運命の番

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侍女ユニス

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「はじめまして。この度、アーシェン様の専属侍女となりましたユニスと申します。どうぞ宜しくお願い申し上げます」

ふわっとした栗毛の、優しそうな20才の伯爵令嬢だ。

アーシェンと護衛のシャルカが、ユニスの城内案内を受ける。

ユニスの父は裕福な子爵だったが、マデリーンの処刑されたロクデナシ兄、前皇子の非道な命令に背いた数少ない潔癖貴族だった。
その腹いせに、前皇帝一家から冤罪で財産を騙し取られ、没落寸前になったが、貧しい暮らしにも腐らず信念を曲げなかった。

子爵令嬢のユニスは家計を助けるべく、13才で知り合いの侯爵家で住み込みで働いていたが、皇帝がマデリーンに代替わりすると、子爵家の財産があっさり返還された。

返還と同時に、父の勇気ある反抗が称えられ、伯爵へと爵位が上がる。
マデリーンに感謝と憧れを持ったユニスは侯爵家に紹介状を書いてもらい、成人の15才でここ帝都の城に採用されて今に至る。

ユニスに城内を案内されながら、アーシェンは物語でよく読んだ、貴族のご令嬢が隣にいることに、外国に来たんだと強く感じた。

アーシェンがそれを伝えると、ユニスは王女様なのに貴族令嬢に会ったことがないことに驚いている。

「王女と言っても、隠れて一般の学校に行ってましたし、イシスには貴族がいませんので、ユニスさんが初めてです」

騎士達が噂をしていた。イシスは全員が貧富の差のない平民で、数名しかいない王族も謙虚で敬語を使うと。あれは真実だったようだ。
ユニスにはまだまだ知らない世界が多い。この王女様との会話がとても楽しい。

「私は侍女なので、どうぞユニスとお呼びください。敬語も使わないでいただきたいです」

「はい。慣れましたらそうします。身分制度と言うのは難しいですね」

「シャルカさんには、シャルカと呼んでいるではありませんか」

後ろに控えていた金髪長身のシャルカが答える。

「私達は元々知り合いでしたので、私の方がアーシェンと呼ばないように気をつけます」



ユニスは城内を一通り周り終えると、最後に皇太子の執務室を案内した。
中に入ると、書類に埋もれていたレイドがサッと立ち上がり、アーシェンを迎えた。脇にはレイドと同じ位、大柄な銀髪男性がいる。

「城巡りはどうだった?」
「とても広くて迷いそうでした。ユニスさんに丁寧に説明していただきました」

ユニスはひやっとした。
アーシェン様、せめて皇太子様の前では、私に敬語を使わないでくださいと。

マデリーン女帝は尊敬しているが、苛烈な皇太子のことを苦手とする人は多かった。ユニスは特に目だ。人を射殺すような鋭い眼差しが怖い。
愚鈍な前皇帝一家にはなかった覇気がある。

気に入らない使用人は即クビにし、言い寄って来た貴族令嬢にコイツに水をかけろと命令し、城を出入り禁止にした。

古参の使用人達は、あまり近づかず、目を合わせなければ大丈夫だと教えてもらってからは、程よい距離と目線を保てるようになった。

しかしマデリーンの侍女を目指していた自分が、皇太子妃のお付きと決まった時は戦々恐々とした。

顔に出てしまったのか、マデリーン様が
「王女の世話は最低限でよい。あまり干渉するな」
と仰ってくれたが、最低限がどの位なのか検討もつかなかった。
先ほどアーシェン様とお話しするまでは。

「ユニス、ご苦労だった。今日からアーシェンを手伝ってやってくれ。ただアーシェンは使用人のいない環境で育ったから、世話を負担に感じることがある。通常生活で困らない程度に頼む」
「かしこまりました」

「シャルカ、城の警備に気になる点があったら、直接俺か側近のマティアスに言ってくれ。この大きいのがマティアス、狼獣人だ。マティアス、シャルカだ。そしてこちらが愛しい番のアーシェンだ」

レイドは番の肩を抱き、頭にキスをする。
マティアスとシャルカが会釈し合った。

「マティアスさん、どうぞよろしくお願いします」
「どうぞマティアスと。いつもレイド様からお話しを伺っております」
「シャルカ早速すまないが、来週の視察について話したい。アーシェンを送ったら戻ってきてくれ」
「はい」

ユニスは目を丸くしていた。
いつも見かける皇太子と感じが違う。いたって普通の紳士だ。番に出会って別人になったと言う噂は本当だったのだろうか。
だとしたらアーシェン王女に感謝しないといけない。

ユニスの気をつけることは、皇太子の怒りを買って、クビにならないようにすることだった。


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