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1A-4(Amane)
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こんな女俺は知らない。だが、いま目
の前に経っている女性はどこからどう見
ても寿天音の姿をしていた。落ち着け、
どうして俺はこんなに動揺している。
いったん整理しよう。まずは・・・そ
うだっ、今の時間。カッターシャツの袖
をまくって腕時計の針先を探す。そう、
今の時刻は十一時半。俺は予定通り集合
時間の三十分前にここに来た。先客なん
ているわけがない、はずだったのにどう
してよりにもよってそこにお前がいる?
「やっぱ変や、この三年何があって
ん?」
戸惑いを隠せない俺を、寿天音はどこ
か楽しそうな目で見ていた。今日もまた
ボーイッシュな服装をしている。そのベ
リーショートとまではいかないけど襟足
に関しては俺より短いヘアースタイルに
はまだ慣れそうもない。
「三十分前到着かぁ~、賢一はなんも変
わらへんな。」
天音が嘲笑混じりに言った。俺が三年
前から相変わらずなのは認めるが、いく
らなんでもイメチェンが露骨過ぎではな
いだろうか。女は男より成長が早いと言
うが、もはやそんなレベルでは無い気が
する。少し怠そうな口調は三年前からあ
まり変わっていないみたいだが、そのせ
いでより一層前とのギャップを感じてし
まう。
「雛森さんと阿部くんってどんな人?」
「へっ?」
「せやから、これから会う二人はどんな
人なん? たしか雛森さんがドラムで阿部
くんはギター・・・ギターボーカル? と
もかく、バンドのメンバーがどんな人な
んか気になるやん。」
「あ、ああ、そうやな。」
俺は今それどころではないのだ。てっ
きりさっきの俺の疑問について何かしら
説明してくれるものだと思って待ってい
たのだが、それについては一切スルーみ
たいだ。まあ、その内話してくれるだろ
う、と淡い期待を抱いて今回は我慢して
おこう。
えーっと、雛森と光也についてか。二
人とも俺の高校時代の友達だが、一言で
どういう人間かを伝えるのは難しいし、
ちょうどまだ時間もある。どこか喫茶店
でも入って二人との出会いから今に至る
までの経緯についても少し語ってもいい
かもしれない。
「結構時間あるし、その辺の喫茶店入ら
んか? もちろん奢る。」
俺がそう言うと、ふと彼女が一瞬懐か
しい表情を見せた気がした。そのまま少
し考えるような素振りをした後遠慮気味
に頷いた。
「うん、でもお金は自分で払う。」
「ええってええって、大学生は学費とか
大変やろ。ここは使うあてないフリータ
ーの俺に払わせてくれや。」
「そんなに言うなら・・・ゴチになりま
す。」
なぜだか態度の小さくなった天音を連
れて改札から一分とかからない場所にあ
ったコーヒーチェーン店に向かった。
最近、元カノのことが解らない。
の前に経っている女性はどこからどう見
ても寿天音の姿をしていた。落ち着け、
どうして俺はこんなに動揺している。
いったん整理しよう。まずは・・・そ
うだっ、今の時間。カッターシャツの袖
をまくって腕時計の針先を探す。そう、
今の時刻は十一時半。俺は予定通り集合
時間の三十分前にここに来た。先客なん
ているわけがない、はずだったのにどう
してよりにもよってそこにお前がいる?
「やっぱ変や、この三年何があって
ん?」
戸惑いを隠せない俺を、寿天音はどこ
か楽しそうな目で見ていた。今日もまた
ボーイッシュな服装をしている。そのベ
リーショートとまではいかないけど襟足
に関しては俺より短いヘアースタイルに
はまだ慣れそうもない。
「三十分前到着かぁ~、賢一はなんも変
わらへんな。」
天音が嘲笑混じりに言った。俺が三年
前から相変わらずなのは認めるが、いく
らなんでもイメチェンが露骨過ぎではな
いだろうか。女は男より成長が早いと言
うが、もはやそんなレベルでは無い気が
する。少し怠そうな口調は三年前からあ
まり変わっていないみたいだが、そのせ
いでより一層前とのギャップを感じてし
まう。
「雛森さんと阿部くんってどんな人?」
「へっ?」
「せやから、これから会う二人はどんな
人なん? たしか雛森さんがドラムで阿部
くんはギター・・・ギターボーカル? と
もかく、バンドのメンバーがどんな人な
んか気になるやん。」
「あ、ああ、そうやな。」
俺は今それどころではないのだ。てっ
きりさっきの俺の疑問について何かしら
説明してくれるものだと思って待ってい
たのだが、それについては一切スルーみ
たいだ。まあ、その内話してくれるだろ
う、と淡い期待を抱いて今回は我慢して
おこう。
えーっと、雛森と光也についてか。二
人とも俺の高校時代の友達だが、一言で
どういう人間かを伝えるのは難しいし、
ちょうどまだ時間もある。どこか喫茶店
でも入って二人との出会いから今に至る
までの経緯についても少し語ってもいい
かもしれない。
「結構時間あるし、その辺の喫茶店入ら
んか? もちろん奢る。」
俺がそう言うと、ふと彼女が一瞬懐か
しい表情を見せた気がした。そのまま少
し考えるような素振りをした後遠慮気味
に頷いた。
「うん、でもお金は自分で払う。」
「ええってええって、大学生は学費とか
大変やろ。ここは使うあてないフリータ
ーの俺に払わせてくれや。」
「そんなに言うなら・・・ゴチになりま
す。」
なぜだか態度の小さくなった天音を連
れて改札から一分とかからない場所にあ
ったコーヒーチェーン店に向かった。
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