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03 ー slowly ー
26-4
しおりを挟むコップの中の水にゆらゆらと反射する光を眺めながら、君と話をする。
休暇の時に、君をキャンプに誘おうと思って声をかけた時、「疲れに行ってどうするんだ」とバッサリ断られてしまった。
コイツの事だから、そんな返事が帰って来るのは分かっていたのに、どうしてそんな事に誘おうなんて思ったんだろう。
そう思っていて、今気がつく。
僕は、ただこうして、一緒に夜を過ごしたかったんだ。
焚火でも、ランタンでも、ナイトランプでも何でもいい。
こんなほの灯りの中で、何でもない話をして。
君と、ゆっくりとこんな風にいたかっただけなのかもしれないな。
外は嵐で、どこにも行けない。
僕の部屋で、二人きりの夜だ。
静かで、でも心地の良い沈黙。
夜は、無理に騒がなくても、無理に楽しくしなくても、黙っていてもいい時間だ。
みんな、眠っているから。
静けさを教えてくれる人。
夜が、雨の日が似合う。
静かな部屋に、嵐と空調の音。
「エアコン、どう。寒くないかな」
湿気が篭るから、ドライ運転にして、それほど温度は低く設定していない。それでも、海は寒がりだからどうだろうと思った。
「大丈夫だ、これ借りてるし……あ」
海が急に隣でごそりと身動きをする。
「どうかした?」
「ごめん。俺だけ、毛布」
そう言うと、胸元ぐらいまで被っていた自分の毛布を横にずらして、半分を僕の方に寄越して来る。
「え……」
静かだった心が急にざわざわする。
「いいの?」
「だってこれ、あんたのだ」
「ああ、まあ、そうだけど……」
入って、いいの。
どうしていいかわからないような、むず痒い気分になってしまう。
そんな事して来るとは思ってなかった。
いつもの彼の癖。半分ずつ。
おそらくそれ以上の意味は何も無くて。
女の子にこんな事されたら、それはもう、多少の目的や期待もあるかも知れない。
でもコイツがもちろん、そんな展開を考えている訳もなく、ただ傘みたいに、寒いならあんたも入れば、と言ってるだけだ。(もしこれが逆で、僕の毛布に入れよって言ったら、賭けてもいいけど、たとえ今が冬でも、君は絶対に入って来ない)
「そうだけどさ……どうも……」
照れながら、Tシャツとジャージで、君と同じ毛布に潜り込む。
別に、君みたいに空調が寒い訳じゃない。
けれど、もちろん、断る訳がない。
(何だこの状況……)
少し距離を置いたまま、一緒の毛布に入って、ごそごそと居心地を整える。
何だかちょっと、暑いな。
顔に出てないかな。
夜で、ナイトランプの灯りで、良かった。
外は、まだ嵐の音。
胸の中も、ごうごうと少しうるさかった。
夜半過ぎ。
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