運命の番

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グラーツ帝国の女帝

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狼獣人が治める国 グラーツ帝国
帝都の王城ではグラーツの狼女帝マデリーンと赤髪の皇配エナンが伝令を受け取っていた。

隣にはまだ年若い皇女のエスメラルダが騎士服姿で待機している。

「レイドの行方がわからぬ。やはり三国の森で竜にやられたか」

女帝は細く鋭い青い目に怒りを込める。

「辺境で暴れていただけのケンカ狼が、調子に乗りおって、竜を倒せば大きな手柄を立てられると思ったのだろう自信過剰の見栄っ張りの大バカ者が」

「マデリーン落ち着いて。私達の息子は生命力に関してだけ言うと、相当しぶといからね。」

「行方がしれなくなって、もう10日だぞっ」

「狼獣人は水だけでも余裕で1カ月は生きるよ」

「もしヤツに何かあれば、エスメラルダそなたが帝位を継げ。もうあれは廃嫡でよい!毎度毎度、出撃したらしっぱなし、戦法は非常識、ただの無類のケンカ好きの尻拭いはもう真っ平だ」

女帝は狼に多い銀髪碧眼だが、
エスメラルダと父の皇配の髪は燃えるような赤い髪に深緑の瞳を持つ。

父は非常に珍しいことが、狼獣人の辺境伯と辺境に隠れ住んでいた魔女との間にできた美丈夫だ。
狼の銀色ではなく、魔女の赤い髪を受け継いだ。

騎士服に身を包んだ、少女だがどこか武人風のエスメラルダは、祖母と父譲りの赤い髪を揺らして女帝と皇配の方に歩み寄る。

「母上、報告では竜は森の奥へ去ったとのこと。生命力の強い兄上のことです。必ず無事に戻って来ますので、どうかもうしばらくご辛抱ください」

母のマデリーンは無表情で淡白な性格だったが、皇帝職を押し付けられてから、職務の重圧と心労でいつの間にかこんなに激しい人になってしまった。

次期皇帝なんて冗談じゃない。
ケンカ早くて無頼漢のような兄こそ、悪徳貴族と血の気の多い国民達をまとめる皇帝職にぴったりだ。


マデリーンと先帝は狼獣人。
女帝マデリーンは先帝の唯一の皇女だった。
上に兄が5人いたため、さして注目されず放置されて育った。適齢期になると現皇配エナン、当時の辺境伯に降嫁し、大自然の生活の中、息子のレイドと娘のエスメラルダをのびのびと育てていた。

レイドは歴代の皇帝と父の辺境伯に似て立派な体躯をしていた。
彼は小さな頃こそ真面目だったが、年々好戦的な性格が際立ってくる。
最初は街でのケンカで収まっていたが、十代半ばになると段々ケンカの規模が大きくなり、そのうちに国境での盗賊討伐や、人身売買組織の壊滅なども自分の有り余った体力を発散するかのように処理していくのを見て、父の辺境伯も不安定な辺境の地を任せるには頼もしい限りと息子の戦闘能力には一目置いていた。
ただ、後先考えずに力ずくで突っ走る部分と、態度が尊大なことに頭を痛めていた。

先帝が亡くなると、マデリーンの5人兄の皇子達が帝位争いを起こす。1人目と4人目は剣に倒れ、2人目は処刑され、残りの2人は毒に倒れた。先帝はさして良い統治者ではなかったゆえ皇子達の出来は酷く、結果共倒れし、残った唯一まともな皇女マデリーンが辺境伯夫人から女帝に、辺境伯は皇配になるハメとなった。レイド15才、エスメラルダ11才の時に辺境からこの帝都へ移ってきた。
それから3年経ち、母マデリーンは気性は荒くなったが賢帝と言われ、レイドは18才、エスメラルダは14才の結婚適齢期に入る。

マデリーン、エナン、レイドは辺境から連れてきた仲間の腕利き達を、身分に関わらず兵士や文官に付け、人事を一掃した。無駄な貴族行事や慣例を撤廃し、傾いた国庫を立て直した。
貴族の中でも清廉潔白な4家の家格を上げ、そうでない家は下げ、汚職の酷い貴族は地位を剥奪した。

未だかつてこれほど人気のある皇帝がいたのかと言うほど、国民に指示されている女帝がマデリーンである

エナンもエスメラルダも軍人気質。贅沢を好まなず、でしゃばらないので国民からの好感度は高いが、レイドはあの粗野な性格。辺境で暴れていた悪評も尾を引き、野獣皇太子だの破壊好きだの、もし皇帝になったら暴君になるのでは、とまで言われている。

マデリーンの即位によって2人の子供は皇太子と皇女の身分になったが、エスメラルダは軍隊のような辺境生活が染み付いているせいか貴族貴族した人種が苦手で、レイドは自身の粗暴な性格のせいで、どちらも婚約者が決まっていなかった。
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