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いらっしゃいませ!ようこそ『森の猫さま』へ。
ある日の騒動〜後輩ちゃんが見てる?
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時を戻そう…、 10分ぐらい。
舞華と華のやり取りを休憩室の外でドアの隙間から覗いている人物がいた。
『はぅ~尊いっ、お姉様~パナいっス~♪』なんかバカっぽいなぁ~。
何故かこのカフェの制服でなく、自前のメイド服、なんだかメイド喫茶にありがちなミニスカでコスプレ感アリアリのメイド服の女の子、舞華たちの高校の後輩でもある「足立 まみ」、二人からは「後輩ちゃん」と呼称されてる不思議生物だ。
とにかく休憩室に入りたいので声を掛ける。
『そんな所にいないでお前もあの場に入ればよいではないか?』
『おわっ?!フウナ姐さん、どうもっス。』
『ほら、時間がもったいないぞ。オーイ二人とも交代の時間だぞ。』
フウナ姐さんと呼ばれている彼女もまたメイド服なのだが、後輩ちゃんのそれと違いなんだか本格的なデザインで例えるなら英国な上流階級の御屋敷にいそうなメイドさんの服だ、常連のお客様からは、いつしか「メイド長」と呼ばれている。
姐さんは、後輩ちゃんの手を掴んで、勇ましく休憩室に入って行く。後輩ちゃんは半ば引き摺られながら二人の前に現れた。
『あのぅ、お疲れ様っス。華先輩、舞先輩。』
『お疲れ様、フウちゃん、後輩ちゃん。今すぐフロアに戻るからね。』
『お疲れ様、手なんて繋いで二人はそんなに仲が良かったの?』ちょっと驚く華、
『おう、らぶらぶだぞ。』何か得意げなフウナ、後輩ちゃんは戸惑いながらも嬉しそうだ。
『そろそろ客層が変わるから、気をつけてくださいっス。』それでも大好きな先輩に気になった事を伝える、お昼を過ぎると地元の利用者は昼食を取りに近場の飲食店か自宅に向かう、カフェでは食事の提供はしていない。再度来店することもあるが、大体がパスポートを持っている常連さんだ。親子連れのお客様は余り来ない。
午後から来店するお客様は遠方から、猫カフェ巡りする猛者やデートコースとして立ち寄る一見さんなど、熱意のベクトルがわかりやすい方々だ。
猫カフェだから猫好きだけが訪れる訳では無いのだ。
特に件の都市伝説が、とある猫カフェ紹介ブログに取り上げられたらしく、
『本日は福ちゃんは出勤されてますか?』の問い合わせの電話をするお客様もいる。
時々マナー違反や暴走してしまう利用者もいる。動画撮影は禁止しているのに、動画配信目的でほかのお客様に迷惑をかけた目立ちたがりの困った利用者だ。
開店してから予想外の事が起こり、割とドタバタしているのに、不謹慎だけど楽しすぎる、っと後輩ちゃんは思っていた。
なんとブログでお店を紹介してくれたブロガーさんが不謹慎者の事をフォロアーさんから聞いて、自分の紹介の仕方が悪かったのかもしれないとわざわざ謝罪しに来たからだ、またマナー違反や禁止行為をしないようにとブログに注意喚起文を載せてくれた。
悪い事も有れば良い事も有る、学校では出来ない体験だ。
先輩達を見送り、昼食にする。後輩ちゃんはコンビニ弁当、フウナは猫の顔の形をした可愛いお弁当箱。
『良いだろ、特別に作ってもらった一点物だぞ。』何処となく福ちゃんに似ているお弁当箱、もしかして、
『華先輩がカフェのグッズを作って販売するって言ってたっスけど、弁当箱って攻めてますね?』
『試作品って言っておったぞ、後で使い勝手を教えてくれとも。』
『あら、それで完成じゃないデスか?可愛いけど。』
『可愛い?可愛いとはなんだ、福様の凛々しさがよく顕現されておる名品だぞ。』
『姐さんは福ちゃん推しでしたか?枯れ専っスね。』
『またアダチは分からん事を。』
可愛いお弁当箱のフタを開けると、
『姐さん、それサラダチキンっスか?ダイエットとか無縁な人かと思ってましたよ。』
『そうなのか?久美殿のお手製ゆえ美味しいはずだ。うん、美味い。』
中身は猫用ササミの盛り合わせなので低カロリーだ、強ち間違えていない。
『そういえば先程、先輩達が話してたっスけど、猫が捨てられてたって。』後輩ちゃんは深く追求せずに話題を変える、知らない人の名前が出てきたからだ。のちに「久美殿」が舞華の母親であると知るのは数日後に舞華宅で女子会にお呼ばれした件になる。
『ふんっ、猫が捨てられるなんて、この地ではそう珍しい事では無い、もっとも昔は人目につく場所に置いて拾わそうとする気遣いが有ったが、今はゴミの日に袋に入れゴミ捨て場に置く、人情紙吹雪だ!』具体的だが、色々前例を知っているから、半ば呆れているらしい。
『捨てるくらいなら自分にくださいっス~!ココでバイト始めてから猫さんが大好きになったっス。だから許せないっス!』
『そっか、なら暫く待っておれ。近々可愛い子猫が産まれる筈だ。』
『えっ本当でスか?そんな予定が有るっスか?絶対デスよ?言チ取リましたよ。』
思いかけずニャンコゲット!に嬉しい後輩ちゃんだが、何やら含み笑いしているフウナ姐さんがあやしい。
『ああ、約束だ。お前なら大切な子猫を託しても良いぞ。この服の礼も未だだしな。』服とは英国風メイド服の事らしい、もとは後輩ちゃんが予備に用意したモノでバイト面接の時にミニスカメイド服を持ち込んで皆に見てもらうも、予備服を見たフウナが面白がって自分で着てしまったのだ、しかもあつらえた様にサイズピッタリ。
それに自分には少し大きいサイズを用意して後でパットをマシマシする予定だったのに、
『腹回りが余るがその分腹が膨れるな。』とか余裕綽々発言をして後輩ちゃんの心を折った。それからは「姐さん」呼びされてる。
『そういえば、近々譲渡会をするらしいっスよ。七神さんが社員さんに日程の相談をしてたデスよ。』
『そうか、捨てる神あらば拾う神ありだな。』
『なんでも、お世話になっている保護猫ボランティアの団体さんがいつも譲渡会に場所を貸してくれるショッピングモールが急に場所の提供を打ち切られたとかで、予定を早められないか打診があったそうスよ。』
『拾う神が捨てられたか⁈』
『なんでもショッピングモールの上の方が日曜日にあれだけのスペースを無償で貸す意味が無いとかで、何か屋台でも出して物販した方が利益が出るからと、一応表向きは感染防止対策の至極真っ当な建て前デシたけど。』 建て前はどんな内容やら…
『世知辛いのー。儲かってないのか?そのショッピングさんは。』
『最近、有名な会社の傘下になったみたいっス。子会社化って事だと思うっス。そこの指示だとか、七神さん情報っス。』なら間違い無いだろう、まさか有名な会社は山王院のとか言わない事を祈っているフウナ、そこに
『隣り街に大っきなホームセンターがあるっスよね、アレが親会社っス。』よし、関係ないな。
『人手がいりそうだなぁ、臨時バイトでも雇うのか?』また面白いヤツが入るやも?と、かなり面白い人物本人は考えていた。
『ボランティアの方々、全面協力だと思うっスよ。基本、猫さんと上手く付き合っていける人でないとムズいっスから。』
『お前が言うか?最初子猫たちに嫌われておった癖に、クスクス。』
『それは言わ無いでデス!今はめっちゃ仲良しっス。』原因は後輩ちゃんが使っていた制汗スプレー、舞華に指摘され別のモノに変える。
なかなかクセ強な口調で話しているが、これがフロアに出ると
『いらっしゃいませ、お客様。』
と二人ともメイド口調になる、キャラに成り切る、設定人物を演じ切る、そうことらしい。
フウナ姐さんは完璧に演じていて、常連客から「メイド長」と呼ばれている。もともと何かに化けるのは本職みたいなものだし。
ちなみに、猫カフェなので
『おかえりなさいませ、ご主人様♡』は無い、無いのだ。
『あの、フウナ姐さん?』
『うん、なんだ?』
『先程の仔猫の話しですが、いつぐらいでですか?御出産は。お母さん猫さんはやっぱり舞華先輩のお宅の猫さんなんデスか?』
何故かフウナが自分のお腹を撫でながら、
『うーん、まだはっきり分からんが、まぁひと月ってところだと思うぞ、ちゃんと分かったら真っ先に教えてやるから。』
『今から楽しみっス!』
何やら気になる所もありますが、彼女達の楽しい休憩時間は過ぎて行くのだそう。
では、今度はすこし時を進めよう。
数時間後、後輩ちゃんの家。
台所で夕飯の準備をしている母親に話しかける後輩ちゃんこと足立まみ、
『母さん、ちょっといい?…お願…相談が有るの。』
娘が難しい顔をして、相談事とは何かしら? バイトしてるからお金の話しではないと思うけど。
『まみが相談なんて珍しいわね、どうしたの?』
『あのね、猫飼っちゃダメかな?』
『猫?猫ってぬいぐるみとかじゃなく生きてる猫?』猫カフェでバイトしてるのに?
『実はね、バイトしてるカフェで仲良くなった人のウチで今後仔猫が生まれるの。』なるほど、今から生まれた仔猫をもらって欲しいと頼まれたか、仲良くしてくれてるバイト友達だから断れないのだろう、母親はそう思って聞いた。
『実は最近、猫カフェに猫を捨てる人がいて、あっ、でもウチのお店はそうゆうの無いから安心して。』子供の頃から引っ込み思案な子で友達を作るのが苦手だからバイトなんてと思っていたが、義姉の影響かしら。
『それ母さんもテレビで見た事ある、ペットショップで衝動買いして結局育てる事が出来ないからって。でも捨てた人、直ぐ分かったって言っていた様な…?』
『猫の首の後ろにすごい小さいマイクロチップが入っていて、それに色々記録されてるの、その子の誕生日とか、飼い主さんの連絡先とか。』
『それなのに捨てちゃうの、呆れちゃう、本当に可愛いそうね、猫ちゃん。ん?まさかその猫ちゃんを引き取ってあげるの?』
『あれ?ううん、ちがうよ。そうじゃないよ、その人と休憩時間にその話題になって、私が「捨てるくらいなら私が欲しい~!」って言ってたら、もうすぐ生まれるからどうって話しになって。』
『じゃあ、もう貰う事になっているの?』無理にお願いされた訳では無いだろうけど、しかし今ウチには。
『私が責任持って面倒見らから、お願いします、お母さん。』母親もいずれは犬とか猫を飼うのも良いと思っていたが今はちょっと、
『何々、何の話し?』
『あれ、お姉ちゃん、いたの?』
『いたのとは何だ、冷たいなぁ~
妹よ。お姉ちゃんは今日一日中、美由紀のお守りでクタクタなのだぞ、もっと労われ~。』
『いたわれー。』
『美由紀~、こっちおいで~。お姉ちゃんに遊んでもらって楽しかった~?』よちよち歩いて近づいて来た幼い妹を抱きしめる後輩ちゃんこと次女のまみ。
長女の恵理子は再婚した主人の連れ子だけど母親として慕ってくれているし、義理の妹のまみとは本当の姉妹の様に仲良く、週末にはよく一緒に出かけて、内気で閉じ籠りがちなあの子を連れ出してくれた。姉の影響か趣味も増え、以前より活発な娘になった。
数年前に思い掛けず三女の美由紀を授かり、広めの一戸建てに越して来たのでいずれはペットを飼うのも良いかと思っていたが、今はまだ美由紀が幼い、子猫なんてちゃんと面倒見れるのか心配だ。
『猫がどうとか聞こえたけど、何何?猫飼うの?』
大学卒業後、服飾関係の会社に就職してくれて、あとは結婚と安心していたのに、最近友達と古着屋を始めて会社を辞めてしまったのだ。お客の注文で衣装とかも作っているらしく、中々好評で予約が切れないらしい。実際に妹たちの服も作ったりもするがたしかに腕は良い様だ。
『子猫を貰わないか、お友達に言われたんだって、まだ産まれていないけど。』母親があえて未だ決まっていない風に話すと、
『えっいいじゃない、子猫。っで友達とはバイトしてるカフェの人?』
長女が友達に興味を示す、妹が友達が少ないので心配している姉としてはそちらも気になる。
『お姉ちゃんが作ってくれた例の服、ピッタリだった人。フウナさんって言って店長のご親戚の方みたい。』
それは聞いて無い、店長のご親戚とは、変な人では無いだろう。
『ねこさん?ね、ねこさんは?』
美由紀ちゃんが猫に興味を持ってしまった様子だ、うまく気を逸らさないとグズってしまう。
『ねぇ美由紀、猫さん好き?』
『ねこさん、モコモコしてるから好き。ねこさんどこ、おふとんのところ?』、以前何処からかやって来た猫が、干してふかふかになった布団を庭に面した風通しの良い居間に敷いて、美由紀をお昼寝させていた時に、
いつの間かとなりで一緒にお昼寝を始めてしまい、それから時々ふらりとこのねこさんが訪れる様になった。
美由紀も目を覚ました時、初めて側で猫を見てびっくりしたもののすっかり猫が気に入ったらしい。
人に慣れているようで、近所の飼い猫かそれともただの迷い猫か、っと様子を見ていたが、ひと月もしないうちに来なくなってしまった。
居間でお昼寝すればねこさんが一緒にお昼寝してくれると美由紀は思っているらしい、進んでお昼寝してくれている。
ただ訪れていたのは、大人の猫だ。
子猫、可愛いだろうと思うのだが一から育てるのだ、育児と子猫の世話、大丈夫だろうか?
『おねえちゃん、おふとん、おふとんだして、ねこさんねんね、できないでショ!』~ん、どうしたものか、母親もツライのだ。
『あのね、美由紀。』
『おねえちゃん、おふとんは?』
『美由紀、ねこさんに会いたい?』
『あいたぁい。ねこさんは?』
『猫さんはね、猫さんのおウチに
いるの。猫さんのお父さんとお母さんとお姉ちゃんとお兄ちゃんとお爺ちゃんとお婆ちゃんとたくさんのお友達と一緒にいるの。』そんな絵本があるのかしら?次女に任せてみよう。
『ねこさん、たくさんいるね。さびしくないね。』
『美由紀がいい子だから今度、ねこさんのおウチに連れて行ってあげるね。』次女は自分がバイトしてるカフェに美由紀を連れて行くと言う事だろう、
けど何故か次女が泣きそうな表情をしている。
多分、沢山の猫がいるから美由紀のねこさんは寂しく無いと、
ねこさんが寂しがらないようにお昼寝をしていたのか!
優しい妹の言葉に感動したらしい。
『ほんとーおねえちゃん、おやくそくね。』
とりあえず子猫の件は保留の様な形になったが、おそらく美由紀の為、子猫はお迎えする事になりそうだ。
帰ってきたら主人にも相談しよう、おそらく快諾してくれるだろう。
『いいな~、おねえちゃんもねこさんのおウチ、い、き、たい、な~!まみおねえちゃん♡。』
『お姉ちゃんのお店、「森の猫さま」のご近所でしょ。その気になれば毎日来れるのでは?』
『冷たい!冷たいよ!まぁちゃん、ちっちゃい時はお姉ちゃん大好きっ子だったのに~!』
『別に今でもお姉ちゃん大好きだけど、そこは可愛い妹の為にお店の売り上げに貢献してね。割り引きチケットあげたでしょ。』
『毎日は割と地味に応えるのよ、財布に。』
娘たちの会話に苦笑する母親もその猫カフェに行ってみようと思っていた。 割り引きチケットをもらって。
同時刻、場所を変え、
北代さんち。
何やら庭で優斗が飯盒で飯を炊いている、二葉とリリは肉や家庭菜園で収穫した野菜を串に刺してBBQの準備をしている。実は最近、物置の整理をしていると祖父が使っていた登山道具が出て来た。
最近のキャンプブームでアウトドア用品が様々取り上げられているが、祖父が使っていたのは昭和の真ん中辺り、型が古い。
組み立て準備がいちいち面倒臭い、が、それがいい!
祖父に使い方を教わり庭でキャンプ気分を楽しんでいた。灯油用バーナーやランタン、一斗缶で自作した炭コンロ、火起こし装置もあり物で自作した。来年度は中学生な優斗はかなり逞しくなったのかも。
ちなみに二葉嬢のお胸は年相応のやや奥床しいサイズ、ロシア系クォーターのリリとは比べてはいけない、そんな事はシベリアの永久凍土のように硬い二人の友情に亀裂を入れる事になる。
二人で優斗を取り合いになるかと思いきや、二人で優斗のお嫁さんになると言う純粋かつ壮大な野望を秘めている。
これがのちに山代学園の伝説の二人、
「二つの華」(ツインズフラワー)の再来、
「二つの華乙女」(ツインズフラワーツヴァイ)(笑笑笑笑笑)の誕生らしい。
誰か言ったのか、ネーミングセンス皆無だ。
室内、台所では失敗した時の為に焼きおにぎり等準備しているラスボスこと母親の久美がいる。
すると舞華たちより一足先にふうなが帰って来た。
『へぇ~、美味そうだな。』
『あら、ふうちゃん、おかえり。』
『弁当ありがと、美味かったよ。』っと言ってお弁当箱を取り出して中を見せた、綺麗に空っぽ、洗ってある。
『お礼言われるモノじゃないんだけどね。』 い●ばさんバンザイ。
『うーん、どうしようかの~。』
『ん、何かあった?まさかの正体バレた?』
『いや、そう、正体を明かしても良いと思う者ならいる、その事もやや関わっている、聞いてくれまいか?久美姉さま。』
あまり見ないふうなの真剣な顔、おにぎり握っている場合じゃないですね。
『何でも言って、貴女の事は私たち家族が全力全開で守るから。』
『ありがとう、姉様。実は…。』
『実は?』ドキドキ。
『身籠った。』
『……おめでとう、エッ本当に!』
『うむ、諦めておった、あの方の稚児を授かったのだ。本当に嬉しい…。』ふうな自身徐々に目に涙が出て、久美も母として同じ喜びを知る、こちらも感極まり涙目だ。
『…で、父親は福ちゃんでいいのかしら、他思いつかないけど。』
『えっ、本当か!』
『あ、あなた、おかえり。』
『あ、あるじ、おかえり。』ハモった。
『ん、これは家族会議だな。』
舞華と華のやり取りを休憩室の外でドアの隙間から覗いている人物がいた。
『はぅ~尊いっ、お姉様~パナいっス~♪』なんかバカっぽいなぁ~。
何故かこのカフェの制服でなく、自前のメイド服、なんだかメイド喫茶にありがちなミニスカでコスプレ感アリアリのメイド服の女の子、舞華たちの高校の後輩でもある「足立 まみ」、二人からは「後輩ちゃん」と呼称されてる不思議生物だ。
とにかく休憩室に入りたいので声を掛ける。
『そんな所にいないでお前もあの場に入ればよいではないか?』
『おわっ?!フウナ姐さん、どうもっス。』
『ほら、時間がもったいないぞ。オーイ二人とも交代の時間だぞ。』
フウナ姐さんと呼ばれている彼女もまたメイド服なのだが、後輩ちゃんのそれと違いなんだか本格的なデザインで例えるなら英国な上流階級の御屋敷にいそうなメイドさんの服だ、常連のお客様からは、いつしか「メイド長」と呼ばれている。
姐さんは、後輩ちゃんの手を掴んで、勇ましく休憩室に入って行く。後輩ちゃんは半ば引き摺られながら二人の前に現れた。
『あのぅ、お疲れ様っス。華先輩、舞先輩。』
『お疲れ様、フウちゃん、後輩ちゃん。今すぐフロアに戻るからね。』
『お疲れ様、手なんて繋いで二人はそんなに仲が良かったの?』ちょっと驚く華、
『おう、らぶらぶだぞ。』何か得意げなフウナ、後輩ちゃんは戸惑いながらも嬉しそうだ。
『そろそろ客層が変わるから、気をつけてくださいっス。』それでも大好きな先輩に気になった事を伝える、お昼を過ぎると地元の利用者は昼食を取りに近場の飲食店か自宅に向かう、カフェでは食事の提供はしていない。再度来店することもあるが、大体がパスポートを持っている常連さんだ。親子連れのお客様は余り来ない。
午後から来店するお客様は遠方から、猫カフェ巡りする猛者やデートコースとして立ち寄る一見さんなど、熱意のベクトルがわかりやすい方々だ。
猫カフェだから猫好きだけが訪れる訳では無いのだ。
特に件の都市伝説が、とある猫カフェ紹介ブログに取り上げられたらしく、
『本日は福ちゃんは出勤されてますか?』の問い合わせの電話をするお客様もいる。
時々マナー違反や暴走してしまう利用者もいる。動画撮影は禁止しているのに、動画配信目的でほかのお客様に迷惑をかけた目立ちたがりの困った利用者だ。
開店してから予想外の事が起こり、割とドタバタしているのに、不謹慎だけど楽しすぎる、っと後輩ちゃんは思っていた。
なんとブログでお店を紹介してくれたブロガーさんが不謹慎者の事をフォロアーさんから聞いて、自分の紹介の仕方が悪かったのかもしれないとわざわざ謝罪しに来たからだ、またマナー違反や禁止行為をしないようにとブログに注意喚起文を載せてくれた。
悪い事も有れば良い事も有る、学校では出来ない体験だ。
先輩達を見送り、昼食にする。後輩ちゃんはコンビニ弁当、フウナは猫の顔の形をした可愛いお弁当箱。
『良いだろ、特別に作ってもらった一点物だぞ。』何処となく福ちゃんに似ているお弁当箱、もしかして、
『華先輩がカフェのグッズを作って販売するって言ってたっスけど、弁当箱って攻めてますね?』
『試作品って言っておったぞ、後で使い勝手を教えてくれとも。』
『あら、それで完成じゃないデスか?可愛いけど。』
『可愛い?可愛いとはなんだ、福様の凛々しさがよく顕現されておる名品だぞ。』
『姐さんは福ちゃん推しでしたか?枯れ専っスね。』
『またアダチは分からん事を。』
可愛いお弁当箱のフタを開けると、
『姐さん、それサラダチキンっスか?ダイエットとか無縁な人かと思ってましたよ。』
『そうなのか?久美殿のお手製ゆえ美味しいはずだ。うん、美味い。』
中身は猫用ササミの盛り合わせなので低カロリーだ、強ち間違えていない。
『そういえば先程、先輩達が話してたっスけど、猫が捨てられてたって。』後輩ちゃんは深く追求せずに話題を変える、知らない人の名前が出てきたからだ。のちに「久美殿」が舞華の母親であると知るのは数日後に舞華宅で女子会にお呼ばれした件になる。
『ふんっ、猫が捨てられるなんて、この地ではそう珍しい事では無い、もっとも昔は人目につく場所に置いて拾わそうとする気遣いが有ったが、今はゴミの日に袋に入れゴミ捨て場に置く、人情紙吹雪だ!』具体的だが、色々前例を知っているから、半ば呆れているらしい。
『捨てるくらいなら自分にくださいっス~!ココでバイト始めてから猫さんが大好きになったっス。だから許せないっス!』
『そっか、なら暫く待っておれ。近々可愛い子猫が産まれる筈だ。』
『えっ本当でスか?そんな予定が有るっスか?絶対デスよ?言チ取リましたよ。』
思いかけずニャンコゲット!に嬉しい後輩ちゃんだが、何やら含み笑いしているフウナ姐さんがあやしい。
『ああ、約束だ。お前なら大切な子猫を託しても良いぞ。この服の礼も未だだしな。』服とは英国風メイド服の事らしい、もとは後輩ちゃんが予備に用意したモノでバイト面接の時にミニスカメイド服を持ち込んで皆に見てもらうも、予備服を見たフウナが面白がって自分で着てしまったのだ、しかもあつらえた様にサイズピッタリ。
それに自分には少し大きいサイズを用意して後でパットをマシマシする予定だったのに、
『腹回りが余るがその分腹が膨れるな。』とか余裕綽々発言をして後輩ちゃんの心を折った。それからは「姐さん」呼びされてる。
『そういえば、近々譲渡会をするらしいっスよ。七神さんが社員さんに日程の相談をしてたデスよ。』
『そうか、捨てる神あらば拾う神ありだな。』
『なんでも、お世話になっている保護猫ボランティアの団体さんがいつも譲渡会に場所を貸してくれるショッピングモールが急に場所の提供を打ち切られたとかで、予定を早められないか打診があったそうスよ。』
『拾う神が捨てられたか⁈』
『なんでもショッピングモールの上の方が日曜日にあれだけのスペースを無償で貸す意味が無いとかで、何か屋台でも出して物販した方が利益が出るからと、一応表向きは感染防止対策の至極真っ当な建て前デシたけど。』 建て前はどんな内容やら…
『世知辛いのー。儲かってないのか?そのショッピングさんは。』
『最近、有名な会社の傘下になったみたいっス。子会社化って事だと思うっス。そこの指示だとか、七神さん情報っス。』なら間違い無いだろう、まさか有名な会社は山王院のとか言わない事を祈っているフウナ、そこに
『隣り街に大っきなホームセンターがあるっスよね、アレが親会社っス。』よし、関係ないな。
『人手がいりそうだなぁ、臨時バイトでも雇うのか?』また面白いヤツが入るやも?と、かなり面白い人物本人は考えていた。
『ボランティアの方々、全面協力だと思うっスよ。基本、猫さんと上手く付き合っていける人でないとムズいっスから。』
『お前が言うか?最初子猫たちに嫌われておった癖に、クスクス。』
『それは言わ無いでデス!今はめっちゃ仲良しっス。』原因は後輩ちゃんが使っていた制汗スプレー、舞華に指摘され別のモノに変える。
なかなかクセ強な口調で話しているが、これがフロアに出ると
『いらっしゃいませ、お客様。』
と二人ともメイド口調になる、キャラに成り切る、設定人物を演じ切る、そうことらしい。
フウナ姐さんは完璧に演じていて、常連客から「メイド長」と呼ばれている。もともと何かに化けるのは本職みたいなものだし。
ちなみに、猫カフェなので
『おかえりなさいませ、ご主人様♡』は無い、無いのだ。
『あの、フウナ姐さん?』
『うん、なんだ?』
『先程の仔猫の話しですが、いつぐらいでですか?御出産は。お母さん猫さんはやっぱり舞華先輩のお宅の猫さんなんデスか?』
何故かフウナが自分のお腹を撫でながら、
『うーん、まだはっきり分からんが、まぁひと月ってところだと思うぞ、ちゃんと分かったら真っ先に教えてやるから。』
『今から楽しみっス!』
何やら気になる所もありますが、彼女達の楽しい休憩時間は過ぎて行くのだそう。
では、今度はすこし時を進めよう。
数時間後、後輩ちゃんの家。
台所で夕飯の準備をしている母親に話しかける後輩ちゃんこと足立まみ、
『母さん、ちょっといい?…お願…相談が有るの。』
娘が難しい顔をして、相談事とは何かしら? バイトしてるからお金の話しではないと思うけど。
『まみが相談なんて珍しいわね、どうしたの?』
『あのね、猫飼っちゃダメかな?』
『猫?猫ってぬいぐるみとかじゃなく生きてる猫?』猫カフェでバイトしてるのに?
『実はね、バイトしてるカフェで仲良くなった人のウチで今後仔猫が生まれるの。』なるほど、今から生まれた仔猫をもらって欲しいと頼まれたか、仲良くしてくれてるバイト友達だから断れないのだろう、母親はそう思って聞いた。
『実は最近、猫カフェに猫を捨てる人がいて、あっ、でもウチのお店はそうゆうの無いから安心して。』子供の頃から引っ込み思案な子で友達を作るのが苦手だからバイトなんてと思っていたが、義姉の影響かしら。
『それ母さんもテレビで見た事ある、ペットショップで衝動買いして結局育てる事が出来ないからって。でも捨てた人、直ぐ分かったって言っていた様な…?』
『猫の首の後ろにすごい小さいマイクロチップが入っていて、それに色々記録されてるの、その子の誕生日とか、飼い主さんの連絡先とか。』
『それなのに捨てちゃうの、呆れちゃう、本当に可愛いそうね、猫ちゃん。ん?まさかその猫ちゃんを引き取ってあげるの?』
『あれ?ううん、ちがうよ。そうじゃないよ、その人と休憩時間にその話題になって、私が「捨てるくらいなら私が欲しい~!」って言ってたら、もうすぐ生まれるからどうって話しになって。』
『じゃあ、もう貰う事になっているの?』無理にお願いされた訳では無いだろうけど、しかし今ウチには。
『私が責任持って面倒見らから、お願いします、お母さん。』母親もいずれは犬とか猫を飼うのも良いと思っていたが今はちょっと、
『何々、何の話し?』
『あれ、お姉ちゃん、いたの?』
『いたのとは何だ、冷たいなぁ~
妹よ。お姉ちゃんは今日一日中、美由紀のお守りでクタクタなのだぞ、もっと労われ~。』
『いたわれー。』
『美由紀~、こっちおいで~。お姉ちゃんに遊んでもらって楽しかった~?』よちよち歩いて近づいて来た幼い妹を抱きしめる後輩ちゃんこと次女のまみ。
長女の恵理子は再婚した主人の連れ子だけど母親として慕ってくれているし、義理の妹のまみとは本当の姉妹の様に仲良く、週末にはよく一緒に出かけて、内気で閉じ籠りがちなあの子を連れ出してくれた。姉の影響か趣味も増え、以前より活発な娘になった。
数年前に思い掛けず三女の美由紀を授かり、広めの一戸建てに越して来たのでいずれはペットを飼うのも良いかと思っていたが、今はまだ美由紀が幼い、子猫なんてちゃんと面倒見れるのか心配だ。
『猫がどうとか聞こえたけど、何何?猫飼うの?』
大学卒業後、服飾関係の会社に就職してくれて、あとは結婚と安心していたのに、最近友達と古着屋を始めて会社を辞めてしまったのだ。お客の注文で衣装とかも作っているらしく、中々好評で予約が切れないらしい。実際に妹たちの服も作ったりもするがたしかに腕は良い様だ。
『子猫を貰わないか、お友達に言われたんだって、まだ産まれていないけど。』母親があえて未だ決まっていない風に話すと、
『えっいいじゃない、子猫。っで友達とはバイトしてるカフェの人?』
長女が友達に興味を示す、妹が友達が少ないので心配している姉としてはそちらも気になる。
『お姉ちゃんが作ってくれた例の服、ピッタリだった人。フウナさんって言って店長のご親戚の方みたい。』
それは聞いて無い、店長のご親戚とは、変な人では無いだろう。
『ねこさん?ね、ねこさんは?』
美由紀ちゃんが猫に興味を持ってしまった様子だ、うまく気を逸らさないとグズってしまう。
『ねぇ美由紀、猫さん好き?』
『ねこさん、モコモコしてるから好き。ねこさんどこ、おふとんのところ?』、以前何処からかやって来た猫が、干してふかふかになった布団を庭に面した風通しの良い居間に敷いて、美由紀をお昼寝させていた時に、
いつの間かとなりで一緒にお昼寝を始めてしまい、それから時々ふらりとこのねこさんが訪れる様になった。
美由紀も目を覚ました時、初めて側で猫を見てびっくりしたもののすっかり猫が気に入ったらしい。
人に慣れているようで、近所の飼い猫かそれともただの迷い猫か、っと様子を見ていたが、ひと月もしないうちに来なくなってしまった。
居間でお昼寝すればねこさんが一緒にお昼寝してくれると美由紀は思っているらしい、進んでお昼寝してくれている。
ただ訪れていたのは、大人の猫だ。
子猫、可愛いだろうと思うのだが一から育てるのだ、育児と子猫の世話、大丈夫だろうか?
『おねえちゃん、おふとん、おふとんだして、ねこさんねんね、できないでショ!』~ん、どうしたものか、母親もツライのだ。
『あのね、美由紀。』
『おねえちゃん、おふとんは?』
『美由紀、ねこさんに会いたい?』
『あいたぁい。ねこさんは?』
『猫さんはね、猫さんのおウチに
いるの。猫さんのお父さんとお母さんとお姉ちゃんとお兄ちゃんとお爺ちゃんとお婆ちゃんとたくさんのお友達と一緒にいるの。』そんな絵本があるのかしら?次女に任せてみよう。
『ねこさん、たくさんいるね。さびしくないね。』
『美由紀がいい子だから今度、ねこさんのおウチに連れて行ってあげるね。』次女は自分がバイトしてるカフェに美由紀を連れて行くと言う事だろう、
けど何故か次女が泣きそうな表情をしている。
多分、沢山の猫がいるから美由紀のねこさんは寂しく無いと、
ねこさんが寂しがらないようにお昼寝をしていたのか!
優しい妹の言葉に感動したらしい。
『ほんとーおねえちゃん、おやくそくね。』
とりあえず子猫の件は保留の様な形になったが、おそらく美由紀の為、子猫はお迎えする事になりそうだ。
帰ってきたら主人にも相談しよう、おそらく快諾してくれるだろう。
『いいな~、おねえちゃんもねこさんのおウチ、い、き、たい、な~!まみおねえちゃん♡。』
『お姉ちゃんのお店、「森の猫さま」のご近所でしょ。その気になれば毎日来れるのでは?』
『冷たい!冷たいよ!まぁちゃん、ちっちゃい時はお姉ちゃん大好きっ子だったのに~!』
『別に今でもお姉ちゃん大好きだけど、そこは可愛い妹の為にお店の売り上げに貢献してね。割り引きチケットあげたでしょ。』
『毎日は割と地味に応えるのよ、財布に。』
娘たちの会話に苦笑する母親もその猫カフェに行ってみようと思っていた。 割り引きチケットをもらって。
同時刻、場所を変え、
北代さんち。
何やら庭で優斗が飯盒で飯を炊いている、二葉とリリは肉や家庭菜園で収穫した野菜を串に刺してBBQの準備をしている。実は最近、物置の整理をしていると祖父が使っていた登山道具が出て来た。
最近のキャンプブームでアウトドア用品が様々取り上げられているが、祖父が使っていたのは昭和の真ん中辺り、型が古い。
組み立て準備がいちいち面倒臭い、が、それがいい!
祖父に使い方を教わり庭でキャンプ気分を楽しんでいた。灯油用バーナーやランタン、一斗缶で自作した炭コンロ、火起こし装置もあり物で自作した。来年度は中学生な優斗はかなり逞しくなったのかも。
ちなみに二葉嬢のお胸は年相応のやや奥床しいサイズ、ロシア系クォーターのリリとは比べてはいけない、そんな事はシベリアの永久凍土のように硬い二人の友情に亀裂を入れる事になる。
二人で優斗を取り合いになるかと思いきや、二人で優斗のお嫁さんになると言う純粋かつ壮大な野望を秘めている。
これがのちに山代学園の伝説の二人、
「二つの華」(ツインズフラワー)の再来、
「二つの華乙女」(ツインズフラワーツヴァイ)(笑笑笑笑笑)の誕生らしい。
誰か言ったのか、ネーミングセンス皆無だ。
室内、台所では失敗した時の為に焼きおにぎり等準備しているラスボスこと母親の久美がいる。
すると舞華たちより一足先にふうなが帰って来た。
『へぇ~、美味そうだな。』
『あら、ふうちゃん、おかえり。』
『弁当ありがと、美味かったよ。』っと言ってお弁当箱を取り出して中を見せた、綺麗に空っぽ、洗ってある。
『お礼言われるモノじゃないんだけどね。』 い●ばさんバンザイ。
『うーん、どうしようかの~。』
『ん、何かあった?まさかの正体バレた?』
『いや、そう、正体を明かしても良いと思う者ならいる、その事もやや関わっている、聞いてくれまいか?久美姉さま。』
あまり見ないふうなの真剣な顔、おにぎり握っている場合じゃないですね。
『何でも言って、貴女の事は私たち家族が全力全開で守るから。』
『ありがとう、姉様。実は…。』
『実は?』ドキドキ。
『身籠った。』
『……おめでとう、エッ本当に!』
『うむ、諦めておった、あの方の稚児を授かったのだ。本当に嬉しい…。』ふうな自身徐々に目に涙が出て、久美も母として同じ喜びを知る、こちらも感極まり涙目だ。
『…で、父親は福ちゃんでいいのかしら、他思いつかないけど。』
『えっ、本当か!』
『あ、あなた、おかえり。』
『あ、あるじ、おかえり。』ハモった。
『ん、これは家族会議だな。』
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