猫カフェは探偵事務所ではありません。〜女子高生店長の奮闘記〜それ別の階デスネ!?

猫寝 子猫

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いらっしゃいませ!ようこそ『森の猫さま』へ。

お姉ちゃんは何があっても妹を〜そして父は〜。

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 私達は涼子ちゃんのいる部屋に入れてもらった。テレビと小さなテーブル。涼子ちゃんの物らしい大きいカバンから、ブラ紐が!
 
 「涼子ちゃん、アレ、アレ!」私は目で、涼子ちゃんに教えてあげる、気づいて涼子ちゃん!

 『ん?あ!あぁ~。スマホ、スマホの充電しとくか。』良かった、気づいてくれた。上手く誤魔化せたかは、微妙だけど悠夜さんにはアレは見えてないと思う。

 『ねぇ、あの猫助かったのよね?何処にいたの?』涼子ちゃん、悠夜さんをチラッと見て紅くなる。某人気俳優似のイケメンお兄さんに一部とは言え、下着は見られたら恥ずかしいよね?ん?そっちじゃない?

 ん~ん?なんだか私の記憶に有る「涼子ちゃん」と大分雰囲気が違う?お父さんから聞いていた様子とも違う。表情が柔らかい。

 『喫茶店の入口の側に植木鉢があって、その影にいたって叔母さまが言ってたよ。直ぐに病院に連れて行ったから助かったけど、半日遅かったらわからなかったって。』

 『何でそんな所に!
 あっ、そんなこと、今はいいや!ねぇ、ここ、社宅だから猫は飼えないの。私が里親探してる間、貴女預かって!って、叔母さん?だれの事?』

 『知ってて、あの喫茶店にチャコを連れてきたんじゃないんだね?』

 『チャコって?猫の事?色々わからない事が増えてるけど!』

 私は涼子ちゃんにあの喫茶店が叔母さまのお店なのと、チャコが無事に本当の飼い主の男の子と会えて、兄弟と思われる猫と一緒に引き取られる事情を説明したら、
  
 『うぅ、よ、良かった、うぅ、うあぁーん!』と大泣きした!

 『警察で婦警が「猫は知らない」って聞いてからどうしても探しに行きたかったのに、あのクソ親父が!』あ、この顔!小学生の頃の涼子ちゃんの表情。

 『涼子ちゃんのお父さん、何故かウチのお父さんに被害届を取り下げるように来たんだけど、届出したの叔母さまの旦那さんだから、其方に言って欲しいとお願いしたら怒りだしたらしいの。』

 『え!それでアンタのお父さんは?無事なの⁈  アイツ直ぐに手を出してくるから!』

 『ご安心ください。失礼な表現ですが貴女のお父さんが不自然な様子なので警備会社の方が近くで様子を伺っていたそうです。
 手を振り上げた時点で取り押さえました。師匠は御足を患っていらっしゃるので警備の方も普段から気に留めて頂いてますから。』

 『ウソ、本当なの?そんな人にまであのバカ親父…えっ師匠?』
 
 『ウチのお父さん、古流武術の雇われ師範の経験が有りまして、悠夜さんはその時の教え子なの。』私も詳しく知らないけどね。
 『へー、なんかカッコイイね。舞華のお父さん、羨ましいかも?』あ、名前で呼んでくれた。

 『お母さんに聞いたんだけどね、私達のお父さんって同じ学校の同級生らしいよ。その時なんか有ったみたい。』

 『ふんっ、どうせあの親父の事だから、イジメとかダサい事してたんでしょ!わかるよ、私の「親」だから。』
 
 涼子ちゃん、黙って俯いてる。肩が震えてる、すると…

 『お姉ちゃん?』天音ちゃんが心配して部屋に入ってくる。
 お盆にジュースとクッキーを乗せて!よく出来た妹さんだ!
  
 『おっと、そうだった。あのね涼子ちゃんの分の届けは消毒代を負担したことで無しになったって、叔父様が教えてくれたよ。被害届は最初の件だけだから。』続いて悠夜さんが説明した。
 
 『そもそも貴女を訴えた訳では有りません。貴女のお父上に消毒代金と休業時間にした分の売り上げ金の請求をしたまでです。そこを早とちりしているのですよ。まともに話を聞いて頂けてないのが、致命的ですね。』悠夜さん、容赦ないな。こんな人だったかな?


 『でも、誰か払ってくれたんだよね?その代金とか。』
  『多分、だけど…』

 『それは、私だよ。涼子ちゃん。』
 部屋に一人の男性が、優しそうな笑顔で現れた。

 『お、おじさん、えっ、どうして。』
 
 『あ!お父さん、おかえりなさい。』天音ちゃんが飛び付く。優しいお父さんなんだろう、何となくわかる。

 『頂いた仕事料をそのまま返す形になりましたな。』笑ってそう言う天音ちゃんのお父さん。えっ?どゆこと? 

 『こちらの山田さんは、「サンダー消毒」と言うネズミ駆除や消毒作業を請け負う会社の主任さんです。』

 『お嬢さんが、北代先輩の娘さんですね。初めまして、「山田 優」(ヤマダ マサル)と言います。お父さんの高校時代の後輩で先日喫茶店の殺菌作業で久しぶりにお会いしたのですが、お互いすっかり変わっていて、作業後にお話ししてやっと気が付きましてね。』 
 『わかった!化学部ですね!捨てる天ぷら油から石鹸作ったりしてた部活ですよね?』
 『ハハハ、そうそう。もちろんそれだけでは無いけどそんな感じで合ってますよ。』今も文化祭で化学部か実演して、無料配布して主婦の方々に大人気だし。

 『さて、涼子ちゃんに聞きて欲しい事が有るんだけどイイかな?』
 『ハイ?何でしょうか、私なんかで良ければ…?』
 『このまま、天音の「お姉ちゃん」になってくれないかな。このまま一緒に暮らさないかい?』



 
 

 『竹下、何故こんな所に?幼馴染だからと言う理由でココまで北代に付き合うなんて、優しいにも程が有るぞ!いくら私でもきみに愛想が尽きるよ。』
 
 『渡部くん、相変わらず思い込みが激しいけど?』

 呆れた顔で、
 『馬鹿なの?貴方。』
 
 『ば、馬鹿だと!いくら君でも許さな、いや、私は心が広いからこんな事で腹は立てないよ。でも言葉使いが乱暴なのは感心しないなぁ。君らしく無い、育ちの悪いのが感染したかな? グフッ!』

 嫁さんの怒りの一撃、左からのアッパーカットが炸裂した? 残像が見えた?早い、早すぎるよ。

 『ゴホッ、な、何が?』

 『また、そうやって私の大切なモノを侮辱するのか?この「裸の王様」は!』
 子供の頃から、空手有段者の叔父に鍛えられてる、中学の時に物足りないからと、古流武術の道場に俺を道連れに通い出した。
 近所にあんなモンが無ければ、俺の人生はもっと穏やかでオタクライフMAXだったろう。

 『うぐっ、あ、あの上品で優等生のキミが、そんなオタク野郎と一緒にいるから、こんな野蛮な事が出来るんだ!北代!お前の所為だ!』

 『そうなの?子供の頃からこんな性格だよなぁ?小5で空手黒帯だし。』

 『く、黒帯?まさか、あの竹下が?』
 『「あの」って、「どの」私の事よ?それから「竹下」って旧姓で呼ばないでくれる!今、私も「北代」なんだけど!「北代 久美」!この人の嫁さんですっ!』






 『どうかな、涼子ちゃん?別に今直ぐに決めなくてもいいんだ。ただ、きみは一人では無い事は分かって欲しい。』

 『あの、でも、』

 『ひとつ、よろしいですか?涼子さん、貴女のお友達の事ですが、あの子猫を連れてきたのは「犬飼」さんですか?』

 『誰?それ。あの子猫は私が公園で見つけて、おいでおいでをしたら付いてきたからそのまま連れ帰ったの。』

 『悠夜さん?その人、誰ですか?オタサーの人?』ふうなちゃんに「昇天」させられた人達とか?
 

 

 

 『アンタ、娘の友達に何やらせてたの?とても上品な「バイト」とは言え無いわね?』
 
 『あ?あぁ、アレか。娘の取り巻き共だな? 私に取り入ろうとしたので利用したよ、「あの子の為に」とか「期待している」と言えばなんだってやるから…。』

 『なぁ、ココで野良猫にご飯あげてたオッさんどうした?ホームレスかも知れないけど?』

 『今、私と「竹下」が話しているだ!横から口を挟むな!あのホームレスか?アレなら叩き出した。当然だろ、ここは私の土地だ!野良猫も部下に「処分」させた。汚いと借り手が付かないからな!』

 『すると、猫の販売は犬飼って奴か?』

 『販売?彼奴は「処分」したとしか聞いてない。お前の事も上手く丸め込めず、元々使えない奴だ!』
 めちゃくちゃだな。

 『そうやって親父をこき使い、散々利用して、都合の悪い事は全部押し付けて!見捨てるんだろ!』

 『何だ、お前!今日は呼んで無いぞ?鈴木!』
 物陰に隠れていたヤンキー風な青年が近づいてきた。
 『大体、お前たちが上手くやれてれば、こんな手間は必要無かったのだ!』
  
 『ここまで酷い奴って、忘れるもんかな?久美さんや?』
 『ごめんね。訳が有るの、後で説明するから。貴方は「サトウ」さんの息子さんね?離婚したお母さんと暮らしているって聞いたけど…。』

 『その服、でもあの時の人とは別の人だね。そうだよお袋は死んだよ。「お父さんを許してね。」って、だけど親父はオレの事、気づかない程変わっちまった!』

 『「師匠~?聞こえますか~?見つけたよ~!ほぼニャンコは妊婦さんだよ!あと犬種が分からない仔犬がいる。」だって。』耳にはめたイヤホンから灯火の声が保護対象発見を知らせて来た。もういいかな。

 『おまわりさ~ん!助けて~!』年甲斐もなく叫んでみた?割と迫真の演技で!

 『アハハハ、なんだなんだ!この場でビビッて泣き叫ぶとは、情け無いぞ、きた……?』 
『ハイハイ、お巡りさん到着ですよ。皆さんどうなさいましたか?』店に来たお巡りさん、いや刑事さんなのかな?



 『な、なんだと?知らん知らん!私は関係ない!』
 『詳しい事情は鶴亀署で伺いますよ、渡部さん。北代さんもそれでよろしいですか?』
 『もちろん、ただこの隣りの建物に不当に犬や猫が飼育されてるそうです。保護団体に連絡してもよろしいですか?』



 

 『あ!そうだ、涼子ちゃん、忘れてた!あのね今度、タカちゃん赤ちゃんが産まれるの!二人目、凄く無い?』
 
 『え?何?いきなり、え、「タカちゃん」って誰よ?……!もしかして、「高町 貴湖」(たかまち たかこ)!』

 『そ。いや~ヤンママだよ!あのタカちゃんが、若いお母さんってちょっと憧れかも。ん?涼子ちゃん、驚いた?』
 
 『当たり前でしょ!あの「タカ子」でしょ?身体はデカいのにトロくて、下級生のアンタの後ろで泣いてた、あの「ダメ子」が母親って?』目が潤んでいますよ。涼子さん。
 
 『そ!あのタカちゃん!高校の時に幼馴染のお兄さんがプロポーズして即結婚、あの引っ込み思案のタカちゃんとは思えない決断の速さ! まぁ、実際には「授かり婚」らしいけどね。あと幼馴染のお兄さんってば北海道の農場とかの跡取りさんで、元々タカちゃんもあっちの出身で…、』

 『待って、待っってよ!いきなり情報量多すぎよ!』

 『でも、気にしてたでしょ?その後のタカちゃんの事。あの時の傷も超凄腕のお医者さんが綺麗に治したから大丈夫!』

 『え?本当!』
 『KもXもBJも敵わない、ってお父さんが言ってた?』

 


 私が小学校に通い出した頃、近所にタカちゃんが引っ越してきた。
 ご両親と一緒にウチに挨拶に来たその日に仲良くなった。
 タカちゃん、動物好きで我が家に猫だの犬だの白手テナガザルだのを見て、大興奮!
 引っ越した家が賃貸だから動物が飼えないようで、大体毎日遊びに来ていて、二つ歳上なのに発育が良いのか?五つくらい上に見えた。
 でも、「お姉ちゃん」と言う感じではなく、本当に友達と言う感じだった。大人しいと言うより、のんびりとした性格のようで動物たちも懐いていた。
 
 しばらくは問題なかった。数年後、彼女とクラスメイトに成るまでは…
  
 タカちゃんは彼女に悪い意味で目に止まってしまった。
 
 お兄ちゃんが既に「規格外」な小学生だと周りに認識されて、双子の私も何かと注目されてた頃、タカちゃんが遊びに来る事が減り始めた。
 年下の私と遊ぶよりも、同じクラスの友達と遊ぶのが普通だけど、あの「タカちゃん」に限ってそれは無い!
 何かあるに違いない!この直感は正しかった。

 『ねぇ、舞華チャン。背が高い茶髪の●年生の人って舞華チャンのお友達でしょ?』
 クラスメイトで●年生のお姉さんがいる子から予想していたが、そうで有って欲しくない事を教えて貰った。何故か他のクラスメイトも話し出した。
 『あのね、お姉ちゃんから聞いた話しで……、』

 『あ、私も知ってる!その人って「姫」ってあだ名なんでしょ。』『私も、男子も家来にしてるって聞いたよ。』

 『最近は背の高い「茶髪」の子をイジメてるみたい。』


 「茶髪」…   タカちゃんの事だ!
 染めてるとか脱色した訳ではなく、生まれ付きだから!最初に会った時から「レッドタビー」みたいで、
 『ウチの福ちゃん達みたい』って、無邪気に褒めてた。その時のタカちゃんの嬉しそうな顔は、今でも覚えてる! 
 タカちゃんは背が高いと言うより、成長が早いのだ。
 体付きは中学、いや小柄な高校生でもイケたんじゃないかな?

 大人しいから、普段分からないがタカちゃんは運動が得意!また力持ちでも有る。当時、愛犬の「シグマ」の子で「アルファ」の父、「ゼロ」がいた。私だと散歩中、力負けして引きずり回されるのに、タカちゃんは全く余裕で「ゼロ」をリードしている。
 後で聞いたけど、タカちゃんのお父さんは「アイヌ」の血が流れているそうでちょっとカッコいい!


 私は情報を集めて、タカちゃんに酷いことしているのは、
 「渡部 涼子」と言うタカちゃんのクラスメイトとその取り巻きで、「渡部 涼子」の父があの工場地域に会社を持っている事など
突き止めた。

 取り巻き達もその会社の社員の子供達で逆らえなかったのかも。

 私の幼稚な行動が結果として、大切な友達に消えない傷を負わせることになる。
 華ちゃんが現れる前、私の本当の友達は人間では「タカちゃん」だけだと思う。
 
 だからこそ、タカちゃんをいじめている子たちを懲らしめようと作戦を立てた。取り巻きの子たちを一人一人切り崩して、主犯の「渡部 涼子」を孤立させてから「秘密兵器」で懲らしめる作戦だった…のだが、
 「渡部 涼子」は「主犯」では無く、「御輿」だったのだ。

 それが分かったのは作戦決行の少し経った二人目の切り崩しの時だった。
 一人目はその子が好きな男子を調べて、その男子に「イジメやってる奴って最低だよな」と普段から風潮する様に仕向ける。
 たまたまお兄ちゃんと仲の良い男子グループの一人だったので、家で「イジメ駄目絶対的に!」な漫画やアニメを意図的に見せて、夕食中に『お父さんが子供の頃もイジメって有ったの?』みたいな話しを振り、父の体験談や、近所で有った悲しい事件の事などイジメがどれだけ酷くて悪い事かお兄ちゃんに擦り込んだ!
 結果、低学年から高学年で成る十名ほどの男子グループ内でインフルエンサーなお兄ちゃんは「イジメは良く無い」をグループ内で広めた、ある時は漫画の話し、ある時は父に聞いたイジメを苦にした自殺の話し、などなど。 
 さも、自身が見たか、体験したかの様に友達に話して、「イジメ駄目絶対教」の出来上がり。
 単純ながら先生からも支持されていたので様子見してた。
 イジメをしているグループはある種の共犯意識があるので一見結束は硬いようでも、一人でも抜けると不安になる。
 保身の為に先生や父兄にバラされる等リスクが高まるからだ。
 すると一人抜けて、続いて二人、三人とグループから離れると思われた、が、ここで「本当に」グループをまとめていた人物が動いた。 

 『北代 舞華ってどの子よ!』

 休み時間に上級生の数人が舞華の教室に怒鳴り込んで来た!
 涼子の取り巻きたちだ。 
 なのに「渡部 涼子」の姿は無い。 
 『いないの⁉︎「北代 舞華」って生意気な子よ?出てきなさいよ!「涼子さん」の悪口を広めた卑怯者は誰!』あまりの迫力が教室内の気の弱い子をビビらせた!怖くて泣き出した子の「泣き声」が教室の数カ所で聞こえた。 
 コレを見た上級生たちも驚いて、さすがにまずいと思い立ち去り、直ぐに数人のクラスメイトが私に駆け寄って、
 『大丈夫だよ!舞華ちゃん、私たち舞華ちゃんの事、あの上級生に言わないよ!』、
 『あの人たち、「イジメグループ」って有名な人たちだよ!きっと舞華ちゃんの事、上級生にも人気だから気に入らないのよ?』、
 『気をつけた方がいいよ?今日一緒に帰ろうよ?』『あ、それじゃ私も!』『僕も!』『ニャー!』あれ?

 この時、華ちゃんがいれば、相手の本当の目的が分かったかも知れなかった。 
  
 放課後、てっきり「舞華チャン防衛隊」と楽しく下校かと思いきや、職員室にお呼ばれされた。 
 あの騒ぎが先生の耳に入ったのだ。詳しい事、思い当たる事など聞かれた。 
 具体的な事はボカして、歳上の友達がイジメられてる様で、兄や友達に相談したとだけ話した。 
 先生も、「あのお兄さんの行動」が妹にとばっちりが来たと解釈したらしい。
 まぁ当たり前だけど、でも「防衛隊」は私の事は待たずに帰ったみたい…。まぁ塾とか有る子もいるし、一人だけ門の前で待っている「彼女」を除いては。 


 『あれ、ラン姉チャン?久しぶりだぁ!』
 『バカ舞、アンタやり方がずる賢いのよ。だから必要以上に相手を怒らせた。』
 
 ラン姉チャン、「明神 嵐」
あらしの日に産まれたから「嵐」、「雪」の日だったら違ったのかな?

 『バカは舞斗だけでお釣りが来るのに、アンタまでやらかしたら私の手が足りなくなるでしょ!』
 ラン姉チャンには、小さい頃から、色々面倒かけてる。お互いの両親がガチな親友なのと家が近所なので「本当のお姉ちゃん」みたいな存在なのだ。 
 『私、もう直ぐ卒業なのよ。もう、アンタたちの面倒見れないの、分かった?それと、オーイ貴湖、アンタもこのバカな妹にゲンコツの一つでもくれてやりなさい!』

 タカちゃん、門の後ろに隠れてた。
 『舞ちゃん、ごめんね。私の為に、でも危ない事はしないで。』
 
 ラン姉チャンは、「児童会会長」だった。先生の言いなりの「児童会会長」では無く、かなり扱いづらい「児童会会長」だったらしい。うん、わかるわかる。
 『全く、で?誰が考えたの?舞華じゃないよね。こんな方法、まさかおじ様?』

 『…言わなきゃ駄目?』
 『無理には聞かないけど、何?何かまずい事でも有るの?』

 『えっとね、お父さんのマンガを参考にしました。』

 『呆れた!アンタの行動力。あとマンガを参考にした発想力。でもね、詰めが甘いの!さっきも言ったけど、私卒業するのよ。アンタの面倒はもう見れないから。』

 そう言うラン姉チャンは寂しそうな、困ったような顔をして、
 『次に卒業する貴湖だってアンタには振り回されるだけでアシストは無理よ。もう、誰かいないかしら?この娘のお守りを頼める子は!』


 それからしばらくして、華ちゃんが現れ、ラン姉チャンの卒業式にて、

 『華!舞華の面倒は貴女に任せたから!あとよろしくね!』ヒシッ!
 『ハイ!ラン姉様。私が舞華をアシストします、ご安心ください!』小学生の会話なのかい?

 


 『じゃあ彼女、今北海道なのね。何か似合ってるね、のんびり屋で大らかな彼女に。』
 『ねぇ涼子ちゃん、「南場」さんって覚えてる?涼子ちゃんと同じクラスの「南場 良子」さん。』その名前で涼子ちゃんの表情が変わった。

 『何で舞華からその名前が出るの?まさか?アンタ!』

 『うん、実は「私への嫌がらせ」や「あの事故」、裏で彼女が仕組んだの。すべて涼子ちゃんの所為にして。』


 「南場 良子」
 この時はまだ、私や華ちゃんも彼女が私たちの「大きな障害」になるとは知らなかった。


 そんな私たちを最初に「盾」になって守ってくれたのは、

 タカちゃんだった。





 『まぁ大体、北代さんに提供して頂いた資料通りでした。渡部は取引先に無理な仕事をあてがって、自分は利益を得てました。方法はご存知の通りだと、その頃からガラの悪い連中とも付き合いだした様ですな。』

 鶴亀署の会議室みたいな所に通され、刑事さんから色々聞かれたり聞かされたり、情報開示していた。 

 『あ、お茶どうぞ。』
 『これ「交番茶」ですか?』
 『喜んで頂けると思い、用意しておきましたよ。ハハハ、で?「猫」の事ですが、資料に有ったホームレスですが、亡くなったそうです。社会復帰施設で頑張っていた様ですが、あの「廃工場」に住み着いて頃から身体を病んでいたらしいです。また猫たちと暮らせる事を励みにしていた様で…。』

 『そうでしたか。若い頃に腎臓一つ病気で摘出したって言ってましたから…、』

 『あと、この「怪文書」ですが、渡部は知らないと言ってますが、心当たり有りますか?』

 それは自分たちを廃工場に呼び出した昭和チックな「怪文書」で、レポート用紙に新聞や雑誌の活字を切り貼りして作った昔の刑事モノのドラマで見た脅迫状みたいなモノだった。 

 「お前の好きな野良猫たちは●●工場にいる、今日の19時に工場にコイ!こなければ猫は全部コロす。」

 『指紋はお二人のモノしか出ませんでした。これはどちらに有りましたか?』

 『自宅のポストです。いつ投函されたか、わかりません。』
 
 『いま、付近の防犯カメラを当たらせてます。北代さんのお宅には防犯カメラが有ると聞いたのですが?』
 『それが、数日前に息子が自転車で誤ってカメラに突っ込んで、修理中でした。面目ない。』
 
 『その事を知っていたのでしょうか?』
 『黒幕がいるかも、「渡部」と話していて何かチグハグなんです。行動とか発言とか、台本を読み違えた新人俳優、いや芸人かな?それを観て笑ってるプロデューサーみたいなのがいるんじゃないか?って思うんですよ。』

 『さすが、名探偵!何か目星が付いているのですか?』
 『よして下さい。自分はただのオッさんですよ。娘に甘くて、息子に厳し……!刑事さん、渡部の兄妹って今どうしてますか?』

 『渡部は一人息子では?親から継いだ工場も会社も他に相続する者がいないから…』

 『いるはずなんです、母親の違う兄妹が!』




 『私がタカ子に怪我をさせた事になってて、私の事を信じないオヤジが勝手に転校をきめたの。
転校する日の朝にあの子が家に来たのよ。「あれはアナタがやったんじゃない。」って。嬉しかったわ、この子は信じてくれてるって。』

 あの後に私への嫌がらせが始まった。上履きや教科書を隠されてた。雨の日、私の傘が壊されていた。先生は上級生のグループを疑っていて、上級生たちの担任に報告していた。

 『これで文句を言うな!』

 壊された傘より高い大人用の傘を渡された。お婆ちゃんが買ってくれた赤い可愛い子どもサイズの傘。こんな男モノの傘が代わりになる訳が無い。この怖いオジサンは誰だろう?

 『あの子が「ずっと言えななかった事が有る。」、そう言って「アナタと私は従姉妹なの。」って!だから私の事、信じてくれたんだ!そう思うと嬉しかった。この子は味方だと思ったの。でも…。』

 涼子ちゃんが言葉に詰まった。私の記憶にも「あの子」が笑って話してる光景が浮かんだ。

 『「だって、私がやったんだから。」、そう言って写真を渡して帰って行ったの。あのクソ親父が女の人、ううん、多分今の私くらいの女の子とラブホに入っていく所とかの写真。最初それがなんだか分からずに、母に見せたの。』 
 
 それがおそらく離婚の切っ掛けだろうか?涼子ちゃんのお母さんがウチに謝罪に来たのは離婚後だった。但し不倫したのは母親と噂された。自分に都合の悪いは事実を捻じ曲げても揉み消す、でもそれが自身の首を絞める事に成るのに。

 
 『お姉ちゃん、大丈夫?』
 天音ちゃんが心配して涼子ちゃんの顔を覗き込む、瞳が潤んで泣きそうな笑顔が切なく健気で、ほっとけない。
 『涼子ちゃん、最近「南場」さんに会った?』

 『会ってない。でも時々もしかしたらって事があるんだ。親父が用意したマンションに空き巣が入ったり、帰りが遅くなった時に誰かにつけられたり、気の所為かもだけどあの子が関係してるかもって思えてならないの。』

 



 

 『渡部の父が社長をしていた時期に「南場 葉子」と言う女工がいた様で、突然退職した数年後、女の子を出産してます。おそらくは……ご存知だったのですか?』

 『子どもの頃に母が、「ウチと反対の名字でお父さんのいない子がいたら優しくしてあげるのよ、可哀想な子だからね。」って言っていた事が有るんです。てっきり「ろしたき」か「代北」かと思ったんですが、「北」の反対で「南」、「南場」の事かと?
 母も結婚前はあの工場地区でラジオとか電化製品の組み立てや玩具の組み立てとか女工の仕事をしていたので、何か事情を知っていたかも知れません。』

 『南場 葉子さん、既に亡くなっていまして、娘さんも数年前に病死してました。ですが妙なんですよ?』

 『猫ですか?もしかして?』
 『北代さん!ウチの署の顧問探偵になりませんか!「眠りの●●」みたいに!』

 『まぁ、冗談半分で検討しますよ。』俺、寝付き悪いし。


 ♪~~ 
 嫁さんのスマホが「奴らをけせ!」を奏でる。舞斗からだ。
 『母さん、早く帰って来てくれ!ふうなが産気付いた。』

 『慌てない、慌てない。猫のお産は安産って決まってるんだから。』

 
 『長く引き止めて申し訳ないです、またご連絡しますので。北代さんに伺った件も調べてみます。あと私も「森猫」ですか?今度休みに家内と一歳にお邪魔しますね。』この刑事さんの名前、伺ってたかな?俺は「ある件」についても情報提供する事を約束して、「南場 葉子」の「孫」について調べてくれる事をお願いした。

 個人情報が絡むと探偵の肩書きが胡散臭く思う方が、少なからずいらっしゃる。ここは信じてお願いします!
 事情聴取から解放された俺たちは急ぎ家路についた…つもりだった。
 
 『ねぇ、最後に刑事さんに何話してたの?』
 『ん?あぁ、さっきも言ったろ。「チグハグ」だって。田辺の、じゃなくて渡部の言動からしてあまりに「やり口」が計画的なのにやってる本人が追いついてない。
 自分が考えた悪徳商法に引っ掛かる詐欺師みたいで、まだ「表」に出てない誰かがいるはずなんだ。』 
 『もう、さっきから「渡部」と「田辺」くんを間違えてるよ。いい加減に「田辺」くんに悪いから!』
 
 『ん?』
 『ハイ?』

 『「田辺」っているのか?もしかして。』

 『う、うん。「田辺 慎司」くん、同じクラスじゃないけど。バスケ部のキャプテンだったよ。あれ?でも授業中の事故が原因で辞めたとか?』

 『ソイツ、何組?俺達二組だったよな?』中学の三年間、クラス替えは三年の時だけなのに、俺たちの代は生徒数が少ないとかでそのままだった。そして…

 『一組…だったね、それって?』
 『授業中の事故って、体育か?』
 『そうね。確か、でもクラス違う……あ!そうだ!』
 『そう、体育の授業は男女別だけど、一組は二組と、三組は四組と男女に別れて合同授業だった。もう一度、刑事さんに話してくる、先に帰ってくれ。  あ!なぁ、その田辺って付き合ってた子とか知らないか?』そうゆーのは女子のが詳しそうだか。

 『わからない。でもバスケ部のマネージャーとか女子バスケ部とか仲良かったかも?』



 
 『あの子は私を、いやあのクソ親父を憎んでいるんだ!だから私の事も、』
 涼子ちゃんは震えていた、天音ちゃんから聞いていたが涼子ちゃんはココに来てから一度も外出していないらしい。食事もこの部屋で運ばれたモノを食べる。最近は天音ちゃんも一緒にココで食べてお話ししているとか。 トイレやお風呂は流石に部屋から出るが、本当に短時間らしい。 

 数回、大学の友達、恐らくオタサークルのメンバーだと思うが、尋ねて来たらしい?
 ここの事はこちらのお宅にご迷惑だから伏せてある筈なのに、誰かが自分の思うストーリーになる様に情報を操作しているかも?

 『その事なんだけど、実は引っ越しを考えているんだ、××県三翁市の温泉地に。』
 『本当?お父さん!この間行った所?』
 『害獣やスズメバチ駆除とかの依頼が多いので支社を置く事になりまして。』
 
 あれ?そこ山王院の本邸がある所?まさかね~?

 『そこなら、ワンこもニャンコも飼えるんだよね!お父さん!』
 『そうだよ、天音がちゃんとお世話してあげるならね。』

 『やったー!ね、お姉ちゃんも一緒に「新しいおウチ」に行こうよ!
 天音、ニャンコとワンちゃん、両方ともお世話したいけど、天音一人じゃ大変だから、お姉ちゃん手伝って!』
 
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婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

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