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遠い記憶の再会
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フィーズが鞄の底から取り出したのは、丁寧に布で包まれた、チェーンの無いペンダントトップだった。不思議な七色の輝きを放つ石を、台座の金翼が包み込んでいるようなデザイン。光の当たり方によって輝きを変えるその石は、見る者を魅了した。
リディルはただ静かに、表情一つ変えずにその石を見つめた。しかしラテュルは、何かに気付いたのか、驚いたように目を見開いた。
「? ラテュル?」
「えっ…あぁ、何でもないわっ…それにしても、この石ひとつを狙って、フィーズさんは追われていたんですか?」
ラテュルは慌てた様子を見せたが、すぐに平然を装いフィーズに訊いた。それに対し、フィーズは神妙な面持ちで話し始めた。
「あぁ、なんでもこの石には世界を揺るがす程の力が宿っているみたいでね…」
「世界を揺るがす…!?」
「…何であなたがそんな大層な物を持ち歩いているのよ」
信じがたいフィーズの発言に、すかさずリディルが厳しい口調で質問する。ラテュルが彼に対しどう思っているのかはわからないが、リディルがフィーズの事をあまり快く思っていないことは明確だった。彼女が彼を完全に信じる事ができるのは、まだまだ先になりそうである。
フィーズは、リディルの態度に引くことなく、落ち着いて話した。
「信じてもらえないかもしれないけど、これは俺が子供の時に父から譲り受けた物なんだ。お守りとして持っておけってさ。それでこの歳になるまで大切に持ち歩いていたらこのザマだ。ほんと、何でこんな大層な物を俺に託したんだろうな…あの人は」
「譲り受けた…」
「…あ、そう…今のところはそれで信じてあげるわ。きっと他に理由があるんでしょうけど、こんな所じゃ迂闊に話せないものね」
「ま、まぁな…」
「そうね、もう辺りも暗いから、早く街へ行って、宿を取りましょう。それから今後の事を話し合いましょうよ。フィーズさんもご一緒にどうですか?」
「あぁ、ありがとう」
「…わかったわ」
ラテュルの提案に二人も賛成し、三人で次なる街・ミサ=ラミアへ向かった。しばらく歩いていると、仄かな街灯りが広がり、そのやわらかい光に安堵の息をつくフィーズ。
すると、街へ着くまでの間ずっと、何かが引っ掛かったような表情を浮かべていたラテュルは、先を進むリディルに聞かれないよう、フィーズに耳打ちをした。
「フィーズさん、宿で二人だけでお話ししたいのですが、いいですか?」
「え? い、いいけど…何かあった?」
「その…さっき見せてくださった石のことで…」
「!…わかった。リディルには言わずに、だな」
「はい、お願いします」
ラテュルは心配した表情で、前を歩く妹を見つめた。
リディルはただ静かに、表情一つ変えずにその石を見つめた。しかしラテュルは、何かに気付いたのか、驚いたように目を見開いた。
「? ラテュル?」
「えっ…あぁ、何でもないわっ…それにしても、この石ひとつを狙って、フィーズさんは追われていたんですか?」
ラテュルは慌てた様子を見せたが、すぐに平然を装いフィーズに訊いた。それに対し、フィーズは神妙な面持ちで話し始めた。
「あぁ、なんでもこの石には世界を揺るがす程の力が宿っているみたいでね…」
「世界を揺るがす…!?」
「…何であなたがそんな大層な物を持ち歩いているのよ」
信じがたいフィーズの発言に、すかさずリディルが厳しい口調で質問する。ラテュルが彼に対しどう思っているのかはわからないが、リディルがフィーズの事をあまり快く思っていないことは明確だった。彼女が彼を完全に信じる事ができるのは、まだまだ先になりそうである。
フィーズは、リディルの態度に引くことなく、落ち着いて話した。
「信じてもらえないかもしれないけど、これは俺が子供の時に父から譲り受けた物なんだ。お守りとして持っておけってさ。それでこの歳になるまで大切に持ち歩いていたらこのザマだ。ほんと、何でこんな大層な物を俺に託したんだろうな…あの人は」
「譲り受けた…」
「…あ、そう…今のところはそれで信じてあげるわ。きっと他に理由があるんでしょうけど、こんな所じゃ迂闊に話せないものね」
「ま、まぁな…」
「そうね、もう辺りも暗いから、早く街へ行って、宿を取りましょう。それから今後の事を話し合いましょうよ。フィーズさんもご一緒にどうですか?」
「あぁ、ありがとう」
「…わかったわ」
ラテュルの提案に二人も賛成し、三人で次なる街・ミサ=ラミアへ向かった。しばらく歩いていると、仄かな街灯りが広がり、そのやわらかい光に安堵の息をつくフィーズ。
すると、街へ着くまでの間ずっと、何かが引っ掛かったような表情を浮かべていたラテュルは、先を進むリディルに聞かれないよう、フィーズに耳打ちをした。
「フィーズさん、宿で二人だけでお話ししたいのですが、いいですか?」
「え? い、いいけど…何かあった?」
「その…さっき見せてくださった石のことで…」
「!…わかった。リディルには言わずに、だな」
「はい、お願いします」
ラテュルは心配した表情で、前を歩く妹を見つめた。
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