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02 ー he ー
25-3
しおりを挟む雨の中、帰ってしまったのだろう子供達の声も消え、急にここに二人きりである事に気づく。
振り向きたいけど、向かい合えばさっきみたいに離れて行かれてしまう。
それで、……ああ、確かにこんなだったな…と思い出す。
僕の背中で君がどうしてか泣いて、あの時も、いつかの猫のように逃げてしまうと思って、振り返れなかった。
今も振り向けなくて、君の表情が分からない。
こんなに近くにいるのに、どんな顔してるのか、見えない。
傘が微かに揺れる。
「あの時さ…」
そっと声を掛けてみる。
「ん」
「あの時は、何だかしんどそうだったけど、今はどう?」
「……」
「さっきも、蝉に生まれたらなんて言ってたから…」
ずっと土の中でひとり、長い時間を過ごす者に同化しているような言い方だった。
相変わらず、独りの世界にいて、その谷底から僕はまだ救ってあげられていないんだなと思う。
「気にするな」
ぽつりと声がする。
「俺のことなんかいいよ」
そうしてまた黙る。
どうしていつも、そう思うんだろう。
どうして、自分を蔑ろにするのだろう。
個に嵌ってしまう人達は皆こんな感じだ。
自分をどうでもいいと思い、世界に興味を失う。
そうしてどんどん、内へ内へと入って行って、出て来なくなる。
そうやって、どこにも行けなくなって、何も出来なくなってしまうのだ。
君はこうやって僕に傘をさしてくれるのに、そういう自分に何の価値もないように考えている。
こんな風にしてくれるのは、こんな風にしてもらった事があったからではないのだろうか?
忘れているのであれば思い出して欲しいし、知らないのであれば、知ってもらいたい。
君が意図せずしてくれることで、僕が何度か癒されていることも。
「…この前さ、グラス割ったでしょう。あ、君が割ったのじゃなくて、僕が自分でやったやつの事なんだけど」
「……ああ…ごめ……」
「だから、違うって。そういう話じゃなくてさ。あれ、ほとんど使ってなかったから、仕舞ったまま忘れてて、多分、彼女のものはもう、あれだけだった」
「……」
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