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説得と葛藤
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テイザーは、ラテュルを後ろ手に隠すように腕を上げた。それを見たフィーズはため息をつき、軽く怒りを見せる。
「おいおい…突然人に得物投げてきてそれかよ…そりゃ確かに自分の女が見知らぬ男と一緒にいるのを見たら誰だって警戒するけどな。まず話を聞こうとしないか? ましてや彼女の妹もいるんだしさ」
「…妹、ね…」
フィーズの言葉に、どこか嘲笑を含んで繰り返すテイザー。ラテュルは慌てて弁明した。
「テイザー様、彼は私たちを護衛してくださったのです。悪い方ではありませんわ。そんな警戒しないでください」
「ラテュル…」
「…あんたはいつもそうやってラテュルの話しか聞かないわよね。他人の話ももう少し聞いたら?」
リディルが久しぶりに口を開くと、テイザーは再び睨みつけた。
「…もういい。どうせあの女が無理やりラテュルを連れ出したんだろう。体も治っていないんだ、早く屋敷へ戻ろう」
「えっ…テイザー様!? 私は…!」
「旅に出たのは、ラテュル本人の意志だぞ」
「…何?」
「だーからちゃんと話を聞いてやれって。ラテュル、泣きそう」
「え…」
フィーズの言う通り、ラテュルの瞳が潤んでいる。それにはさすがのテイザーも弱った様子を見せ、一つ息を吐いた。
「…手短に説明をしてくれ、ラテュル。ただでさえ外にいるってだけでもハラハラしているんだからな…」
「え、あっはい…」
ラテュルが外へ出てきた理由を説明し始めると、フィーズはリディルを連れ、二人からそっと距離を置いた。
「あいつ…何者?」
「…ダーミュラ子爵の一人息子のテイザーよ。ラテュルと婚約してるの」
「あぁ、どこかで見たことあると思ったら…しかしまあ随分、俺らとラテュルとの態度が違くないか? ましてやリディルは姉妹なのに…」
フィーズは声を落としてリディルに訊いた。リディルも渋々答えていたが、フィーズの最後の言葉に、険しい表情を見せた。
「姉妹として見られていないわよ。私」
「え…?」
「あいつだけじゃないわ。ハーティアの住人のほとんどからは…」
「もういい!!」
「っ!?」
無表情で淡々と話すリディルに対し、フィーズは声を荒げて制した。テイザーとラテュルも驚き、特にラテュルは心配そうに二人を見ていた。
「それ以上言わなくていい…すまない…」
悲痛な表情でそう言ったかと思うと、すぐにラテュルたちのもとへ向かって行くフィーズ。リディルは怪訝な顔で彼を見つめ、しばらくその場から動けなかった。
「な、によ…何で…」
(何であいつがあんな顔して謝るのよ…)
リディルの中で彼の表情が妙に引っかかり、後味の悪さだけが残っていた。
「おいおい…突然人に得物投げてきてそれかよ…そりゃ確かに自分の女が見知らぬ男と一緒にいるのを見たら誰だって警戒するけどな。まず話を聞こうとしないか? ましてや彼女の妹もいるんだしさ」
「…妹、ね…」
フィーズの言葉に、どこか嘲笑を含んで繰り返すテイザー。ラテュルは慌てて弁明した。
「テイザー様、彼は私たちを護衛してくださったのです。悪い方ではありませんわ。そんな警戒しないでください」
「ラテュル…」
「…あんたはいつもそうやってラテュルの話しか聞かないわよね。他人の話ももう少し聞いたら?」
リディルが久しぶりに口を開くと、テイザーは再び睨みつけた。
「…もういい。どうせあの女が無理やりラテュルを連れ出したんだろう。体も治っていないんだ、早く屋敷へ戻ろう」
「えっ…テイザー様!? 私は…!」
「旅に出たのは、ラテュル本人の意志だぞ」
「…何?」
「だーからちゃんと話を聞いてやれって。ラテュル、泣きそう」
「え…」
フィーズの言う通り、ラテュルの瞳が潤んでいる。それにはさすがのテイザーも弱った様子を見せ、一つ息を吐いた。
「…手短に説明をしてくれ、ラテュル。ただでさえ外にいるってだけでもハラハラしているんだからな…」
「え、あっはい…」
ラテュルが外へ出てきた理由を説明し始めると、フィーズはリディルを連れ、二人からそっと距離を置いた。
「あいつ…何者?」
「…ダーミュラ子爵の一人息子のテイザーよ。ラテュルと婚約してるの」
「あぁ、どこかで見たことあると思ったら…しかしまあ随分、俺らとラテュルとの態度が違くないか? ましてやリディルは姉妹なのに…」
フィーズは声を落としてリディルに訊いた。リディルも渋々答えていたが、フィーズの最後の言葉に、険しい表情を見せた。
「姉妹として見られていないわよ。私」
「え…?」
「あいつだけじゃないわ。ハーティアの住人のほとんどからは…」
「もういい!!」
「っ!?」
無表情で淡々と話すリディルに対し、フィーズは声を荒げて制した。テイザーとラテュルも驚き、特にラテュルは心配そうに二人を見ていた。
「それ以上言わなくていい…すまない…」
悲痛な表情でそう言ったかと思うと、すぐにラテュルたちのもとへ向かって行くフィーズ。リディルは怪訝な顔で彼を見つめ、しばらくその場から動けなかった。
「な、によ…何で…」
(何であいつがあんな顔して謝るのよ…)
リディルの中で彼の表情が妙に引っかかり、後味の悪さだけが残っていた。
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