運命の番

文字の大きさ
48 / 80

前国王セト

しおりを挟む
今日は学校終わりのお昼に、レイドが学校の門前まで迎えに来ることになった。
一緒にいられるのがあと数日なので、狼たっての願いだった。

「門の前に、すごーい大きな男の人が立ってる」
「本当だ。大きいし、すごい筋肉」
「銀髪だからグラーツの留学生かな」
「30才位じゃない?特別業務の招待客かも」

門の前にいれば、それは目立つ。
数少ない男性の上、見たこともない厳つい体つき、イシスにはいない鋭い容貌、無駄に大きい背丈、そして威圧感。

イシスの学生の学校と家庭教育の水準は高く、皆勉学や習い事に忙しいため、あまり他人に干渉しないのがいいところだ。自分にしか興味がない完全個人主義とも言えるが。

それでも大型の眼力鋭い狼獣人はピカピカに目立った。人の目など気にしたことのない性格と育ち方をしたので、堂々と番を待っている。

「レイド様、お待たせしました」

アーシェンが他の誰よりも速く駆けてきた。
別の場所に移動して人目を避けなければ、との思いから一目散に急いのだ。

レイドは番を抱きしめようとした両手を、アーシェンにハシッと掴まれ、そのまま手を引かれるように歩きだした。

「今日は積極的だな」

恋する狼は珍しく番がグイグイ引っ張るのに新鮮味を感じていた。おめでたい男である。

「ああ、アーシェンのお父さんか」
「そういえば、お父さん外国人だって言ってたよね」

狼が聞いたら、悲しみに暮れる会話内容だ。
髪の色が違うとか、全然似てないとか、興味のないことを追求しないのがイシスの国民性である。
なので人間関係はいたって楽だ。

ちなみにアレンは別の学校に通っている。
特別な理由はなく、王宮近くに2つの学校があっただけだから。家で一緒だから学校は別でもいいんじゃないかというノア女王の思いつきだ。

「お昼ご飯はどうされますか?」

「アーシェンの好きな店に入ろう」

手を繋ぎ、もう片方の手では番の荷物を持つ。
恋人のようだなとご機嫌だったが、前から歩いてきた髭のある40代位の金髪男性から突如、声がかかった。

「アーシェンか?久しぶりだな!」

「セトおじいさま!」

祖父?やけに若いな。
現国王の母に夫はいないと聞いたが。

「レイド様、セト前国王です。現在は建築家として国中を渡り歩いています」

ノアとウルシュの母の双子の弟だ。
大叔父のことを、お祖父様と呼んでいるらしい。

前国王はイシス男性にしては筋肉質な方で髭もあり、獣人のレイドからすると男らしく見える。

「おじいさま、こちらが、こ、婚約者のレイド様です」

婚約者と紹介してくれた。実にいい響きだ。

「おおっそうか!グラーツのレイド殿下か。実に見事な体格だな。遙々よく来た、よく来た。グラーツ城内の神殿建設な、あれワシが担当するから。そっちに行った際は是非、宜しく頼むぞ。そうだ、2人とも昼は食べたか?よし、一緒に食べよう!最近できた肉料理がある稀な店だぞ」

明るい人柄の面白そうな人だが声が大きいので、アーシェンにお祖父様、お声、お声と情報漏洩を注意されていた。

「あと今日な、ノアとウルシュに呼び出されたから、晩餐も一緒だぞ。イングリッドも来るらしい」

やや、面倒くさそうだ。
前女王イングリッドは王様業を早期退職後、現在医師として田舎で暮らしている。

イシスは男女共に小食で菜食だが、セトは注文を多く取り、肉料理もモリモリと食べ完食していた。
国内の建築失敗あんなこんなや、地方都市での面白話しを聞いた後、

「じゃあ、また今夜会おう!若い恋人同士の貴重な時間を、楽しむんだぞ!」

と大きな声で手を振られ、周囲にいた人に「まさか、あの子供とあの大男が恋人?」とチラチラ見られたアーシェンが赤くなっていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...