津軽藩以前

かんから

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万次党、従属 元亀二年(1571)夏

運の強さ 14-3

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 風向きは変わる。九戸らは逆に攻め込まれ、城を包囲された。そのうちに雨が降り始め、城中は特に厭戦気分が漂う。

 九戸勢は西へ密使を送り、救援を求めた。千徳氏や万次党に届けられたが……こちらも旗色が悪い。科尻と鵠沼が主導した堀越騒動は、為信が見事に鎮圧。九戸勢が完全勝利する前提で動いていただけに、目論見より外れてしまった。

 しかも為信は、黙っているだけではない。手始めに鯵ヶ沢に兵三百を置き、家来のもとを現地に送った。
 科尻と鵠沼があれだけの兵を動かせたのは、決して万次党のみの力ではない。資金面で大商人の理右衛門より融通を受けていたと思われる。十丁の火縄も問題だ。戦で用いられたものだが……為信に嘘を付いていたことになる。

 “一丁手に入れるだけでも大変”

 “一丁だけ持ち合わせておりますので、殿に進呈いたします”

 このように言っておいて、裏で万次らに十丁も渡すとは……許しがたい。グルだ。

 秋元は徹底的に、理右衛門の動きを監視する。目立った動きは見受けられなかったが、文句を言ってくる。

“私がいなければ、津軽に新しい商品が届かなくなりますよ”

 為信は考えた。ならば他の商人を城下に呼んでしまえと。これまでの状態がおかしかったのだ。一軒の大きな商家が独占し、物品を取り扱う……値を吊り上げ放題ではないか。結果として銭を損させ、民の困窮が増す。

 理右衛門は腹黒い。これまで私はいとも簡単に、手玉に取られていたのだ。情報を小出にだして親密さを求め、火縄を一丁だけ与えて満足させる……私が甘ちゃんだったと言われればそこまでだが……どうしたものか。他所から商人を集めることにした。

 すると……商人の耳の早さは恐れ多い。すぐさま秋田よりぜんとくと申す商人が参上した。大浦城下に店を開かせてほしいという。
 こやつ……まさか安東の差し金かも知れぬが……乗ってみよう。理右衛門とこの豊前屋を競わせ、物の値を下げる。理右衛門だけに儲けさせはしない。
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