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いらっしゃいませ!ようこそ『森の猫さま』へ。
エンディングまで何かあると思う。
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有る晴れた日曜の朝、メイに鼻を甘噛みされ目を覚ます。ほぼ朝の5時、御飯の催促ではなくてメイの毎朝の習慣らしい。
これが福だと耳の匂いを嗅ぐので鼻息がうるさくて起きる。
メイも生後五ヶ月とも成ると、もう子猫ではなく、中猫くらいだろう。
『こら~。起きるからやめてくれ~、メイちゃんや。』
抱き上げる度に成長を実感する。
先日、刑事さんから「田辺 慎司」の消息を聞いた。
それはあまりにも辛いものだった。
スポーツ推薦で希望する高校に進学が決まっていたが利き手を授業中に負傷。
数年は治療が必要で推薦は取り消し。
推薦入学を信じて、受験準備をしていなかった為、かろうじて合格した高校に進学。
そこで猛勉強し、希望する大学に合格したが今度は父親の務める工場が買収され、余剰人員として父親がリストラ!大学進学を諦め就職し、父親を励ましていたが自分をクビにした会社の前で父親が自殺、発見が早かった為、一命は取り留めたが、昏睡状態で目を覚ます事なく数年後亡くなった。
失意の中、そんな彼を励ましていたのが幼馴染の「南場 秋」、田辺の父親と同じ工場で働き出した「南場 葉子」の娘である。
母一人幼い娘一人の南場親子に田辺親子も親身に付き合っていたらしく、近所の人からは幼い頃から兄妹の様だったが、年頃になっていずれあの二人は結婚して幸せになると思っていたと口々に言っていたらしい。
ここまで御膳立てが出来ていれば、結婚はしていなくても二人が結ばれて「南場 良子」が生まれいる筈だ、そう思っていた。
勘のいい方ならお解りかもだが、廃工場に住み付き、野良猫にエサを与えていたホームレスこそ「田辺 慎司」だった。
彼が住み付いていた廃工場も、彼の父が働いていて、渡部の父に買い取られた挙げ句に渡部の代で業績不振で閉鎖、正にその工場だった。
実は以前に俺はこのホームレスと親しくなっていた。お互い同級生とは知らずに、いや田辺は気づいても知らない振りをしていたのかも知れない。
飼い主から捨てられた猫を世話して、産まれた子猫の里親を探して世話をしてるホームレスらしき人がいると聞いて様子を見に行った事が有る。
最初は警戒していたが、母が昔、この工場地区で玩具の部品を組み立てたりなど話すと、「それは○●工場だな。大手玩具会社の仕事を受注していたけど、人件費が安い海外工場が出来たら立ち行かないとかで工場閉めたんだよ。」とか教えてくれた。
それから偶にここへ来て、子猫を譲ってもらったり、酒とかネコ缶とか差し入れたりと、くだらない話しをしにやってきたのだが、
『昨日、ボランティアの連中が来て社会復帰の施設が有るからって…でも俺にはネコ達がいるから…』
『ならその猫たち、俺に任せろ!…嫁さんに要相談だけどな。』二人バカ笑いして、後日ネコを引き取る約束をした。
翌日ヤル気MAXな嫁さんと工場を訪れた時に奴もネコも居なかった。
そもそも俺がこの件に巻き込ま……関わる事になったのは全ては「ネコ」が始まりなのだ。
あの日、田辺の事を伝えに戻った俺にあの刑事さんは、眼を見開き驚いて、
『例の工場に住み付いたホームレス、「田辺」と言うんですが、まさか本人でしょうか?確認します!』
舞華や渡部の娘が知っている少女が「南場」性を名乗っていたなら「南場 秋」とは結婚はしていないとは思っていたが、
おそらく田辺は愛しい女性が、憎んでいる者たちの肉親である事を知ってしまったのだ。
ただそれをいつ知ってしまったか?もしかして「南場 良子」の父親は「田辺」では無いかも、と愚考しているとあの刑事さんから「南場 秋」についての分かった事、かなり意外な事がわかったと連絡をもらった。
『せっかくなので「猫カフェ」で会いませんか?久々に家族サービスがしたいんですよ。』
「福店長」不在で残念っと言ったお客が多かったが、イケメンの紅葉郎が女性客を魅了している。
刑事さんの奥方と娘さんもウットリだ。保護猫組の年長者だけあって大人の魅力?ムンムンだ?
『それにしても謎が深まりしたな。』子猫の鼻先で「ネコじゃらし」風の玩具をふりふりしている刑事さん、シュールだ。
『自分も気になって、親しい同級生に聞いたんですよ。体育の授業中に些細な事で渡部が田辺に突っかかったらしいですが、教師が止めに入って大した事は無かったと言うんですよ。』
まぁ、俺が親しい中学の同級生は嫁と「シモ」と「明神 速斗」ぐらいだけど。
『推薦を取り消すくらいの大ケガなら誰か覚えていても良さそうで、ところが変な所から真相が分かりました。
その日その事で気が治らない渡部が河川敷でランニングしていた田辺を偶然見つけて、襲ったらしいんです。
この事を渡部の父親が金の力で示談にしたんです。
「お前の息子がウチの息子を中学生とは思えないほど酷い侮辱をした!だからあんな事をしてしまったんだ!ウチの息子を犯罪者にしたのはお前の息子だ、」っね。
こんな感じで脅して
一応、渡部の父親、慰謝料は払いましたが、…田辺を治療した医者をみつけました。現在は医者を辞めて田舎でスローライフしてましたよ。』
『渡部はこれをヒントにしたんですかね?』
『万引きした子供の親で「子供の欲しがるモノを無雑作に並べているからだ!」っと騒いで揉み消そうとする親御さんがいるそうですよ。』
そして刑事さんからは意外な事をきかされた。
「南場 秋」に子供はいなかった。出産や産婦人科の受診記録さえ無く、同様に「田辺 慎司」も同じだった。
それどころか、舞華たちが通っていた小学校にも「南場 良子」が在籍した記録が無かった。
『どう思いますか?まるで狐に化かされた様な、当時「渡部 涼子」のクラスメイトに「南場 良子」の事を聞いたのですが「そんな子、いた様な気もするし、はっきり覚えていない。」とか「そんな子はいない。」などちょっと怖くなりましたよ。』ネコじゃらしを振る手が止まっていた。
『バカしたのは「狐」じゃなく、「猫」かもしれないですよ。』笑いを取りたかった訳じゃない。本気だった。
『普通だったら「揶揄わないでくれ。」と怒る所ですが、私もそう思いそうです。実は「南場 葉子」を看取ったのはどうも「猫」らしいのですよ。』
『保護猫ですよ。』俺は有る事を思い出した。
『少しその話題と離れますが、調べて頂けましたか?土地の売却の件。』
『ええ、渡部は親の代で手に入れた工場や社屋、土地などこの数年でかなり売却してます。
手を広げた新規事業が失敗したようで、売れ残った工場などで「裏の商売」していました。』
『それ、聞いても良い話ですかね?』大体想像がつくが、周りにいる女性たちに聴かしていい話とは思えない。権藤さん情報では「反吐が出る」様な事らしい。あの人、硬派な権藤さんが思い出し怒りをしていたので女性や子供を××することだろう。
『ガラの悪い連中に貸していたんですよ。パーティー会場として、何のパーティーかまでは、知らないと言ってますが彼自身も参加していたかもしれないです。
今回の提供資料で、ウチの署で抱えている厄介な「ヤマ」がいくつか解決しそうでしてね、
各課の同僚が北代さんと是非是非お目に掛かりたいと申してますが如何でしょう。ココに呼んでも良いですかね?』
ご
っついおじさんがネコじゃらし持って猫と遊びながら
「ホシの潜伏先、分かりませんか?」
なんて聞いてくるとか滑稽だが、売り上げに繋がるなら。
『1日一人まで、世間話としてなら。』本当なら影丸に丸投げしたい。
『お客様、ウェルカムドリンクにハーブティーはいかがですか?』おや?いつもならメイドちゃんが運んできてくれるのに、華が俺と刑事さんの二人分のカップを運んで来た。
『紹介しますよ、ウチの娘…のような子で「山王院 華」です。華、こちら今回お世話になった刑事さん。あちらに奥方と娘さんもいらっしゃるので同じモノをお二人にも。』
ふと見るとすでにネコ耳メイドがウェルカムドリンクをお出ししてメイドを真ん中にスリーショット撮影している。
『はじめまして、山王院 華です。父がお世話に成りまして、ありがとうございます。私、こちらの副店長をしておりますので、何か有りましたらご遠慮なくどうぞ。』
『コレはご丁寧に、しっかりされた娘さんで羨ましいですな。おや?山王…院っと言うと…!』
驚いた顔の刑事さんに華が、『よろしければコレを。』
っと、差し出したのは「森猫」のポストカード?可愛い子猫たちが寄り添って寝ている写真で癒されるが、受け取って何気に裏を見る。
『ん?「介護ホーム 山の郷」?あの~これは……えっ!まさか!』
『差し出がましいとは思ったのですが、偶々、山王院系列の施設にいらっしゃったので。』
ポストカードの裏には老人介護施設の住所と
「田辺 美根子」の名前が有る!
『田辺のお袋さんか?!』
『こちらの施設に「アニマルセラピー」としてウチの子を派遣することを企画中ですの。』
『ん?おい華、舞華は?昨日何か準備してたみたいだけど?居ないのか?』
『すでに別働隊が現地で行動を開始しているはずです。』
『娘さんも少年探偵団かライダー隊ですか⁈』
刑事さん、同世代だな。差し詰め俺はおやっさんだな。
『娘か悪ノリするんでやめて下さい。華、他に誰が同行したんだ?』
『あそこは山王院の施設だから必要無いど思ったけど、やな予感がしたから舞斗や華月、「癒し枠」でショットガンと虎丸かな。あと自主参加で数人。』
あ、本当だ。今日まだ「メインクーン」の虎丸兄貴を見ていない。なんだよ、やな予感って!
『よぅ、ケン坊。おっと、其方は鶴亀署の剣崎さんじゃないですか。』え、刑事さんって剣崎ってお名前でしたか、って権藤さん、何しに来た!
『ゴンパパさん、いらっしゃいませ。いつもより早い来店ですね。梅昆布茶でよろしいですか?』
『おぅ、頼むわ、華ちゃん。ん?なんでツラしてやがる、ケン坊、で?舞斗坊は元気に出掛けたかい?』
『ツッコミ処満載だけど、舞斗が出掛けた事を何故知ってますかね?ゴンパパさん。』
『そりゃ、アレだ。最近、元工場地区で悪さしてる連中の情報を教えたからじゃねえか?』
『華、知ってたか?』
『ハイ、舞斗と一緒に聞きましたから。大丈夫です。舞斗が負けるとかあり得ません!』
『だから相手が危ないだろ!死人が出たらどうする?…あの~剣崎さん、大変申し訳ありませんが…。』
『県警に連絡しますか?個人的には大丈夫とは思いたいのですが。』
某県某所の山間地域、近くに温泉や観光スポット、史跡や天然記念物など山の中と言っても割と人の行き来が有る場所。
「介護ホーム 山の郷」
今日はここにボランティア活動として、「森猫」選抜チームがやって来た!
の筈だが、割とおじいさんおばあさんの受けがいいのは、
この二人だった。
『お嬢ちゃん、可愛いわね。お人形さんみたいで。抱っこしてるクロ猫ちゃんもぬいぐるみみたいよ。』
『ありがとうございます、お婆様。この子は「ノワール」といいますの。とてもお利口ですのよ。』
『こっちのお嬢ちゃんもフランス人形みたいで、異人さんかしら?髪の毛がキラキラして綺麗ね。』
『リリ、フランス人違う!母様日本人、父様半分日本人、半分ロシア人、だからリリは4分の一、ロシア人、4分の三は日本人。ボルシチをオカズにおにぎりを食べて育った、はいぶりっとなのだ。』
『皆さん、動物よりも二葉やリリに癒されるゾ!』
『孫娘オーラ、凄まじいの。ここでアニマルセラピー効果ある?』
とかなんとか言いながらも、猫を抱いたり、犬を撫でたりと大体のご老人は喜んでる様だ。
それでも、数人は人の輪から離れて一人でいるお年寄りもいる。
ショットガンが一人の男性に近付く。
『おや、ジョン。もうご飯の時間かい?』そう言って、ショットガンの頭を撫でる。尻尾を振るショットガン。
痴呆が進んでいるらしく、自分の飼い犬を思い出し、ショットガンと接している様だ。
そんなご老人を見て、舞斗と舞華は自分たちの祖父母を思い、泣きそうになる。
『「舞斗、こっちの警備班が、不埒者を捕捉したらしい、どう始末するか教えて欲しいってさ。ちょい来な!」』連絡用インカムから十六夜灯火が舞斗をお呼び出しした。
『本当に来たのかよ?』
先程までの厳かな気持ちを踏み躙るお誘いが、舞斗を本気で怒らせる。
今日会う目的のご婦人はすぐ側で猫たちと戯れている。
『舞華、こっち頼む。あの子の事もな。』
『ん、まかせろ!じゃあ、行こうか、涼子ちゃん。』
施設へ向かう私道の側に観光客向けの「道の駅」があった。その駐車場に車を止めて、山林の中を人目を避けて「山の郷」に近づく男たち。十人くらいだろうか、あまり真っ当な職業の人では無い。
『あの女を誘き出すんだ、ババアは殺すな!他は俺たちが本気だって分からせる為にもやっちまっても構わねぇ……んっ!』
『それ以上、喚かないで下さいませ。折角の森林の空気が穢れます。』
それから男たちはなす術も無く拘束されていた。山林に静けさが戻るのに要した時間は五分も掛からなかった。
『ふへぇ!』
舞斗の気の抜けた声に、トキメキを表す警備班班長、
「九院 岬」、
山王院家の執事、「九院 狼」の妹さんである。
十人ほどいる男たちはロープでぐるぐる巻きに拘束されている、その中で荒縄で「亀甲縛り」や「釣り天井」などされている男が2、3人いる。
山王院本邸の警備班、
「山王院メイド部隊、黒猫」
親父殿の教え子たち。山王院の爺さんに頼まれたらしい。十三人いる、みんな強い。
頭がトップギアからローギアな舞斗を見つけて、モジモジ近づく岬嬢。
『やだ、舞斗きゅん!いらしてたのですか!恥ずかしいですの、こんな端ない格好で!』
端無くて恥ずかしいのは格好なのね?
『岬姉、久しぶりっす。そんな事無い、格好良いよ!いつものメイド服も慎ましく清楚で優しさを感じて岬姉らしいけど、この服も凛々しく格好良い。でもエプロンとヘッドドレスは変わらないんだ?』
おそらく、今岬姉が着ているのはこの前、母さんが着ていた強化装甲服の類いだ。少しだけライトな感じなのはフルフェイスのメットでは無く、インカムにバイザー、一応口元も防塵マスクらしいクラッシャーで覆っている。さながら特撮ヒーローいや、ヒロインだ。
そしてお父ちゃんが言っていた。
「困ったら、女性は誉めておけ。お前に好意が有れば相手が良い方に解釈する。ダメならダメダメだ。死んで詫びるか、土下座かな?」後半は無かった事にして。
『ま、舞斗くぅん、ハグしてあげたい。でもこの服だと舞斗きゅんを絞め殺しちゃうかも?…そうか、待ってて、今これ脱ぐから!でも、ヘッドドレスとエプロンはメイドの嗜みだから付けたままね!』変身解除じゃない、本当に脱ぐ気だ!
もういいかい?
なんで、この人俺に執着してるの?凄い美人なのに、かなり残念な人。現山王院副メイド長らしい。序列有るんだね?
『副長、その辺りでお兄様へのお戯れを自重して下さいね。』
ふ、二葉ちゃん登場ですよ!
汚いものは隠して下さいね。
『副長、不埒者の処分は有益な情報が得られる場合のみ確保です。その他はのし付けて県警前にうっちゃって下さいね。』
山王院家の庭園内に警備犬として、ドーベルマンやシェパードが約二十匹放たれている。
ショットガンの両親もそこで勤務している。
普段お嬢様ファッションの二葉、今日は動き易いパンツコーデ、ピンクのパーカーのフードにはネコ耳ついて可愛い!
そして今、ショットガンの兄、「ビックフット」に乗って現れた!
土佐犬に引けを取らない巨大犬のビックフットは足取り軽く、二葉を乗せて歩く事が御満悦の様で、二葉もポニーかロバに乗っている様で割と快適。
『岬副長はお兄様が絡まなければ、スーパーなメイドさんですのに、まぁお兄様にメロメロなのはわかりますけど。』
『二葉お嬢様!お解り頂けますか!ままま舞斗キュンのッ!?』「ゴツ!」
音も無く忍びより十六夜ちゃんのゲンコツが岬姉の脳天にメテオストライクした。
『喪女はほっときましょう、二葉お嬢。』
『あたた、灯火ちゃん痛いじゃない。むぅ、わかったわよ!誰か、竹串と蝋燭用意して!』
『森の中は火気厳禁だ!』「ごゴッ!」本日二度目のゲンコ。
『あの、田辺さんですか?田辺 美根子さん?』
車椅子に座って、その膝の上では三毛猫が気持ち良さげに背中を撫でられている。猫の扱いに慣れているようなお婆ちゃん。
『あら、私にお客様なんて。』
こちらに向けた顔があまりにも優しく、それでいてやや痩けた頬に白髪。随分と苦労されて来たのが伺える。
『まぁ、可愛いお客様だこと。私に何か御用かしら?』
『あ、あの私、北代 舞華と言います。』すると意外にも
『まあ!じゃあ貴女、「ケンちゃん」の娘さんね!子供の頃のケンちゃんに面影があるからもしくはと思ったのよ。』
『父をご存知なのですか?!』
舞華の方が驚いた!なんで?
『うふふ、ごめんなさい。驚いたわよね。実は貴女のお婆様と私、あと一人、娘時代に働いていた工場は違うけどよく同じ公園でお弁当を食べていたの。
それで親しくなって、お互い結婚してからはあまり会う事は無くなったけど、貴女のお婆様、「ゆきちゃん」は元働いていた工場から「内職」の仕事をうけてたの。
私は結婚した主人と同じ工場で働いていたから、時々ゆきちゃんと一緒に作業の終わった内職の品物を工場に届けに来た「ケンちゃん」を見ていたの。』
その頃のお父さんと私、似ているのか。ちょい嬉しい。
『あ、あの私!』涼子ちゃん、がんばれ!
『貴女、渡部さんのお嬢さんね。いらっしゃい、よく来てくれたわね。』嫌味では無く、本当嬉しそうだ。
『あの、どうして?私の事?』
『良子がね、教えてくれたの。』
!良子、やっぱりいた!
『あの、良子さん何処にいますか?私たち会いたいんです!』
『良子は私をこのホームに連れて来てくれたの、あとの事は心配いらないからって、それからは一度も…貴女たちは良子のお友達かしら?』
『あの、お婆様のもう一人のお友達って、「南場 葉子」さんですか?良子さんはお婆様と葉子さんの「お孫さん」なのですか?』
ふぅっとため息をついて、美根子お婆様は話してくれたの。
『そうね、あの子が私たちの孫ならどんなに素敵で幸せでしょうか。』これは私たちが安易に聞いて良いの?今更考えるけど、覚悟完了だ!
捕まえて近くの枝で「釣り天井」した偉そうにしていた男を「ぐるぐる」した。
「それ、ぐぅるぐる、ぐぅるぐる。」
『やめ、もう、やめてくれ、下さい。』鼻水とか、涎とか、汗とか、涙が出て辛そうだ、十六夜ちゃんがタブレットで何やら調べてる。
『コイツ、婦女暴行の容疑で逮捕されてるけど、証拠不十分で釈放されてる。』
ならよし!
『証拠十二分にしろ!お巡りさんが調べられない事ならそのスジの人から聞いてくれ!権藤のおやっさんとか一文字の叔父貴とか、あ、ウチの母さんの後輩さんはどう?時々黒のベンツで栗どら差し入れてくれるオッチャンは?』
『駿河さんですわ!』『お嬢様、見てはいけないです!あんな汚い人!』だからかくせって!
『もう面倒臭いから捕まえた全員ぐるぐるしますね!』
『ハイ!岬お姉様!』
結果、コイツらは「南場 良子」と思われる女性に裏金を盗まれたらしい。
しかも、色々悪事の証拠を握られてるらしく、強請られていたとか?何故かここぞと思われる時は彼女に逆らえない。まるで催眠術のようだと。
『まさかなぁ~、そんなに遭遇するかな~?』そうゆー事出来る知り合いがいるけど、いま産休中なんだけど、うーむ?
『ハイ、お姉さんたち!これ、各コイツらの額に貼って!』
『ハイ、舞斗きゅん様!』
それは、トレカ程の大きさのカード、赤い薔薇を背に黒猫がプリントされたカードには、
「この男、連続婦女暴行犯!」
「この男、俺俺詐欺犯!」
「この男、コンビニ強盗犯!」
『コイツ!痴漢常習犯デスわ!ぐるぐる追加デス!』
などなど、罪状が書かれているカードをお姉さんたちがペタペタ貼る光景は落穂拾いの様だ。
『あと、このまま撤収します。野犬に気をつけてな!』
遠くで犬の鳴き声が!
ハハ、ありゃショットガンだな!
びびってる男たちをそのままに引き上げた。既に警察には匿名で通報したからね。
『葉子ちゃんはとても働き者だから、社長さんに気に入られて、息子のお嫁さんにと、持ちかけられたの。でも息子さんにはお付き合いしてる人がいて、気不味くなった葉子ちゃんは工場を辞めてしまったの。その時、葉子ちゃんに親身になってくれた社長さんが別の工場を紹介してくれて、そこである人と恋をして秋ちゃんをさずかったの。』
あれ?秋さんのお父さんって。
『でも、工場で不審火から火災が起きて、葉子ちゃんの大事な人が巻き込まれて…、同郷の人だったそうよ。お互い身寄りが無くて、お腹に赤ちゃんがいるのが分かったのはその後なの。』
ダメ元で叫んでみようか?もしかして近くでお婆ちゃんを見守っているのでは?
ぎゅ、隣りにいた二葉が手を握りしめて俺の顔を見上げた。
『私も一緒に良子さんをお呼びします!』
『うわん』ビッグフット、気持ちは嬉しいけど静かにしてな。
『オーイ、なーんーばー、りょーこー!いるんだろー!話したいんだ!出て来てくれーい!』
『りょーこお姉さーん、はじめましてー、ふたばですのー!おともだちに、なりませんかー!』
『わおーーーぅん!』うん、そうなるな!
何故か後ろでバイザーとか外した岬姉たちが涙ぐんでる。ヘッドドレスは外さないのね。
『メイ、メイドのたしなみで、ですから、うるうる。』
ん、木々の間からこちらに近づく何か?ネコ!白猫だ。
そう見えた気がする、次の瞬間には俺と同じ歳ぐらいの女の子がいた。
『ねぇ、舞斗くんだよね?北代 舞斗くん。』俺の事、知っている?何だ?
『ふたばちゃんはもしかして、舞斗くんの妹かな?こっちの大きなワンちゃんはおっかない顔だけど、すごく優しい子。』
『わん、うわん!』褒めてもらえた事がうれしい様だ、可愛い奴。
『なぁ、「南場 良子」だよな?何か俺の知り合いと同じ気配を感じるけど。』
『「南場」でも「田辺」でもいいよ。お父さんたちは良子って呼んでくれたよ。猫屋敷の北代くん。』
『お前を探してた連中は余罪ほじくり返して警察にデリバリーしたから安心してくれ。それにあの介護ホームなら最強メイドさんや優しい警備犬が目を光らせてるから安全だし、俺らも時々ボランティアで来るから、な。』
何故だろう?何故俺は彼女を安心させる言葉を探して話しているのだろうか!
それはおそらく……
二葉が俺の手を強く握る、どうやら俺の目の錯覚では無いようだ。
『お兄様、お姉様が!』
『良かった、今日舞斗くんに会えて、出来るなら舞華ちゃんたちにも会いたいけど時間が無いみたい。』
彼女の姿が少しづつだが、薄くなってきた、それが彼女自身にはどうする事も出来ないらしい。
『お願い出来るかな、お婆ちゃんの事、私、お父さんやお母さんを助けてあげられなかったの。この力ももう使えなくなる。それだけじゃないかも…。』
『さっきも言っただろ。安心しろって。』
『うん、お願いね!二葉ちゃん会えてうれしかったよ。私ね、ネコの姿で貴女に会った事が有るのよ…。』
もう彼女の姿は見えない、木々の間にネコの白い尻尾が見えた気がする。
さよなら、とでも言うように
『にゃ~。』と鳴き声を森林に残して。
『わおーーーぅん!』返す様にビッグフットの遠吠えが木霊した。
『何故か、秋ちゃんが渡部社長の子供じゃないかって噂が流れたの。実は渡部社長、葉子ちゃんに「二人の面倒を見たいから一緒に暮らさないか」って何度も尋ねて来られたの。それを誤解されたみたいね。』
涼子ちゃん、黙って聞いているけど、辛そうだ。曾お爺さんは優しい人の様だけど、
『実は社長の息子さん、お付き合いしていた方とは結婚されたけど、初めからお金目当てでお付き合いしていた様でお子さんが産まれても、お金の使い方が荒いとか、色々夫婦の間でトラブルが耐えなくて、ついにはお子さんを置いて出て行ってしまったの。その事を社長さんが息子さんを責めていたらしいわ。それから息子さん、仕事一筋で後を継いでからは会社を大きくしていったの。』
そして、田辺さんが働いていた工場を買収、偶然だろうか?
『その頃、働き過ぎで体を壊していた葉子さんが亡くなったの、私たちに秋ちゃんの事を頼んで…もちろん秋ちゃんの事は本当の娘の様に思っていたから、いずれはウチのお嫁さんにって話したら「ありがとう、ありがとう。」って何度も…でも、その後慎司が大変な事になって、主人も…それだけじゃないの。秋ちゃん、赤ちゃんが出来ない身体だったの。』
『た、助けてくれ!もう、金はいい!野犬に食い殺される!頼むから!』
『おじ様、いままで許しを乞うて助けてあげた事、ありますか?』
『有るよ!お嬢ちゃん、俺だって一度くらい。』
『がう!うぅー、がうがう!』
『嘘デスね。この子、汗の匂いで嘘を言っているか、わかるのデス!』
え!そうなの?まぁ、山王院さんちのワンちゃんだから、ありそうな話しだな。
『ま、待て、待ってくれ!俺みたいな小物より、もっと悪い奴がいるだろう!鶴亀署のく…、』
『鶴亀署の久留間刑事だろ。今頃、懲罰会とかだろ?段ボール箱二つぐらい悪事の証拠、警視庁公安部に送った!で?ほかに有るよな!お前らと組んでた奴!揉み消しに手ェ貸してた警察関係者が!』
『お婆ちゃん、大丈夫か?リリのジュース飲む?』長く話して、疲れないかとロシア系元気少女が気遣う。
『ありがとう、お嬢ちゃん。貴女を見ていると初めて「良子ちゃん」に会った時を思いだすわ。』
「南場 秋」さんは幼少期に栄養失調気味で、女性として成長が未熟な臓器が成人した彼女を辛く苦しめる事となる。
『子供を産めない自分は慎司の妻にはなれない、そう思った秋ちゃんは私達から去ろうとしたの。でも私が体調を崩して…自分はこんな事しか出来ないからって、私の看護をしてくれたの。慎司も秋ちゃんに無理に結婚を求めない事にしたわ。
子供の産めない事であの子が秋ちゃんへの気持ちは変わらないけど、秋ちゃんの気持ちが落ち着くまで待つ事に……そんなある日、慎司が「あの子」を、「良子ちゃん」を連れて来たの。』
施設のご老人達を気遣い、サイレンを鳴らさずパトカーが数台、道の駅の駐車場に止まった。通報を受けて一応救急車も来ていた。
流石に「ぐるぐる」のままではお巡りさん達も大変だろうと木から下ろした。
俺達が、ホームに戻った頃には、話しは終わって、
「♪~~ 」
リリがおそらくロシアの民謡の様な歌を披露していた。
『あれ、アニメの挿入歌をロシア語で歌っているのですわ。元の歌は子守唄だったような?』
ネコもワンコもリリを囲む様に集まり、お年寄りの方々も幼天使の御降臨に癒され度が極楽行きまもなく終点気分だった。
涙する方、拝む方、幼女セラピーって需要ありそう。
田辺美根子さんの隣りに渡部涼子が寄り添っている。
岬姉が近づいて、耳元でささやいた。既にパーフェクトメイド姿に着替えている。
『県警の方々が汚物たちを回収されて行かれました。あとこれを田辺さまから。』
俺は田辺のお婆ちゃんから親父宛の小さい箱を預かる。全ての謎の鍵とか?
大切に保管していたらしいが中身は、
『お父さん、今探偵さんのお手伝いとかされているなら何かわかるかもしれないから。』
そう言われてしまったらお父さんにお任せしますしか無いよ。
ホームのジジババに「また来てね。」と涙ながら見送られて、リリや二葉は
「孫の嫁に!」とか「遺産を受け取って!」とか別れを惜しまれていた。
帰り道でやたらパトカーとすれ違った。
これが福だと耳の匂いを嗅ぐので鼻息がうるさくて起きる。
メイも生後五ヶ月とも成ると、もう子猫ではなく、中猫くらいだろう。
『こら~。起きるからやめてくれ~、メイちゃんや。』
抱き上げる度に成長を実感する。
先日、刑事さんから「田辺 慎司」の消息を聞いた。
それはあまりにも辛いものだった。
スポーツ推薦で希望する高校に進学が決まっていたが利き手を授業中に負傷。
数年は治療が必要で推薦は取り消し。
推薦入学を信じて、受験準備をしていなかった為、かろうじて合格した高校に進学。
そこで猛勉強し、希望する大学に合格したが今度は父親の務める工場が買収され、余剰人員として父親がリストラ!大学進学を諦め就職し、父親を励ましていたが自分をクビにした会社の前で父親が自殺、発見が早かった為、一命は取り留めたが、昏睡状態で目を覚ます事なく数年後亡くなった。
失意の中、そんな彼を励ましていたのが幼馴染の「南場 秋」、田辺の父親と同じ工場で働き出した「南場 葉子」の娘である。
母一人幼い娘一人の南場親子に田辺親子も親身に付き合っていたらしく、近所の人からは幼い頃から兄妹の様だったが、年頃になっていずれあの二人は結婚して幸せになると思っていたと口々に言っていたらしい。
ここまで御膳立てが出来ていれば、結婚はしていなくても二人が結ばれて「南場 良子」が生まれいる筈だ、そう思っていた。
勘のいい方ならお解りかもだが、廃工場に住み付き、野良猫にエサを与えていたホームレスこそ「田辺 慎司」だった。
彼が住み付いていた廃工場も、彼の父が働いていて、渡部の父に買い取られた挙げ句に渡部の代で業績不振で閉鎖、正にその工場だった。
実は以前に俺はこのホームレスと親しくなっていた。お互い同級生とは知らずに、いや田辺は気づいても知らない振りをしていたのかも知れない。
飼い主から捨てられた猫を世話して、産まれた子猫の里親を探して世話をしてるホームレスらしき人がいると聞いて様子を見に行った事が有る。
最初は警戒していたが、母が昔、この工場地区で玩具の部品を組み立てたりなど話すと、「それは○●工場だな。大手玩具会社の仕事を受注していたけど、人件費が安い海外工場が出来たら立ち行かないとかで工場閉めたんだよ。」とか教えてくれた。
それから偶にここへ来て、子猫を譲ってもらったり、酒とかネコ缶とか差し入れたりと、くだらない話しをしにやってきたのだが、
『昨日、ボランティアの連中が来て社会復帰の施設が有るからって…でも俺にはネコ達がいるから…』
『ならその猫たち、俺に任せろ!…嫁さんに要相談だけどな。』二人バカ笑いして、後日ネコを引き取る約束をした。
翌日ヤル気MAXな嫁さんと工場を訪れた時に奴もネコも居なかった。
そもそも俺がこの件に巻き込ま……関わる事になったのは全ては「ネコ」が始まりなのだ。
あの日、田辺の事を伝えに戻った俺にあの刑事さんは、眼を見開き驚いて、
『例の工場に住み付いたホームレス、「田辺」と言うんですが、まさか本人でしょうか?確認します!』
舞華や渡部の娘が知っている少女が「南場」性を名乗っていたなら「南場 秋」とは結婚はしていないとは思っていたが、
おそらく田辺は愛しい女性が、憎んでいる者たちの肉親である事を知ってしまったのだ。
ただそれをいつ知ってしまったか?もしかして「南場 良子」の父親は「田辺」では無いかも、と愚考しているとあの刑事さんから「南場 秋」についての分かった事、かなり意外な事がわかったと連絡をもらった。
『せっかくなので「猫カフェ」で会いませんか?久々に家族サービスがしたいんですよ。』
「福店長」不在で残念っと言ったお客が多かったが、イケメンの紅葉郎が女性客を魅了している。
刑事さんの奥方と娘さんもウットリだ。保護猫組の年長者だけあって大人の魅力?ムンムンだ?
『それにしても謎が深まりしたな。』子猫の鼻先で「ネコじゃらし」風の玩具をふりふりしている刑事さん、シュールだ。
『自分も気になって、親しい同級生に聞いたんですよ。体育の授業中に些細な事で渡部が田辺に突っかかったらしいですが、教師が止めに入って大した事は無かったと言うんですよ。』
まぁ、俺が親しい中学の同級生は嫁と「シモ」と「明神 速斗」ぐらいだけど。
『推薦を取り消すくらいの大ケガなら誰か覚えていても良さそうで、ところが変な所から真相が分かりました。
その日その事で気が治らない渡部が河川敷でランニングしていた田辺を偶然見つけて、襲ったらしいんです。
この事を渡部の父親が金の力で示談にしたんです。
「お前の息子がウチの息子を中学生とは思えないほど酷い侮辱をした!だからあんな事をしてしまったんだ!ウチの息子を犯罪者にしたのはお前の息子だ、」っね。
こんな感じで脅して
一応、渡部の父親、慰謝料は払いましたが、…田辺を治療した医者をみつけました。現在は医者を辞めて田舎でスローライフしてましたよ。』
『渡部はこれをヒントにしたんですかね?』
『万引きした子供の親で「子供の欲しがるモノを無雑作に並べているからだ!」っと騒いで揉み消そうとする親御さんがいるそうですよ。』
そして刑事さんからは意外な事をきかされた。
「南場 秋」に子供はいなかった。出産や産婦人科の受診記録さえ無く、同様に「田辺 慎司」も同じだった。
それどころか、舞華たちが通っていた小学校にも「南場 良子」が在籍した記録が無かった。
『どう思いますか?まるで狐に化かされた様な、当時「渡部 涼子」のクラスメイトに「南場 良子」の事を聞いたのですが「そんな子、いた様な気もするし、はっきり覚えていない。」とか「そんな子はいない。」などちょっと怖くなりましたよ。』ネコじゃらしを振る手が止まっていた。
『バカしたのは「狐」じゃなく、「猫」かもしれないですよ。』笑いを取りたかった訳じゃない。本気だった。
『普通だったら「揶揄わないでくれ。」と怒る所ですが、私もそう思いそうです。実は「南場 葉子」を看取ったのはどうも「猫」らしいのですよ。』
『保護猫ですよ。』俺は有る事を思い出した。
『少しその話題と離れますが、調べて頂けましたか?土地の売却の件。』
『ええ、渡部は親の代で手に入れた工場や社屋、土地などこの数年でかなり売却してます。
手を広げた新規事業が失敗したようで、売れ残った工場などで「裏の商売」していました。』
『それ、聞いても良い話ですかね?』大体想像がつくが、周りにいる女性たちに聴かしていい話とは思えない。権藤さん情報では「反吐が出る」様な事らしい。あの人、硬派な権藤さんが思い出し怒りをしていたので女性や子供を××することだろう。
『ガラの悪い連中に貸していたんですよ。パーティー会場として、何のパーティーかまでは、知らないと言ってますが彼自身も参加していたかもしれないです。
今回の提供資料で、ウチの署で抱えている厄介な「ヤマ」がいくつか解決しそうでしてね、
各課の同僚が北代さんと是非是非お目に掛かりたいと申してますが如何でしょう。ココに呼んでも良いですかね?』
ご
っついおじさんがネコじゃらし持って猫と遊びながら
「ホシの潜伏先、分かりませんか?」
なんて聞いてくるとか滑稽だが、売り上げに繋がるなら。
『1日一人まで、世間話としてなら。』本当なら影丸に丸投げしたい。
『お客様、ウェルカムドリンクにハーブティーはいかがですか?』おや?いつもならメイドちゃんが運んできてくれるのに、華が俺と刑事さんの二人分のカップを運んで来た。
『紹介しますよ、ウチの娘…のような子で「山王院 華」です。華、こちら今回お世話になった刑事さん。あちらに奥方と娘さんもいらっしゃるので同じモノをお二人にも。』
ふと見るとすでにネコ耳メイドがウェルカムドリンクをお出ししてメイドを真ん中にスリーショット撮影している。
『はじめまして、山王院 華です。父がお世話に成りまして、ありがとうございます。私、こちらの副店長をしておりますので、何か有りましたらご遠慮なくどうぞ。』
『コレはご丁寧に、しっかりされた娘さんで羨ましいですな。おや?山王…院っと言うと…!』
驚いた顔の刑事さんに華が、『よろしければコレを。』
っと、差し出したのは「森猫」のポストカード?可愛い子猫たちが寄り添って寝ている写真で癒されるが、受け取って何気に裏を見る。
『ん?「介護ホーム 山の郷」?あの~これは……えっ!まさか!』
『差し出がましいとは思ったのですが、偶々、山王院系列の施設にいらっしゃったので。』
ポストカードの裏には老人介護施設の住所と
「田辺 美根子」の名前が有る!
『田辺のお袋さんか?!』
『こちらの施設に「アニマルセラピー」としてウチの子を派遣することを企画中ですの。』
『ん?おい華、舞華は?昨日何か準備してたみたいだけど?居ないのか?』
『すでに別働隊が現地で行動を開始しているはずです。』
『娘さんも少年探偵団かライダー隊ですか⁈』
刑事さん、同世代だな。差し詰め俺はおやっさんだな。
『娘か悪ノリするんでやめて下さい。華、他に誰が同行したんだ?』
『あそこは山王院の施設だから必要無いど思ったけど、やな予感がしたから舞斗や華月、「癒し枠」でショットガンと虎丸かな。あと自主参加で数人。』
あ、本当だ。今日まだ「メインクーン」の虎丸兄貴を見ていない。なんだよ、やな予感って!
『よぅ、ケン坊。おっと、其方は鶴亀署の剣崎さんじゃないですか。』え、刑事さんって剣崎ってお名前でしたか、って権藤さん、何しに来た!
『ゴンパパさん、いらっしゃいませ。いつもより早い来店ですね。梅昆布茶でよろしいですか?』
『おぅ、頼むわ、華ちゃん。ん?なんでツラしてやがる、ケン坊、で?舞斗坊は元気に出掛けたかい?』
『ツッコミ処満載だけど、舞斗が出掛けた事を何故知ってますかね?ゴンパパさん。』
『そりゃ、アレだ。最近、元工場地区で悪さしてる連中の情報を教えたからじゃねえか?』
『華、知ってたか?』
『ハイ、舞斗と一緒に聞きましたから。大丈夫です。舞斗が負けるとかあり得ません!』
『だから相手が危ないだろ!死人が出たらどうする?…あの~剣崎さん、大変申し訳ありませんが…。』
『県警に連絡しますか?個人的には大丈夫とは思いたいのですが。』
某県某所の山間地域、近くに温泉や観光スポット、史跡や天然記念物など山の中と言っても割と人の行き来が有る場所。
「介護ホーム 山の郷」
今日はここにボランティア活動として、「森猫」選抜チームがやって来た!
の筈だが、割とおじいさんおばあさんの受けがいいのは、
この二人だった。
『お嬢ちゃん、可愛いわね。お人形さんみたいで。抱っこしてるクロ猫ちゃんもぬいぐるみみたいよ。』
『ありがとうございます、お婆様。この子は「ノワール」といいますの。とてもお利口ですのよ。』
『こっちのお嬢ちゃんもフランス人形みたいで、異人さんかしら?髪の毛がキラキラして綺麗ね。』
『リリ、フランス人違う!母様日本人、父様半分日本人、半分ロシア人、だからリリは4分の一、ロシア人、4分の三は日本人。ボルシチをオカズにおにぎりを食べて育った、はいぶりっとなのだ。』
『皆さん、動物よりも二葉やリリに癒されるゾ!』
『孫娘オーラ、凄まじいの。ここでアニマルセラピー効果ある?』
とかなんとか言いながらも、猫を抱いたり、犬を撫でたりと大体のご老人は喜んでる様だ。
それでも、数人は人の輪から離れて一人でいるお年寄りもいる。
ショットガンが一人の男性に近付く。
『おや、ジョン。もうご飯の時間かい?』そう言って、ショットガンの頭を撫でる。尻尾を振るショットガン。
痴呆が進んでいるらしく、自分の飼い犬を思い出し、ショットガンと接している様だ。
そんなご老人を見て、舞斗と舞華は自分たちの祖父母を思い、泣きそうになる。
『「舞斗、こっちの警備班が、不埒者を捕捉したらしい、どう始末するか教えて欲しいってさ。ちょい来な!」』連絡用インカムから十六夜灯火が舞斗をお呼び出しした。
『本当に来たのかよ?』
先程までの厳かな気持ちを踏み躙るお誘いが、舞斗を本気で怒らせる。
今日会う目的のご婦人はすぐ側で猫たちと戯れている。
『舞華、こっち頼む。あの子の事もな。』
『ん、まかせろ!じゃあ、行こうか、涼子ちゃん。』
施設へ向かう私道の側に観光客向けの「道の駅」があった。その駐車場に車を止めて、山林の中を人目を避けて「山の郷」に近づく男たち。十人くらいだろうか、あまり真っ当な職業の人では無い。
『あの女を誘き出すんだ、ババアは殺すな!他は俺たちが本気だって分からせる為にもやっちまっても構わねぇ……んっ!』
『それ以上、喚かないで下さいませ。折角の森林の空気が穢れます。』
それから男たちはなす術も無く拘束されていた。山林に静けさが戻るのに要した時間は五分も掛からなかった。
『ふへぇ!』
舞斗の気の抜けた声に、トキメキを表す警備班班長、
「九院 岬」、
山王院家の執事、「九院 狼」の妹さんである。
十人ほどいる男たちはロープでぐるぐる巻きに拘束されている、その中で荒縄で「亀甲縛り」や「釣り天井」などされている男が2、3人いる。
山王院本邸の警備班、
「山王院メイド部隊、黒猫」
親父殿の教え子たち。山王院の爺さんに頼まれたらしい。十三人いる、みんな強い。
頭がトップギアからローギアな舞斗を見つけて、モジモジ近づく岬嬢。
『やだ、舞斗きゅん!いらしてたのですか!恥ずかしいですの、こんな端ない格好で!』
端無くて恥ずかしいのは格好なのね?
『岬姉、久しぶりっす。そんな事無い、格好良いよ!いつものメイド服も慎ましく清楚で優しさを感じて岬姉らしいけど、この服も凛々しく格好良い。でもエプロンとヘッドドレスは変わらないんだ?』
おそらく、今岬姉が着ているのはこの前、母さんが着ていた強化装甲服の類いだ。少しだけライトな感じなのはフルフェイスのメットでは無く、インカムにバイザー、一応口元も防塵マスクらしいクラッシャーで覆っている。さながら特撮ヒーローいや、ヒロインだ。
そしてお父ちゃんが言っていた。
「困ったら、女性は誉めておけ。お前に好意が有れば相手が良い方に解釈する。ダメならダメダメだ。死んで詫びるか、土下座かな?」後半は無かった事にして。
『ま、舞斗くぅん、ハグしてあげたい。でもこの服だと舞斗きゅんを絞め殺しちゃうかも?…そうか、待ってて、今これ脱ぐから!でも、ヘッドドレスとエプロンはメイドの嗜みだから付けたままね!』変身解除じゃない、本当に脱ぐ気だ!
もういいかい?
なんで、この人俺に執着してるの?凄い美人なのに、かなり残念な人。現山王院副メイド長らしい。序列有るんだね?
『副長、その辺りでお兄様へのお戯れを自重して下さいね。』
ふ、二葉ちゃん登場ですよ!
汚いものは隠して下さいね。
『副長、不埒者の処分は有益な情報が得られる場合のみ確保です。その他はのし付けて県警前にうっちゃって下さいね。』
山王院家の庭園内に警備犬として、ドーベルマンやシェパードが約二十匹放たれている。
ショットガンの両親もそこで勤務している。
普段お嬢様ファッションの二葉、今日は動き易いパンツコーデ、ピンクのパーカーのフードにはネコ耳ついて可愛い!
そして今、ショットガンの兄、「ビックフット」に乗って現れた!
土佐犬に引けを取らない巨大犬のビックフットは足取り軽く、二葉を乗せて歩く事が御満悦の様で、二葉もポニーかロバに乗っている様で割と快適。
『岬副長はお兄様が絡まなければ、スーパーなメイドさんですのに、まぁお兄様にメロメロなのはわかりますけど。』
『二葉お嬢様!お解り頂けますか!ままま舞斗キュンのッ!?』「ゴツ!」
音も無く忍びより十六夜ちゃんのゲンコツが岬姉の脳天にメテオストライクした。
『喪女はほっときましょう、二葉お嬢。』
『あたた、灯火ちゃん痛いじゃない。むぅ、わかったわよ!誰か、竹串と蝋燭用意して!』
『森の中は火気厳禁だ!』「ごゴッ!」本日二度目のゲンコ。
『あの、田辺さんですか?田辺 美根子さん?』
車椅子に座って、その膝の上では三毛猫が気持ち良さげに背中を撫でられている。猫の扱いに慣れているようなお婆ちゃん。
『あら、私にお客様なんて。』
こちらに向けた顔があまりにも優しく、それでいてやや痩けた頬に白髪。随分と苦労されて来たのが伺える。
『まぁ、可愛いお客様だこと。私に何か御用かしら?』
『あ、あの私、北代 舞華と言います。』すると意外にも
『まあ!じゃあ貴女、「ケンちゃん」の娘さんね!子供の頃のケンちゃんに面影があるからもしくはと思ったのよ。』
『父をご存知なのですか?!』
舞華の方が驚いた!なんで?
『うふふ、ごめんなさい。驚いたわよね。実は貴女のお婆様と私、あと一人、娘時代に働いていた工場は違うけどよく同じ公園でお弁当を食べていたの。
それで親しくなって、お互い結婚してからはあまり会う事は無くなったけど、貴女のお婆様、「ゆきちゃん」は元働いていた工場から「内職」の仕事をうけてたの。
私は結婚した主人と同じ工場で働いていたから、時々ゆきちゃんと一緒に作業の終わった内職の品物を工場に届けに来た「ケンちゃん」を見ていたの。』
その頃のお父さんと私、似ているのか。ちょい嬉しい。
『あ、あの私!』涼子ちゃん、がんばれ!
『貴女、渡部さんのお嬢さんね。いらっしゃい、よく来てくれたわね。』嫌味では無く、本当嬉しそうだ。
『あの、どうして?私の事?』
『良子がね、教えてくれたの。』
!良子、やっぱりいた!
『あの、良子さん何処にいますか?私たち会いたいんです!』
『良子は私をこのホームに連れて来てくれたの、あとの事は心配いらないからって、それからは一度も…貴女たちは良子のお友達かしら?』
『あの、お婆様のもう一人のお友達って、「南場 葉子」さんですか?良子さんはお婆様と葉子さんの「お孫さん」なのですか?』
ふぅっとため息をついて、美根子お婆様は話してくれたの。
『そうね、あの子が私たちの孫ならどんなに素敵で幸せでしょうか。』これは私たちが安易に聞いて良いの?今更考えるけど、覚悟完了だ!
捕まえて近くの枝で「釣り天井」した偉そうにしていた男を「ぐるぐる」した。
「それ、ぐぅるぐる、ぐぅるぐる。」
『やめ、もう、やめてくれ、下さい。』鼻水とか、涎とか、汗とか、涙が出て辛そうだ、十六夜ちゃんがタブレットで何やら調べてる。
『コイツ、婦女暴行の容疑で逮捕されてるけど、証拠不十分で釈放されてる。』
ならよし!
『証拠十二分にしろ!お巡りさんが調べられない事ならそのスジの人から聞いてくれ!権藤のおやっさんとか一文字の叔父貴とか、あ、ウチの母さんの後輩さんはどう?時々黒のベンツで栗どら差し入れてくれるオッチャンは?』
『駿河さんですわ!』『お嬢様、見てはいけないです!あんな汚い人!』だからかくせって!
『もう面倒臭いから捕まえた全員ぐるぐるしますね!』
『ハイ!岬お姉様!』
結果、コイツらは「南場 良子」と思われる女性に裏金を盗まれたらしい。
しかも、色々悪事の証拠を握られてるらしく、強請られていたとか?何故かここぞと思われる時は彼女に逆らえない。まるで催眠術のようだと。
『まさかなぁ~、そんなに遭遇するかな~?』そうゆー事出来る知り合いがいるけど、いま産休中なんだけど、うーむ?
『ハイ、お姉さんたち!これ、各コイツらの額に貼って!』
『ハイ、舞斗きゅん様!』
それは、トレカ程の大きさのカード、赤い薔薇を背に黒猫がプリントされたカードには、
「この男、連続婦女暴行犯!」
「この男、俺俺詐欺犯!」
「この男、コンビニ強盗犯!」
『コイツ!痴漢常習犯デスわ!ぐるぐる追加デス!』
などなど、罪状が書かれているカードをお姉さんたちがペタペタ貼る光景は落穂拾いの様だ。
『あと、このまま撤収します。野犬に気をつけてな!』
遠くで犬の鳴き声が!
ハハ、ありゃショットガンだな!
びびってる男たちをそのままに引き上げた。既に警察には匿名で通報したからね。
『葉子ちゃんはとても働き者だから、社長さんに気に入られて、息子のお嫁さんにと、持ちかけられたの。でも息子さんにはお付き合いしてる人がいて、気不味くなった葉子ちゃんは工場を辞めてしまったの。その時、葉子ちゃんに親身になってくれた社長さんが別の工場を紹介してくれて、そこである人と恋をして秋ちゃんをさずかったの。』
あれ?秋さんのお父さんって。
『でも、工場で不審火から火災が起きて、葉子ちゃんの大事な人が巻き込まれて…、同郷の人だったそうよ。お互い身寄りが無くて、お腹に赤ちゃんがいるのが分かったのはその後なの。』
ダメ元で叫んでみようか?もしかして近くでお婆ちゃんを見守っているのでは?
ぎゅ、隣りにいた二葉が手を握りしめて俺の顔を見上げた。
『私も一緒に良子さんをお呼びします!』
『うわん』ビッグフット、気持ちは嬉しいけど静かにしてな。
『オーイ、なーんーばー、りょーこー!いるんだろー!話したいんだ!出て来てくれーい!』
『りょーこお姉さーん、はじめましてー、ふたばですのー!おともだちに、なりませんかー!』
『わおーーーぅん!』うん、そうなるな!
何故か後ろでバイザーとか外した岬姉たちが涙ぐんでる。ヘッドドレスは外さないのね。
『メイ、メイドのたしなみで、ですから、うるうる。』
ん、木々の間からこちらに近づく何か?ネコ!白猫だ。
そう見えた気がする、次の瞬間には俺と同じ歳ぐらいの女の子がいた。
『ねぇ、舞斗くんだよね?北代 舞斗くん。』俺の事、知っている?何だ?
『ふたばちゃんはもしかして、舞斗くんの妹かな?こっちの大きなワンちゃんはおっかない顔だけど、すごく優しい子。』
『わん、うわん!』褒めてもらえた事がうれしい様だ、可愛い奴。
『なぁ、「南場 良子」だよな?何か俺の知り合いと同じ気配を感じるけど。』
『「南場」でも「田辺」でもいいよ。お父さんたちは良子って呼んでくれたよ。猫屋敷の北代くん。』
『お前を探してた連中は余罪ほじくり返して警察にデリバリーしたから安心してくれ。それにあの介護ホームなら最強メイドさんや優しい警備犬が目を光らせてるから安全だし、俺らも時々ボランティアで来るから、な。』
何故だろう?何故俺は彼女を安心させる言葉を探して話しているのだろうか!
それはおそらく……
二葉が俺の手を強く握る、どうやら俺の目の錯覚では無いようだ。
『お兄様、お姉様が!』
『良かった、今日舞斗くんに会えて、出来るなら舞華ちゃんたちにも会いたいけど時間が無いみたい。』
彼女の姿が少しづつだが、薄くなってきた、それが彼女自身にはどうする事も出来ないらしい。
『お願い出来るかな、お婆ちゃんの事、私、お父さんやお母さんを助けてあげられなかったの。この力ももう使えなくなる。それだけじゃないかも…。』
『さっきも言っただろ。安心しろって。』
『うん、お願いね!二葉ちゃん会えてうれしかったよ。私ね、ネコの姿で貴女に会った事が有るのよ…。』
もう彼女の姿は見えない、木々の間にネコの白い尻尾が見えた気がする。
さよなら、とでも言うように
『にゃ~。』と鳴き声を森林に残して。
『わおーーーぅん!』返す様にビッグフットの遠吠えが木霊した。
『何故か、秋ちゃんが渡部社長の子供じゃないかって噂が流れたの。実は渡部社長、葉子ちゃんに「二人の面倒を見たいから一緒に暮らさないか」って何度も尋ねて来られたの。それを誤解されたみたいね。』
涼子ちゃん、黙って聞いているけど、辛そうだ。曾お爺さんは優しい人の様だけど、
『実は社長の息子さん、お付き合いしていた方とは結婚されたけど、初めからお金目当てでお付き合いしていた様でお子さんが産まれても、お金の使い方が荒いとか、色々夫婦の間でトラブルが耐えなくて、ついにはお子さんを置いて出て行ってしまったの。その事を社長さんが息子さんを責めていたらしいわ。それから息子さん、仕事一筋で後を継いでからは会社を大きくしていったの。』
そして、田辺さんが働いていた工場を買収、偶然だろうか?
『その頃、働き過ぎで体を壊していた葉子さんが亡くなったの、私たちに秋ちゃんの事を頼んで…もちろん秋ちゃんの事は本当の娘の様に思っていたから、いずれはウチのお嫁さんにって話したら「ありがとう、ありがとう。」って何度も…でも、その後慎司が大変な事になって、主人も…それだけじゃないの。秋ちゃん、赤ちゃんが出来ない身体だったの。』
『た、助けてくれ!もう、金はいい!野犬に食い殺される!頼むから!』
『おじ様、いままで許しを乞うて助けてあげた事、ありますか?』
『有るよ!お嬢ちゃん、俺だって一度くらい。』
『がう!うぅー、がうがう!』
『嘘デスね。この子、汗の匂いで嘘を言っているか、わかるのデス!』
え!そうなの?まぁ、山王院さんちのワンちゃんだから、ありそうな話しだな。
『ま、待て、待ってくれ!俺みたいな小物より、もっと悪い奴がいるだろう!鶴亀署のく…、』
『鶴亀署の久留間刑事だろ。今頃、懲罰会とかだろ?段ボール箱二つぐらい悪事の証拠、警視庁公安部に送った!で?ほかに有るよな!お前らと組んでた奴!揉み消しに手ェ貸してた警察関係者が!』
『お婆ちゃん、大丈夫か?リリのジュース飲む?』長く話して、疲れないかとロシア系元気少女が気遣う。
『ありがとう、お嬢ちゃん。貴女を見ていると初めて「良子ちゃん」に会った時を思いだすわ。』
「南場 秋」さんは幼少期に栄養失調気味で、女性として成長が未熟な臓器が成人した彼女を辛く苦しめる事となる。
『子供を産めない自分は慎司の妻にはなれない、そう思った秋ちゃんは私達から去ろうとしたの。でも私が体調を崩して…自分はこんな事しか出来ないからって、私の看護をしてくれたの。慎司も秋ちゃんに無理に結婚を求めない事にしたわ。
子供の産めない事であの子が秋ちゃんへの気持ちは変わらないけど、秋ちゃんの気持ちが落ち着くまで待つ事に……そんなある日、慎司が「あの子」を、「良子ちゃん」を連れて来たの。』
施設のご老人達を気遣い、サイレンを鳴らさずパトカーが数台、道の駅の駐車場に止まった。通報を受けて一応救急車も来ていた。
流石に「ぐるぐる」のままではお巡りさん達も大変だろうと木から下ろした。
俺達が、ホームに戻った頃には、話しは終わって、
「♪~~ 」
リリがおそらくロシアの民謡の様な歌を披露していた。
『あれ、アニメの挿入歌をロシア語で歌っているのですわ。元の歌は子守唄だったような?』
ネコもワンコもリリを囲む様に集まり、お年寄りの方々も幼天使の御降臨に癒され度が極楽行きまもなく終点気分だった。
涙する方、拝む方、幼女セラピーって需要ありそう。
田辺美根子さんの隣りに渡部涼子が寄り添っている。
岬姉が近づいて、耳元でささやいた。既にパーフェクトメイド姿に着替えている。
『県警の方々が汚物たちを回収されて行かれました。あとこれを田辺さまから。』
俺は田辺のお婆ちゃんから親父宛の小さい箱を預かる。全ての謎の鍵とか?
大切に保管していたらしいが中身は、
『お父さん、今探偵さんのお手伝いとかされているなら何かわかるかもしれないから。』
そう言われてしまったらお父さんにお任せしますしか無いよ。
ホームのジジババに「また来てね。」と涙ながら見送られて、リリや二葉は
「孫の嫁に!」とか「遺産を受け取って!」とか別れを惜しまれていた。
帰り道でやたらパトカーとすれ違った。
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「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
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