえ、今日はもう遅い。歓迎の席を設けておりますので、今日はこの城でお寛ぎください」

「分かった。じゃあお言葉に甘えさせてもらうぜ。ところで、それとは別件で信衛に訊きたいことが有るんだが」

「別件で、拙者に? それはどのようなことでしょうか?」

「”日本” “地球” “異世界” 。この言葉に聞き覚えはあるか?」

 ユーゴの発した三つの単語。それに対する信衛の反応は顕著なものだった。

「な……あ、貴方は、まさか……」

 瞳孔が開き、身を乗り出した信衛。これは当たりだな、とユーゴはほくそ笑んだ。

「十中八九、お前の思っている通りだ」

「そ、そうですか。いや、驚いた。どうやら貴方とは、後でじっくりそのことで話す必要がありそうだ。それに、こちらも貴方に更に別件でお話することがあったので丁度よい」

「俺に? 何だよ」

 途端に信衛が困りきった表情をした。

「その……拙者も先ほど聞かされたばかりですので、何とも。後で詳しくから話をさせます」

「……? よく分からんが、分かった」

 ひとまずこの場はこれでお開きとなり、一行はそれぞれに与えられた客間に通された。
 食事の用意が出来たと言うので、それぞれ女中の案内で大広間に赴いた。
 大広間にはコの字で膳が並べられ、城内の要職にある者たちが席に着いていた。
 ユーゴたちは上座に近いところに案内された。これはまぁ客人ということで納得できる。しかしユーゴが解せなかったのは、ユーゴ一人が更に上座寄り、城主である信衛の横に座らされたことだ。
 信衛を挟んだ反対側には、姉の雪が澄まし顔で姿勢良く座っている。

「「「 ? 」」」

 ユーゴ一人だけ離された順番に、ユーゴだけではなく、フィールエル、ネルも作為的なものを感じた。
 パレアだけは何の疑問も抱かず、「わー、美味しそう! 鯛はないわね。安心安心」 と彩り豊かな膳に瞳を輝かせていたが。
 特に聖女二人には、アビリティ【女のカン】になにか引っかかるものがあったが、ひとまず静観することにした。
 侍たちにも、この並びは知らされていなかったらしく、互いに、

「おい、なにか聞いているか?」

「いえ、何も。一体どうしたことでしょう?」

「わからん。しかしあの雪姫様が絡んでいるとなれば、迂闊なことを言えんぞ」

 と、一瞬のアイコンタクトでこれだけの遣り取りをした。
 その時、空気が読めないのか勇敢なのか、一人の侍が手を挙げた。

「殿。僭越ですが、この並びには如何様な意図がお有りで?」

 乙賀尚勝だった。この質問に侍たちがぎょっとした。
 聖女二人は『よくぞ訊いてくれました』と皆の死角でサムズ・アップした。
 全員の視線が信衛に注がれた。
 信衛はその視線を受け、どう答えるかを迷っている。

「それは、私がこのお方、たかとうゆうご様の元へ嫁ぐと決めたからです」

 しかし答えたのは雪だった。
 しん、と室内が水を打ったように静まり返り、一呼吸の後、

「ええええええええええーっ!?」

 ほぼ全員が驚愕の声を上げた。

──────to be continued

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