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いらっしゃいませ!ようこそ『森の猫さま』へ。
止まらない、スレ違い、修正作業。
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なんだか、本日は濃い一日でした。閉店作業が終わった頃にはどっぷり日が暮れて、少しだけ長居をしたと言って地下のお店を閉めたお父さんと一緒に家路を歩きました。
『お疲れ様、お父さん。』
『あぁ、舞華もお疲れさん。でもな~お父さんも舞華が二葉みたいなコス、着ているの見たかったなー!』
『あはっ?い、いつかね!そぅそぅハロウィンとか?』これは正しい父と娘の会話なのかな?
でもちょっと楽しい。
割とウチは親子仲は良い方かな?特に「ウザい」とか「汚い、クサい」とか思わない。
でも「大きくなったらお父さんと結婚する。」とか「お父さんみたいな人がタイプ」とかは、
絶対無い!だってこれは「家族愛」だもん。
「恋」。そう一応「恋」してる人がいます。お父さんとは違うタイプの人。最近会えてないけど…
。
私が「きなこ」の譲渡の詳しい経緯をお父さんに聞いたのは、二葉ちゃんや十六夜ちゃんが可愛い衣装で商店街を賑わわせていた頃。
そして「猫の女神さま」が憧れの叔母である事も、そこにあの「涼子ちゃん」が関係してる事も。
『一応見とけ。』
其の夜、コピーした華ちゃんの調査レポートをお父さん解説付きで読みました。
さすが、華ちゃん。このひと月に起きた近隣の不審者情報、ご近所トラブル、動物や子供への虐待通報などどこで入手したのか怖くて聞けない情報が、場所、時間帯、状況など区分けされてまとめて有る。
今回、猫絡みな事件は大きく分けて3種類有る様でそれが偶然にも同じ時期に重なってしまった。 華ちゃんはこの辺りでお父さんに助けを求めたみたい。
①「高額で販売されている品種の犬や猫を不法に安く販売している人物がいる。」(疾患ですぐに亡くなった為、販売先に連絡したが繋がない。)
②「高額で販売されている動物が盗まれた。転売された可能性から生体チップの確認を動物病院、トリマーに協力を要請中。」
③「猫カフェに子猫が捨てられていた。生体チップの有る無し確認中。」
①と②はお父さんの知り合いの人に任せて有るらしいので省く。
③は同一人物では無く、偶々時期が重なっていただけ、テレビ等で報道されてたから、模倣したかもしれない。
生体チップから捨てた人物の特定の判明したモノを除外していくと何故か①と②がチラついてくる?
『お父さん、 helpme!』
『何、何処に気付いたかな?』
お父さん、頼られて嬉しそう…に見えない?何か悪い笑みを浮かべている。やめてよー!
『たとえば、100万円と一万円の皿が有る、どちらを大事にする?』
『高い方かな?』
『高いから大事に扱う、高いから捨てずにいる。安いから捨てやすい、このくらいの値段ならまた買える。そう考えての行動かも?』 えっ?
『うそ?そんな理由で捨ててるの?』お父さんの例え話はわかりやすい分、残酷だ。
『拾った子と17年も付き合っているのも、ペットショップで購入した子とこれから楽しい付き合いが始まるのも、同じ大切なモンなはずなんだけど、何かがそれを希薄にしている。』
信じられない、命を軽くしている。「安い」から!
『そっちはお前は手を出すな。あの子の件だけ考えろ。』
『わかった、そうする。ねぇお父さん、一応聞くけど「安い」子たち、私が保護出来ないかな?資金面は情け無いけど華ちゃん頼みだけど? あ!「森猫」の活動の一つとして。』
『やめとけ。言いたい事はわかる、もしかしたら販売してる奴も始めはそんなつもりは無かったかも知れない。
可愛がってくれるならお金なんていらない、気持ちだからとお礼として何か渡したのがこんな形になったかも知れない。
業の深い話しかも知らない。』
『お父さん、まさかこの件の事、知っているの?』
間違い無い、知っているんだ。
『今じゃない。お父さんがお前ぐらいの頃に似たような事件が有ったんだよ。
携帯、スマホなんて便利なモノが出来た辺りからやる事が簡単になり過ぎて売る方も買う方も罪悪感が薄いんだろ?理解出来ないけど。』
業が深いとか今の私には太刀打ち出来ないかも、私は涼子ちゃんの件に全集中しよう。
『あの~お話し中、お邪魔します。ちょいお耳に入れたら痛い事が有りまして。』
『それ、流行らせるな!』
あのソレ、発信元だれ?
リビングで父と娘の真面目な話しに割って入ってきたのは、
十六夜 灯火&小町の姉妹だった。
もっとも、小町さんが妹と聞いたのはこの時が初めて。
『森猫のメイドを襲おうとした賊を仕留めました。どうやら「渡部」の口車に踊らされた様で。』
「渡部」って涼子ちゃんのお父さん?私、涼子ちゃんに会いに行って大丈夫かな?
ん?襲われた?メイド?
『彼女は今、子供の頃、離婚して別居していたお母さんの所にいる。すでに再婚されたそうで、そっちは悠夜に見張って守らっている。灯火、もちろん足立くんは無事だよな?』
『な、七神くん!彼がですか?
ん? ああ、オタメイドは無事ですよ。』
何故、十六夜ちゃんが驚く?ははぁーん!さては。 で、やっぱりメイドは後輩ちゃんなのね。後で慰めてあげないと。
七神 悠夜さん、華ちゃんの秘書さんの従兄弟さんらしく、
なんと!十六夜ちゃんの同級生?コレはフラグだよね!
『舞華、悠夜に案内させるから、彼女に会ってきな。おっと、その前に「スピカ」であの日の話し、新名に聞いて来るといい。』
叔母サマに?まぁいっか。
『お姉様、一緒に入るの久しぶりですね。』
今、私は二葉ちゃんとお風呂タイムです。
リリちゃんはすでに綾乃さんと入って現在就寝中、寝る子は育つとはあの子の為に有る言葉かも。
お父さんは十六夜ちゃんとまだ話している、娘がたくさんいるとお父さんは大変だよね。
『お姉様、じつはご相談がありますの。お宜しいですか?』よろしく無い訳が無い。可愛い妹の相談!でもでも
『もちろんイイよ!でも私でよろしいのかな?二葉くん。』ちょっとふざけて偉そうにしてみた。
湯船に二人、並んで入ってキャッキャッ姦しく楽しい時間に愛天使な妹サマはどんな相談なの?
どうやらこの相談の為に、お風呂入るの待っていたらしいの。
もぅ可愛ゆい!
『華姉様では二晩経っても答えが出ないのですわ。』華ちゃんが解らない難問に私が答えられるとは思えないけど? ヤダ、二葉ちゃん?ちょっと成長してない?
『私、クラスの方によく話しかけられるのですが、その、距離感が解りませんの。別段親しい訳では無いし、友達で無いから相手をしないなんて事は有りませんけど、友達が多い舞華姉様のご意見を聞きたいのです。』あや~。
今の二葉ちゃんぐらいの時に私や華ちゃんに擦り寄ってきたタイプかな?
自分で言って下衆いけど、私たちは小学校の時でクラス、いや学年カーストは上の方だったから、特に華ちゃんはお金持ちのお嬢だってみんな察してる。
ちゃっかり何か恩恵に肖ろうと近づく、要領がうまい子が何人かいたの。
逆に本当に友達になりたい子は、緊張して上手く話しかけれ無いから、すぐ解る。
なので、両方家に招待する!
一応見た目は普通の一軒家だから、お金持ちの大豪邸を想像してる子は引く、次に犬&猫の歓迎を受けて大騒ぎする!
ここでほぼ解る、友達になれるか、なれ無いか?
猫たちがね、近づかないの?
歓迎されない、警戒しているとかでは無い、相手にしないだけ。
こうなると「今日、塾の日だった、帰るね。」とか「私、ネコアレルギーかも?」とか帰り出す。
我が家には「ネコは守り神」的な家訓がある。
過去に熱烈歓迎された子は現在も友達でそれがキッカケで猫好き、犬好きになった子もいる。
そう言えば、「あの子」は今どうしているかしら?
『お姉様?』
可愛い妹に腹黒な知恵はあまり勧めたくない。だからと言って見栄張りなタテマエ論は却下なので、ここは一つ「北代家の家訓」に頼ろう!
『なるほど、なるほど。で、二葉はその子とは友達になりたいとか?大嫌いとか何か感じている事があるの?』敢えて「ちゃん」付けを止めた、二葉も気づいた。
『私、興味無い方とは特に仲良くなりたいとは思いません。』君はS○S団の団長さんなの?
『二葉は、興味が無いのはその人の事、何も知らない、解らないからなのかな?』
『学校での様子を拝見した限りではそうです。良いも悪いも全く関心が持てない方が多いかも知れません。』
考えたら二葉は何事も無ければひとつ上の学年、また割と大人の事情の中で育ている、周りの子とは精神的に離れてるかも?
『学校以外の様子を見てみるのも判断方法かな?』二葉がキョトンとしてる、可愛い。
『私はそうしたの。ウチに遊びに来ないかって、例えば「ウチに大きなイヌがいるよ」とか「子猫が産まれたの」とか「古い漫画がたくさん有る」とかお誘いの理由を付けてね。』
『それでいらっしゃるかしら?』二葉の表情か僅かに曇った。家に呼ぶのはNGかしら?
『二葉が誘って来ないならそれまでよ。その子も二葉にそれほど執着が無いって事でしょ。別にウチで宿題やりましょでも、良いのよ?』
そう言えば、二葉の友達って今まで聞いた事無かったけど?
『二葉が学校で一番仲の良い友達って誰?』あっ!うっかりそのまま聞いてしまった。いませんとか言わないよね?
『一番でしたら、「みのりん」と「ブッキー」ですわ。』よ、良かった。しかもあだ名呼び!なら?
『二葉は二人から、なんて呼ばれてるのかな?』
『ふーちゃんですわ。』続けて
『「夏川 実里」さんと「森川 吹雪」さん、小学校入学からの大親友ですわ!』すんごい嬉しそうだ!子供らしい笑顔がたまらない。
『私、その子たちに有った事、有るかしら? なんとなく「夏川」とか「森川」って聞いた事ある様な?』
その後、背中を流したり、頭を洗うなど二葉ちゃんのぴちぴちお肌を堪能して、
『今度、その子たちも含めてクラスメイトを招待したら?「可愛い子猫が、三匹いるよ。今来ないと直ぐ大きくなっちゃうよ。」って。』
『ほかの人はともかく、二人はおウチの都合でお越しいただけないかもしれませんが、お誘いしてみますわ。』
後日、親友二人を含めた五、六人が我が家に遊びに、いや、宿題をなさりにいらっしゃった!
町の歴史を調べて、発表するらしい。優斗やリリちゃんは別のクラスなのだけど…。
『ゆ、ゆ、ゆ、優斗くん、ひ、ひ、久しぶりですぅ。』
『みのりん、顔真っ赤だよ。大丈夫?冷たい飲み物とかあるよ。』オヤオヤ♡
みのりんちゃんは見た目美少年だった。デジャヴ?
『お姉さん、初めまして、会えて、嬉しい。』緊張しますか?ブッキーちゃん。 こちらは和風美幼女!なんだっけ?お菊人形だっけ。
『もう、吹雪ちゃん!舞華ちゃんはイジメたりしないから大丈夫だよ~!』うん、でもハグはしたいです。可愛いから!
何故かまこっちゃんが保護者として付いて来た!
この件は「俺の妹が猫カフェ店長だった件・番外編、 親友の妹に私が甘々な話し」でご紹介します。
二葉ちゃんとのイチャイチャお風呂タイム後、小学生の頃を思い返してみる。
友達作りがうまいみたいに言われていたが、本当は上手く距離感を掴んでいただけ。
親友と呼べるのはお互いの嫌な事を曝け出した華ちゃんやほんの数人。
小学生で距離感とか、ちょっと病んでるかも?
面倒見がいいとか思われていたらしいけど、あくまで私が手伝った方が早かったり、上手く出来たりと、後で失敗してやり直しに時間を取られるのが嫌だから手伝ったのだ。
周りは良い方に取ってくれたけど。特に担任の先生は。
ただし、毎回は助けない。頼りっきりと言うより、召使いにされてるのは不味い、なので叱る!
『いつも助けないから!一人で出来るように頑張って。〇〇ちゃんの為だよ!』って。
この辺は先生も同意見なので、勝手に高く評価されたみたい。
そもそも当時の先生たちが悪いのだ!!
その頃、「みんな仲良く、一致団結!」みたいなスローガンがあった様で、課題や宿題などみんなが終わってないと授業が進まない、帰れないなど私に取っては地獄の仕打ちが当たり前になっていた。
当時、私の家では
優斗が「ねえたん」とか「にゃんこ」とか喋り始め、子猫が産まれて、大好きな父方のお婆ちゃんが体調を崩し、家に籠りがちで、お父さんは大変な仕事で帰れない日もあり、更に華ちゃんと二葉ちゃんがやって来て、イベント盛りだくさんの、家族の大事な時間を守りたい。
出来るだけ家にいたかったのだ!
可愛い優斗や子猫と遊びたいし、お婆ちゃんのそばにもいたい。華ちゃんには何か通ずるモノを感じて仲良くなりたいし、二葉ちゃんも可愛い!
にも関わらず、ひとつの班や1人の為、課題が終わるまで居残りなのだ、私に言わせて貰えば先生たちの授業がつまらないし、教え方が下手だ!
その証拠に翌年、半数以上の先生たちが転属や退職などで入れ替わった途端にこの悪習慣は無くなった。
後で知った事だけど、実は業者と癒着して、不正に教材を大量に購入、必要理由に補習や課題に使う為と私たち生徒に強引に消費させていたのだ!
勘のいい人はわかるよね。大量教師入れ替え大会の仕掛け人は、
それは、さておき。
翌日、学校の帰りに涼子ちゃんに会いに行った。悠夜さんに案内してもらった場所は、隣町の住宅街、社宅らしい。
そして、本当に久しぶりに、悠夜さんにあった!前に会ったのは、小学校卒業の時かな?
あぁ、ちょっと緊張する?
『姫、こちらです。』そう、それそれ。悠夜さんって私の事、「姫」って呼ぶんだから…照れちゃうよ。エヘヘ。
叔母様には、昨晩電話して聞いたよ、あの日の出来事を。
涼子ちゃんは気が付いているのかな?それも確かめたい。
『お姉ちゃんたち、誰?』
私たちが、家の前で呼び鈴を押そうとしていると背後から呼び止められた。振り向くと真っ赤なランドセルを背負った女の子、二葉ちゃんより幼い、一年生かな?
『妹さんです、姫。』うん、分かりますよ。悠夜さん!でも今、姫はやめてほしいな。
すると、
『お姉ちゃん、お姫様なの?』オヤオヤ、妹ちゃんが食いつく?
ちなみに、貴女のお姉ちゃんも「姫」みたいよ、オタクサークルの。いや、これは「ナイショ」かな?
『えっとね?お姉ちゃんは「猫の国」のお姫様なの!だからこの事はナイショね。』悠夜さんが、笑いを堪えてる?イケてる王子は何してもカッコいいから羨ましい。
『うん、分かったよ!お姫様、じゃないお姉ちゃん!』うわぁ~、自分で言って恥ずかしいけど、罪の意識がパない!
妹ちゃんのキラキラ瞳が真っ直ぐ見れない。
『失礼します、小さなレディー。私は「ナナガミ ユウヤ」と申します。貴女のお名前を教えて頂けますか?』
うん、十六夜ちゃんはコレにやられたのかな?
多分、悠夜さんはこの子の名前を知っている、知っていて敢えて聞くのはこの子と親しくなる為。
急にイケメン王子が危ないお兄さんに見える?
『やまだ あまね(山田 天音)だよ。お兄ちゃんは王子さま?分かった!お城の騎士さまね。お姫様を守ってるの?』
やだ、天音ちゃんマジ可愛い!
ハグしちゃダメかな?
『天音ちゃん、私は「マイカ」って言うの。天音ちゃんのお姉ちゃんに会いに来たの。』
『お、お姉ちゃん?本当!お姫様、あまねの「お姉ちゃん」を助けてくれるのね!エ~ン。』
思わず、泣き出した天音ちゃんを抱きしめてしまう、これはハグじゃない。この子を安心させたい気持ちからの行動に過ぎない。
『天音ちゃん、優しいんだね。大丈夫、姫姉ちゃんに任せなさい!』あっ、悠夜さん、「姫姉ちゃん」で笑ったでしょ?
『さて、娘が頑張ってるんだ、お父さんも陰から応援するけど、お前もついてくるの?』
『当然!ウチに舐めた真似した事、来世でも忘れない様にシメてやるんだから!あのドラ息子!あっ、もうオヤジか?』
ウチの嫁さん、アグレッシブだな?
えっと、俺今、嫁さんが運転するサイドカーの助手席にいます。
行き先はとある廃工場、特撮ヒーローの撮影場所じゃないよ。多分。
田辺、じゃない、渡部さんからお招きされた。
『お前の所の野良猫を保護しているから引き取りに来い』だそうだ?野良猫ならウチの子じゃないけど、他所の猫でも見捨てないよ。
『お姉ちゃん、お客さんだよ!』
おウチに上がらせてもらうと有る一室の前に案内された。
天音ちゃんがドアをノックして声をかけた。
姉妹仲はいいのかしら?異父姉妹だし、歳も離れているし、でも天音ちゃんはお姉ちゃんを本当に心配しているみたい。
部屋の中から何かTV番組の音声が聞こえる、時折笑い声が混じる?お笑いライブかな?
TVの音声が消えた。
ドアの内側に近づく気配はする!
『誰?』涼子ちゃんだよね?
『私だよ、北代 舞華。久しぶりだね、涼子ちゃん。』
『やっぱり、貴女か。』なんだか思ってたのと違う。いきなり「帰れ!」とか怒鳴られるかと思っていたのに、少し安心と不安。
『何か?もしかして母さんに頼まれた?「あの子の話し相手になって欲しい」とか。フフ、よりによって貴女に頼むなんて母さんも割と残酷よね!』
『えっとね、涼子ちゃん。』
『何よ?なんて頼まれたか知らないけど、貴女と話す事なんて無いから!馬鹿みたい、無駄なのよ。』
私が頼まれてここに来たと思って話している涼子ちゃんに、私は「あの事」を話した。
『涼子ちゃん、あのね!子猫、助かったよ。お腹に虫がいたの、今は綺麗に虫を追い出したから元気になって…』ガチャ!ドン!
『本当!あの子助かったの?本当に!…えっ!』ドアが開いた、あ、痛。
私のおでこにドアが直撃!
『あ、ごめん。大丈夫?』
『だ、ダメ。責任取ってお嫁に天音ちゃんを下さい。』
『馬鹿!天音はやらないわよ!』お!やっぱり妹は大事ですか。だよね。
『あまね、お嫁さんなの?』
『あ、ごめんなさい!天音ちゃん。今の冗談だから。天音ちゃん可愛いから「妹」に欲しいから、ついね。』悠夜さん、クククって堪えた笑いが漏れてるよ。
『ごめんなさい、あまね、お姉ちゃんのいもうとだからお姫さまのいもうとには、なれないよ。』
はい、本当に真っ直ぐなお答えです。
『何よ、「ヒメ」って?貴女も「オタサー」とか入ってるの?キモいわねー? って、その人誰?お兄さんじゃないわよね、絶対!』どんな根拠かは聞かない。
『あのね、このお兄ちゃん、「きし」さんなの。』
『「岸」さん、初めまして。あの、このお節介とはどんな関係ですか?』涼子ちゃん、なんでそんな事聞くの?
『なぁ、知ってた?あの工場。大昔、地方から集団就職でかなりの人が働いていて、ラジオとかトースターとか組み立て作業してたらしい。お袋も若い頃働いていた事有るって言ってたよ。』
『それ、初耳ね。でも今は廃墟感、それに混じって動物の匂い、悪い方の!』不健康なペットのオシッコ臭だな。
『なんだ、連れがいるのか?臆病者だな。』
『そう言うアンタは大雑把だな。もうこれ被害届がどうとか関係ないよな?アッチの証拠品まで用意して。』
田辺、じゃない。渡部氏が仁王立ちして
待ち構えていた。背後にガラの悪いのが数人いるが…
ウチの嫁さんが瞬殺した。もしかしてブルゾンの下に着てるの、ふうなの土産?ライダースーツじゃないんだ?
『え?何が有った?お前たち!』
角材に鉄パイプ、ナイフとか持っていたようだが、555か、カブトまでとは行かないが高速で動けるようだ。
『相変わらず、人を使って小狡い奴ね!』
『何だ、おま…え、って、竹下?君、竹下なのか?』嫁さんの旧姓を連呼して何なのだ?
『やはり俺を選んでくれたんだ。』
『お疲れ様、お父さん。』
『あぁ、舞華もお疲れさん。でもな~お父さんも舞華が二葉みたいなコス、着ているの見たかったなー!』
『あはっ?い、いつかね!そぅそぅハロウィンとか?』これは正しい父と娘の会話なのかな?
でもちょっと楽しい。
割とウチは親子仲は良い方かな?特に「ウザい」とか「汚い、クサい」とか思わない。
でも「大きくなったらお父さんと結婚する。」とか「お父さんみたいな人がタイプ」とかは、
絶対無い!だってこれは「家族愛」だもん。
「恋」。そう一応「恋」してる人がいます。お父さんとは違うタイプの人。最近会えてないけど…
。
私が「きなこ」の譲渡の詳しい経緯をお父さんに聞いたのは、二葉ちゃんや十六夜ちゃんが可愛い衣装で商店街を賑わわせていた頃。
そして「猫の女神さま」が憧れの叔母である事も、そこにあの「涼子ちゃん」が関係してる事も。
『一応見とけ。』
其の夜、コピーした華ちゃんの調査レポートをお父さん解説付きで読みました。
さすが、華ちゃん。このひと月に起きた近隣の不審者情報、ご近所トラブル、動物や子供への虐待通報などどこで入手したのか怖くて聞けない情報が、場所、時間帯、状況など区分けされてまとめて有る。
今回、猫絡みな事件は大きく分けて3種類有る様でそれが偶然にも同じ時期に重なってしまった。 華ちゃんはこの辺りでお父さんに助けを求めたみたい。
①「高額で販売されている品種の犬や猫を不法に安く販売している人物がいる。」(疾患ですぐに亡くなった為、販売先に連絡したが繋がない。)
②「高額で販売されている動物が盗まれた。転売された可能性から生体チップの確認を動物病院、トリマーに協力を要請中。」
③「猫カフェに子猫が捨てられていた。生体チップの有る無し確認中。」
①と②はお父さんの知り合いの人に任せて有るらしいので省く。
③は同一人物では無く、偶々時期が重なっていただけ、テレビ等で報道されてたから、模倣したかもしれない。
生体チップから捨てた人物の特定の判明したモノを除外していくと何故か①と②がチラついてくる?
『お父さん、 helpme!』
『何、何処に気付いたかな?』
お父さん、頼られて嬉しそう…に見えない?何か悪い笑みを浮かべている。やめてよー!
『たとえば、100万円と一万円の皿が有る、どちらを大事にする?』
『高い方かな?』
『高いから大事に扱う、高いから捨てずにいる。安いから捨てやすい、このくらいの値段ならまた買える。そう考えての行動かも?』 えっ?
『うそ?そんな理由で捨ててるの?』お父さんの例え話はわかりやすい分、残酷だ。
『拾った子と17年も付き合っているのも、ペットショップで購入した子とこれから楽しい付き合いが始まるのも、同じ大切なモンなはずなんだけど、何かがそれを希薄にしている。』
信じられない、命を軽くしている。「安い」から!
『そっちはお前は手を出すな。あの子の件だけ考えろ。』
『わかった、そうする。ねぇお父さん、一応聞くけど「安い」子たち、私が保護出来ないかな?資金面は情け無いけど華ちゃん頼みだけど? あ!「森猫」の活動の一つとして。』
『やめとけ。言いたい事はわかる、もしかしたら販売してる奴も始めはそんなつもりは無かったかも知れない。
可愛がってくれるならお金なんていらない、気持ちだからとお礼として何か渡したのがこんな形になったかも知れない。
業の深い話しかも知らない。』
『お父さん、まさかこの件の事、知っているの?』
間違い無い、知っているんだ。
『今じゃない。お父さんがお前ぐらいの頃に似たような事件が有ったんだよ。
携帯、スマホなんて便利なモノが出来た辺りからやる事が簡単になり過ぎて売る方も買う方も罪悪感が薄いんだろ?理解出来ないけど。』
業が深いとか今の私には太刀打ち出来ないかも、私は涼子ちゃんの件に全集中しよう。
『あの~お話し中、お邪魔します。ちょいお耳に入れたら痛い事が有りまして。』
『それ、流行らせるな!』
あのソレ、発信元だれ?
リビングで父と娘の真面目な話しに割って入ってきたのは、
十六夜 灯火&小町の姉妹だった。
もっとも、小町さんが妹と聞いたのはこの時が初めて。
『森猫のメイドを襲おうとした賊を仕留めました。どうやら「渡部」の口車に踊らされた様で。』
「渡部」って涼子ちゃんのお父さん?私、涼子ちゃんに会いに行って大丈夫かな?
ん?襲われた?メイド?
『彼女は今、子供の頃、離婚して別居していたお母さんの所にいる。すでに再婚されたそうで、そっちは悠夜に見張って守らっている。灯火、もちろん足立くんは無事だよな?』
『な、七神くん!彼がですか?
ん? ああ、オタメイドは無事ですよ。』
何故、十六夜ちゃんが驚く?ははぁーん!さては。 で、やっぱりメイドは後輩ちゃんなのね。後で慰めてあげないと。
七神 悠夜さん、華ちゃんの秘書さんの従兄弟さんらしく、
なんと!十六夜ちゃんの同級生?コレはフラグだよね!
『舞華、悠夜に案内させるから、彼女に会ってきな。おっと、その前に「スピカ」であの日の話し、新名に聞いて来るといい。』
叔母サマに?まぁいっか。
『お姉様、一緒に入るの久しぶりですね。』
今、私は二葉ちゃんとお風呂タイムです。
リリちゃんはすでに綾乃さんと入って現在就寝中、寝る子は育つとはあの子の為に有る言葉かも。
お父さんは十六夜ちゃんとまだ話している、娘がたくさんいるとお父さんは大変だよね。
『お姉様、じつはご相談がありますの。お宜しいですか?』よろしく無い訳が無い。可愛い妹の相談!でもでも
『もちろんイイよ!でも私でよろしいのかな?二葉くん。』ちょっとふざけて偉そうにしてみた。
湯船に二人、並んで入ってキャッキャッ姦しく楽しい時間に愛天使な妹サマはどんな相談なの?
どうやらこの相談の為に、お風呂入るの待っていたらしいの。
もぅ可愛ゆい!
『華姉様では二晩経っても答えが出ないのですわ。』華ちゃんが解らない難問に私が答えられるとは思えないけど? ヤダ、二葉ちゃん?ちょっと成長してない?
『私、クラスの方によく話しかけられるのですが、その、距離感が解りませんの。別段親しい訳では無いし、友達で無いから相手をしないなんて事は有りませんけど、友達が多い舞華姉様のご意見を聞きたいのです。』あや~。
今の二葉ちゃんぐらいの時に私や華ちゃんに擦り寄ってきたタイプかな?
自分で言って下衆いけど、私たちは小学校の時でクラス、いや学年カーストは上の方だったから、特に華ちゃんはお金持ちのお嬢だってみんな察してる。
ちゃっかり何か恩恵に肖ろうと近づく、要領がうまい子が何人かいたの。
逆に本当に友達になりたい子は、緊張して上手く話しかけれ無いから、すぐ解る。
なので、両方家に招待する!
一応見た目は普通の一軒家だから、お金持ちの大豪邸を想像してる子は引く、次に犬&猫の歓迎を受けて大騒ぎする!
ここでほぼ解る、友達になれるか、なれ無いか?
猫たちがね、近づかないの?
歓迎されない、警戒しているとかでは無い、相手にしないだけ。
こうなると「今日、塾の日だった、帰るね。」とか「私、ネコアレルギーかも?」とか帰り出す。
我が家には「ネコは守り神」的な家訓がある。
過去に熱烈歓迎された子は現在も友達でそれがキッカケで猫好き、犬好きになった子もいる。
そう言えば、「あの子」は今どうしているかしら?
『お姉様?』
可愛い妹に腹黒な知恵はあまり勧めたくない。だからと言って見栄張りなタテマエ論は却下なので、ここは一つ「北代家の家訓」に頼ろう!
『なるほど、なるほど。で、二葉はその子とは友達になりたいとか?大嫌いとか何か感じている事があるの?』敢えて「ちゃん」付けを止めた、二葉も気づいた。
『私、興味無い方とは特に仲良くなりたいとは思いません。』君はS○S団の団長さんなの?
『二葉は、興味が無いのはその人の事、何も知らない、解らないからなのかな?』
『学校での様子を拝見した限りではそうです。良いも悪いも全く関心が持てない方が多いかも知れません。』
考えたら二葉は何事も無ければひとつ上の学年、また割と大人の事情の中で育ている、周りの子とは精神的に離れてるかも?
『学校以外の様子を見てみるのも判断方法かな?』二葉がキョトンとしてる、可愛い。
『私はそうしたの。ウチに遊びに来ないかって、例えば「ウチに大きなイヌがいるよ」とか「子猫が産まれたの」とか「古い漫画がたくさん有る」とかお誘いの理由を付けてね。』
『それでいらっしゃるかしら?』二葉の表情か僅かに曇った。家に呼ぶのはNGかしら?
『二葉が誘って来ないならそれまでよ。その子も二葉にそれほど執着が無いって事でしょ。別にウチで宿題やりましょでも、良いのよ?』
そう言えば、二葉の友達って今まで聞いた事無かったけど?
『二葉が学校で一番仲の良い友達って誰?』あっ!うっかりそのまま聞いてしまった。いませんとか言わないよね?
『一番でしたら、「みのりん」と「ブッキー」ですわ。』よ、良かった。しかもあだ名呼び!なら?
『二葉は二人から、なんて呼ばれてるのかな?』
『ふーちゃんですわ。』続けて
『「夏川 実里」さんと「森川 吹雪」さん、小学校入学からの大親友ですわ!』すんごい嬉しそうだ!子供らしい笑顔がたまらない。
『私、その子たちに有った事、有るかしら? なんとなく「夏川」とか「森川」って聞いた事ある様な?』
その後、背中を流したり、頭を洗うなど二葉ちゃんのぴちぴちお肌を堪能して、
『今度、その子たちも含めてクラスメイトを招待したら?「可愛い子猫が、三匹いるよ。今来ないと直ぐ大きくなっちゃうよ。」って。』
『ほかの人はともかく、二人はおウチの都合でお越しいただけないかもしれませんが、お誘いしてみますわ。』
後日、親友二人を含めた五、六人が我が家に遊びに、いや、宿題をなさりにいらっしゃった!
町の歴史を調べて、発表するらしい。優斗やリリちゃんは別のクラスなのだけど…。
『ゆ、ゆ、ゆ、優斗くん、ひ、ひ、久しぶりですぅ。』
『みのりん、顔真っ赤だよ。大丈夫?冷たい飲み物とかあるよ。』オヤオヤ♡
みのりんちゃんは見た目美少年だった。デジャヴ?
『お姉さん、初めまして、会えて、嬉しい。』緊張しますか?ブッキーちゃん。 こちらは和風美幼女!なんだっけ?お菊人形だっけ。
『もう、吹雪ちゃん!舞華ちゃんはイジメたりしないから大丈夫だよ~!』うん、でもハグはしたいです。可愛いから!
何故かまこっちゃんが保護者として付いて来た!
この件は「俺の妹が猫カフェ店長だった件・番外編、 親友の妹に私が甘々な話し」でご紹介します。
二葉ちゃんとのイチャイチャお風呂タイム後、小学生の頃を思い返してみる。
友達作りがうまいみたいに言われていたが、本当は上手く距離感を掴んでいただけ。
親友と呼べるのはお互いの嫌な事を曝け出した華ちゃんやほんの数人。
小学生で距離感とか、ちょっと病んでるかも?
面倒見がいいとか思われていたらしいけど、あくまで私が手伝った方が早かったり、上手く出来たりと、後で失敗してやり直しに時間を取られるのが嫌だから手伝ったのだ。
周りは良い方に取ってくれたけど。特に担任の先生は。
ただし、毎回は助けない。頼りっきりと言うより、召使いにされてるのは不味い、なので叱る!
『いつも助けないから!一人で出来るように頑張って。〇〇ちゃんの為だよ!』って。
この辺は先生も同意見なので、勝手に高く評価されたみたい。
そもそも当時の先生たちが悪いのだ!!
その頃、「みんな仲良く、一致団結!」みたいなスローガンがあった様で、課題や宿題などみんなが終わってないと授業が進まない、帰れないなど私に取っては地獄の仕打ちが当たり前になっていた。
当時、私の家では
優斗が「ねえたん」とか「にゃんこ」とか喋り始め、子猫が産まれて、大好きな父方のお婆ちゃんが体調を崩し、家に籠りがちで、お父さんは大変な仕事で帰れない日もあり、更に華ちゃんと二葉ちゃんがやって来て、イベント盛りだくさんの、家族の大事な時間を守りたい。
出来るだけ家にいたかったのだ!
可愛い優斗や子猫と遊びたいし、お婆ちゃんのそばにもいたい。華ちゃんには何か通ずるモノを感じて仲良くなりたいし、二葉ちゃんも可愛い!
にも関わらず、ひとつの班や1人の為、課題が終わるまで居残りなのだ、私に言わせて貰えば先生たちの授業がつまらないし、教え方が下手だ!
その証拠に翌年、半数以上の先生たちが転属や退職などで入れ替わった途端にこの悪習慣は無くなった。
後で知った事だけど、実は業者と癒着して、不正に教材を大量に購入、必要理由に補習や課題に使う為と私たち生徒に強引に消費させていたのだ!
勘のいい人はわかるよね。大量教師入れ替え大会の仕掛け人は、
それは、さておき。
翌日、学校の帰りに涼子ちゃんに会いに行った。悠夜さんに案内してもらった場所は、隣町の住宅街、社宅らしい。
そして、本当に久しぶりに、悠夜さんにあった!前に会ったのは、小学校卒業の時かな?
あぁ、ちょっと緊張する?
『姫、こちらです。』そう、それそれ。悠夜さんって私の事、「姫」って呼ぶんだから…照れちゃうよ。エヘヘ。
叔母様には、昨晩電話して聞いたよ、あの日の出来事を。
涼子ちゃんは気が付いているのかな?それも確かめたい。
『お姉ちゃんたち、誰?』
私たちが、家の前で呼び鈴を押そうとしていると背後から呼び止められた。振り向くと真っ赤なランドセルを背負った女の子、二葉ちゃんより幼い、一年生かな?
『妹さんです、姫。』うん、分かりますよ。悠夜さん!でも今、姫はやめてほしいな。
すると、
『お姉ちゃん、お姫様なの?』オヤオヤ、妹ちゃんが食いつく?
ちなみに、貴女のお姉ちゃんも「姫」みたいよ、オタクサークルの。いや、これは「ナイショ」かな?
『えっとね?お姉ちゃんは「猫の国」のお姫様なの!だからこの事はナイショね。』悠夜さんが、笑いを堪えてる?イケてる王子は何してもカッコいいから羨ましい。
『うん、分かったよ!お姫様、じゃないお姉ちゃん!』うわぁ~、自分で言って恥ずかしいけど、罪の意識がパない!
妹ちゃんのキラキラ瞳が真っ直ぐ見れない。
『失礼します、小さなレディー。私は「ナナガミ ユウヤ」と申します。貴女のお名前を教えて頂けますか?』
うん、十六夜ちゃんはコレにやられたのかな?
多分、悠夜さんはこの子の名前を知っている、知っていて敢えて聞くのはこの子と親しくなる為。
急にイケメン王子が危ないお兄さんに見える?
『やまだ あまね(山田 天音)だよ。お兄ちゃんは王子さま?分かった!お城の騎士さまね。お姫様を守ってるの?』
やだ、天音ちゃんマジ可愛い!
ハグしちゃダメかな?
『天音ちゃん、私は「マイカ」って言うの。天音ちゃんのお姉ちゃんに会いに来たの。』
『お、お姉ちゃん?本当!お姫様、あまねの「お姉ちゃん」を助けてくれるのね!エ~ン。』
思わず、泣き出した天音ちゃんを抱きしめてしまう、これはハグじゃない。この子を安心させたい気持ちからの行動に過ぎない。
『天音ちゃん、優しいんだね。大丈夫、姫姉ちゃんに任せなさい!』あっ、悠夜さん、「姫姉ちゃん」で笑ったでしょ?
『さて、娘が頑張ってるんだ、お父さんも陰から応援するけど、お前もついてくるの?』
『当然!ウチに舐めた真似した事、来世でも忘れない様にシメてやるんだから!あのドラ息子!あっ、もうオヤジか?』
ウチの嫁さん、アグレッシブだな?
えっと、俺今、嫁さんが運転するサイドカーの助手席にいます。
行き先はとある廃工場、特撮ヒーローの撮影場所じゃないよ。多分。
田辺、じゃない、渡部さんからお招きされた。
『お前の所の野良猫を保護しているから引き取りに来い』だそうだ?野良猫ならウチの子じゃないけど、他所の猫でも見捨てないよ。
『お姉ちゃん、お客さんだよ!』
おウチに上がらせてもらうと有る一室の前に案内された。
天音ちゃんがドアをノックして声をかけた。
姉妹仲はいいのかしら?異父姉妹だし、歳も離れているし、でも天音ちゃんはお姉ちゃんを本当に心配しているみたい。
部屋の中から何かTV番組の音声が聞こえる、時折笑い声が混じる?お笑いライブかな?
TVの音声が消えた。
ドアの内側に近づく気配はする!
『誰?』涼子ちゃんだよね?
『私だよ、北代 舞華。久しぶりだね、涼子ちゃん。』
『やっぱり、貴女か。』なんだか思ってたのと違う。いきなり「帰れ!」とか怒鳴られるかと思っていたのに、少し安心と不安。
『何か?もしかして母さんに頼まれた?「あの子の話し相手になって欲しい」とか。フフ、よりによって貴女に頼むなんて母さんも割と残酷よね!』
『えっとね、涼子ちゃん。』
『何よ?なんて頼まれたか知らないけど、貴女と話す事なんて無いから!馬鹿みたい、無駄なのよ。』
私が頼まれてここに来たと思って話している涼子ちゃんに、私は「あの事」を話した。
『涼子ちゃん、あのね!子猫、助かったよ。お腹に虫がいたの、今は綺麗に虫を追い出したから元気になって…』ガチャ!ドン!
『本当!あの子助かったの?本当に!…えっ!』ドアが開いた、あ、痛。
私のおでこにドアが直撃!
『あ、ごめん。大丈夫?』
『だ、ダメ。責任取ってお嫁に天音ちゃんを下さい。』
『馬鹿!天音はやらないわよ!』お!やっぱり妹は大事ですか。だよね。
『あまね、お嫁さんなの?』
『あ、ごめんなさい!天音ちゃん。今の冗談だから。天音ちゃん可愛いから「妹」に欲しいから、ついね。』悠夜さん、クククって堪えた笑いが漏れてるよ。
『ごめんなさい、あまね、お姉ちゃんのいもうとだからお姫さまのいもうとには、なれないよ。』
はい、本当に真っ直ぐなお答えです。
『何よ、「ヒメ」って?貴女も「オタサー」とか入ってるの?キモいわねー? って、その人誰?お兄さんじゃないわよね、絶対!』どんな根拠かは聞かない。
『あのね、このお兄ちゃん、「きし」さんなの。』
『「岸」さん、初めまして。あの、このお節介とはどんな関係ですか?』涼子ちゃん、なんでそんな事聞くの?
『なぁ、知ってた?あの工場。大昔、地方から集団就職でかなりの人が働いていて、ラジオとかトースターとか組み立て作業してたらしい。お袋も若い頃働いていた事有るって言ってたよ。』
『それ、初耳ね。でも今は廃墟感、それに混じって動物の匂い、悪い方の!』不健康なペットのオシッコ臭だな。
『なんだ、連れがいるのか?臆病者だな。』
『そう言うアンタは大雑把だな。もうこれ被害届がどうとか関係ないよな?アッチの証拠品まで用意して。』
田辺、じゃない。渡部氏が仁王立ちして
待ち構えていた。背後にガラの悪いのが数人いるが…
ウチの嫁さんが瞬殺した。もしかしてブルゾンの下に着てるの、ふうなの土産?ライダースーツじゃないんだ?
『え?何が有った?お前たち!』
角材に鉄パイプ、ナイフとか持っていたようだが、555か、カブトまでとは行かないが高速で動けるようだ。
『相変わらず、人を使って小狡い奴ね!』
『何だ、おま…え、って、竹下?君、竹下なのか?』嫁さんの旧姓を連呼して何なのだ?
『やはり俺を選んでくれたんだ。』
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