運命の番

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視察

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レイドが来週の視察にアーシェンを連れて行くと、朝の会議で言い出した。
マデリーンもエナンもマティアスも、また番病かと思った。

「昨日グラーツに着いたばかりだろう。何かあったら面倒だ。急な変更は止めろ」
マデリーンは眉間にシワを寄せる。
本当に面倒なのは、このバカ息子だ。

「宿泊先と馬車には結界をかけます。アーシェンには護身用具もあり、イシスからの護衛も同行します」
「アーシェンの部屋はどうするんだ」
「マティアスに頼みます」

マティアスは初耳だった。
珍しく朝議に出席してくれと言われ、出てみたらやっぱりであった。

「何も予定が入っていない日があるが、これはなんだ?」
「アーシェンと観光する日です」
「・・・・・」
会議の場が静かになる。

「お前、番と旅行したいだけではないか?」
「観光はたった1日です。もし署名式までに逃げられたら新婚旅行に行けませんので、今の内に一緒にいたいだけです」

柄にも似合わず、悲しいことを言う。
強引な狼皇太子にも危機感はあったらしい。
会議の席はレイドに同情票が集まり、アーシェンを連れて行けることとなった。

「イシスの護衛と連携を取れ、安全第一で行け」
マデリーンも誰もわかっていなかった。
一番の危険人物は、言い出したレイド本人であることに。



「レイド様、今から番さまの部屋を取るのには、無理があるのですが」
執務室に戻ったマティアスは現実を伝える。

「形式上、どこかに取ってくれたらいい。あと、この観光の日に近くの教会を予約しておいてくれ。1時間以内で終わる」
「教会なら予約はできますが、式でも挙げるつもりですか?」
冗談で聞いたつもりだった。

「ああ。誓いだけだが、2人で質素に行いたい」
「なんと・・・」
「観光のついでだ。色々な思い出を作っておいた方が離婚しづらくなるだろ」

先ほどから番さまに逃げられることを恐れている。
彼女は昨日、城に来たばかりなのに。
もう何かしでかしたのか?

「何か逃げられるようなことをしたのですか?」
「・・・・・いや」
したようだ。どうせいやらしいことに違いない。




アーシェンが目を覚ましたらもう昼になっていた。
テーブルには朝食の盆が置かれているのが目に入り、慌てて起き上がるが、股の辺りに違和感がある。

「馬車に座り過ぎたからかな?」
シャワーで温めたら治るかもしれないと、レイドの部屋の風呂場へ入る。

シャワーを浴び着替え終わった所に、大きな狼が昼食を運んで持ってきてくれた。

「起き上がれたか?疲れているようで心配した」
昨夜、疲労困憊の少女に色々しでかしておいて、よく言う。

「レイド様、寝坊をしてしまいました。すみません」
「今日はゆっくりする日だ。他の皆にも部屋で過ごしていいと伝えてある。14時から城内を案内する専属侍女が来るから、それまでは一緒に過ごそう」
「はい」

レイドはアーシェンの頭に鼻をつけ、まだ乾いていない髪の匂いを嗅ぐ。
「アーシェン、また風呂に入ったのか?」
昨日せっかく自分の匂いを付けたのに消えている。

もしや昨日のアレを覚えているのか?寝込みにあんなことされ、気持ち悪がられたか?だから洗われたのか?

レイドは被害妄想でいっぱいになるが、全然違った。

「イシスでは朝も体を洗っていたので、つい」
そうだった。水浴びと風呂の好きな国民だった。

自分が無理やり舐めまわしたせいで少女の股を痛めたことをお互い知らぬまま、真実は闇の中へ消える。

「番の匂いが薄くなってしまうのが残念だが、風邪を引かなければいい」
昨日少女のローブを脱がせ、寒がらせたくせによく言う。

「ふふふ、レイド様は狼だから匂いを嗅ぐのが好きなんですね。可愛い」
心の中でデレッとした狼獣人は、部屋で番と共に仲良く餌付けをし合いながら昼食を取った。

アーシェンは昨夜の出来事を何も覚えていないようで安心した。

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