運命の番

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嫁ぐ日

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アーシェンがグラーツ帝国に嫁ぐ日がやってきた。

国境までは、イングリッド前女王と護衛のシャルカ、教師のリリアーナと、グラーツから依頼された水道技師3名が向かう。
今回は荷物があるため、アーシェンとイングリッドは別の乗り物で行き、国境でグラーツ軍の護衛部隊と合流する。

王族にしては少ない荷物を積んだ乗り物が一台、王宮の庭先にあった。

「アーシェン、レイド様と仲良くね」
「はい。お母様。お母様もお父様と仲良くなさってください・・・お父様」

父は娘をぎゅっと抱き締めた。

「ついこの間まで抱っこできるほど小さな子供だったのに。こんなに早くお嫁に行っちゃうなんて、すごく寂しくなるよ」

「大好きなお父様、私を育ててくださって、ありがとうございます。大変お世話になりました」

うるっとした父竜の背中に手を回し、抱き返しす。

「3カ月後にグラーツに飛んできてくださるのですね?」
「うん。アレンと一緒に署名式に参加するからね。帰国時にエスメラルダ皇女をこちらに連れてくるんだよ」
「すぐにお会いできて安心です」
「もしその時、あの狼と結婚したくなくなってたら、そのまま婚約破棄して連れて帰って来るから、我慢せず遠慮なく言うんだ。いいね?」
「はい」

アーシェンは笑いながら答えた。
よかった何とか泣かなくて済みそう・・・。

ウルシュ伯父様には、小さな護身用具を沢山貰った。
「アーシェンにしか使えない特別仕様だよ」
「おじさま、ありがとうございます」

アレンが両手を出してきた。
2人で手を握る。
「僕がアーシェンの能力まで奪ってしまったせいで、自分には子供を産むしかないって、ずっと悩んできたでしょ?レイド殿下と早く結婚したがったのも、僕のせいじゃないかって。ずっと謝りたかったんだ。ごめんなさい」
「そんなこと、アレン、何してるの?」

アレンの手からアーシェンに、温かい青い光が流れてくる。自分が持つ能力を分けてくれている。

「小さい頃、僕の能力が暴発した時に、アーシェンが抱きついて吸い取ってくれたよね。その後、一週間も寝込ませちゃってごめんね。あの時は嬉しかった」

今ではきちんと管理できるようになったアレンだが、小さな頃の事件は、アレンがアーシェンの分まで、二人分の能力を生まれ持ってしまったため、度々小さな身体が制御不能に陥った。
力が多すぎて苦しんでいるのだと理解したアーシェンは、母のノアが苦しむアレンにやっていたように、抱きついて過剰な分を吸収しようと試みた。
能力のあるノアと皆無に近いアーシェンでは身体の作りが根本的に違うので、アーシェンは打撃を受けて熱を出してしまった。

あの時の能力漏れの事故と今回の能力譲渡は別物だ。
今はアレンが意志をもって能力を渡している。

王家の能力を人に渡すのは、いけないことだ。
貰った方はしばらくの期間使用することができるが、あげた方は倒れてしまう。

「アレン、要らない。倒れちゃうから止めて」
アーシェンは涙が出た。手を離そうとしたが、離れない。もうアレンの方が、体も大きく力も強いのだ。

「イングリッドお祖母様がいるけど、グラーツに慣れるまではアーシェンもあった方が安全だよ。これでしばらくは持つはずだから」
アレンの顔色が悪くなり、汗をかき始めた。
「ありがとう。わかったから、もう手を離して、お願い」

「アレン、それ以上は止めた方がいいわ」
「後はイングリッド様に任せよう」
ノアとセーカに離されたアレンは、真っ青な顔で立っている。

アーシェンは涙を拭きながら、双子の兄にお礼を言った。
「アレン、ずっと心配してくれてて私も嬉しい。レイド様とは早く会いたくて、自分勝手に結婚を早めてもらったの。私こそ王様業をアレンに押しつけて、外国に逃げちゃってごめんなさい。それなのに大事な力をくれてありがとう」

アレンはうん、と頷いた。今にも倒れそうだ。
イングリッドがそんなアレンの肩に手を置く。

「アレンご苦労様でした。あなたのおかげでアーシェンも私も安心してグラーツに行けますよ」
「アレンのおかげで、私達も安心したわ。じゃあ、お母様、アーシェンをよろしくお願いしますね」

イングリッドに促され、国境に向け出発する。
アーシェンは乗り物から、見送る家族に手を振る。

「皆ありがとう。どうかお元気でいてください」

自然と出る涙が止まらず、国境までイングリッドが優しく頭を撫でていてくれた。



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