海のこと

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02 ー he ー

30-1

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「ごちそうさま…」

海は、静かに食べ終え、俯いてカップを置く。
パンは手付かずだが、スープは全部食べてくれたみたいだった。

「お代わりいるかい」

首を振る。

「そうか」

自分も黙って、カップの中を平らげ、食器を置く。

「コーヒー淹れたら、飲む?」

また、首を振る。

「そう…」

ふと見ると、海の頭に、小さな羽毛のかけらが付いている。

「海、髪の毛に羽付いてる」

「羽?」

「多分、布団の…」

夏は部屋の温度を下げて、薄手の羽毛布団を被って寝ている。
彼を担ぎ込んで寝かせる時、熱があったので、空調は切って、羽毛布団はそのまま使ってもらった。
頭を振って払うが、静電気なのか、取れない。

「僕が取るよ。髪の毛、いい?」

「……」

黙って頷く。
髪に指先を伸ばすと、酷く首筋を緊張させ、ぐっと固まる。
頭にスッと触れ、羽根のかけらを取り除いた。つまんで、目の前に見せる。

「取れたよ」

そう言って、フッと吹き上げる。羽根はフワフワと舞って、また見上げる海の前髪に落ちてくっついた。
慌てて手を伸ばし取ろうとする、2人の指先が同時に触れた。

「あっ」

ビクリと電気が走ったように、2人とも手を引っ込める。

「悪い」

「…うん…」

少し間を置いて、海は自分で前髪の先に落ちた羽根を取り除く。班長はその指先を目で追いかける。

「……熱、どう。少しはラクになった?」

「あ、うん……」

指先を伸ばしたまま、そろそろと前髪に触れる。

「触っていい」

「……」

拒否を訴えているような、僅かの沈黙。
けれど海は少し間を置いて、黙って頷いた。

「熱、見るだけ」

そう言って、長い前髪を分けてそうっと額に手を当てる。
海は緊張しながら、大人しくその手を受ける。

厚くてしっかりした広い手のひらが、額から瞼まで被って来て、目を閉じる。

そうしているうち、またふわふわして気が遠くなる。
気が遠くなって、催眠術にかかったみたいに、眠くなってしまう…。

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