海のこと

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03 ー slowly ー

28-2

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「海、ランタン持って来た。これで大分違……」

灯りを手にしてリビングに戻ると、海がソファに横になっていた。
横になってたと言うか、端に寄って、肘掛けを枕にするようにして、上半身を倒したまま座っている。

「どうした、もう眠い?」

「うん……」

フウ、と吐息混じりの返事。声が変に弱々しい。
さっき、しばらくじっとしていたのは、動けなかったからか。

「もしかして調子悪くなった?」

「ごめん、急に来た。いいよ、あんたはそこ座ってて……」

ソファ全部使って寝ていればいいのに、座ったまま上半身だけ倒してたのは、戻って来る僕の場所を空けておくためだった。馬鹿。

「いいよ、海、貧血は、足を上げて、頭を下げて、血を送るんだ。頭こっち、横になって、肘掛けに足乗っけな」

「そうなのか……俺、普段枕しない方が好きなのは、そういうことだったのかな……」

言われた通りに体勢を変えながら、ふわふわと返事をする。
班長は毛布を直してやって、頭の方にオットマンを引きずってきて腰掛ける。

「毛布、俺だけ使っててごめん……」

「そんな事気にしなくていいよ。エアコンも止まってるし、寒くもない」

一緒の毛布に入れなくなったのは残念だけれど、また今度だ。彼の事だから、きっといつでも毛布を半分明け渡してくれるだろう。何か聞こうと思ってた事も吹っ飛んでしまった。

「……少しぐらい天気が悪くても、もう大丈夫だと思ってたけど、こういう日は、まだ駄目だな」

「僕が緊張させてしまったせいかな」

「あんなの、全然何でもない。天気のせいだ」

いつもの意地張りが少し痛々しい。気を遣わせてしまってる。

「ランタン、明るくていいな」

「眩しくないか」

「真っ暗より全然いい」

しばらく静かに横になる。
雨に濡れていたのを思い出して、ふと風邪ではないか心配になった。

「熱は無いか。少し、触るね」

そう言って前髪を分け、額に手のひらを乗せる。

「ン」

ふっと彼の首筋が緊張して、手が上がりそうになったが、動かなかった。

「……」

手のひらを乗せられたまま大人しくじっとしている。

「熱は無いかな。僕の手の方が温度あるか」

自分の体温と大して差は無いようで安心する。

「あんたの手、いつも温度が高い」

「君が低過ぎなんだ」

「……前に、……」

小さな声がする。

「ん」

「……車の中で、これ、やっただろう」

「あの時、起きてたのか」

小さな額から手を離す。ケンカしてて、海が倒れて、車の中で目を覚さなかった時。

「たぶん」

「寝てると思ったから。……嫌だったか。ごめんな、寝てる時に触って」

「……わかんないけど、……手だ……って思った……冷たくて……」

「……」

「……あの時は、……嫌じゃなかった……」
 
 
 
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