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大光寺の戦い 天正四年(1576)正月
見果てぬ夢 19-3
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小笠原は、その体勢から一向に動かない。万次はしばらく目を瞑っていたが……次第に心が揺れる。
いざ決心がつく。小笠原は刀を振り上げた。
すると……突然。万次は布団を両手でつかみ、小笠原の方へ投げた。刀は布団の綿を顕わにさせた。
万次は叫ぶ。
「聖人君主の如く、だまって死ねるか。」
辺りの物、ことごとく投げつけた。小笠原は甘んじて全てを受けた。近くに物がなくなると、万次は体当たりを仕掛ける。残っていた力を振り絞り、小笠原へ向かう。
……一振りで斬り捨てられた。斜めに刃は入り、万次の体は横へ倒れこむ。
命は、一瞬のうちについえた。
万次は口を大きく開け広げたまま。顔の皺を際立たせ、この世の者でない形相を示す。
小笠原は……涙を流す。万次が死んだのを確かめると……その場から立ち去った。振り向くことはしない。
万次はかつて小笠原を助けた。信州より逃げてきた時には食べ物を恵み、大浦家への仕官も薦めてくれた。大恩人を斬る羽目となる。
小笠原は……このまま何処かへと放浪しようかなとも思った。ただ……それでは万次のしたことが無駄になってしまう。
万次も夢見たこと。
“津軽を平らげる”
為信の元、果たそうではないか。
その後、小笠原は大浦家に戻る。万次党は分裂こそすれ、多くは為信に従った。一部は港町鯵ヶ沢を燃やそうと企んだが、鯵ヶ沢代官の秋元が未然に防ぐ。彼らは舟をこぎ出し、さらに北へと逃げていったという。
万次党は、大浦家臣として浪岡攻略戦など多くの活躍を見せていく。
ただしその徒党は……平和な時代が訪れるとともに、形を失い消滅した。すなわち他の民衆らと同化したことを意味する。
いざ決心がつく。小笠原は刀を振り上げた。
すると……突然。万次は布団を両手でつかみ、小笠原の方へ投げた。刀は布団の綿を顕わにさせた。
万次は叫ぶ。
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辺りの物、ことごとく投げつけた。小笠原は甘んじて全てを受けた。近くに物がなくなると、万次は体当たりを仕掛ける。残っていた力を振り絞り、小笠原へ向かう。
……一振りで斬り捨てられた。斜めに刃は入り、万次の体は横へ倒れこむ。
命は、一瞬のうちについえた。
万次は口を大きく開け広げたまま。顔の皺を際立たせ、この世の者でない形相を示す。
小笠原は……涙を流す。万次が死んだのを確かめると……その場から立ち去った。振り向くことはしない。
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小笠原は……このまま何処かへと放浪しようかなとも思った。ただ……それでは万次のしたことが無駄になってしまう。
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ただしその徒党は……平和な時代が訪れるとともに、形を失い消滅した。すなわち他の民衆らと同化したことを意味する。
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