転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

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第12章 マムーチョ辺境侯爵領

第17話 それぞれの動き

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拠点の屋敷に戻るとみんなに祭りでの注意事項を話した。

町の人や屋台などの店主に迷惑を掛けないように言う。特に魔法の使用は禁止して、スキルで景品などは一個までとした。ドラゴン姉妹の大食いもお金を払うように言って、食べ放題などの参加も禁止とした。

みんなは不満そうに口を尖らせていたが、同じことをしたら祭りへは二度と一緒に来ないと言ったら黙って頷いてくれた。

解散するとすぐに女性陣は楽しそうに風呂に行ったので問題はなさそうだ。

今回のお祭りだけは大丈夫だと思うけど……、またやりそうだなぁ。

バルガスはホッとしたように酒を飲み始め、俺はシルモフしていたらバルドーさんが尋ねてきた。

「テンマ様、本当にハルさんを帝国に差し出すつもりだったんですか?」

ドキッとした。

「そ、そんなつもりはないよぉ……。ただハル衛門の意思に任せたいというのもあったからね」

何か言い訳みたいになったなぁ。

焦ってさらに説明する。

「む、向こうに卑怯だと言われて、俺達が無理やりハル衛門の意思を無視しているみたいに言われたから、そうじゃないと証明したかったんだ!」

「まあ、それは言えますねぇ。ハルさんはそれほど役に立つわけでもありません。食い意地が張っていて困ることが多いくらいですから。厄介払いならちょうど良かったのかもしれませんなぁ」

「そのとおり、あっ、いや、違うよぉ!?」

思わず本音が……。

バルドーさんは俺の考えを見透かしてカマをかけてきたのか、ニコニコと笑っていた。

くっ、最近はみんなに俺の考えが読まれている気がするぅ。

誤魔化すついでに気になったことをバルドーさんに聞いてみる。

「そ、それより、なんでローゼン帝国はハル衛門やドラ美ちゃんを国に連れていきたいのかな?」

「リディアさんのことはテンマ様も理由が分かるのではありませんか?」

それは分かっていると思う。ドラ美ちゃんはまさしくドラゴンだから、戦力としても移動手段としても利用価値がある。

俺は声を出さずに頷いた。

「ハルさんはなにか勇者由来の知識があると思っているのかもしれません。後は勇者関連の象徴として利用しようと考えたのでしょう」

「ああ、そういうことかぁ。ハハハハ、彼らはハル衛門を連れて帰ったら、後悔していただろうなぁ」

「そうでしょうなぁ。帝国が欲しがるような知識をハルさんは持っていないでしょう。歴史の真実を知りたければといった程度でしょうなぁ。勇者の話を聞くだけでもマリアやレイモンド殿が大量に食べ物をハルさんに提供していましたよ。ハルさんは食べ物で釣らなければ何もしません。それに先ほどのハルさんの話を聞いた感じだと、帝国にとっては不都合な話を勝手に話してしまいそうですなぁ」

バルドーさんの言うとおりだ。最悪は口封じのために監禁される可能性もある。

象徴としても……。皇帝がミニオークと言いきっていたしなぁ……。

なんだかハル衛門が可哀想だ。

ダメキャラ枠ということでもう少し大切にしようかぁ。

「ですがあの皇帝の態度に、テンマ様はよく我慢しましたなぁ」

「う~ん、言われてみると上から目線で乱暴な感じもしたけど、お年寄りならあんな感じなのかと大して気にしなかったなぁ。ドロテアさんに比べれば我が儘もそれほどではないと思ったのもあるのかなぁ。ハハハハ」

「フフフフ、確かにドロテア様と比べれば許容範囲とも言えますなぁ!」

「それより、他国とはいえあの人は皇帝でしょ。バルドーさんこそ、そんな相手にあんな乱暴な発言をして大丈夫なの?」

俺はそのことも気になっていた。

「う~ん、友好国どころか敵国ともいえる相手です。帝国の皇帝といえども、この国であれば平民と同じかそれ以下の扱いでも良いと私は思います」

微妙な気がするぅ~!

バルドーさんの話も理解はできるが、それでも式典に来ているなら平民以下の扱いはさすがに……。

まあ、今後は皇帝やその関係者には近づかないようにしようと思うのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


バルドーはテンマと話を終えると自分の拠点に戻ってきた。

「何か動きはありましたか?」

バルドーはメンズ隊の黒耳長族の男に尋ねた。

「はい、テンマ様達の後をつけていた連中が三人いましたが、排除して迎賓館に返しておきました」

「手間をかけたようですね。対応も完璧です」

バルドーは笑顔で褒めると彼は頬を赤く染めて喜んだ。

バルドーは帰りがけに念話でメンズ隊に指示を出していた。ローゼン帝国側がテンマの探りを入れてくると警戒していたのである。

今回は相手への脅しの意味を込め、殺さず対処するように指示していた。

バルドーはメンズ隊の中で斥候としての適性の高い者を鍛えて、裏メンズ隊を組織していた。すべてはテンマを守るためである。

「テンマ様はローゼン帝国と揉めたくはないようです。皇帝に忠告をしておきますかねぇ」

バルドーは笑顔でそう呟いた。

その日の深夜、バルドーにより秘かな作戦が行われたのである。


   ◇   ◇   ◇   ◇


朝食を終えると皇帝とグリード侯爵はノーマンの提案を聞く。

昨晩戻ってから皇帝はノーマンの考えを聞いて、どうすべきか考えるようにノーマンに命令していたのである。

「とりあえず不戦の条約だけでもヴィンチザード王国と結ぶべきです!」

グリード侯爵は内心でノーマンのことを弱腰だと思ったが何も言わなかった。バッサンに来てから何度も叱責を受けた彼は、皇帝の意向を理解できるまでは余計なことを言わないようにしたのだ。

「それだけか?」

「条約としてはそれだけで十分です。後は定期外交の約束と勇者関連の知識を交流する約束でよろしいかと」

皇帝はノーマンの考えが何となくわかった。

「一番の目的は勇者の知識の交流というところか……。しかし、不戦の条約までする必要はないのではないか。ヴィンチザード王国から戦争を仕かけてくることはあるまい」

これまでの経緯を考えても街の雰囲気を見ても、ヴィンチザード王国側から戦争を仕かけてくるとは皇帝には思えなかった。それなら勇者関係の約束だけで構わないと考えたのである。

「そのとおりです。ですが陛下もヴィンチザード王国との戦争は時期尚早だとお考えになったのではありませんか。それなら円滑に勇者の知識を手に入れるためにも条約を結んだほうが良いと考えました」

皇帝はなるほどと頷いた。第一の目的は勇者の知識と考えての条約であり、必要な知識が手に入れば不戦の条約など破棄することも可能だ。

「それに、……大賢者や黒耳長族のマッスル殿と敵対行為を避ける意味もあります」

現状では大賢者や黒耳長族のマッスルのことは噂程度しか分かっていない。しかし、その噂の半分でも真実なら、戦争をして危険なのはローゼン帝国側になる。ノーマンはそう考えたのだ。

「だがヴィンチザード王国側の話では、大賢者や黒耳長族のマッスル殿は国とは関係ないような話しぶりだったはずじゃ。それならヴィンチザード王国と不戦条約を結んでも意味がないではないか?」

「その可能性もあります。しかし、ホレック公国滅亡の経緯やマムーチョ辺境侯爵の立場を考えると効果があると判断しました。不戦条約を結んでもローゼン帝国としてのデメリットはありません。それならメリットを考えて不戦の条約を結んだほうが良いと考えたのです」

皇帝はノーマンの考えを聞いて提案を実行に移すように命令した。グリード侯爵にもノーマンの手伝いをするように命令したのであった。
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