真理

kokokarahajimaru

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序 俺の世界認識

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 途方も無い疲労と虚無感。その男がこの世に生を受けてから、初めて明瞭に意識下に抱いた感情がそれである。目に映るもの全てが不気味であった。2つの丸い眼球と呼ばれる物を携えた物体達が、それぞれに俺の顔を覗き込む。どうやら、俺の誕生を祝い喜んでいることらしいことはわかったが、ただただ不気味であった。
 その感情は時を経ても変わることがなかった。むしろますます強く、根深く俺に染み付いた。何故なら、一つ一つの事象に対してそうである「必然性」が得られないからである。にも関わらず、世の中の人々はさもそれが当然であるかのように振る舞い、生を営んでいる。喜び、怒り、悲しみ、憂鬱、驚愕、人はごく自然にこれらの感情を抱き表現するが果たしてそれに、そうでなければならない必然性などあるのだろうか?
 俺が、この世で学問と呼ばれるものに大いに興味を抱いたのは至極当然のことであった。なぜなら、現象に対して、現状最も妥当性のもち得る解答をもたらしうる要素を備えた道具であったからである。
 しかし、その思いも早々に打ち砕かれた。なぜなら、ほぼすべての学問に置いて暗黙の前提が導入されていたからである。最も純粋に現象を表しうる数学においてさえそれはある。そもそも1とは何か?足すとは何か?掛けるとは何か?割るとは何か?そして最も興味深い0とは何か?それらの明確な定義と説明抜きに四則演算というルールの下に強制的に演算させられる。真の学問とは、ルールの明確化とその妥当性の審議抜きにしては成り立ち得ない。にも関わらずそれらが当然のようになされているのである。
 国語なるものは学問とは言い難い。何故なら言葉を用いたときに想起されるイメージは人それぞれ異なる可能性があり、しかもそれを確認しうる方法がないからである。人は、当然のように言葉を用いやり取りするが、本当に自分が想起したイメージを相手が自分の言葉によって受け取ってくれるなどという保証はどこにもない。したがって、学校教育における国語とは、単なる発声練習と定型文による簡易的なコミュニケーションを学ぶ場として捉えるのが妥当であろう。更に踏み込んでいえば、言語の表面的な理解を殊更に強調することで、人があたかも相互理解でき、安易に共存共栄がはかれるとミスリードさせる為の場であるというのが俺の持論である。そうでなければ、太宰治をはじめとした精神の脆弱な者はこの世の不可解さを受け止めきれず、混沌のうちに我を失い死んでしまうだろう。それほどまでに、人間はデタラメのなかで僅かな確信を灯火にして生きているのだ。
 そういった確信を抱いて以来、俺の興味関心はもっぱら哲学であった。哲学とは人間への最大限の肯定である。人が人である以上、人間の持ちうる見解は最も尊重されるべきであるという学問に他ならない。人間だけが、この不気味な世界の一片を説明しうる命題を産み出しうる存在だということだ。そしてその命題を吟味し、精査し、あるときには他の命題と比較し、最も妥当性のあり得る命題を導きを人類共通の世界認識として共有すべきであるという認識についての命題なのだ。
 ここまでの理解を前提にすれば、人々が宗教なるものを求め、政治組織を営む心理もよく理解できる。宗教は、この到底自分では生涯をかけても理解しきれない世界に一筋の秩序をもたらしてくれるし、政府はそういった混乱に陥ってる人々を現実に支配し管理する組織として不可欠なのがよく分かる。
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