津軽藩以前

かんから

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石川高信、病没 元亀一年(1570)春

鉄砲との出会い 5-2

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 ひらりと一枚の紙が、為信の元へ飛んでいった。自然と目がいく。

 ……そこには、筒状の何物かが描かれていた。

 「これはなんだ。」

 為信は問う。眉間に皺をよせて、いまだ理解していな様子であった。
 科尻は渋々ながら答える。

 「……火縄でございます。」

 火縄とな。聞いたことはある。なんでも中央では戦に取り入れられていると聞く。

 そのとき、後ろから鵠沼がやってきた。
 科尻は “こちらは殿よ” と耳打ちをし、科尻と同じくかしこまった。為信はあばら屋の中へ通され、談義が始まる。

 為信は言う。

 「なかなかの……火縄は高価な物にて、こんな田舎には手に入らぬ。しかしここにその図面がある。何をしようとしていた。」

 科尻と鵠沼は顔を見合わせる。いくらか青くなっているような。

 「いえ……後学の為でございます。将来、殿のお役に立てるよう、知識だけでもと入れていたのです。」

 それはあっぱれなこと。

 ……為信は、まじまじと図面を見る。

 “……いまいちわからんな。実際に手に取ってみたいのお”

 ここで鵠沼は恐る恐る為信に訊ねる。

 「為信様……なんのご用件で参られました。」

 「うむ。小笠原殿に、面松斎殿と会えるように席を設けてほしいと願うつもりであった。」

 科尻は答える。

 「確か……面松斎は鯵ヶ沢に移ったはず。」

 彼の占いが評判となり、大家主から店を出させてもらったという。
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