上 下
4 / 42

事件の予感?川原田君再び? 

しおりを挟む
 『明日、「森猫」の譲渡会があるだろ?手伝ってやるよ!』

 『ソレ、ウチ森猫じゃないけど、どうしてもって「土下座」して頼むなら、先方に話しておく。』


 『えっ⁈違うのか!』


 『譲渡会やれる場所探してるって言うから、羽柴叔父ビルのオーナーを紹介しただけだ。』



 舞斗たちが屋上で弁当箱を開いた絶妙なタイミングで邪魔してくれたお馬鹿さん川原田




 『川原田くん、なんでまた「譲渡会」を手伝いたいの?』

 真琴が興味津々で川原田を尋問する?


 『猫が増えた、お袋の暴走が止まらないんだよ。』

 まさか、増えた猫を譲渡会に混ぜようとか思ったのか?

 変ながついて次々にコレクションを増やす金持ちが居るが、川原田の家なら、飼育する場所も財力もあるだろし、あとは人手くらいか?

 『実はな、ウチの敷地にあまり頻繁に使ってない木造の倉庫が有るんだけどな、そこに何処からか野良猫が住み着いてしまってな。』

 まぁよく有る話しだな。

 『雌猫らしく妊娠しているからって、お袋が家に連れてきたんだよ。』

 うん、ウチも過去に有ったよ、そんな事が幾度かな。

 『お袋は産まれた子猫は全部飼いたいとかぬかしているんだがっぶっ!』

 『「ぬかしてる」とかお袋さんになんてっ!この親不孝モノめッ!』

 なんかムカついたので蹴り飛ばした。よく飛んだ、五メートルくらい?





 『じゃあ、まだ産まれてないんだね?』

 世話が大変かもと考えての事らしく、俺たちを見かけて漠然と話しかけて来たと言ったところだ。


 『だったらそう言え。』

 『その前にお前が蹴り飛ばしたのだろうがっ!』

 
 『ねぇ、そのお母さん猫は今、川原田君の家にいるの?』

 お、さすが猫カフェ店長、何か思いついたか?


 『あ、あの、その日にお袋が抱いて連れ帰ってから今日で一週間かな?』

 『動物病院とか連れていってあげた?』

 舞華が心配して尋ねると、

 『そういう知識無いからさ、アドバイス欲しいんだけどよぉ?』


 

 後で分かった事だか、既に川原田のお袋さんはウチ北代の母さんに聞いて病院にその母猫を診察してもらっていたらしい。

 そこに舞華が口を挟んだ!

 『実は学園祭で猫カフェやりたいって意見が有るんだけど、一緒に譲渡会も出来ないかな?
 当たり前だけど、その場でお渡しは出来ない、けど考えてもらえるキッカケにはなるよね?』

 なんかドヤ顔の妹がムカつく?
 
 この提案がその後、色々面白い事、困った事を呼び寄せる事になるとは?

 
 『あ~ぁ、コレは椎名ちゃんの案に乗っかってみるかな?』

 学園祭で猫カフェを熱望していた後輩、喜びそうだけど、きっと大変だよ?

 『ヤルにしても、「飲食」はやめた方が良いかもな?
 「猫」か「カフェ」か?学祭で出来る事は限られているからな。』

 『そだね、その辺考慮してみるのね。』


 もう、ほとんどヤル気になっている様で俺的に何か面白くない。




 
 『せ、生徒会長!大変です!一大事です‼︎』
 

 『あら、コレは葦原あしはらさん、何か有りましたか?』

 テニス部の副将がかなり慌てて、生徒会室に駆け込んで来た!

 『のぞきです!更衣室に、女子更衣室に盗撮者が出ました!
 今、ウチテニス部の娘たちが追いかけてます!』

 咄嗟に生徒会長山王院 華の目の色が変わる⁈

 『格闘系運動部に召集!
 不埒モノ捕縛の協力を呼びかけて!』

 副会長にそう指示を出すと
 
 『そう来ると思って、すでに学園内に一斉送信してます!』

 副会長千道 界が瞳の奥に怒りを隠して答える!

 『お嬢、「さーちあんどですとろい」で良いか?
 コイツクッキーの礼に手伝ってやるぜ、今暇だし?』
 
 何故か生徒会室に遊びに来ていた灯火が女生徒からの差し入れの手作りクッキーをつまんでいる?
 盗撮犯捕縛に協力してくれるそうだ?

 『舞華親衛隊の皆さんにも伝えて!女の子を泣かすモノには「正義の鉄槌」を喰らわす熱いハートの漢たちだから!』

 
 最近、都内の学校で女子更衣室の盗撮や女生徒のが盗まれるといった事件が起こっていた?

 特に「私物」はリコーダー(小等部)や体操服、下着や生理用品を入れてあったポーチ、既に警察が捜査をしているも未だ解決していない。

 単独の同一犯?
 ソレとも模倣犯?

 とにかく、今ソイツを捕まえれば何か進展するかも?


 いや、今はとにかくその「盗撮魔」を捕まえてやるんだ!

 『刃物とか所持しているかも?
 非常用のやモップや長い棒なんかで対応して!』

 『華月さんが竹刀を手に飛び出したそうです!』

 『変態には容赦なく断罪をっ!』






 ハァハァ、しまった!見つかった!

 どうやらココ最近噂になっている「」と間違われているし?

 しかも、「一文字 華月」がを振り回して追いかけている!

 捕まったら!


 あっ、ココなら?

 校舎から、運動部のクラブ棟に向かう途中に有る木造の古い倉庫が見えた、新しいプレハブ倉庫が出来てから余り使われていない、ここならばやり過ごせるかも⁈



 『何してるんだ、お前?』


 『あ、あの、 ん?なんだ、北代か!』

 咄嗟に隠れたつもりのボロ倉庫、木造なので壁の一部に小さい穴があったりする、一部の運動部以外はあまり使われていない体育倉庫らしい。

 まさかのそこには、何故か学園最悪最強の噂が有る、元クラスメイトの「北代 舞斗」が猫にエサをやっていた?


 『す、凄いな、コレ?
 この猫たち猫なのか?』

 大体7、8匹は居るだろうか?
多分野良なのだろう、やや薄汚れた猫もいるが北代に対してかわいい顔で甘えて「エサ」をねだっている。

 噂で彼が大変なと聞いているが、ただ好きと言うだけでココまで懐かれるモノなのか?

 『なんだ、か?
 別に俺のって訳じゃねぇ~よ?
 ただ、個々に集まってくるだけで、コレメシだってコレで二回目だしよ。』

 どうやら、時折ココで野良猫の餌付けをしている様だ。

 そうだ!

 『か、可愛いな?
 わ、もやってみていいか?』

 着ていた上着を脱いで、この中に例の物を丸めて隠す。
 バレーボールやバスケットボールが入れてあるカゴに放り込んで、猫たちに近づく様にしゃがんで餌付けをする。

 すると

  『おう、ほれ「出汁を取り終わった後の煮干し」だ、手のひらに乗せて、顔の前に持っていてみな。』

 北代から出涸らしのニボシを受け取って、餌付けに挑戦する。

 『おいで、コッチだよ。』

 『ミャァー。』

 何匹が自分の方に来てくれた。


 『あ、来てくれた…』

 その時、


 『見つけたぞ、この覗きヤロウめ!』

 一文字 華月と数人の女子たちが倉庫に駆け込んできた!

 驚いた猫たちが物陰に隠れる、自分の前にいた一匹の三毛猫は驚き過ぎて食べていた煮干しを苦しそうに咳込みながら吐き出してその場に留まっている。

 また、逃げずに侵入者に

 『シャーーァ!』と、威嚇する猫も二匹ほどいた。

 『な、なんだ華月?いきなり大声だして、猫達が驚くだろ⁈』


 『えっ?あ、あの舞斗?なんだ、この状況は?』


 咄嗟に、

 『き、北代くん、この子大丈夫かな?苦しそうにゴハン吐き出してるよ!死んじゃったりしないよね⁈』

 自分でも本気で心配になる、その猫が他の猫より小柄な事と何か震えている様に見えたので、抱き上げてしまったのだ?

 『心配だな、近くの獣医に診てもらうか?』


 『あ、あの舞斗⁈ 
 あの、その、この猫大丈夫か?』

 『あの北代くんたちはここで何をしていたの?』

 一文字と一緒に来た女生徒がオロオロし始めた彼女華月に代わり、状況を尋ねてきた。

 これを最大限に利用しない手はないだろう!

 『私たち、ここに隠れ住んでる猫ちゃんたちにをあげていたんです!

 2で!
 私、猫好きなんです!だから!』

 『アナタ達だけ?誰か生徒とか入って来なかったかしら?』


 『ここに居るは北代くんだけです!
 ずっと2人で猫たちにゴハンをあげていただけなのに、もういいですか!

 この子が死んじゃう⁉︎』


 さすがに苦しそうにしている猫の様子を見て、他の女子たちも気まずそうにしている?

 『行こうか、、そのしっかり抱いてろよ。』

 『うん!』

 その場を急いで離れ、北代とふたりで近くの動物病院に向かった。

 アレは後でほとぼりが覚めた頃、回収しよう。


 


 『華月さん、しっかりして!』

 『あ、ああ。あの猫は大丈夫だろうか?』

 気の抜けた様な華月だが、一緒に行動していた女子達に話しかけられて我にかえる?

 『猫ちゃんも心配ですけど、逃げた盗撮犯覗き魔が何処に行ったのか、探さないと?』

 『ここに逃げ込んだと思ったのに違うみたいだし、他のグループも必死に探しているのだから、あの猫ちゃんの為にも絶対捕まえましょう!』

 『ああ、そうだな? …あのに何か有ったら私の所為だ…無事であってくれ。』

 まだ、威嚇している猫に申し訳ないと思いながらその場を離れたが、

 『ねえ、もしかしてあの二人、怪しくない?もしかして付き合ってるとか?』

 ふ、

 『不謹慎だぞ!舞斗が華に隠れてとかありえん!
 アレはそんな器用な奴では無いぞ!』

 『そ、そうよね?ご、ごめんなさい‼︎』

 盗撮犯探しを再開する前に無粋な噂話を始めようとする女生徒を嗜めた華月、何か意図している事がおかしいけども?



 この日、ついには見つけられ無かった。


 山代学園の側にある動物病院に運ばれてたあの猫は、あの前に食べたと思われる「魚の骨」が咳き込んだ時に胃から逆流し、喉に刺さってしまい、それが嘔吐物を詰まらせて苦しかった様だ。

 幸い、病院で無事対処してもらい助かった。

 『いっけね、カバン学校に置いたままだ?』

 『私も、取りに帰らないと。』

 『お前、上着は?もしかして倉庫に置きっぱなしか?』

 『あ、そうだね?それも取りに戻らないと。』


 上手い具合にカバンも上着も取りに戻れ、の物も回収出来そうだ。

 まさか、あんなモノの為にココまで大騒ぎになるとは?



 教室にカバンを取りに行った後に、再びあの倉庫に寄る、猫たちの姿は見えない。

 『気配はする、あんな事があったから隠れているのさ。』

 あの猫もしばらく入院して、その後北代が面倒を見る為に引き取ると病院に説明していた。

 自分の上着はちゃんとあった。

 その中に隠していたモノも…あれ?

 『ん?どうした?』

 『無い、アレが無いの?』

 『アレって?』

 『わ、私のパン…ゴニョゴニョ?』


 『あ、悪りぃ、聞こえた、「パンツ」な!』

 『言わないでよ!恥ずかしいな~、もう!』


 そう、「パンツ」だ!

 の「数量限定品 ピュアピュアニャンコ プリントパンツ」が無い!


 本来、幼児用パンツの定番、キャラクタープリント下着なのだが?

 人気女児向けアニメ「おはようピュアあにまるず!」に登場する人気キャラクター「ピュアピュアニャンコ」がプリントされた大人サイズの限定品なのだ!


 「ピュアピュアニャンコ」はメインキャラの「ピュアレオン」の妹で放送後半で登場した所謂「追加戦士」なのだが、メインキャラが中学生なのに対して、妹の彼女は「小学生」と言うシリーズ初の「ちびっ子戦士」なのだ!

 その所為か本来制作サイドがターゲットにしてある視聴者層の女児が共感しやすい大人気になり、ソレならばと各グッズ展開にと力を入れているキャラクターなのだ!


 無論、大きなお友達にも大好評で、この様は商品も発売されてしまったのだ!

 しかも、今回使用されているイラストはアニメでキャラクターデザインをした方のイラストではなく、制作会社公認のキャラクター商品専門でお仕事されている人気神絵師「ゆめみん」さんの限定のイラストがプリントされている貴重ななのだ!

 一応、着る用、保存用と二つ購入出来たが、今日慌ててを装着して登校してしまったのだ!


 しかも、今日は「プール」の授業が有るのに!

 一応、競泳用水着と替えの普通のショーツは同じバッグに入れてあるので、授業の前にトイレでは着替えるつもりだったのに!

 更衣室で小学生女児では無いから、タオルでガッチガチにガードして着替えたりしたら変に思われるし、

 自慢では無いが、自分は割と良いプロポーションしているのと、普段は大らかで子供っぽい天然をアピールし、そのギャップを武器に学園カーストの中間層にいるのだ!

 逆に言えば子供っぽいキャラクタープリントのパンツなんて、それこと子供っぽいキャラクターを印象付けるだろうが、ソコはあえて普段は高校生らしいアダルトな下着を着けて「ギャップ萌え」をアレンジしているのキャラ作りを壊したくないのだ!

 まぁ、劇場版を観に行く時と関連イベントに行く時は「正装」として着用するけど。


 『なんでそんな所にパンツなんだ?』

 『今日、女子はプール水泳の授業が有ったでしょ?
 
 た、多分だけど洗濯モノを取り込んだ時に私の水着にのパンツが紛れたのを気付かず持ってきちゃったみたいなの?』

 と言う説明をした。

 実際は自分だとバレない様に「コスプレ用」の男子用の黒いジャージを羽織って、まだ誰も来ていない更衣室で下着を取り替えたのが失敗した?

 朝練でテニス部の生徒が何故かでは無く、の更衣室を利用しに来たからだ⁈

 『きゃー!痴漢よ!』

 顔を見られたくないので、素早く退室したのが怪しく見えたらしい?

 つい走って逃げたのがこんな騒ぎになって、もう引っ込みがつかない!

 後で分かった事だが、最近女子テニス部はクラブ棟のシャワー室より、入浴可能なジェットバスとサウナが追加された校内のシャワー室を使う生徒が増えているそうだ。

 文化系クラブの自分にはそんな習慣はわからない事だし、そんな設備が追加されたのも夏休み中に急遽各シャワー室に突貫工事で増設されたのだから馴染みがなかったのだ。

 なんでも、理事長の気まぐれから実現したとか?


 



 『もしかして、猫が咥えて行ったりしてな?』


 上着をバッグにしまい、倉庫の中を見回す。

 『やっぱりないね、もういいや、ソレならソレで。』

 一応、自分が使用したモノなので、に拾われたら恥ずかしいけど、猫が咥えて行ったと言うなら仕方がない。

 逆に証拠隠滅出来たと思えば諦めもつくし?

 いや、無理!

 でも、猫にカミカミされてぼろぼろになってるなら、諦めるしかない。


 『なんだ、そんなに大切なモノなのか?「妹さんのパンツ」が!』

 『パンツ、パンツ、うるさいな!恥ずかしいのよ!』

 『す、すまん?よ、よし、俺に任せろ、絶対に見つけるから!』

 『やめてよー!恥ずかしいから!』


 とにかく、これで有耶無耶になりの秘密は守られそうだ。

 仮に誰かがアレを拾っても、誰もと自分を結びつけることは無いだろうし。


 コスプレ用のジャージも洗濯してからの部室に返そう。



 





 
 『そう、そんな事があったの。でも、猫は助かったんでしょ、華月がそこまで気に病む事は無いわ。』

 不埒者を捕縛出来なかった事を詫びに華の元へ報告に行くと、そこには生徒会室、舞華とひなたがいた。


 『猫は私んちで面倒みる事になるから、安心してね。』


 『盗撮犯もコレに懲りて、ココ山代にはもう来ないんじゃないかな?』

 だとしても、ソレで問題解決にはならないだろう?


 この手で必ず!

 でなければ、あの猫たちや涙を浮かべていたに合わす顔がない!

 
 ちなみにが泣いている様に見えたのは華月の思い込みだが。







 さて、八木ちゃんのパンツは何処へ消えたのか?

 何となく予想付きますよね?




 その頃、この近辺を騒がせていた盗撮犯はまだ山代学園には来ていなかったのですよ?


 だって、既にこの俺サマが捕まえちゃったんだもん。




 おや、舞斗だ。

 お~い、舞斗~!

 『なんだ、お前、またこんな所に遊びに来ていたのか?

 ほら、仕方ないなぁ、ほれ帰るぞ、「」。』



 『ぐるぐるにゃー!』

 舞斗は俺サマを抱っこしてくれた。

 楽ちんだ、ウチまで頼むよ!

 今日のゴハンは何かな、楽しみだ?

 
 

 
しおりを挟む

処理中です...