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めいでぃっしゅへようこそ! 編
092. 四章プロローグ: 異世界コンカフェ
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「え……。ここ、どこなん?」
隣を歩いていた同い年の義妹、輝星に訊かれ、佐久間鉄太は自信を持って答える。
「知らんばい。俺が聞きてーっちゃ」
九州北部にある町、小倉には、輝星の実姉が経営するカフェが有る。
そこで鉄太はキッチンの、輝星はウェイトレスのアルバイトをしていて、その帰宅途中のことだった。
小倉城のお堀に沿って歩いていると、急にスマホの写真画面をスライドするように、視界に映る景色がガラリと変わったのだ。
呆気にとられた鉄太は、義妹の頬をつねった。
痛くないと言うので夢かと思ったが、お返しのボディブローが悶絶して嘔吐するくらいの激痛をもたらしてくれたので、夢でないのは間違いない。
そこから佐久間兄妹は町にたどり着き、自分たちが中世ヨーロッパのような世界に来てしまった事を知った。
「私たち、どうなるんやろ」
不安そうにする輝星に、鉄太はにかっと笑いかけた。
「大丈夫やって。きっと、なんとかなるっちゃ」
とにかく前向きなのが鉄太の取り柄である。
幸いなことに外国人然とした住人たちとは、何故か言葉が通じるようだ。
そこに通りすがりの馬車から一人の少女が顔を出し、義兄妹に声をかけた。
ベレッタと名乗ったその少女は、二人の珍しい服装に目が留まり、輝星の不安そうな様子が気になって声をかけたのだ。
鉄太の説明を聞いたベレッタは二人を馬車に乗せ、自らの邸宅に連れて行った。
娘から事情を聞いたベレッタの父、レーナス令爵は自身が経営するレストランで雇用することにした。
日本に帰るための情報収集と生活資金のため、義兄妹は馬車馬のごとく働くことにしたのだった。
元々義姉の経営するカフェで基礎を叩き込まれていた鉄太と輝星は次々と仕事を憶えていき、レストランの戦力となっていった。
給金が上がって貯金が増えると、二人は次第に独立を考えるようになった。
この世界に足りないのは娯楽だ。
鉄太はとある理由からそれを見抜く事が出来た。
娯楽の坩堝である日本育ちの義兄妹は、その知識をもとに、まず一店舗を出店した。飲食店を。
しかしただの飲食店ではない。
メイドカフェである。
それがバズった。大当たりだった。
上流階級しか味わえないメイドに傅かれる至福に、一般層はのめり込んだ。
コンセプトとターゲット層を変え、二店舗目、三店舗目と次々に出店し、鉄太と輝星は成功を喜んだ。
その矢先のことだ。恩人であるベレッタに、国家転覆の疑いが掛けられて追われているという情報が飛び込んできたのは。
隣を歩いていた同い年の義妹、輝星に訊かれ、佐久間鉄太は自信を持って答える。
「知らんばい。俺が聞きてーっちゃ」
九州北部にある町、小倉には、輝星の実姉が経営するカフェが有る。
そこで鉄太はキッチンの、輝星はウェイトレスのアルバイトをしていて、その帰宅途中のことだった。
小倉城のお堀に沿って歩いていると、急にスマホの写真画面をスライドするように、視界に映る景色がガラリと変わったのだ。
呆気にとられた鉄太は、義妹の頬をつねった。
痛くないと言うので夢かと思ったが、お返しのボディブローが悶絶して嘔吐するくらいの激痛をもたらしてくれたので、夢でないのは間違いない。
そこから佐久間兄妹は町にたどり着き、自分たちが中世ヨーロッパのような世界に来てしまった事を知った。
「私たち、どうなるんやろ」
不安そうにする輝星に、鉄太はにかっと笑いかけた。
「大丈夫やって。きっと、なんとかなるっちゃ」
とにかく前向きなのが鉄太の取り柄である。
幸いなことに外国人然とした住人たちとは、何故か言葉が通じるようだ。
そこに通りすがりの馬車から一人の少女が顔を出し、義兄妹に声をかけた。
ベレッタと名乗ったその少女は、二人の珍しい服装に目が留まり、輝星の不安そうな様子が気になって声をかけたのだ。
鉄太の説明を聞いたベレッタは二人を馬車に乗せ、自らの邸宅に連れて行った。
娘から事情を聞いたベレッタの父、レーナス令爵は自身が経営するレストランで雇用することにした。
日本に帰るための情報収集と生活資金のため、義兄妹は馬車馬のごとく働くことにしたのだった。
元々義姉の経営するカフェで基礎を叩き込まれていた鉄太と輝星は次々と仕事を憶えていき、レストランの戦力となっていった。
給金が上がって貯金が増えると、二人は次第に独立を考えるようになった。
この世界に足りないのは娯楽だ。
鉄太はとある理由からそれを見抜く事が出来た。
娯楽の坩堝である日本育ちの義兄妹は、その知識をもとに、まず一店舗を出店した。飲食店を。
しかしただの飲食店ではない。
メイドカフェである。
それがバズった。大当たりだった。
上流階級しか味わえないメイドに傅かれる至福に、一般層はのめり込んだ。
コンセプトとターゲット層を変え、二店舗目、三店舗目と次々に出店し、鉄太と輝星は成功を喜んだ。
その矢先のことだ。恩人であるベレッタに、国家転覆の疑いが掛けられて追われているという情報が飛び込んできたのは。
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