異種戦士バトルロイヤル

えるだ~

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侍VS怪人

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 バトルロイヤル優勝候補者の一人である稲辻がゴーストタウンを歩く。
 彼は蒼や白を基調とした日本の甲冑を身に纏っており、見た目通りの武士であり、武器も刀だ。まぁただの侍という訳ではないが。
「?」
 そんな彼が歩いていると、曲がり角からノソノソと巨漢が現れた。
「う?うぅ?」
「お前・・・人間か?」
 見た目は人間ではない。皮膚は真っ白だし産毛の一本も生えてない。そして何より顔面に穴が空いていて口しかない。
「・・・俺は稲辻。お前は参加者か?」
「さんかしゃ・・・おれ、あなどう・・・」
「穴道?それがお前の名前か?」
「ぐぶぅ・・・ぶがぁ!!」
 突然穴道が叫び、稲辻に殴り掛かってきた。
 だがその拳が届く前に稲辻の姿が消え、彼の背後に現れる。
「遅いぞ」
 そう言って刀で穴道を斬り裂いた。しかし血が出る事は無く、斬られた所は何事も無かったかのように再生している。
「ほう・・・ゾンビみたいな奴だな。面白い」
「んぐ?」
 穴道は自身の拳と稲辻を何度も確認する。突然稲辻が背後に現れたカラクリが理解できないようだ。
「じゃあ次はこれだ」
 また稲辻が消える。
 穴道は周囲を見渡して探すが見つからない。
 すると背中に強い衝撃を受け吹き飛ばされる。振り返るとそこには稲辻がいた。
「反応速度は大したことない・・・耐久全振りか」
「うぎぃ!?」
 穴道が拳を振るが、稲辻はそれをサッと避けて刀を振り下ろした。
 が、刀の一撃は拳に防がせる。
「む、拳はえらく硬いな」
 外見的に他の部位の皮膚と大差ないように見えるが、拳だけは異常に硬い。稲辻の斬撃は鉄をも切り裂くのだが。
「ならこうするか」
 稲辻は更にスピードを上げ、目にも止まらぬ速さで刀を振るった。
 腕や脚、顔に腹部など、身体中を稲辻に切り裂かれ、穴道は苦しそうにうめき声をあげる。
「ぐおぉっ!」
 穴道が地面を殴り付け、コンクリートの破片が飛び散ったことで稲辻の連撃が止まる。
「・・・タフだな」
 傷は全て再生しているが、それでもダメージはあるようで、肩で息をしている。
 一方稲辻は全く疲れていないどころか、呼吸すら乱れていなかった。
「可哀想だが、そろそろ終わりにするぞ」
「がぁぁ!!」
 稲辻が刀を構え、トドメを刺そうと動いた。次の瞬間、
 穴道がパンッと手を変な形で合わせた。
「七重力地」
 そして周囲の物体が地面に押し付けられる。稲辻も例外ではない。
「うおっ!重力操作か!」
 常人ならば押し潰れるが、地面に倒れ込んで動けなくなるだろう。だが稲辻は常人ではない。
「ふぅ・・・重いな」
 そんなことを呟きながら、ぎこちないながらも立ち上がって刀を構えた。
「・・・どうやら、重力の影響はお前自身も受けるみたいだな」
 見ると、穴道本人の足下のコンクリートも凹んでいた。穴道の重力も倍になっている証拠だ。
「くぶぅ!がぁ!」
 しかし穴道は馬鹿力にものを言わせて稲辻に殴り掛かった。
「ほいっと」
 それを簡単に避けると、穴道の首目掛けて刀を振った。
 重力の影響もあり、穴道は稲辻の剣を何とかかわすことができた。首が少し切れたが、直ぐに再生し再び殴り掛かる。
「ぐがぁあ!!」
 何度も襲い来る拳を避け、稲辻は何度も切り返す。だが穴道に着いた傷は瞬く間に治っていってしまう。
「・・・面倒だな」
「ぐぁあ!」
 穴道のストレートパンチをスレスレで避けた稲辻は、カウンターとして奴の腹に掌底を叩き込んだ。
「ぐっ!」
 すると稲辻の掌からバチバチと光が迸った。
 電気だ。
「焼き飛べ」
「ぐぼぁあ!!」
 電撃の乗った掌底を喰らい、穴道が重力影響範囲の外まで吹っ飛ばされる。そして稲辻は身体に電気を乗せ、超高速で移動して未だ吹き飛とんでいる穴道に追い付いた。
「ぐばぁ!」
 穴道の顔の穴が光る。
「いいぜ、乗った!」
 稲辻の予想通り、穴道の顔穴から光線が発射された。稲辻は刀に電気を纏わせ、その光線を受け止める。
 そして穴道の破壊光線を弾き飛ばした。
「ぐが!?」
「残念だったな!」
 稲辻は電気を纏った刀を穴道の心臓に突き刺した。
「ぐおっ!」
 そのまま刀を押し込んで穴道をビルに激突させる。
「消し炭だ」
 そして刀に流す電流の出力を上げた。
「ぐ、ぐぎゃああああ!!!」
 穴道の体が黒く焦げ始め、ヒビが入って割れていく。
「じゃあな」
「ぐぎ!ぎがぁあ!!」
 そうして穴道は黒焦げになってバラバラと崩れた。

バトルロイヤル 稲辻VS穴道
稲辻の圧勝
残り11人
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