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いらっしゃいませ!ようこそ『森の猫さま』へ。
ふうな出産、福ちゃんお父さんになる!
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『おい!様子は?もう産まれたか?』
今まで猫の出産に立ち会うことが無かった訳では無いが、
『なーおぅ…。』ふうな自身は初産で、かなり苦しそうだ。
何と、福ちゃんがふうなの顔や背中を舐めて、励ましている。
普通はあり得ない事だ、大抵のオス猫は出産に無関心なのだが、ふうなや生まれてくる我が子への優しさを福ちゃんは惜しまない様だ。
普通なら猫任せでほっとくのが良いのだが、普通じゃないネコなんでね、一応心配している。
『あれ、舞華は?』
もうすぐ零時だ。寝たのか?
『さっき、帰って来た。着替えてると思う、いい事有ったみたいだよ。』
華は山王院の本邸に行っている、泊まりになるらしい。
時々、ジジイのご機嫌伺いや後継人の叔父様に顔見せなどで出掛ける事が有る。俺も呼ばれる時は何か厄介事を頼む時だ。まぁ報酬とか施設の利用とか吹っかけるかどな!
其れはさておき。
人に変化出来るふうな、猫の姿の時はお腹が膨らんで、妊娠しているのは確認出来たのだが、人の姿になると、「妊婦」では無く普通の体型なのでもしかしたら、お腹の子に良くないのではと考えて、しばらく猫の姿のままでいてもらっていた。
綺麗な三毛が今は余りツヤがない、お腹の子に栄養がまわされているのだろうか?
『ふうー!』
『ほら、あまり沢山いるとふうなも不安になるから、みんな部屋から出てなさい。』
嫁さんと福ちゃんを残して、となりのリビングに移動する。
『何匹かな?4、5匹ぐらいは居そうな大きさだけど。』
猫は昔から安産と多産で子宝祈願の象徴らしい。
足立まみにも産まれたら見に来てもらおうと思う。
『あ、お母さんからメール来た。一匹め、産まれた。』
写メで確認した。真っ黒もそもそしてる、黒猫だ!
その後、十数分起きに子猫を産み落とし、4匹の男の子と一匹の女の子、五匹のお父さんになった福ちゃん。
『おめでとさん、相棒。どうだい、父親になった気分は?』
『なーー。』福、ドヤ顔!
気付けば、夜が開け外に日が差し始めた。
福は再び自分の嫁さんの労を労う様にふうなの顔を舐めていた。続いて我が子を愛おしく見ては、
『見て見て!僕の子だよ!』とでも言うように
『なーー、なーー!』鳴い誇っていた。
その内、一匹を咥えて連れて来た。最初に生まれた黒猫、男子だ。俺は胡座で福ごと子猫を抱き上げる。よく見ると薄ら黒毛にも濃淡があり、成長すればもっとハッキリ分かるだろう縞模様だ。
しばし、子猫をまじまじ見ると福が下ろす様に体を捩らせたので解放すると、子猫を俺の膝の上に下ろしてまた愛妻の元へ行くともう一度子猫を咥えて運んで来た。いつしか俺の横に嫁さんも座っていた。
『何かしらね?福ちゃんなりの儀式かしら?』福なりの意味の有ることだろう。
咥えて連れて来たのは最後に産まれた福そっくりの男の子だった。最初に福を譲り受けた時の事を思い出す。
あの時こんなに長く付き合うネコになるとは思って無かった。舞斗、舞華より1年長い付き合いだ。
三たび福が咥えてきたのは、綺麗な三毛、ふうな似の女の子だった。
そして今度はその子を久美の膝の上に乗せて、じっと久美の顔を見つめている。
『もしかして、この子たちを私たちに任せたいのかしら?』
『あと二匹は?福お父さんよ?』俺はもうすぐ18年の付き合いを迎える相棒に意地悪く聞いてみた?
『なぁ~お。』福とふうなの子なら五匹ともウチで面倒見ても問題ないが、すでに里親希望者もいる。
まさかこの子たちはウチに置いておく理由があるのか?
例えば三毛がふうなみたいなネコ娘になるとか?
『分かったよ。この子たちはウチで育てる。その証に、』
まず俺は黒毛の子を抱き上げ、
『縞模様が有るから、縞太郎。』ぷっ!嫁がふいた。
『こっちは福に似てるから、似太郎。』ぷぷっ!
『じゃ、じゃあ「シマ君」と「ニタ君」と呼ぼうか。じゃあ女の子は私が付けてあげる。んん~ん、そうだ!綺麗な三毛だから「珊瑚」!』ん?俺よりましか。
『にゃん!』どうやら福は気に入った様だ。四たび、ふうなの元に行くと
なんと今度は福とふうなが一匹づつ咥えてきた!
福は決して他の子を差別した訳では無い。産まれた子の事を福なりの考えで俺達に託したのだ。
産まれた全ての子猫を俺に見せに来た福夫婦。俺と嫁さんは改めて一匹づつ抱き上げて、
『福、おめでとう。ふうな、お疲れ様。みんな、産まれてきて、ありがとう。これからよろしくな!』
ひとまずは落ち着く、子供達は登校時間ギリギリまで寝ているらしい。嫁さんは既に朝飯の準備をしている。
ふうなと子猫たちは毛布を敷いた大きめの段ボール箱でおやすみしている。
俺は健康の為に「菊芋茶」を飲みながら、早朝の再放送、時代劇ドラマを見ていた。
『駄目だ、内容が頭に入らない。』目が冴えて眠れないハズなのに、然りと初めて福やふうなと会った時の事が頭をぐるぐるする。諦めてテレビを消す。
高校卒業後、すぐ就職した会社が幼馴染と結婚した頃から黒企業化して来た。連日残業で疲れていた性か?お互いの両親から早く孫をと、急かされていたが当時は技能職で仕事に誇りを持っていたので、いずれ仕事が落ち着いてからと逃げ腰だった。
ある日、急に定時で仕事が終わり、まだ外も明るかったのでいつもならさっさと駅に向かうのに、会社の側の自販機でコーヒーでも飲もうといつもと反対方向に目を向けた。すると自販機横の民家の壁に
「子猫、差し上げます。」の手書きポスターが貼られていた。
子猫の写真、一目惚れ!
次の瞬間には呼び鈴を鳴らしていた。
連れ帰った子猫は母、嫁、妹たちに直ぐに気に入られた。
後で気付けばこの日定時で会社を出なければ、福とは会えなかったかも知れない。福を譲り受けた家の主人は今日ポスターを貼ったばかりですぐ申出があるとは思わなかったそうだ。もし昨日が定時ならポスターは無い、明日だったら福は他の里親が現れたかも知れない。
それから暫くして、嫁が疲れたと言ってソファに腰掛けると必ず福は嫁の膝の上に乗り、しきりに頭を嫁のお腹に付けていた。
子猫が母猫のお腹を揉んで乳の出を良くする行動が有るが、それとも違う?
何か予感した母が嫁を掛かり付け医に連れて行くと、
ふうなと最初に会ったのは優斗が産まれてまもなくだった。
過去の経験から猫は完全に室内飼いにした。ガラス越しに地域猫が福や姫、公太達に会いに来ていた。母が庭でエサやりをしてる事もだが、その中にやたらと警戒心の強い猫がいた。
人馴れした猫には、保護猫としてしばらくウチで暮らして見て、大丈夫そうなら里親を探したり、そのままウチの子にしたりと猫屋敷の呼び名を拝命していたが、
毎日、猫の食事の時間にやって来るのに、人が近づくと
『ふうぅーっ!』と威嚇する三毛猫がいた。
『なんかフウナちゃん、思い出すね!』っと新名、
『えー、あの子の方がまだ愛嬌有ったよ?』っと綾乃、
『そうかな?どっちも性格キツそうだよ?』っと嫁さん。
「フウナ」とは自分達が子供の頃に縁の下に住み着いた野良猫が産んだ子猫たちの内、唯一の女の子で手を差し伸べると
『フゥーー!』と威嚇して、でも可愛いのでなんとかウチの猫にしようと試みた。
『名前を付けたら仲良くなれるかも?』と『フーって泣くから「フウナ」ちゃんにして、お兄ちゃん。』。
『んじゃ、こいつは「初代フウナ」から頂いて、「ふうな」でイイか?』
勝手に名前を付けたが、不思議な事に
『フウナ、お前のご飯はこっち。それは老ネコ用の柔らかめだよ。』とか、
『フウナちゃん、背中に貧乏虫付いてるよ、取ってあげるからじっとして。』
などなど名前を呼んで話しかけると、不思議と態度が柔らかい。
自分の名前だとわかった様だ。
特に子供達は「フーちゃん」「フウナちゃん」と親しみを込めて呼んでいる。フウナも大人にはまだ警戒心が有るが、子供相手には割と距離が近い気がする。
いつのまにか部屋にも入っていたり、家猫たちとも良好な関係を築いている様だ。
そんなある日、ハイハイから捕まり歩きを覚えた優斗。猫たちと競走したり、ワンコの背中に寄りかかり家中ウォーキング。本当、子供の成長には驚く。
子供達があまり使わなかったハンガーラックと段ボール箱でキャットタワーを作った。小さい木製の本棚なども組み込んで、大したモンだ。
ただ、流石に猫が4、5匹も一度に乗ると倒れそうになるので何か壁に固定出来る方法がないか模索中だった。
優斗のハイハイは階段も登ってしまう程レベルが上がった。とても優秀な猫の先生が多数いる事だし、捕まり歩きも卒業して自立歩行ももうすぐかと浮かれ油断していた。
もちろん階段が上がれる事が分かってからは二階に行けない様に階段前にベビーゲートを設置、舞斗舞華にも注意した。
しかし優斗の成長は我々の予想の上だった。
優斗が猫を追ってキャットタワーによじ登った。嫁さんが目を離したほんの短い間に、いや、猫たちと遊んでいるから安心していたのだ。
段ボールの部分が猫と優斗の重味に耐え切れずに凹み崩れた!
『ゆうと、あぶない!』
リビングから聴き慣れない声がした!台所で猫たちの食事の準備をしていた久美が慌ててリビングに向かう。
そこで目にしたのは、上部が崩れて傾いている元キャットタワーとキャッキャと喜んでいる優斗を抱いている全裸の少女だった。
リビングに入って来た久美に気付いた少女が慌てて、
『ち、違うんだ!ゆうとが落ちそうになったから…うぐっ⁉︎』
ハヤテのように、ザブ…駆け寄り、
まだ話している全裸少女を優斗ごと抱きしめて、
『ありがとう、フウちゃん!優斗を助けてくれたのね!ありがとう。』
B88の谷間に顔をホールドされて、息苦しくも嫌じゃない。けども、
『く、くるしい、オカアサン。』
『あら、フフ。ごめんごめん。フウナちゃん。大丈夫?』
『大丈夫、で、でもなんで?われが「フウナ」だとわかる?われもおどろいている⁉︎ヒトのスガタになった?でも。』
『でも?ん?』全裸少女の顔を覗き込み、優しく微笑む嫁さんはおそらく「お母さん」の顔なのだろう。そうだ!
『ねぇ、その格好じゃマズイから、今服を持ってくるから待ってて。優ちゃんもお姉ちゃんといい子で待ってて。
お姉ちゃんのオッパイいたずらしちゃメッよ!』
人の姿の時は便宜上「北代 ふうな」を名乗らせている、舞華達より少し年上の親戚の子と言う設定にした。
猫と人の姿を使い分け、保護猫活動にも随分協力してもらった。
その内、下駄を鳴らして奴が来たらどうしよう?御父上には伊万里の天目茶碗で御入浴いただき接待しよう。とか思っていたが
『そんな人知らないよ。』と言われた。
時々、福ちゃんと一緒にいる所を見かけるので期待はしていた。
なぜ、嫁さんは人の姿になったふうなが猫のフウナだとわかったのか?
『そこは「お母さん」だもん!』だそうだ。
色々思い出すが、その間には俺の転職、戦貴との出会い、母の死、ヒメの出産、華と二葉との出会い、山王院での大仕事、俺の油断からの負傷…からの嫁の大泣きand大激怒。
あれ?これ走馬灯なの!
いつの間にか、俺の膝の上には福が寝息を立てている。最近はメイに取られて寂しかったか?相棒よ!
福の寝顔を見てると心地良い疲労感に襲われる。逆らわず寝よう。
『おはよう、アナタ。』嫁さんが美人だ。まだ夢の中かな?
『ん、何時だ?』今日は特に店に宅配が付く予定は無いので、家に居ても無問題。
以前、ヒメが出産した時は威嚇され、誰も近づけなかったが、ふうなは流石に大丈夫そうなので、無理の無い位置で子猫を見ていよう。福も一緒に来るだろう。
昨晩の様子だとイクメンパパ猫になりそうだ。
『ん?何時だ?』答えが返って来ない。
『福ちゃん、大丈夫?息してる?』はて?寝ているだけでは?
『お~い、福ちゃんや。お前があんまり静かだからお母さん心配してるぞー。……福?』
膝の上で寝ている相棒の背中を撫でながら問いかける?
!ほのかに温かい、そんな!
猫は人より体温が高い、室内でこの温かみは低い!
呼吸も辛うじて感じる程度!
『久美、愛葉先生に連絡だ!来るか行くか?聞いてくれ!』
『ん、分かった!』嫁の目に涙が浮かんでた、スマホを取り出し…た手を人の姿のふうなが抑える様に握っている。
『ふうちゃん、なんで?急いで先生に!』
『申し訳ありません、母さま。ですがこれは福さまのご意志なのです。』涙ぐむふうな。
『何言ってるの、ふうちゃん。前にも福ちゃん具合悪くなったけど、先生が見て下さったら持ち直したじゃない。今度だって、ね!』必死な久美、普段からは想像もつかない慌て様。
『その通りです、ですが本当はその時には福さまは天に召されるはずでした。
ですが未だお子を残していない事が主人に申し訳なく感じていた福さまに、まだこの地に居られたヒメ姐さまの御霊がお力をお貸し下されたのです。』
ふうなも普段と違い、重々しく悲しそうだ。
ヒメ、半年前に亡くなった福の妹分、アメショのMIX。
福の兄貴分、公太の「つがい」となり、ノワール達を産み、ショットガンの母親代わりもした頼もしい母さん猫。
まだ、居たのかい。子猫の頃から15年、福に続く長い付き合いのお嬢ちゃん。
『ヒメちゃん!お願い、もう一度だけ福ちゃんを助けて!せめて子猫達の目が開くまで、お願い!ヒメ!』久美は天井に向かって叫んでいた。
何事かと離れの自室から駆け込んで来た綾乃。
『姉さん、どうしたの?ヒメって聞こえたけど?ん、ふうな、アンタ大丈夫なの?人の姿になって?』
綾乃にとってはヒメは子猫の時から、妹か娘の様に可愛いがっていた。
ふうなだって変わり種の姪っ子みたいなものだ。心配でたまらない。
『久美、見送ってあげよう。公太も待ってるんだろ?』
『でも、せっかくお父さんになったばかりなのに…。ん、ふうな、貴女…。』
ふうなは眼に涙をためて、微笑んでいた。
『福さまと約束したです。泣かないって、でも涙は止められないよ、母さま~。』
思わずふうなを抱きしめる久美は俺を見て、
『子供たちが帰って来るまで、駄目? 口伝にあるんでしょう?そう言うの。』
『…。』俺は黙って首を振る、有るけど「戻り屍」は生きてる様に見えるだけで……。もう福じゃ無い。
久美を納得させ、ふうなと子猫たちを慈しむことを福に告げる。
俺の膝の上で静かに息を引き取る福。
「またね、にいちゃん。」
そう聞こえた気がする。
いつの間にか、俺の周りにメイやノワール、アルファやショットガン、ミコや美雪たちが集まっていた。庭にも、数匹の気配がある。ん?地域猫だけじゃ無い?
『シグマ?お前も福を迎えにきたのかい?』
子猫の福を我が子の様に愛でていた愛犬の「シグマ」、アイツの鳴き声を聴いた気がする。
福の頭を撫で、いつものように抱き上げる。
お気に入りのブランケットに包み、仏間の仏壇の前に座る。
『母さん、福ちゃんがそっち行ったからな。』
仏壇の母の写真に福の報告をする。
福用の猫ベットを仏壇の前に置き、ブランケットごと福を寝かせて、そのまま子供達が帰ってくるまで、冥福を祈る。
舞斗が泣き崩れた。
久しぶりに膝の古傷が疼き、よくわからない心細さに襲われた。
ふうなは猫に戻り、子猫たちに乳を与えている。
親父はひと言、
『そうか。』とだけ。
あっちでお袋の膝の上か、シグマやヒメ達と遊んでるだろう。
そっちが飽きたら、また来いよ。
子猫の目が空いた頃、足立くんが妹を連れて子猫に会いに来た。
犬だの猫だの介護ロボだの?のお出迎えにちっちゃくて元気なお姫様はフルパワーでお喜び!
辛うじて、目が開いて何となく表情が感じられる。
『こんにちは、みうきです!』
舞華、華、二葉がきゅんきゅんしてた。福がなくなって塞ぎがちだったが久しぶりの明るい声が聞こえた。
『久しぶりだな、アダチ。』
『ふうな姐さん!帰省されてたんですか!あ、お腹大丈夫ですか?』
今だけ、ふうなには「妊婦体験キット」を付けてもらった。
『ん、なんか不思議だがな。あ、子猫なんだかこっちの…、』
『おねえちゃん!この子があそぼーって!』
幼女が抱き上げたのは背中にだけ黒虎縞がある「ななし」。
『アダチの妹御は見る眼がある!』
『福店長の残したお子様ですから、妹共々大事にそだてます。』
足立くん、ウルウル。
『おねえちゃん、いたいいたいの?』心配しないで、美由紀ちゃん。
『リリちゃん!新作盛って来たの!着て!』台無しだよ!
悪プルの店長がリリや介護ロボを口説いている。
『おねえちゃん、先輩のお宅で騒がないで!』
『えりねえちゃ、猫さんがこわいこわいって!しーなの!』
『妹や幼女に怒られて、ご褒美かな?エリエリ?』
『?ここ、綾乃パイセンのお宅でしたか?』
『この子、みうきのおとおとなの~!』どうやら決まりの様だ。
福とふうなの子供達、これからよろしくお願いします。
さて、ふうなにはこれから基本、猫でいてもらう!
たまに御里帰りはすることも有るだろう。赤ちゃんいないと駄目だよね?人間の?
保留中、まだお爺ちゃんになりたくないし。
実は福が息を引き取った時、我が家の敷地内に保護猫だけでなく、結構な数のノラ猫たちが集まってしまった。
飼い猫が迷い込んでないか確認して「野良猫」と分かった子から獣医の愛葉先生に診断して貰って可能なら保護猫ボランティア預かりにしてもらった。
現状、子猫も生まれて我が家もコレ以上は難しい。
でも、福の為に集まってくれた良い子たち。良いご縁がありますように。
『そう言えば、あの方々はパパさんのお知り合いデスか?』
足立くん、先日あやしいお兄さんたちに絡まれた、実はオタサー。
その時に、足らってくれた「いぶし銀」なオジ様たち。
『多分それ、ふうなの舎弟。だよな、ふうな?』
『え!あ、あぁ。アイツら、そんな大層なモンじゃないぞ。』
『そうなんスね、でも助かりました。お礼言っといて下さいッス!』誤魔化せたよな?
まさか、あいつらがふうなの「妖力」で人間に見えた「森猫」のオス猫とは思うまい。
見えただけなので、若干、足立くん目線の補正が入るそうだ。
『みゆきちゃん、このネコちゃんと仲良くしてね。』綾乃さん、幼女萌えか?
『ん!だいじょーぶ。みゆき、おねえちゃんだから!』
『エリエリは役者になると思ったのに、まさかの古着屋とは?』
『パイセンは作家さんですか。ゆりゆりですか?』
『パイセンは、やめて。』
『じゃ、「お姉様」で!』
『お前、私のスールじゃないし、直したタイを更に崩すし。』
どうやら、大学時代の知り合いだったような2人が飲み始めそうなので、釘を刺す。
『飲むなら泊まれ。嫁さんに運転してもらって二人送るから。』
『大丈夫!飲みません、父がうるさいので。』
あやしい、ので泊まる前提で飲ました。
しばらくして、以前から思案していた子猫の里親先を訪れる。
子猫を親離れさせる頃合いで、俺は知人を訪ねた。
まぁ仕事仲間って感じだ。
『ぎょーぶー!いるかー!ぎょーぶー!』
『子供かっ!どうした?ケンの字、UMAでも出たか?』
地元、「鶴瓶神社」の社務所の前でいい大人が叫んでる、しかも自分の名前を!
恥ずかしい!またコイツは!
『いるなら、早く来いよ。』
『ああ、悪かったなっつーの!で、ナニ死に来た?』
どうも俺の知り合いは、口が悪いのが多い。
出てきたのは、長身でひょろっと痩せたオッさんで、顎に無精髭、髪も伸ばしているのでは無く、切るのが面倒とかで姪に貰った髪ゴムで後ろで纏めている。ヨレヨレの作務衣は繕い痕が有る。
『猫、いるか?子猫。』
『くれ、いや、下さい。』
『よし、家にいるから杏樹ちゃんに迎えにこさせてな。』
「朝霧 刑部」、元「水神探偵事務所 零班」所属。
現在は実家の「鶴亀神社」で祓い屋をしている。でも時々復帰させる。
「零班」(ゼロはん)つまり「ゼロ」=「0」=「レイ」で、
「霊」班。
心霊関係の依頼を担当させてた。
『杏樹は今、京都に行ってるからな!私が参る!』
『なら、朱野ちゃんだ。オッさんと猫の組み合わせは却下だ!』
『アレだろ、子猫ちゃんって、福ちゃんの子だろ。』
『なんだよ、知ってるなら尚更、あけのん一択だ!』
『姪っ子に妙な呼び名を付けるな!』
『いや、普通に友達同士で呼びあってるけど。』
『あ、ケンケンさん!こんにちは!子猫見に行って良い?』
『にゃんはすー、あけのん。俺はイイけど、刑部んがな。』
『えぇー!なんでなんで!ぎょーぶ君?駄目なの?』
『駄目じゃない、って、こら!また叔父を名前で、しかも「くん」とか?てか、なんだよ?ケンケンって、ガキの頃のお前のあだ名じゃないか!』
『うるさいよ、お前。あけのん、子猫あげるから、ウチに遊びに来なさい。』
『えぇ!本当にー!行く、行きます!』
『待て!お前の言い方、変質者が幼女を自宅に連れ込むテンプレみたいだぞ!』
朝霧 朱野ちゃんは優斗や二葉たちより二歳位年下の
「チビっ子巫女」だ!
今も絶対正義な巫女装束に身を包み、今日もおウチのお手伝いだ!
んで、刑部より「霊」的なポテンシャルと言うか、潜在能力は高い!
だからこその里親候補なのだよ。
『なぁなぁ、刑部、お前も来ていいから。実は見てもらいたい「モノ」が有ってな。』
『またかよ、猫欲しいから行くけど。』
ってのがひと月前、あんずちゃんが帰ったタイミングで子猫を引き取りに来た朝霧姉妹とオマケのオッさん。
『舞華ちゃんち来たの、久しぶりかも?あ、叔母様、これ母からです。』杏樹ちゃんが栗入りモナカをお土産に持ってきた。私服見たの初めてかも?
『お兄ぃー様!私、妹が欲しいです!あけのんをウチの子に!』
巫女装束で我が家にお越しいただき、三つ指付いて
『朝霧 朱野です。お招き頂きありがとうございます。本日は大切な子猫をお譲り頂けると伺い、この様な形で参りました。』
って、あけのんがご挨拶♡
『山王院 二葉ですの!朱野さん、是非私と「姉妹の誓い」を!』
二葉、チビっ子巫女に「キュン」した様だ。
そんな義妹が可愛いとか思っているんだろう、我が息子。
いや、ソファの陰で腹抱えて笑いを堪えてたよ。分からん奴。
『何が面白いの?舞斗ちゃん?』
あけのんのお姉ちゃん、あんずちゃんこと、
「朝霧 杏樹」
ニックネームは「あんず」
舞斗達の幼馴染、と言うか?
現零班の稼ぎ頭。おいおい。
こちらの子も普段はお淑やかキャラだが、まぁその内話すよ。
そちらは子供達に任せて、
『で、見せたい「モノ」って?』
大人たちは2階の俺の「部屋」で保管している「首輪」を見ていた。
『こんなアブナイもん、何処で手に入れた?』
『わかるのか?』
『そう思ったから見せたんだろ?』コイツのドヤ顔は当てにならないが…。
『正確な事は、分からん。保護した少女の首に付いてたんで、なんとか外したそうだ。』
『はぁ~?ソイツは鬼畜かド外道か、両方だな。お前さんは平気だったのか?こんなもん、そばに置いても?』
『この部屋、結界有るから。あとは「へるばっと」が肩代わりしてくれるし。』
『お前の「従鬼」、相変わらず凄いな。』
『んで、どうよ?』
『これ、「生気」を吸い取る類いの邪法が付いてるな。燃やすぞ!』
『おうよ。』
『側にいた者も、心が折れた者から吸われてるぞ。』
『具体的にどうなる?死ぬのか?』
『人それぞれだな。』
『先生、それでは分かりま千円。』
『例えば、強い生き甲斐があれば耐えられる、けど過去の辛い記憶が強く思い出したりしたら、それが精神にくるか?身体に来るか?健康状態にもよるな?作りが未熟な分、効果にムラが有る。そんな感じだった。』
捨てるに捨てられなかったのだろう。ソレが原因かと思えてきた。
『誰が作ったか、わかるか?』
『プロ、ってことは無いな。でなきゃ素人にハサミなんかで壊せない。アマチュアが真似て作った…かも?まぁ素質は有るな。』
得意げに話すもよくわからない?
『コレ、何の為の首輪だ?よくある「隷属の首輪」とか?』
『かもな、だとすると本来の目的とは違う働きをした事になる。もしくはジワジワ苦しませた後に…かな?』
どちらにせよ、酷い仕打ちだ。
『なぁ、これ誰が付けていたんだ?
かなり時間が経ってるから呪術自体は弱まってるがそれでも女子供にゃ危険だぞ?』
『なんだ、ソレ。「小鳥箱」じゃあるまいし。』
『いや、ソレ系の呪法だ。』
『幼い女の子だ、十年くらい前に保護した時に外した。預かったのは二ヶ月前だ。預かった日からこの部屋の中に保管した。』
『その子、何か特殊な子か?』
『ん、だろうな。なぁ「柚李葉」とは最近会ったか?』
『何でここでその名を出す?』
刑部の顔に明確な「不愉快」を感じる。
『多分なんだかその子、お前の「元カノ」と同じ「猫娘」の可能性が有る。』
『…』黙る奴に俺は追い討ちをかける。
『姿を消した彼女を見つける切っ掛けになるかもな。 刑部よぅ、復帰しな。「零班」に!
この件は杏樹には荷が重い。ダーティーなお仕事になる、お前向きなんだよ。』
『高くつくぞ!俺のギャラは!』
杏樹ちゃんの半分もやらんからな、♪~。
今まで猫の出産に立ち会うことが無かった訳では無いが、
『なーおぅ…。』ふうな自身は初産で、かなり苦しそうだ。
何と、福ちゃんがふうなの顔や背中を舐めて、励ましている。
普通はあり得ない事だ、大抵のオス猫は出産に無関心なのだが、ふうなや生まれてくる我が子への優しさを福ちゃんは惜しまない様だ。
普通なら猫任せでほっとくのが良いのだが、普通じゃないネコなんでね、一応心配している。
『あれ、舞華は?』
もうすぐ零時だ。寝たのか?
『さっき、帰って来た。着替えてると思う、いい事有ったみたいだよ。』
華は山王院の本邸に行っている、泊まりになるらしい。
時々、ジジイのご機嫌伺いや後継人の叔父様に顔見せなどで出掛ける事が有る。俺も呼ばれる時は何か厄介事を頼む時だ。まぁ報酬とか施設の利用とか吹っかけるかどな!
其れはさておき。
人に変化出来るふうな、猫の姿の時はお腹が膨らんで、妊娠しているのは確認出来たのだが、人の姿になると、「妊婦」では無く普通の体型なのでもしかしたら、お腹の子に良くないのではと考えて、しばらく猫の姿のままでいてもらっていた。
綺麗な三毛が今は余りツヤがない、お腹の子に栄養がまわされているのだろうか?
『ふうー!』
『ほら、あまり沢山いるとふうなも不安になるから、みんな部屋から出てなさい。』
嫁さんと福ちゃんを残して、となりのリビングに移動する。
『何匹かな?4、5匹ぐらいは居そうな大きさだけど。』
猫は昔から安産と多産で子宝祈願の象徴らしい。
足立まみにも産まれたら見に来てもらおうと思う。
『あ、お母さんからメール来た。一匹め、産まれた。』
写メで確認した。真っ黒もそもそしてる、黒猫だ!
その後、十数分起きに子猫を産み落とし、4匹の男の子と一匹の女の子、五匹のお父さんになった福ちゃん。
『おめでとさん、相棒。どうだい、父親になった気分は?』
『なーー。』福、ドヤ顔!
気付けば、夜が開け外に日が差し始めた。
福は再び自分の嫁さんの労を労う様にふうなの顔を舐めていた。続いて我が子を愛おしく見ては、
『見て見て!僕の子だよ!』とでも言うように
『なーー、なーー!』鳴い誇っていた。
その内、一匹を咥えて連れて来た。最初に生まれた黒猫、男子だ。俺は胡座で福ごと子猫を抱き上げる。よく見ると薄ら黒毛にも濃淡があり、成長すればもっとハッキリ分かるだろう縞模様だ。
しばし、子猫をまじまじ見ると福が下ろす様に体を捩らせたので解放すると、子猫を俺の膝の上に下ろしてまた愛妻の元へ行くともう一度子猫を咥えて運んで来た。いつしか俺の横に嫁さんも座っていた。
『何かしらね?福ちゃんなりの儀式かしら?』福なりの意味の有ることだろう。
咥えて連れて来たのは最後に産まれた福そっくりの男の子だった。最初に福を譲り受けた時の事を思い出す。
あの時こんなに長く付き合うネコになるとは思って無かった。舞斗、舞華より1年長い付き合いだ。
三たび福が咥えてきたのは、綺麗な三毛、ふうな似の女の子だった。
そして今度はその子を久美の膝の上に乗せて、じっと久美の顔を見つめている。
『もしかして、この子たちを私たちに任せたいのかしら?』
『あと二匹は?福お父さんよ?』俺はもうすぐ18年の付き合いを迎える相棒に意地悪く聞いてみた?
『なぁ~お。』福とふうなの子なら五匹ともウチで面倒見ても問題ないが、すでに里親希望者もいる。
まさかこの子たちはウチに置いておく理由があるのか?
例えば三毛がふうなみたいなネコ娘になるとか?
『分かったよ。この子たちはウチで育てる。その証に、』
まず俺は黒毛の子を抱き上げ、
『縞模様が有るから、縞太郎。』ぷっ!嫁がふいた。
『こっちは福に似てるから、似太郎。』ぷぷっ!
『じゃ、じゃあ「シマ君」と「ニタ君」と呼ぼうか。じゃあ女の子は私が付けてあげる。んん~ん、そうだ!綺麗な三毛だから「珊瑚」!』ん?俺よりましか。
『にゃん!』どうやら福は気に入った様だ。四たび、ふうなの元に行くと
なんと今度は福とふうなが一匹づつ咥えてきた!
福は決して他の子を差別した訳では無い。産まれた子の事を福なりの考えで俺達に託したのだ。
産まれた全ての子猫を俺に見せに来た福夫婦。俺と嫁さんは改めて一匹づつ抱き上げて、
『福、おめでとう。ふうな、お疲れ様。みんな、産まれてきて、ありがとう。これからよろしくな!』
ひとまずは落ち着く、子供達は登校時間ギリギリまで寝ているらしい。嫁さんは既に朝飯の準備をしている。
ふうなと子猫たちは毛布を敷いた大きめの段ボール箱でおやすみしている。
俺は健康の為に「菊芋茶」を飲みながら、早朝の再放送、時代劇ドラマを見ていた。
『駄目だ、内容が頭に入らない。』目が冴えて眠れないハズなのに、然りと初めて福やふうなと会った時の事が頭をぐるぐるする。諦めてテレビを消す。
高校卒業後、すぐ就職した会社が幼馴染と結婚した頃から黒企業化して来た。連日残業で疲れていた性か?お互いの両親から早く孫をと、急かされていたが当時は技能職で仕事に誇りを持っていたので、いずれ仕事が落ち着いてからと逃げ腰だった。
ある日、急に定時で仕事が終わり、まだ外も明るかったのでいつもならさっさと駅に向かうのに、会社の側の自販機でコーヒーでも飲もうといつもと反対方向に目を向けた。すると自販機横の民家の壁に
「子猫、差し上げます。」の手書きポスターが貼られていた。
子猫の写真、一目惚れ!
次の瞬間には呼び鈴を鳴らしていた。
連れ帰った子猫は母、嫁、妹たちに直ぐに気に入られた。
後で気付けばこの日定時で会社を出なければ、福とは会えなかったかも知れない。福を譲り受けた家の主人は今日ポスターを貼ったばかりですぐ申出があるとは思わなかったそうだ。もし昨日が定時ならポスターは無い、明日だったら福は他の里親が現れたかも知れない。
それから暫くして、嫁が疲れたと言ってソファに腰掛けると必ず福は嫁の膝の上に乗り、しきりに頭を嫁のお腹に付けていた。
子猫が母猫のお腹を揉んで乳の出を良くする行動が有るが、それとも違う?
何か予感した母が嫁を掛かり付け医に連れて行くと、
ふうなと最初に会ったのは優斗が産まれてまもなくだった。
過去の経験から猫は完全に室内飼いにした。ガラス越しに地域猫が福や姫、公太達に会いに来ていた。母が庭でエサやりをしてる事もだが、その中にやたらと警戒心の強い猫がいた。
人馴れした猫には、保護猫としてしばらくウチで暮らして見て、大丈夫そうなら里親を探したり、そのままウチの子にしたりと猫屋敷の呼び名を拝命していたが、
毎日、猫の食事の時間にやって来るのに、人が近づくと
『ふうぅーっ!』と威嚇する三毛猫がいた。
『なんかフウナちゃん、思い出すね!』っと新名、
『えー、あの子の方がまだ愛嬌有ったよ?』っと綾乃、
『そうかな?どっちも性格キツそうだよ?』っと嫁さん。
「フウナ」とは自分達が子供の頃に縁の下に住み着いた野良猫が産んだ子猫たちの内、唯一の女の子で手を差し伸べると
『フゥーー!』と威嚇して、でも可愛いのでなんとかウチの猫にしようと試みた。
『名前を付けたら仲良くなれるかも?』と『フーって泣くから「フウナ」ちゃんにして、お兄ちゃん。』。
『んじゃ、こいつは「初代フウナ」から頂いて、「ふうな」でイイか?』
勝手に名前を付けたが、不思議な事に
『フウナ、お前のご飯はこっち。それは老ネコ用の柔らかめだよ。』とか、
『フウナちゃん、背中に貧乏虫付いてるよ、取ってあげるからじっとして。』
などなど名前を呼んで話しかけると、不思議と態度が柔らかい。
自分の名前だとわかった様だ。
特に子供達は「フーちゃん」「フウナちゃん」と親しみを込めて呼んでいる。フウナも大人にはまだ警戒心が有るが、子供相手には割と距離が近い気がする。
いつのまにか部屋にも入っていたり、家猫たちとも良好な関係を築いている様だ。
そんなある日、ハイハイから捕まり歩きを覚えた優斗。猫たちと競走したり、ワンコの背中に寄りかかり家中ウォーキング。本当、子供の成長には驚く。
子供達があまり使わなかったハンガーラックと段ボール箱でキャットタワーを作った。小さい木製の本棚なども組み込んで、大したモンだ。
ただ、流石に猫が4、5匹も一度に乗ると倒れそうになるので何か壁に固定出来る方法がないか模索中だった。
優斗のハイハイは階段も登ってしまう程レベルが上がった。とても優秀な猫の先生が多数いる事だし、捕まり歩きも卒業して自立歩行ももうすぐかと浮かれ油断していた。
もちろん階段が上がれる事が分かってからは二階に行けない様に階段前にベビーゲートを設置、舞斗舞華にも注意した。
しかし優斗の成長は我々の予想の上だった。
優斗が猫を追ってキャットタワーによじ登った。嫁さんが目を離したほんの短い間に、いや、猫たちと遊んでいるから安心していたのだ。
段ボールの部分が猫と優斗の重味に耐え切れずに凹み崩れた!
『ゆうと、あぶない!』
リビングから聴き慣れない声がした!台所で猫たちの食事の準備をしていた久美が慌ててリビングに向かう。
そこで目にしたのは、上部が崩れて傾いている元キャットタワーとキャッキャと喜んでいる優斗を抱いている全裸の少女だった。
リビングに入って来た久美に気付いた少女が慌てて、
『ち、違うんだ!ゆうとが落ちそうになったから…うぐっ⁉︎』
ハヤテのように、ザブ…駆け寄り、
まだ話している全裸少女を優斗ごと抱きしめて、
『ありがとう、フウちゃん!優斗を助けてくれたのね!ありがとう。』
B88の谷間に顔をホールドされて、息苦しくも嫌じゃない。けども、
『く、くるしい、オカアサン。』
『あら、フフ。ごめんごめん。フウナちゃん。大丈夫?』
『大丈夫、で、でもなんで?われが「フウナ」だとわかる?われもおどろいている⁉︎ヒトのスガタになった?でも。』
『でも?ん?』全裸少女の顔を覗き込み、優しく微笑む嫁さんはおそらく「お母さん」の顔なのだろう。そうだ!
『ねぇ、その格好じゃマズイから、今服を持ってくるから待ってて。優ちゃんもお姉ちゃんといい子で待ってて。
お姉ちゃんのオッパイいたずらしちゃメッよ!』
人の姿の時は便宜上「北代 ふうな」を名乗らせている、舞華達より少し年上の親戚の子と言う設定にした。
猫と人の姿を使い分け、保護猫活動にも随分協力してもらった。
その内、下駄を鳴らして奴が来たらどうしよう?御父上には伊万里の天目茶碗で御入浴いただき接待しよう。とか思っていたが
『そんな人知らないよ。』と言われた。
時々、福ちゃんと一緒にいる所を見かけるので期待はしていた。
なぜ、嫁さんは人の姿になったふうなが猫のフウナだとわかったのか?
『そこは「お母さん」だもん!』だそうだ。
色々思い出すが、その間には俺の転職、戦貴との出会い、母の死、ヒメの出産、華と二葉との出会い、山王院での大仕事、俺の油断からの負傷…からの嫁の大泣きand大激怒。
あれ?これ走馬灯なの!
いつの間にか、俺の膝の上には福が寝息を立てている。最近はメイに取られて寂しかったか?相棒よ!
福の寝顔を見てると心地良い疲労感に襲われる。逆らわず寝よう。
『おはよう、アナタ。』嫁さんが美人だ。まだ夢の中かな?
『ん、何時だ?』今日は特に店に宅配が付く予定は無いので、家に居ても無問題。
以前、ヒメが出産した時は威嚇され、誰も近づけなかったが、ふうなは流石に大丈夫そうなので、無理の無い位置で子猫を見ていよう。福も一緒に来るだろう。
昨晩の様子だとイクメンパパ猫になりそうだ。
『ん?何時だ?』答えが返って来ない。
『福ちゃん、大丈夫?息してる?』はて?寝ているだけでは?
『お~い、福ちゃんや。お前があんまり静かだからお母さん心配してるぞー。……福?』
膝の上で寝ている相棒の背中を撫でながら問いかける?
!ほのかに温かい、そんな!
猫は人より体温が高い、室内でこの温かみは低い!
呼吸も辛うじて感じる程度!
『久美、愛葉先生に連絡だ!来るか行くか?聞いてくれ!』
『ん、分かった!』嫁の目に涙が浮かんでた、スマホを取り出し…た手を人の姿のふうなが抑える様に握っている。
『ふうちゃん、なんで?急いで先生に!』
『申し訳ありません、母さま。ですがこれは福さまのご意志なのです。』涙ぐむふうな。
『何言ってるの、ふうちゃん。前にも福ちゃん具合悪くなったけど、先生が見て下さったら持ち直したじゃない。今度だって、ね!』必死な久美、普段からは想像もつかない慌て様。
『その通りです、ですが本当はその時には福さまは天に召されるはずでした。
ですが未だお子を残していない事が主人に申し訳なく感じていた福さまに、まだこの地に居られたヒメ姐さまの御霊がお力をお貸し下されたのです。』
ふうなも普段と違い、重々しく悲しそうだ。
ヒメ、半年前に亡くなった福の妹分、アメショのMIX。
福の兄貴分、公太の「つがい」となり、ノワール達を産み、ショットガンの母親代わりもした頼もしい母さん猫。
まだ、居たのかい。子猫の頃から15年、福に続く長い付き合いのお嬢ちゃん。
『ヒメちゃん!お願い、もう一度だけ福ちゃんを助けて!せめて子猫達の目が開くまで、お願い!ヒメ!』久美は天井に向かって叫んでいた。
何事かと離れの自室から駆け込んで来た綾乃。
『姉さん、どうしたの?ヒメって聞こえたけど?ん、ふうな、アンタ大丈夫なの?人の姿になって?』
綾乃にとってはヒメは子猫の時から、妹か娘の様に可愛いがっていた。
ふうなだって変わり種の姪っ子みたいなものだ。心配でたまらない。
『久美、見送ってあげよう。公太も待ってるんだろ?』
『でも、せっかくお父さんになったばかりなのに…。ん、ふうな、貴女…。』
ふうなは眼に涙をためて、微笑んでいた。
『福さまと約束したです。泣かないって、でも涙は止められないよ、母さま~。』
思わずふうなを抱きしめる久美は俺を見て、
『子供たちが帰って来るまで、駄目? 口伝にあるんでしょう?そう言うの。』
『…。』俺は黙って首を振る、有るけど「戻り屍」は生きてる様に見えるだけで……。もう福じゃ無い。
久美を納得させ、ふうなと子猫たちを慈しむことを福に告げる。
俺の膝の上で静かに息を引き取る福。
「またね、にいちゃん。」
そう聞こえた気がする。
いつの間にか、俺の周りにメイやノワール、アルファやショットガン、ミコや美雪たちが集まっていた。庭にも、数匹の気配がある。ん?地域猫だけじゃ無い?
『シグマ?お前も福を迎えにきたのかい?』
子猫の福を我が子の様に愛でていた愛犬の「シグマ」、アイツの鳴き声を聴いた気がする。
福の頭を撫で、いつものように抱き上げる。
お気に入りのブランケットに包み、仏間の仏壇の前に座る。
『母さん、福ちゃんがそっち行ったからな。』
仏壇の母の写真に福の報告をする。
福用の猫ベットを仏壇の前に置き、ブランケットごと福を寝かせて、そのまま子供達が帰ってくるまで、冥福を祈る。
舞斗が泣き崩れた。
久しぶりに膝の古傷が疼き、よくわからない心細さに襲われた。
ふうなは猫に戻り、子猫たちに乳を与えている。
親父はひと言、
『そうか。』とだけ。
あっちでお袋の膝の上か、シグマやヒメ達と遊んでるだろう。
そっちが飽きたら、また来いよ。
子猫の目が空いた頃、足立くんが妹を連れて子猫に会いに来た。
犬だの猫だの介護ロボだの?のお出迎えにちっちゃくて元気なお姫様はフルパワーでお喜び!
辛うじて、目が開いて何となく表情が感じられる。
『こんにちは、みうきです!』
舞華、華、二葉がきゅんきゅんしてた。福がなくなって塞ぎがちだったが久しぶりの明るい声が聞こえた。
『久しぶりだな、アダチ。』
『ふうな姐さん!帰省されてたんですか!あ、お腹大丈夫ですか?』
今だけ、ふうなには「妊婦体験キット」を付けてもらった。
『ん、なんか不思議だがな。あ、子猫なんだかこっちの…、』
『おねえちゃん!この子があそぼーって!』
幼女が抱き上げたのは背中にだけ黒虎縞がある「ななし」。
『アダチの妹御は見る眼がある!』
『福店長の残したお子様ですから、妹共々大事にそだてます。』
足立くん、ウルウル。
『おねえちゃん、いたいいたいの?』心配しないで、美由紀ちゃん。
『リリちゃん!新作盛って来たの!着て!』台無しだよ!
悪プルの店長がリリや介護ロボを口説いている。
『おねえちゃん、先輩のお宅で騒がないで!』
『えりねえちゃ、猫さんがこわいこわいって!しーなの!』
『妹や幼女に怒られて、ご褒美かな?エリエリ?』
『?ここ、綾乃パイセンのお宅でしたか?』
『この子、みうきのおとおとなの~!』どうやら決まりの様だ。
福とふうなの子供達、これからよろしくお願いします。
さて、ふうなにはこれから基本、猫でいてもらう!
たまに御里帰りはすることも有るだろう。赤ちゃんいないと駄目だよね?人間の?
保留中、まだお爺ちゃんになりたくないし。
実は福が息を引き取った時、我が家の敷地内に保護猫だけでなく、結構な数のノラ猫たちが集まってしまった。
飼い猫が迷い込んでないか確認して「野良猫」と分かった子から獣医の愛葉先生に診断して貰って可能なら保護猫ボランティア預かりにしてもらった。
現状、子猫も生まれて我が家もコレ以上は難しい。
でも、福の為に集まってくれた良い子たち。良いご縁がありますように。
『そう言えば、あの方々はパパさんのお知り合いデスか?』
足立くん、先日あやしいお兄さんたちに絡まれた、実はオタサー。
その時に、足らってくれた「いぶし銀」なオジ様たち。
『多分それ、ふうなの舎弟。だよな、ふうな?』
『え!あ、あぁ。アイツら、そんな大層なモンじゃないぞ。』
『そうなんスね、でも助かりました。お礼言っといて下さいッス!』誤魔化せたよな?
まさか、あいつらがふうなの「妖力」で人間に見えた「森猫」のオス猫とは思うまい。
見えただけなので、若干、足立くん目線の補正が入るそうだ。
『みゆきちゃん、このネコちゃんと仲良くしてね。』綾乃さん、幼女萌えか?
『ん!だいじょーぶ。みゆき、おねえちゃんだから!』
『エリエリは役者になると思ったのに、まさかの古着屋とは?』
『パイセンは作家さんですか。ゆりゆりですか?』
『パイセンは、やめて。』
『じゃ、「お姉様」で!』
『お前、私のスールじゃないし、直したタイを更に崩すし。』
どうやら、大学時代の知り合いだったような2人が飲み始めそうなので、釘を刺す。
『飲むなら泊まれ。嫁さんに運転してもらって二人送るから。』
『大丈夫!飲みません、父がうるさいので。』
あやしい、ので泊まる前提で飲ました。
しばらくして、以前から思案していた子猫の里親先を訪れる。
子猫を親離れさせる頃合いで、俺は知人を訪ねた。
まぁ仕事仲間って感じだ。
『ぎょーぶー!いるかー!ぎょーぶー!』
『子供かっ!どうした?ケンの字、UMAでも出たか?』
地元、「鶴瓶神社」の社務所の前でいい大人が叫んでる、しかも自分の名前を!
恥ずかしい!またコイツは!
『いるなら、早く来いよ。』
『ああ、悪かったなっつーの!で、ナニ死に来た?』
どうも俺の知り合いは、口が悪いのが多い。
出てきたのは、長身でひょろっと痩せたオッさんで、顎に無精髭、髪も伸ばしているのでは無く、切るのが面倒とかで姪に貰った髪ゴムで後ろで纏めている。ヨレヨレの作務衣は繕い痕が有る。
『猫、いるか?子猫。』
『くれ、いや、下さい。』
『よし、家にいるから杏樹ちゃんに迎えにこさせてな。』
「朝霧 刑部」、元「水神探偵事務所 零班」所属。
現在は実家の「鶴亀神社」で祓い屋をしている。でも時々復帰させる。
「零班」(ゼロはん)つまり「ゼロ」=「0」=「レイ」で、
「霊」班。
心霊関係の依頼を担当させてた。
『杏樹は今、京都に行ってるからな!私が参る!』
『なら、朱野ちゃんだ。オッさんと猫の組み合わせは却下だ!』
『アレだろ、子猫ちゃんって、福ちゃんの子だろ。』
『なんだよ、知ってるなら尚更、あけのん一択だ!』
『姪っ子に妙な呼び名を付けるな!』
『いや、普通に友達同士で呼びあってるけど。』
『あ、ケンケンさん!こんにちは!子猫見に行って良い?』
『にゃんはすー、あけのん。俺はイイけど、刑部んがな。』
『えぇー!なんでなんで!ぎょーぶ君?駄目なの?』
『駄目じゃない、って、こら!また叔父を名前で、しかも「くん」とか?てか、なんだよ?ケンケンって、ガキの頃のお前のあだ名じゃないか!』
『うるさいよ、お前。あけのん、子猫あげるから、ウチに遊びに来なさい。』
『えぇ!本当にー!行く、行きます!』
『待て!お前の言い方、変質者が幼女を自宅に連れ込むテンプレみたいだぞ!』
朝霧 朱野ちゃんは優斗や二葉たちより二歳位年下の
「チビっ子巫女」だ!
今も絶対正義な巫女装束に身を包み、今日もおウチのお手伝いだ!
んで、刑部より「霊」的なポテンシャルと言うか、潜在能力は高い!
だからこその里親候補なのだよ。
『なぁなぁ、刑部、お前も来ていいから。実は見てもらいたい「モノ」が有ってな。』
『またかよ、猫欲しいから行くけど。』
ってのがひと月前、あんずちゃんが帰ったタイミングで子猫を引き取りに来た朝霧姉妹とオマケのオッさん。
『舞華ちゃんち来たの、久しぶりかも?あ、叔母様、これ母からです。』杏樹ちゃんが栗入りモナカをお土産に持ってきた。私服見たの初めてかも?
『お兄ぃー様!私、妹が欲しいです!あけのんをウチの子に!』
巫女装束で我が家にお越しいただき、三つ指付いて
『朝霧 朱野です。お招き頂きありがとうございます。本日は大切な子猫をお譲り頂けると伺い、この様な形で参りました。』
って、あけのんがご挨拶♡
『山王院 二葉ですの!朱野さん、是非私と「姉妹の誓い」を!』
二葉、チビっ子巫女に「キュン」した様だ。
そんな義妹が可愛いとか思っているんだろう、我が息子。
いや、ソファの陰で腹抱えて笑いを堪えてたよ。分からん奴。
『何が面白いの?舞斗ちゃん?』
あけのんのお姉ちゃん、あんずちゃんこと、
「朝霧 杏樹」
ニックネームは「あんず」
舞斗達の幼馴染、と言うか?
現零班の稼ぎ頭。おいおい。
こちらの子も普段はお淑やかキャラだが、まぁその内話すよ。
そちらは子供達に任せて、
『で、見せたい「モノ」って?』
大人たちは2階の俺の「部屋」で保管している「首輪」を見ていた。
『こんなアブナイもん、何処で手に入れた?』
『わかるのか?』
『そう思ったから見せたんだろ?』コイツのドヤ顔は当てにならないが…。
『正確な事は、分からん。保護した少女の首に付いてたんで、なんとか外したそうだ。』
『はぁ~?ソイツは鬼畜かド外道か、両方だな。お前さんは平気だったのか?こんなもん、そばに置いても?』
『この部屋、結界有るから。あとは「へるばっと」が肩代わりしてくれるし。』
『お前の「従鬼」、相変わらず凄いな。』
『んで、どうよ?』
『これ、「生気」を吸い取る類いの邪法が付いてるな。燃やすぞ!』
『おうよ。』
『側にいた者も、心が折れた者から吸われてるぞ。』
『具体的にどうなる?死ぬのか?』
『人それぞれだな。』
『先生、それでは分かりま千円。』
『例えば、強い生き甲斐があれば耐えられる、けど過去の辛い記憶が強く思い出したりしたら、それが精神にくるか?身体に来るか?健康状態にもよるな?作りが未熟な分、効果にムラが有る。そんな感じだった。』
捨てるに捨てられなかったのだろう。ソレが原因かと思えてきた。
『誰が作ったか、わかるか?』
『プロ、ってことは無いな。でなきゃ素人にハサミなんかで壊せない。アマチュアが真似て作った…かも?まぁ素質は有るな。』
得意げに話すもよくわからない?
『コレ、何の為の首輪だ?よくある「隷属の首輪」とか?』
『かもな、だとすると本来の目的とは違う働きをした事になる。もしくはジワジワ苦しませた後に…かな?』
どちらにせよ、酷い仕打ちだ。
『なぁ、これ誰が付けていたんだ?
かなり時間が経ってるから呪術自体は弱まってるがそれでも女子供にゃ危険だぞ?』
『なんだ、ソレ。「小鳥箱」じゃあるまいし。』
『いや、ソレ系の呪法だ。』
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『その子、何か特殊な子か?』
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『何でここでその名を出す?』
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『多分なんだかその子、お前の「元カノ」と同じ「猫娘」の可能性が有る。』
『…』黙る奴に俺は追い討ちをかける。
『姿を消した彼女を見つける切っ掛けになるかもな。 刑部よぅ、復帰しな。「零班」に!
この件は杏樹には荷が重い。ダーティーなお仕事になる、お前向きなんだよ。』
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