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一声掛けてくれるとは言っていたが、
ただの一声で起きてくれるなら苦労はな
い。一見放ったらかしのように見える加
奈子さんだが、あの隙きを与えれば年中
問わず冬眠を初めようとする天音を毎朝
ベッドから引き剥がしている事を思うと
かなり手を焼いている方だろう。そりゃ
面倒くさくもなる。
ということで残り一時間で冬眠中の熊
を引きずり出して学校まで連れて行くと
いうインポッシブルなミッションを流れ
で引き受けてしまったことに少し後悔し
つつも、早々に着替え、本日も筋トレグ
ッズのように重い制カバンをふらつきな
がら背負い、玄関のドアをため息混じり
に押し開けた。
「一日くらい大丈夫やろ。」確かに自
分だったら一日ぐらい休んでも良いと思
ってしまうが、それは普段から真面目に
登校しているからこその『一日くらい』
なのだ。加奈子さんは知らないだろう
が、天音は既に『もう一日も休めない』
というフェイズに入っている。だから天
音の家に一番近く幼稚園来の幼馴染とい
う理由の元、担任教師に懇願された俺が
毎朝が迎えに行くようになった。小学校
を卒業して以降お互いに異性という意識
が芽生え始めたことや、俺の両親の離婚
で引っ越したこともあって一緒に登校す
ることを辞め、身を置くようになったの
だが、そんな二人がまた一緒に登校する
ようになるのだから・・・そりゃあ、そ
の内付き合うわな。
って、なんで自分の馴れ初めなんか語
ってるんや俺は。
ともかくこれ以上天音に無断欠席させ
てはいけないのだ。あいつが目指してい
る高校のためにも、勉強出来ない分内心
点は落とせない。
寿家のドアを前に立つ。いま目の前に
ある三階建一軒家の二つ隣に見える同じ
く三階建の家が、俺が去年まで住んでい
た場所。今は離婚して俺たちを追い出す
形をとった元父親が一人で暮らしている
が、たまに女の匂いがする。あんな男の
顔はもう見たくもないのでこの付近へ立
ち寄るのは少し億劫なのだが彼女のため
だから仕方ない。
現在七時二十八分。家が近いという理
由で頼まれたはずなのに、ここまで来る
のにもう二十分が経過している。これ、
急がないと間に合わないな。慌てながら
も律儀にインターホンを押し、十秒待っ
て反応がないのを確認してから鍵のかか
っていない扉を開けた。
久しぶりだな、この間取りの感じ。入
って直ぐの階段を上がりながら、俺はこ
の家によく遊びに来ていた小学校時代の
ことや、ここと作りがほぼ同じ前の自宅
での記憶を思い出したりしていた。
一、二年前のことなのにすごく遠い過
去のように思える。数年後の自分も今の
ことを懐かしんだりしているのだろう
か。そんなことを考えていると、いつの
間にかリビングを通り越して三階へ向か
う階段に差し掛かっていた。体がまだ間
取りを覚えている。もうすぐ天音の部屋
だ。
ただの一声で起きてくれるなら苦労はな
い。一見放ったらかしのように見える加
奈子さんだが、あの隙きを与えれば年中
問わず冬眠を初めようとする天音を毎朝
ベッドから引き剥がしている事を思うと
かなり手を焼いている方だろう。そりゃ
面倒くさくもなる。
ということで残り一時間で冬眠中の熊
を引きずり出して学校まで連れて行くと
いうインポッシブルなミッションを流れ
で引き受けてしまったことに少し後悔し
つつも、早々に着替え、本日も筋トレグ
ッズのように重い制カバンをふらつきな
がら背負い、玄関のドアをため息混じり
に押し開けた。
「一日くらい大丈夫やろ。」確かに自
分だったら一日ぐらい休んでも良いと思
ってしまうが、それは普段から真面目に
登校しているからこその『一日くらい』
なのだ。加奈子さんは知らないだろう
が、天音は既に『もう一日も休めない』
というフェイズに入っている。だから天
音の家に一番近く幼稚園来の幼馴染とい
う理由の元、担任教師に懇願された俺が
毎朝が迎えに行くようになった。小学校
を卒業して以降お互いに異性という意識
が芽生え始めたことや、俺の両親の離婚
で引っ越したこともあって一緒に登校す
ることを辞め、身を置くようになったの
だが、そんな二人がまた一緒に登校する
ようになるのだから・・・そりゃあ、そ
の内付き合うわな。
って、なんで自分の馴れ初めなんか語
ってるんや俺は。
ともかくこれ以上天音に無断欠席させ
てはいけないのだ。あいつが目指してい
る高校のためにも、勉強出来ない分内心
点は落とせない。
寿家のドアを前に立つ。いま目の前に
ある三階建一軒家の二つ隣に見える同じ
く三階建の家が、俺が去年まで住んでい
た場所。今は離婚して俺たちを追い出す
形をとった元父親が一人で暮らしている
が、たまに女の匂いがする。あんな男の
顔はもう見たくもないのでこの付近へ立
ち寄るのは少し億劫なのだが彼女のため
だから仕方ない。
現在七時二十八分。家が近いという理
由で頼まれたはずなのに、ここまで来る
のにもう二十分が経過している。これ、
急がないと間に合わないな。慌てながら
も律儀にインターホンを押し、十秒待っ
て反応がないのを確認してから鍵のかか
っていない扉を開けた。
久しぶりだな、この間取りの感じ。入
って直ぐの階段を上がりながら、俺はこ
の家によく遊びに来ていた小学校時代の
ことや、ここと作りがほぼ同じ前の自宅
での記憶を思い出したりしていた。
一、二年前のことなのにすごく遠い過
去のように思える。数年後の自分も今の
ことを懐かしんだりしているのだろう
か。そんなことを考えていると、いつの
間にかリビングを通り越して三階へ向か
う階段に差し掛かっていた。体がまだ間
取りを覚えている。もうすぐ天音の部屋
だ。
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