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鹿角合戦 永禄十二年(1569)秋
南部の跡継ぎ 4-5
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信直と為信は、城の中へ入った。激しく攻め立てられ、落城も目に見える。しかし手放しがたきに変わりなく、敵は緩むことなく必死に抗うだろう。その中で信直自ら城主の首をとり、南部の後継に名乗りをあげること。至上命題である。……配下より、報告が来る。
“九戸勢、南より城内に侵入。果敢に攻め立てております”
予想通り。こちらは一歩早く進んでいるか。すでにここは城の中心。
迫っくるる敵兵を幾重にも切り倒し、信直と為信は進む。……すると、向こう側より女子の叫び声が聞こえた。……奥方と子供だろうか、兵士に連れられて逃げようとしている。鮮やかな羽織を身に付けてはいるが、相当乱れきっている。
信直は大声で呼びかける。
「我は南部一門、田子信直である。弱き女や子供まで手を出す気はない。安心なされよ。」
敵兵はこちらに気が付く。ある者は刃を向けて警戒し、ある者は奥方と顔を見合わせる。戸惑っているのか。
二人は相手の出方をうかがっていると、彼らのさらに奥の襖より、立派な鎧兜を身に着けた武将が現れた。そして怒鳴りこむ。
「我こそは安東家臣長牛城主、大高忠成である。情けはいらぬ、神妙に勝負。」
信直と敵将、互いにゆっくりと近づく。その間に奥方と子供は兵士に連れられ遠くへ逃げていった。憂いはないといった心地だろうか、敵将は金属音が鳴るくらい強く、信直の刀と組み合った。
……信直は次第に後ろへ下がっていく。為信はあふれてくる敵兵を倒す。
“わっ”と信直の声が聞こえた。為信が振り向くと、信直は背中から倒れており、敵将と組み合ったまま踏ん張っている。
“危ない”
為信は、卑怯にも横から刀を刺した。……一対一と決め込んでいた敵将も悪いかもしれないが、為信もはじめ手出しをする気はなかった。ただただ、信直を守るためである。
信直は息を荒く、その様を見るだけ。為信はなんとか冷静さを保ち、落ち着いて敵将の首をとった。
為信は……首を信直に差し出した。……一瞬で理解した信直は頷く。
そして大声で叫んだのだ。
「田子信直、城主の大高忠成を打ち取った。」
“九戸勢、南より城内に侵入。果敢に攻め立てております”
予想通り。こちらは一歩早く進んでいるか。すでにここは城の中心。
迫っくるる敵兵を幾重にも切り倒し、信直と為信は進む。……すると、向こう側より女子の叫び声が聞こえた。……奥方と子供だろうか、兵士に連れられて逃げようとしている。鮮やかな羽織を身に付けてはいるが、相当乱れきっている。
信直は大声で呼びかける。
「我は南部一門、田子信直である。弱き女や子供まで手を出す気はない。安心なされよ。」
敵兵はこちらに気が付く。ある者は刃を向けて警戒し、ある者は奥方と顔を見合わせる。戸惑っているのか。
二人は相手の出方をうかがっていると、彼らのさらに奥の襖より、立派な鎧兜を身に着けた武将が現れた。そして怒鳴りこむ。
「我こそは安東家臣長牛城主、大高忠成である。情けはいらぬ、神妙に勝負。」
信直と敵将、互いにゆっくりと近づく。その間に奥方と子供は兵士に連れられ遠くへ逃げていった。憂いはないといった心地だろうか、敵将は金属音が鳴るくらい強く、信直の刀と組み合った。
……信直は次第に後ろへ下がっていく。為信はあふれてくる敵兵を倒す。
“わっ”と信直の声が聞こえた。為信が振り向くと、信直は背中から倒れており、敵将と組み合ったまま踏ん張っている。
“危ない”
為信は、卑怯にも横から刀を刺した。……一対一と決め込んでいた敵将も悪いかもしれないが、為信もはじめ手出しをする気はなかった。ただただ、信直を守るためである。
信直は息を荒く、その様を見るだけ。為信はなんとか冷静さを保ち、落ち着いて敵将の首をとった。
為信は……首を信直に差し出した。……一瞬で理解した信直は頷く。
そして大声で叫んだのだ。
「田子信直、城主の大高忠成を打ち取った。」
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