6 / 26
窮地を救う光
しおりを挟む
そして、これが物語の冒頭に繋がり、今に至る。
じりじりと迫ってくる化け物たち、唯一の出口も閉ざされ、逃げ場を失った優星。先ほど拾った鉄パイプもいつの間にか弾かれ、離れたところに転がっていた。もう抵抗する術も無く、ただ後ずさることしかできない。
一方の沙月は、何度も体勢を崩されながらも、必死に化け物を薙ぎ払っていた。
(…これじゃあ彼の許へ行けない…っこのままじゃ…!)
優星に、鋭い得物が近づく。沙月は無我夢中で叫んだ。
「銀条ーーっ!!」
「あぁあ…!!」
もう助からない、二人はそう悟った。しかしその瞬間、屋上一帯を眩い光が包み込んだ。あまりの眩しさに、優星は両腕で視界を覆う。光と共に、耳をつんざくような叫び声があちこちから聞こえ、すぐに静かになった。恐る恐る目を開けると、屋上には、今まで何事もなかったかのように静寂に包まれ、沙月と優星の二人だけしかいなかった。
「…あれ…? さっきの奴らは…?」
辺りを見渡しても、それらしい面影が見当たらない。つい先ほどまでの戦闘が嘘のようだった。沙月が鎌をしまい、優星の許へ駆け寄り、手を差し伸べる。
「大丈夫…? 立てる?」
「あ、うん、ありが…ぅっ!?」
「銀条!?」
優星が彼女の手を取ろうとすると、突然胸の辺りをおさえ苦しみだした。何が起きているのかわからず、沙月も彼の体を支える。
(なん、だ…これ…! 熱い!…助け…)
焼けるような激痛が優星を襲い、あまりの痛みに彼の意識は朦朧としていた。目を閉じる直前に、扉が開けられる音と、誰かの足音を聞き、一瞬だけ視界に亜麻色の髪を捉え、優星は意識を手放した。
優星が意識を失った丁度同じ時──…学校から少し離れた鉄塔の上に人影があった。マントのような布で顔まで覆い隠しているその人物は、体格からして男性であろう。常人では考えられないことに、落ちたら一溜まりもない高さにある細い足場で、バランスを崩すことなく、ピタリと立っている。
「…ようやく目覚め始めたか…」
男はぼそりと呟く。先ほどの優星と沙月が襲われ、謎の光が化け物たちを消滅させた一部始終を見ていたようだ。男はマントの奥で見下すように目を細め、さらに呟いた。
「もう一人の"────"…か…」
丁度その時に強めの風が吹き抜け、彼の声が一部かき消された。すると背後から、おぞましい叫び声と共に、優星たちを襲った化け物の一体が、男に襲いかかってきた。
「見つけた…!! メイセ…」
しかし、そう言って彼に襲いかかる手前で、男が右手を横に振り払うと同時に化け物は一瞬のうちに切り刻まれ、はるか下へ崩れ落ちていった。
男は静かに息をついた。そして、振り払った右手を見つめる。右手の掌には、星型の痣のようなものが刻まれていた。
「…お前とは、いつか必ず戦うことになるだろう。"銀条優星"…」
そう言って男は、月明かりを避けるように、夜の街へ紛れ込んでいった。
じりじりと迫ってくる化け物たち、唯一の出口も閉ざされ、逃げ場を失った優星。先ほど拾った鉄パイプもいつの間にか弾かれ、離れたところに転がっていた。もう抵抗する術も無く、ただ後ずさることしかできない。
一方の沙月は、何度も体勢を崩されながらも、必死に化け物を薙ぎ払っていた。
(…これじゃあ彼の許へ行けない…っこのままじゃ…!)
優星に、鋭い得物が近づく。沙月は無我夢中で叫んだ。
「銀条ーーっ!!」
「あぁあ…!!」
もう助からない、二人はそう悟った。しかしその瞬間、屋上一帯を眩い光が包み込んだ。あまりの眩しさに、優星は両腕で視界を覆う。光と共に、耳をつんざくような叫び声があちこちから聞こえ、すぐに静かになった。恐る恐る目を開けると、屋上には、今まで何事もなかったかのように静寂に包まれ、沙月と優星の二人だけしかいなかった。
「…あれ…? さっきの奴らは…?」
辺りを見渡しても、それらしい面影が見当たらない。つい先ほどまでの戦闘が嘘のようだった。沙月が鎌をしまい、優星の許へ駆け寄り、手を差し伸べる。
「大丈夫…? 立てる?」
「あ、うん、ありが…ぅっ!?」
「銀条!?」
優星が彼女の手を取ろうとすると、突然胸の辺りをおさえ苦しみだした。何が起きているのかわからず、沙月も彼の体を支える。
(なん、だ…これ…! 熱い!…助け…)
焼けるような激痛が優星を襲い、あまりの痛みに彼の意識は朦朧としていた。目を閉じる直前に、扉が開けられる音と、誰かの足音を聞き、一瞬だけ視界に亜麻色の髪を捉え、優星は意識を手放した。
優星が意識を失った丁度同じ時──…学校から少し離れた鉄塔の上に人影があった。マントのような布で顔まで覆い隠しているその人物は、体格からして男性であろう。常人では考えられないことに、落ちたら一溜まりもない高さにある細い足場で、バランスを崩すことなく、ピタリと立っている。
「…ようやく目覚め始めたか…」
男はぼそりと呟く。先ほどの優星と沙月が襲われ、謎の光が化け物たちを消滅させた一部始終を見ていたようだ。男はマントの奥で見下すように目を細め、さらに呟いた。
「もう一人の"────"…か…」
丁度その時に強めの風が吹き抜け、彼の声が一部かき消された。すると背後から、おぞましい叫び声と共に、優星たちを襲った化け物の一体が、男に襲いかかってきた。
「見つけた…!! メイセ…」
しかし、そう言って彼に襲いかかる手前で、男が右手を横に振り払うと同時に化け物は一瞬のうちに切り刻まれ、はるか下へ崩れ落ちていった。
男は静かに息をついた。そして、振り払った右手を見つめる。右手の掌には、星型の痣のようなものが刻まれていた。
「…お前とは、いつか必ず戦うことになるだろう。"銀条優星"…」
そう言って男は、月明かりを避けるように、夜の街へ紛れ込んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる