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第二幕 黒百合
華の誘惑①
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「あー、それは垢嘗めという妖怪です」
あれほど出てくるなと言っておいたのに……。
そう呟きながら、凛月と共に囲炉裏を囲む華は形のいい額を手で覆い、ため息をつく。
「あふぁにゃふぇ?」
カリカリ。もきゅもきゅ。シャクシャク。
一方で、口いっぱいに白米とたくあんを放り込む凛月。その頬はリスの様にまんまるに膨らんでいる。そんな彼女を見て、咎めるでもなく笑顔を浮かべながら、華は説明を続ける。
「わたくしが来るずっと前から、この屋敷に憑いている妖怪です。風呂桶や浴槽についた人の垢を舐めとる、まぁ無害と言えば無害な妖怪なのですが……」
穏やかな印象だった華が、珍しく不快感を露わにしている。
「確かに害はありません。が、あれは陰険かつ常軌を逸した変態ですので! 凛月様は以後! 絶対に! 近づかない様にしてくださいね!」
「う、うん。わかった」
ずい、と顔をこちらに寄せながら力説する華の迫力に、思わず食事が喉に詰まりそうになる。
だが華に言われずとも、初対面であそこまで悪態をつかれては凛月も話しかける気にはなれない。
「子供、か……」
ここに来る数日前、一人っきりのアパートで誕生日を迎え20歳になった。その時はもう自分は大人なんだ、これで1人で生きていけると思っていた。
でも実際は、全然成長なんてしてないのだと思う。
身体ばかりが大きくなって、中身はあの時のまま。それを一瞬で見抜かれてしまったように感じて、正直母親のことよりもそちらの動揺の方が大きかった。
「凛月様?」
凛月の変化を瞬時に察した優秀なメイドが、様子を伺うように声をかける。
「ううん、なんでもない。大丈夫だよ」
本当にこの人には隠し事ができないなぁと、今度はちょっと困り顔。
「えっと、そうだ。さっきはごめんね、鈴くん」
話題を変えようと、凛月はさっきから華の身体に隠れたままの鈴に声をかけた。
先ほど洗面所で鈴の身体を放り出してしまってから、より一層距離を置かれてしまったのだ。
「もう。鈴、いつまで隠れてるんですか?」
「だって……。は、華おねえちゃんの、となりがいい……」
はい。かわいい。
凛月の頬が、焼きたてのお餅のように垂れていく。
「そうだよ鈴! ほら、風なんてもうこーんなに仲良しなんだから!」
一方、凛月の隣に座っていた風が、ここぞとばかりに姉の風格を見せつけていく。
ギュッと凛月の腕を抱きかかえて離さない。
「嗚呼~」
もう頬だけでなく、触れられている腕から全身とろけそうになる凛月。
そんな凛月を、まるで不審者でも見るかのような怪訝な目つきで華が貫いた。
あれほど出てくるなと言っておいたのに……。
そう呟きながら、凛月と共に囲炉裏を囲む華は形のいい額を手で覆い、ため息をつく。
「あふぁにゃふぇ?」
カリカリ。もきゅもきゅ。シャクシャク。
一方で、口いっぱいに白米とたくあんを放り込む凛月。その頬はリスの様にまんまるに膨らんでいる。そんな彼女を見て、咎めるでもなく笑顔を浮かべながら、華は説明を続ける。
「わたくしが来るずっと前から、この屋敷に憑いている妖怪です。風呂桶や浴槽についた人の垢を舐めとる、まぁ無害と言えば無害な妖怪なのですが……」
穏やかな印象だった華が、珍しく不快感を露わにしている。
「確かに害はありません。が、あれは陰険かつ常軌を逸した変態ですので! 凛月様は以後! 絶対に! 近づかない様にしてくださいね!」
「う、うん。わかった」
ずい、と顔をこちらに寄せながら力説する華の迫力に、思わず食事が喉に詰まりそうになる。
だが華に言われずとも、初対面であそこまで悪態をつかれては凛月も話しかける気にはなれない。
「子供、か……」
ここに来る数日前、一人っきりのアパートで誕生日を迎え20歳になった。その時はもう自分は大人なんだ、これで1人で生きていけると思っていた。
でも実際は、全然成長なんてしてないのだと思う。
身体ばかりが大きくなって、中身はあの時のまま。それを一瞬で見抜かれてしまったように感じて、正直母親のことよりもそちらの動揺の方が大きかった。
「凛月様?」
凛月の変化を瞬時に察した優秀なメイドが、様子を伺うように声をかける。
「ううん、なんでもない。大丈夫だよ」
本当にこの人には隠し事ができないなぁと、今度はちょっと困り顔。
「えっと、そうだ。さっきはごめんね、鈴くん」
話題を変えようと、凛月はさっきから華の身体に隠れたままの鈴に声をかけた。
先ほど洗面所で鈴の身体を放り出してしまってから、より一層距離を置かれてしまったのだ。
「もう。鈴、いつまで隠れてるんですか?」
「だって……。は、華おねえちゃんの、となりがいい……」
はい。かわいい。
凛月の頬が、焼きたてのお餅のように垂れていく。
「そうだよ鈴! ほら、風なんてもうこーんなに仲良しなんだから!」
一方、凛月の隣に座っていた風が、ここぞとばかりに姉の風格を見せつけていく。
ギュッと凛月の腕を抱きかかえて離さない。
「嗚呼~」
もう頬だけでなく、触れられている腕から全身とろけそうになる凛月。
そんな凛月を、まるで不審者でも見るかのような怪訝な目つきで華が貫いた。
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