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1巻
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疲弊しきったマグダレイ旧領主は、国王から出された『領主権を王家に返上すれば、代わりに莫大な年金を与える』という条件を喜んで呑み、ガーヴィスにすべてを譲り渡したのだ。
ガーヴィスがリーナに言い残したのは、素っ気ないひと言だった。
『マグダレイの治安が落ち着いたら迎えに上がりますので』
そんな言葉は嘘だとわかった。別居したいというのが、ガーヴィスの望みなのだと……
――いいのよ……私は私で、王家の人間としての務めを果たし続けるわ。お父様から命令があれば、どんなに危険でもマグダレイに赴くし、そうでなければ、ここで王女の義務を果たす。
心など持たない『お人形』として生きていけばいい。
リーナはそう思いながら、心を閉ざした。
……だが、そんな風に引きこもっていられたのも、わずかな時間だけだった。
こんなに最低な関係なのに、リーナはガーヴィスの子を身ごもってしまったのだ。
第一章
眠ると定期的に、同じ悪夢を見る。
今夜ガーヴィスの眠りを侵したのも、父や弟妹が死んだ日の光景だ。あれは、ガーヴィスが、八つになった夜のことだった。
『お前が呼んだ災厄のせいで、お父様とあの子たちは死んだのよ! お前は私の家族を妬んでいた、穢らわしいお前を育ててやったのに、逆恨みして不幸を願っていた、そうだろう、人もどき!』
ガーヴィスは、母が嫁いでくる直前に孕んだ、不義の子だ。
母は男遊びが大好きで、名門アルトラン伯爵家に嫁ぐ機会を得たくせに、最後の淫蕩の夜に、他の男の種を宿してしまったのだ。
生まれたガーヴィスの容姿を目にした父は、母の素行を調べた。父に問い詰められた母は、嫁ぐ前夜に不貞を働いたと自白した。絶世の美女だった母を、父は許した。
この話をガーヴィスに教えてくれたのは、去年死んだ母の侍女。母が実家から連れてきた腹心だった。実際は、その侍女は母のことを大層嫌っていたようだが……
彼女のお陰で、ガーヴィスは実の父の名前を知った。実の父が母の実家を解雇されて野垂れ死んだことも知ることができたのだ。
育ての父は名門の当主らしい品行方正な人だった。
明らかに他人の子であるガーヴィスに暴力はふるわなかった。
『罪人』である母にどんどん子供を産ませて逃げられない身体にし、ガーヴィスに対する暴力は、母にふるわせていた。
だからガーヴィスは、父に手を挙げられたことはない。父が削ったのは憎きガーヴィスの心だ。
何か不幸があった時だけ、父はガーヴィスのところにやってきた。
『今日、おじさんが亡くなったよ、お前のせいだ』
『近所で馬車の事故があって罪のない人が亡くなった。お前のせいだね』
『家畜の病気が流行ってたくさんの鶏が処分された。お前のせいなんだよ』
『戦争でマグダレイの街に大きな被害が出たそうだ。お前がいなければ死者の数は半分だっただろうに』
そして、最後に必ず問うてきた。
『お前のせいなのに、どうして平気な顔をしているんだ、ガーヴィス。お前には自分が災厄を招いている自覚はないのか。命に代えてもわびたいという殊勝な気持ちは?』
父の声を聞くたびに、身体が固まって動けなくなったものだ。
……その日、屋敷の中は嘆きに満ちていた。騒がしく、泣き声がひっきりなしに聞こえてくる。悲しいことが起きた様子なのに、父はガーヴィスを罵りに来なかった。
――何があったの?
その答えは、すぐにわかった。
屋敷に嘆きが満ちていた理由は、父と弟妹たちが船の事故で亡くなったからだった。
その夜、ふらふらになった母がガーヴィスの暮らす屋根裏に上がってきた。
『お父様とあの子たちを返せ、化け物』
首輪で繋がれ、一日ろくに『餌』を与えられずにいたガーヴィスは、朦朧としたまま母の顔を見上げた。
『母……様……』
『お前のせいだ! お前のせいでお父様が! 私の可愛いあの子たちが!』
母の言葉は意味不明の絶叫で途切れた。
――僕をつないでいることを周囲に知られたくないんじゃないの……? そんなに大声で喚いたら、外に聞こえてしまうよ……
母は『我が家は四人の子供に恵まれた幸せな家庭だ』と周囲に自慢するため、常に細心の注意を払っていた。
ガーヴィスを殴る時は見えない場所を殴った。
餌は死なない程度に与えてくれた。
アルトラン伯爵家の長男が痩せこけていたら、他人に不審を抱かれるからだ。
教養もきちんと仕込んでくれた。来客に話しかけられた時、言語の発達が遅れていると見られたら困るからだろう。
そして母は『病弱だから』と偽って、ガーヴィスを決して学校には通わせなかった。閉じ込めて、鬱屈のはけ口としていたぶり続けたのだ。
父も弟妹も、ガーヴィスを存在しないものとして扱う。
それがアルトラン伯爵家の決まりだった。
――お父様は、僕がお母様に殴られ、蹴られ、罵られているのを見ている時、いつも笑っていた……。わかっている、お父様は、お母様が自分の顔色をうかがって、僕を傷つける様子を、心から楽しんでいたんだ。
この家は、ずっといびつな家だった。
弟妹たちはまだ物心ついていなかったけれど、それでも、あのまま大きくなっていたら、いびつな大人になっていただろうなと思える。
父はとても優しい声で、弟妹たちに『ガーヴィスお兄様は人もどきだから、ああやって繋いでおかないと危険なんだ』と言い聞かせていた。
――弟妹たちが……死んじゃった……
何も感じない鈍った心に、ずしん、となにかがのし掛かる。父がいなくなったと聞いてもなんともないのに、時折いたずらに来た小さな弟妹のことを思った刹那、心に、潰れるような痛みを覚えた。
――あの子たちは、まだ子供なのに……小さいのに……どうしてこんなことに……
弟妹は、六歳、四歳、三歳の幼い子たちだ。
ガーヴィスと違って両親に愛され、鎖につながれることなく大切に育てられていた。
父はあの子たちだけはまともに、父親として可愛がっていて、いつも色々なところに連れて行っていたものだ。
弟妹は幼く、まだものをよくわかっていないから、父母に叱られてもちょこちょことガーヴィスのところにやってきて、菓子をくれたりした。
――嘘……でしょう……
胸の痛みは悲しみなのだと、じわじわと自覚し始める。
ガーヴィスは髪をかきむしり呪詛を吐き散らす母を、ぼんやりと見つめた。
その時、階下から『奥様』と叫ぶ声がした。
『奥様、どうか最後のお付き添いを……』
階段の軋む音がして、侍女が姿を現す。彼女はガーヴィスを見ないように母に歩み寄ると、ぐしゃぐしゃの髪をした母を助け起こした。
『ああ、嘘だと言ってメアリ』
『……明日には、ご親戚の皆様もおいでになります。さあ……死者を守る灯火の番を……お嬢様やお坊ちゃまも、お母様が……お側にいらしてくださったほうが、安らかに……っ……』
そう言って、侍女頭が嗚咽を漏らし始めた。母は夢遊病者のようにふらりと立ち上がり、危うい足取りで屋根裏を出て行く。
侍女はひとしきり涙を拭ったあと、平然とした顔でガーヴィスを振り返って言った。
『神様っているんですね』
呆然としたガーヴィスの前で、侍女は口の端を吊り上げてみせる。
『ろくでなしの売春婦に、ちゃあんと罰が当たったんですから。ご自慢の旦那様もお子様たちも、一瞬で水底に』
彼女の目には涙などまったく浮かんでいない。嘲笑のような表情を浮かべ、彼女は続けた。
『私は、お給金をはずんでくださるのであれば、今後もきちんとお務めいたします。首輪を外して差し上げますね』
侍女は薄笑いしながら、ガーヴィスの拘束を解いてくれた。
震えて動けないガーヴィスに、侍女はせいせいした、とばかりの表情で言った。
『ああ、明日から葬儀で忙しくなりそうですわ。ガーヴィス様も適当にお客様にご挨拶なさってくださいませね』
……そして、翌日の朝、母は屋敷の屋上から身を投げた。
どすん、という異様な音に驚いたガーヴィスが窓から身を乗り出すと、血だまりの中で母が事切れているのが見えた。
母の遺書には『ガーヴィスを産んでから私の人生は滅茶苦茶になりました。ガーヴィスは災厄を招く呪いの子です』と書いてあった。
――災厄を招く呪いの子……
生みの母の最期の言葉が、ガーヴィスの胸に刻み込まれた。
たしかにガーヴィスは、家族をずっと憎んでいた。何もわかっていない無邪気な弟妹すら憎んでいた。
無邪気で何の罪もなかった弟妹も、母に虐待を強いて愉悦に満ちた笑みを浮かべていた父も、ガーヴィスの恨みが招いた災厄のせいで、溺れ死んだのかもしれない。
父の言葉が蘇る。
『お前のせいで不幸になったんだよ、なぜ平気な顔をしている』
『あの死も、この死も、全部お前のせいなのに』
『自分が災厄を呼んでいる自覚はないのか? 生きていて申し訳ないという気持ちは?』
――本当に、僕がやったのかも……? お父様や、弟妹にまで、不幸を呼んでしまったのかも。お母様がおっしゃることは、正しいのかも……
恐怖で震えが止まらなくなった。
――お父様とお母様が言うとおり、僕は……僕は……災厄を……
それが真実であろうが、父の虐待のために発したでたらめであろうが母の病んだ思い込みであろうが、どうでもいい。
生みの母の最期の言葉は、決定的にガーヴィスの心を刺した。
そして、抜けない棘になってガーヴィスの心をさいなみ続けている。
『血がつながっていない子には継がせられない』と叔父夫婦に伯爵家を追われた後、ガーヴィスは、見習い騎士となって寄宿舎付きの学校に入れられた。
粛清騎士に選抜され、度を超した激しい訓練を受けている間、ずっと自分は『これも報いなのだ』と受け入れ続けた。
過酷な訓練や、命の危険を伴う任務はすべて、呪われた自分への罰なのだと。
そのおかげで恐怖心は麻痺し、傷の痛みや身体のつらさには鈍くなり、心にどんよりと靄が掛かった大人になれたのだ。
目を開けると真っ暗な天井が見える。
ここは着任したマグダレイの領主館だ。ガーヴィスは汗だくのまま起き上がり、月明かりを頼りに寝台の傍らの引き出しを開ける。
そこには小さい髪留めが入っていた。白い花をかたどった、高価そうな品だ。
戦に駆り出されている間、ずっと懐に持ち続けていた、ガーヴィスの『お守り』である。
粛清騎士には抜き打ちで所持品検査が行われる。
この髪留めを隠しているのを見つかったこともあった。
だがガーヴィスは、母の形見だと嘘を吐いて、この髪留めを手放さなかった。
――リーナ様は、四年前に俺に会ったことなど覚えておられまい。
四年前、ガーヴィスは、密通者のあぶり出しの最中に重傷を負った。
指示に背き、作戦外の行動をしたせいだ。
背いた理由は、どこぞの裏社会に売られる予定の子供たちを屋敷から逃がそうとしたからだ。まさか戦中の混乱に乗じて、堂々と人身売買まで行う気だったとは。
密通者は逃がそうとする子供たちにも容赦なく刃を向けた。
子供を助けようとしなければ、ガーヴィス一人で、無傷のまま全員始末できたはずだった。
だが、どうしてもできなかったのだ。
弟妹の顔がちらついて、また子供にまた死なれるのは嫌だと思ってしまった。粛清騎士が情で動けば、即、死につながると理解していたにもかかわらず……だ。
ガーヴィスはしくじって、深手を負った。歯を食いしばって仕事を『終えた』時には、刃に仕込まれた毒で動けなくなっていた。
そして、運び込まれた病院で、慰問に来たリーナに会ったのだ。
猛毒の作用で起きた発作で、光に苦しみのたうち回る間、ずっと母が足元にいた。
母はくりぬかれた真っ黒な眼でガーヴィスを見据え、ずっと同じ言葉を繰り返していた。
『早く地獄に来て、早く地獄に来て、お前を踏み台にして私だけ天国に行くのだから』
その声を振り払ってくれたのは、澄み切った少女の声だった。
『大丈夫ですか、お願い、頑張って』
誰が自分のために祈っているのかわからなかった。
粛清騎士とはいえ、まだ正騎士に取り立てられたばかりのガーヴィスは、それほど重要な存在ではなかったはず。
ガーヴィスの命を惜しんでくれる人間などいないと、このまま母の呪詛に食い尽くされ、共に地獄に沈み込むのだと思っていたのに……
『大丈夫、死神なんてこのお部屋にはいません。私が付いていますから』
真っ暗な病室でガーヴィスの手を握りしめ、一晩中励ましてくれたのは、あろうことか、ロドン王国の王女殿下だったのだ。
母が『おまえのせいで』『おまえのせいで私は』と繰り返しながら、ガーヴィスを闇の底へと引きずり込もうとする。だが、そのたびにリーナの優しい手が、ガーヴィスを生者の世界に引っ張り上げてくれた。
まるで、リーナには、息子を地獄に引きずり込もうとする母の姿が見えているかのようだった。
――なぜ、彼女は、わざわざ、俺を……
十四歳の王女殿下が、慰問活動で傷病兵を看護して回っていることは知っていた。
この病院にも、王女殿下は頻繁に顔を見せるとも聞いた。
だが、まさか、意識をなくした『粛清騎士』に付き添ってくださるとは。
ガーヴィスが目を覚ましたのは明け方で、なぜ王女殿下が病室にいるのか理解できなかった。
光が目に入るだけで頭が割れるように痛い。
激しい頭痛を覚えつつ、生き延びたことに驚いた。そして、ガーヴィスを母の手から繰り返し助けてくれたのは、間違いなくリーナだと気付く。
だが、リーナに優しくされても、どんな顔をしていいのかわからなかった……
『……俺には、付き添わなくていいです』
包帯の隙間から見えた顔は小さく美しく、リカーラの姫君と呼ばれるにふさわしい、花のような可憐さだった。
看護してもらったお礼を言えば良かったのに、ようやくしゃべれるようになって口にできたのは、そんな言葉だったなんてお笑いだ。
リーナは嫌な顔一つせず、微笑んで首を横に振ってくれた。
『あまりにうなされていたので、どうしても心配だったのです。大丈夫よ。護衛隊長もお部屋の外で一緒に待っていてくれましたから』
何も答えないガーヴィスに、リーナは優しい声で言った。
『小さな子供たちを守ってくださった、勇敢な貴方を尊敬します』
違う。自分は、災厄を呼び、何の罪もない弟妹を殺してしまった男なのだ。だから、罪滅ぼしにもならないとわかっていて、子供を助けてしまっただけ。礼を言う必要などないというのに。
『どうも、ありがとうございます』
感情のこもらないガーヴィスの返礼に、リーナが笑みを含んだ声で言った。
『貴方はあの子たちの恩人よ。捜索願が出されている子供たちは、全員、親のところへ返すことができました。孤児は、王都の孤児院で大切に養育します』
リカーラの姫君の声は、とても優しかった。
それが、リーナとまともにかわした最初で最後の言葉だった。夜明けと共にすぐに迎えの者が来て、リーナとその護衛を連れて行ってしまったからだ。
光に苦しむガーヴィスは、目の上に厚い布を巻かれていた。
暗い部屋で顔の上半分が覆われていたら、人相などわからない。更に言うなら、突入作戦に備え、髪の色を王都では一般的な薄い茶色に染めていた。
だから、リーナはあの患者をガーヴィスだとは思っていないだろう。
――覚えているのは俺だけだ。
白い花の髪留めは、あの時、リーナが病室に落としていった品物だ。
彼女はこの髪留めを探しに来なかった。
忙しくて、探しに来ることができなかったのか。もしくは捜索に人手を割くことを遠慮して、なくしたと言い出せなかったのか。
ガーヴィスは、それを拾ったまま、ずっと持っていた。
――返さないなんて最低だな。窃盗犯と変わらない。
そう思いながら、ガーヴィスは指先で髪留めの縁をなぞった。丁寧に仕上げられた金細工は、どこもかしこも滑らかに磨き込んである。白の釉薬も艶やかで美しい。
まさに王国の花、誇り高きリカーラの姫君にふさわしい品物だった。
ガーヴィスは引き出しに髪留めを放り込み、今度は一枚の書状を取り出す。
そこにはこう書かれていた。
『もうすぐ子供が生まれます。一度、王都にお戻りください。お産で私に何かあった時、子供をよろしくお願いします。リーナ』
ガーヴィスの理性に、黒い炎が点く。その炎はめらめらと燃えながら、ガーヴィスが作り上げてきた人間の仮面を崩壊させてゆく。
――一夜肌をかわしただけなのに……子供ができるなんて……
リーナから、なりふり構わず自分を抱けと命じられ、彼女を押し倒したのはガーヴィスだ。
なぜ神は、呪われたガーヴィスに、尊い王家の子を授けたのか。
母の残した言葉はいまだに棘のように心に突き刺さっている。
『災厄を招く呪いの子』
呪いとは何なのだろう。
父が自分に対して向けた気持ちが呪いなのだろうか。
自分が家族を憎んでいたことこそが、呪いだったのか。
母が命をかけてガーヴィスに向けた憎悪こそが、呪いなのではないだろうか。
――俺には、呪いしかない。だから、戦争であんなにたくさんの人間を殺せたんだ……任務という大義名分を振りかざして、俺は、どれだけの災厄を……
あらゆるものが、どろりとした闇に呑み込まれていくような気がする。
こんな人間に関わって、まともでいられるはずがない。
リーナと子供にも近づきたくない。
この人生は呪いにまみれすぎている。
母は、彼らの不幸はすべてガーヴィスのせいだと、命を振り絞って息子に呪詛を刻み込んだ。
――俺が恨んだせいで、父だけでなく罪のない弟妹までもが……。きっとそうなんだ。いや、わからない……俺には、事実を正しく把握する能力がないのだろう。だから。
『だから、あんなに、殺せたのよ。お前は呪われた子。皆に災厄をもたらす子だから』
母の声と共に、目の前に大雨の夜の光景が浮かんだ。
メルバ河流域の決戦の光景だ。
ガーヴィスは粛清騎士に支給された複数の特殊薬品を懐に、強化された連射型の弩と、刃が厚く鋸刃になった殺傷用の剣を握りしめ、全力で敵陣の奥を目指していた。
――閃光弾で浮き足立たせれば、敵将のところまで走れる。
もう、何もかもが滅茶苦茶だった。突然の鉄砲水で双方の陣は無秩序に分断され、ロドン側もサンバリス側も指揮系統が混乱していた。
誰が誰なのかわからず、訓練不足の兵の一部は逃げ惑い始めている。
――見ろ、見るんだ、准将ならば肩の飾りが雨で濡れて光るはず……
斬りかかってきた男を一刀のもとに斬り捨て、ガーヴィスは走った。次に襲いかかってきた男も、わずかな躊躇もなく切り捨てる。
鋸刃の剣は力がなければ肉に刃が食い込み、抜けずに命取りになる。その分、確実に敵を無力化できるのだ。
渾身の力で刃を振るい終えたガーヴィスは、懐に手を入れた。
瓶に入った二剤の発火剤を、封を破って混ぜ合わせ、勢いよく投げつける。瓶は混乱の中で踏みつけられ、水と反応した発火剤がどん、と音を立てて火柱を上げた。
人々の混乱が激しくなる。ガーヴィスは炎を避けて空いた道にためらいもなく駆け込み、次の『道具』を取り出した。去年開発されたばかりの閃光弾だ。今日が初めてのお披露目になる。
――ちゃんと光ってくれよ。
そう思いながら、ガーヴィスは密栓を抜いて、閃光弾を敵陣のあるはずの場所に投げつけた。
一瞬後に、まばゆい光が、降り注ぐ雨と濡れそぼった人々の姿を照らし出した。
閃光弾の威力に、あちこちで悲鳴が上がる。暗闇に慣れ始めた目は、しばらくの間、潰れてしまうだろう。
『また、災厄をもたらすんだな、お前さえいなければ、死なずに済んだのにな』
雨の中を駆け抜けるガーヴィスの頭の中に、声が聞こえた。
『お前がいなければ、きっと皆、死なずに済んだんだろうに』
それは、母の声であり、父の声でもあった。
――ああ、そうだ、俺がいなければ殺されずに済んだのにな!
ガーヴィスは斬りかかってきた将官と斬り結ぶ。敵将を守っているだけあり、かなりの腕だ。だが鉄砲水で泥を被ったせいか、相手は柄を握る手をわずかに滑らせた。
容赦なく敵の剣を払いのけたガーヴィスは、獣のような咆哮と共に異形の剣を振り下ろす。頭を割られた男の身体を蹴り飛ばし、敵将のいる天幕に最後の道具を投げつける。鋭い臭気が立ち上り、中から数名の人間が転がり出してきた。肩に飾りをつけた男を見つけた。
獣じみた絶叫と共に、ガーヴィスは目を見開く男に飛びかかる。
真っ赤な血が飛び散り、雨に溶けて流れていく。ガーヴィスは頽れる身体から階級章をむしり取り、最後の力を振り絞って、声を張り上げた。
『サンバリス軍准将を討ち取った!』
あの瞬間、ガーヴィスは『勇者』になってしまったのだ。血まみれの悪鬼となって殺し続け、呪われた自分を許容しながら生きる人生は断たれてしまった。
――どうして……俺は……こんなことに……
ガーヴィスは、口内に広がる血の味で我に返った。
荒ぶる鼓動が緩やかに鎮まっていく。
ガーヴィスを焼く狂乱の炎は鎮まってきたようだ。
――俺には仕事がある。明日も、朝が早い……。去年壊されたままの砦の修復計画を練らねば。一度現地を訪問しないとな。
大きく息を吸い、ガーヴィスは寝台に身を投げ出す。
人生で、赤の他人から向けられた数少ない善意を……リーナの手を思い出す。
血まみれの自分が、誰かにあんな風に気にかけられる日が来るとは思っていなかった。
ガーヴィスが信用できるのは、粛清騎士団の仲間だけ。同じように血まみれになり、正義という大義名分を盾に刃を振るう『同類』だけだと思っていたのに。
――リーナ様は俺のことなど覚えていない。俺は、リーナ様にとっては、たまたま見舞った負傷兵の一人に過ぎなかったのだから。呪いで汚れた人間は切り離して、王家の姫君として、子供と二人で幸せになってほしい。
自分に犯され、身体をこわばらせるリーナを思い出したら、鋭い痛みが胸を刺した。
なぜあんな真似をしたのかわからない。考えたくない。今後は永遠に一人でいい。これ以上、災厄を呼びたくない。そう思った。
◆
「リーナ様、どうかお気を確かに!」
産婆の声が聞こえる。
顔を叩かれリーナは我に返った。気を失っていたようだ。
赤ん坊の産声を聞いたあと、どのくらいの時間が経ったのだろう。医者がリーナの顔を覗き込み、まぶたを引っ張って何かを観察しているのが見えた。
「意識を回復されたようです」
「よかった……リーナ様に何かあったら……」
医者の声や侍女たちの声が聞こえる。だが、身動きすらできなかった。
――私……生きてる……もう赤ちゃんも私ももたないって言われたけど……産めたんだ……
リーナは、あの冷たい一夜で授かった子を、二日がかりで産み落とした。
夫の冷たさを恨み、ひどい体調不良に苦しみ、王女として弱音を吐くことも許されず、まったく余裕がないまま十月十日を過ごした。
極めつけに難産で疲れ切り、今はもう目を開ける元気もない。
ただひたすら、産んだら終わりだから、産めば王女の義務を果たせるからと、なんとか堪えて乗り越えたのだ。
それらの苦痛もようやく終わった。あの世に行きかけていたが、戻って生き延びたようだ。
――赤ちゃんは無事かしら、元気に泣いているけれど……
そう思った刹那、にわかに産室が騒がしくなった。
「男孫が生まれたか!」
――お父様……?
どかどかと踏み込んでくる足音と、か細い赤ん坊の泣き声、それから産婆や侍女たちの押しとどめる声が聞こえる。
「おお、これでロドン王家の血筋もやや安泰だ。弟のところも息子が一人しかおらず心細かったのだ」
跡継ぎの心配しかしていない父の声に、死にかけていたリーナはわずかに身じろぎした。
――何なの、ガーヴィス様もお父様も、殿方って皆最低ではなくて……?
「どうして父様はそんなことしか言えないの? 姉上が大変な思いをなさったのに!」
弟の泣き声が聞こえたので、心の中で今の発言を訂正した。
――ごめんなさい、マリス。あなたはまともな優しい男性よね。
その時、赤ん坊のか細い泣き声が聞こえ、失望と疲弊の果てで死にかけていたリーナはカッと目を開けた。
――何事……?
「陛下ッ! 新生児をそのように抱かれてはなりませんっ! 落ちてしまいます!」
「うるさい、ちゃんと抱いているだろうが」
落とすという言葉に、失血の悪寒とは違う鳥肌が立つ。
リーナは、渾身の力で目を開き、顔を上げた。
「ひ、姫さま、急に動いてはいけません、今お助けしますわ」
付き添っていた侍女が、あわてたように手を添えてくれた。
頷き返すと、弟のマリスが飛びついてきた。
「姉上! 大丈夫ですか! 姉上……心配しました……」
泣いているマリスの様子に胸が痛んだ。案じてくれていた人々の存在が、ようやくはっきりと認識できる。
声を出す元気もないが、父王から赤子を取り返さなくては。
――私はこのまま死ねない。お父様が、赤ちゃんを勝手にいじくり回して、うっかり死なせてしまうかもしれないもの。
そう思ったら、さらに気力が蘇った。
ガーヴィスがリーナに言い残したのは、素っ気ないひと言だった。
『マグダレイの治安が落ち着いたら迎えに上がりますので』
そんな言葉は嘘だとわかった。別居したいというのが、ガーヴィスの望みなのだと……
――いいのよ……私は私で、王家の人間としての務めを果たし続けるわ。お父様から命令があれば、どんなに危険でもマグダレイに赴くし、そうでなければ、ここで王女の義務を果たす。
心など持たない『お人形』として生きていけばいい。
リーナはそう思いながら、心を閉ざした。
……だが、そんな風に引きこもっていられたのも、わずかな時間だけだった。
こんなに最低な関係なのに、リーナはガーヴィスの子を身ごもってしまったのだ。
第一章
眠ると定期的に、同じ悪夢を見る。
今夜ガーヴィスの眠りを侵したのも、父や弟妹が死んだ日の光景だ。あれは、ガーヴィスが、八つになった夜のことだった。
『お前が呼んだ災厄のせいで、お父様とあの子たちは死んだのよ! お前は私の家族を妬んでいた、穢らわしいお前を育ててやったのに、逆恨みして不幸を願っていた、そうだろう、人もどき!』
ガーヴィスは、母が嫁いでくる直前に孕んだ、不義の子だ。
母は男遊びが大好きで、名門アルトラン伯爵家に嫁ぐ機会を得たくせに、最後の淫蕩の夜に、他の男の種を宿してしまったのだ。
生まれたガーヴィスの容姿を目にした父は、母の素行を調べた。父に問い詰められた母は、嫁ぐ前夜に不貞を働いたと自白した。絶世の美女だった母を、父は許した。
この話をガーヴィスに教えてくれたのは、去年死んだ母の侍女。母が実家から連れてきた腹心だった。実際は、その侍女は母のことを大層嫌っていたようだが……
彼女のお陰で、ガーヴィスは実の父の名前を知った。実の父が母の実家を解雇されて野垂れ死んだことも知ることができたのだ。
育ての父は名門の当主らしい品行方正な人だった。
明らかに他人の子であるガーヴィスに暴力はふるわなかった。
『罪人』である母にどんどん子供を産ませて逃げられない身体にし、ガーヴィスに対する暴力は、母にふるわせていた。
だからガーヴィスは、父に手を挙げられたことはない。父が削ったのは憎きガーヴィスの心だ。
何か不幸があった時だけ、父はガーヴィスのところにやってきた。
『今日、おじさんが亡くなったよ、お前のせいだ』
『近所で馬車の事故があって罪のない人が亡くなった。お前のせいだね』
『家畜の病気が流行ってたくさんの鶏が処分された。お前のせいなんだよ』
『戦争でマグダレイの街に大きな被害が出たそうだ。お前がいなければ死者の数は半分だっただろうに』
そして、最後に必ず問うてきた。
『お前のせいなのに、どうして平気な顔をしているんだ、ガーヴィス。お前には自分が災厄を招いている自覚はないのか。命に代えてもわびたいという殊勝な気持ちは?』
父の声を聞くたびに、身体が固まって動けなくなったものだ。
……その日、屋敷の中は嘆きに満ちていた。騒がしく、泣き声がひっきりなしに聞こえてくる。悲しいことが起きた様子なのに、父はガーヴィスを罵りに来なかった。
――何があったの?
その答えは、すぐにわかった。
屋敷に嘆きが満ちていた理由は、父と弟妹たちが船の事故で亡くなったからだった。
その夜、ふらふらになった母がガーヴィスの暮らす屋根裏に上がってきた。
『お父様とあの子たちを返せ、化け物』
首輪で繋がれ、一日ろくに『餌』を与えられずにいたガーヴィスは、朦朧としたまま母の顔を見上げた。
『母……様……』
『お前のせいだ! お前のせいでお父様が! 私の可愛いあの子たちが!』
母の言葉は意味不明の絶叫で途切れた。
――僕をつないでいることを周囲に知られたくないんじゃないの……? そんなに大声で喚いたら、外に聞こえてしまうよ……
母は『我が家は四人の子供に恵まれた幸せな家庭だ』と周囲に自慢するため、常に細心の注意を払っていた。
ガーヴィスを殴る時は見えない場所を殴った。
餌は死なない程度に与えてくれた。
アルトラン伯爵家の長男が痩せこけていたら、他人に不審を抱かれるからだ。
教養もきちんと仕込んでくれた。来客に話しかけられた時、言語の発達が遅れていると見られたら困るからだろう。
そして母は『病弱だから』と偽って、ガーヴィスを決して学校には通わせなかった。閉じ込めて、鬱屈のはけ口としていたぶり続けたのだ。
父も弟妹も、ガーヴィスを存在しないものとして扱う。
それがアルトラン伯爵家の決まりだった。
――お父様は、僕がお母様に殴られ、蹴られ、罵られているのを見ている時、いつも笑っていた……。わかっている、お父様は、お母様が自分の顔色をうかがって、僕を傷つける様子を、心から楽しんでいたんだ。
この家は、ずっといびつな家だった。
弟妹たちはまだ物心ついていなかったけれど、それでも、あのまま大きくなっていたら、いびつな大人になっていただろうなと思える。
父はとても優しい声で、弟妹たちに『ガーヴィスお兄様は人もどきだから、ああやって繋いでおかないと危険なんだ』と言い聞かせていた。
――弟妹たちが……死んじゃった……
何も感じない鈍った心に、ずしん、となにかがのし掛かる。父がいなくなったと聞いてもなんともないのに、時折いたずらに来た小さな弟妹のことを思った刹那、心に、潰れるような痛みを覚えた。
――あの子たちは、まだ子供なのに……小さいのに……どうしてこんなことに……
弟妹は、六歳、四歳、三歳の幼い子たちだ。
ガーヴィスと違って両親に愛され、鎖につながれることなく大切に育てられていた。
父はあの子たちだけはまともに、父親として可愛がっていて、いつも色々なところに連れて行っていたものだ。
弟妹は幼く、まだものをよくわかっていないから、父母に叱られてもちょこちょことガーヴィスのところにやってきて、菓子をくれたりした。
――嘘……でしょう……
胸の痛みは悲しみなのだと、じわじわと自覚し始める。
ガーヴィスは髪をかきむしり呪詛を吐き散らす母を、ぼんやりと見つめた。
その時、階下から『奥様』と叫ぶ声がした。
『奥様、どうか最後のお付き添いを……』
階段の軋む音がして、侍女が姿を現す。彼女はガーヴィスを見ないように母に歩み寄ると、ぐしゃぐしゃの髪をした母を助け起こした。
『ああ、嘘だと言ってメアリ』
『……明日には、ご親戚の皆様もおいでになります。さあ……死者を守る灯火の番を……お嬢様やお坊ちゃまも、お母様が……お側にいらしてくださったほうが、安らかに……っ……』
そう言って、侍女頭が嗚咽を漏らし始めた。母は夢遊病者のようにふらりと立ち上がり、危うい足取りで屋根裏を出て行く。
侍女はひとしきり涙を拭ったあと、平然とした顔でガーヴィスを振り返って言った。
『神様っているんですね』
呆然としたガーヴィスの前で、侍女は口の端を吊り上げてみせる。
『ろくでなしの売春婦に、ちゃあんと罰が当たったんですから。ご自慢の旦那様もお子様たちも、一瞬で水底に』
彼女の目には涙などまったく浮かんでいない。嘲笑のような表情を浮かべ、彼女は続けた。
『私は、お給金をはずんでくださるのであれば、今後もきちんとお務めいたします。首輪を外して差し上げますね』
侍女は薄笑いしながら、ガーヴィスの拘束を解いてくれた。
震えて動けないガーヴィスに、侍女はせいせいした、とばかりの表情で言った。
『ああ、明日から葬儀で忙しくなりそうですわ。ガーヴィス様も適当にお客様にご挨拶なさってくださいませね』
……そして、翌日の朝、母は屋敷の屋上から身を投げた。
どすん、という異様な音に驚いたガーヴィスが窓から身を乗り出すと、血だまりの中で母が事切れているのが見えた。
母の遺書には『ガーヴィスを産んでから私の人生は滅茶苦茶になりました。ガーヴィスは災厄を招く呪いの子です』と書いてあった。
――災厄を招く呪いの子……
生みの母の最期の言葉が、ガーヴィスの胸に刻み込まれた。
たしかにガーヴィスは、家族をずっと憎んでいた。何もわかっていない無邪気な弟妹すら憎んでいた。
無邪気で何の罪もなかった弟妹も、母に虐待を強いて愉悦に満ちた笑みを浮かべていた父も、ガーヴィスの恨みが招いた災厄のせいで、溺れ死んだのかもしれない。
父の言葉が蘇る。
『お前のせいで不幸になったんだよ、なぜ平気な顔をしている』
『あの死も、この死も、全部お前のせいなのに』
『自分が災厄を呼んでいる自覚はないのか? 生きていて申し訳ないという気持ちは?』
――本当に、僕がやったのかも……? お父様や、弟妹にまで、不幸を呼んでしまったのかも。お母様がおっしゃることは、正しいのかも……
恐怖で震えが止まらなくなった。
――お父様とお母様が言うとおり、僕は……僕は……災厄を……
それが真実であろうが、父の虐待のために発したでたらめであろうが母の病んだ思い込みであろうが、どうでもいい。
生みの母の最期の言葉は、決定的にガーヴィスの心を刺した。
そして、抜けない棘になってガーヴィスの心をさいなみ続けている。
『血がつながっていない子には継がせられない』と叔父夫婦に伯爵家を追われた後、ガーヴィスは、見習い騎士となって寄宿舎付きの学校に入れられた。
粛清騎士に選抜され、度を超した激しい訓練を受けている間、ずっと自分は『これも報いなのだ』と受け入れ続けた。
過酷な訓練や、命の危険を伴う任務はすべて、呪われた自分への罰なのだと。
そのおかげで恐怖心は麻痺し、傷の痛みや身体のつらさには鈍くなり、心にどんよりと靄が掛かった大人になれたのだ。
目を開けると真っ暗な天井が見える。
ここは着任したマグダレイの領主館だ。ガーヴィスは汗だくのまま起き上がり、月明かりを頼りに寝台の傍らの引き出しを開ける。
そこには小さい髪留めが入っていた。白い花をかたどった、高価そうな品だ。
戦に駆り出されている間、ずっと懐に持ち続けていた、ガーヴィスの『お守り』である。
粛清騎士には抜き打ちで所持品検査が行われる。
この髪留めを隠しているのを見つかったこともあった。
だがガーヴィスは、母の形見だと嘘を吐いて、この髪留めを手放さなかった。
――リーナ様は、四年前に俺に会ったことなど覚えておられまい。
四年前、ガーヴィスは、密通者のあぶり出しの最中に重傷を負った。
指示に背き、作戦外の行動をしたせいだ。
背いた理由は、どこぞの裏社会に売られる予定の子供たちを屋敷から逃がそうとしたからだ。まさか戦中の混乱に乗じて、堂々と人身売買まで行う気だったとは。
密通者は逃がそうとする子供たちにも容赦なく刃を向けた。
子供を助けようとしなければ、ガーヴィス一人で、無傷のまま全員始末できたはずだった。
だが、どうしてもできなかったのだ。
弟妹の顔がちらついて、また子供にまた死なれるのは嫌だと思ってしまった。粛清騎士が情で動けば、即、死につながると理解していたにもかかわらず……だ。
ガーヴィスはしくじって、深手を負った。歯を食いしばって仕事を『終えた』時には、刃に仕込まれた毒で動けなくなっていた。
そして、運び込まれた病院で、慰問に来たリーナに会ったのだ。
猛毒の作用で起きた発作で、光に苦しみのたうち回る間、ずっと母が足元にいた。
母はくりぬかれた真っ黒な眼でガーヴィスを見据え、ずっと同じ言葉を繰り返していた。
『早く地獄に来て、早く地獄に来て、お前を踏み台にして私だけ天国に行くのだから』
その声を振り払ってくれたのは、澄み切った少女の声だった。
『大丈夫ですか、お願い、頑張って』
誰が自分のために祈っているのかわからなかった。
粛清騎士とはいえ、まだ正騎士に取り立てられたばかりのガーヴィスは、それほど重要な存在ではなかったはず。
ガーヴィスの命を惜しんでくれる人間などいないと、このまま母の呪詛に食い尽くされ、共に地獄に沈み込むのだと思っていたのに……
『大丈夫、死神なんてこのお部屋にはいません。私が付いていますから』
真っ暗な病室でガーヴィスの手を握りしめ、一晩中励ましてくれたのは、あろうことか、ロドン王国の王女殿下だったのだ。
母が『おまえのせいで』『おまえのせいで私は』と繰り返しながら、ガーヴィスを闇の底へと引きずり込もうとする。だが、そのたびにリーナの優しい手が、ガーヴィスを生者の世界に引っ張り上げてくれた。
まるで、リーナには、息子を地獄に引きずり込もうとする母の姿が見えているかのようだった。
――なぜ、彼女は、わざわざ、俺を……
十四歳の王女殿下が、慰問活動で傷病兵を看護して回っていることは知っていた。
この病院にも、王女殿下は頻繁に顔を見せるとも聞いた。
だが、まさか、意識をなくした『粛清騎士』に付き添ってくださるとは。
ガーヴィスが目を覚ましたのは明け方で、なぜ王女殿下が病室にいるのか理解できなかった。
光が目に入るだけで頭が割れるように痛い。
激しい頭痛を覚えつつ、生き延びたことに驚いた。そして、ガーヴィスを母の手から繰り返し助けてくれたのは、間違いなくリーナだと気付く。
だが、リーナに優しくされても、どんな顔をしていいのかわからなかった……
『……俺には、付き添わなくていいです』
包帯の隙間から見えた顔は小さく美しく、リカーラの姫君と呼ばれるにふさわしい、花のような可憐さだった。
看護してもらったお礼を言えば良かったのに、ようやくしゃべれるようになって口にできたのは、そんな言葉だったなんてお笑いだ。
リーナは嫌な顔一つせず、微笑んで首を横に振ってくれた。
『あまりにうなされていたので、どうしても心配だったのです。大丈夫よ。護衛隊長もお部屋の外で一緒に待っていてくれましたから』
何も答えないガーヴィスに、リーナは優しい声で言った。
『小さな子供たちを守ってくださった、勇敢な貴方を尊敬します』
違う。自分は、災厄を呼び、何の罪もない弟妹を殺してしまった男なのだ。だから、罪滅ぼしにもならないとわかっていて、子供を助けてしまっただけ。礼を言う必要などないというのに。
『どうも、ありがとうございます』
感情のこもらないガーヴィスの返礼に、リーナが笑みを含んだ声で言った。
『貴方はあの子たちの恩人よ。捜索願が出されている子供たちは、全員、親のところへ返すことができました。孤児は、王都の孤児院で大切に養育します』
リカーラの姫君の声は、とても優しかった。
それが、リーナとまともにかわした最初で最後の言葉だった。夜明けと共にすぐに迎えの者が来て、リーナとその護衛を連れて行ってしまったからだ。
光に苦しむガーヴィスは、目の上に厚い布を巻かれていた。
暗い部屋で顔の上半分が覆われていたら、人相などわからない。更に言うなら、突入作戦に備え、髪の色を王都では一般的な薄い茶色に染めていた。
だから、リーナはあの患者をガーヴィスだとは思っていないだろう。
――覚えているのは俺だけだ。
白い花の髪留めは、あの時、リーナが病室に落としていった品物だ。
彼女はこの髪留めを探しに来なかった。
忙しくて、探しに来ることができなかったのか。もしくは捜索に人手を割くことを遠慮して、なくしたと言い出せなかったのか。
ガーヴィスは、それを拾ったまま、ずっと持っていた。
――返さないなんて最低だな。窃盗犯と変わらない。
そう思いながら、ガーヴィスは指先で髪留めの縁をなぞった。丁寧に仕上げられた金細工は、どこもかしこも滑らかに磨き込んである。白の釉薬も艶やかで美しい。
まさに王国の花、誇り高きリカーラの姫君にふさわしい品物だった。
ガーヴィスは引き出しに髪留めを放り込み、今度は一枚の書状を取り出す。
そこにはこう書かれていた。
『もうすぐ子供が生まれます。一度、王都にお戻りください。お産で私に何かあった時、子供をよろしくお願いします。リーナ』
ガーヴィスの理性に、黒い炎が点く。その炎はめらめらと燃えながら、ガーヴィスが作り上げてきた人間の仮面を崩壊させてゆく。
――一夜肌をかわしただけなのに……子供ができるなんて……
リーナから、なりふり構わず自分を抱けと命じられ、彼女を押し倒したのはガーヴィスだ。
なぜ神は、呪われたガーヴィスに、尊い王家の子を授けたのか。
母の残した言葉はいまだに棘のように心に突き刺さっている。
『災厄を招く呪いの子』
呪いとは何なのだろう。
父が自分に対して向けた気持ちが呪いなのだろうか。
自分が家族を憎んでいたことこそが、呪いだったのか。
母が命をかけてガーヴィスに向けた憎悪こそが、呪いなのではないだろうか。
――俺には、呪いしかない。だから、戦争であんなにたくさんの人間を殺せたんだ……任務という大義名分を振りかざして、俺は、どれだけの災厄を……
あらゆるものが、どろりとした闇に呑み込まれていくような気がする。
こんな人間に関わって、まともでいられるはずがない。
リーナと子供にも近づきたくない。
この人生は呪いにまみれすぎている。
母は、彼らの不幸はすべてガーヴィスのせいだと、命を振り絞って息子に呪詛を刻み込んだ。
――俺が恨んだせいで、父だけでなく罪のない弟妹までもが……。きっとそうなんだ。いや、わからない……俺には、事実を正しく把握する能力がないのだろう。だから。
『だから、あんなに、殺せたのよ。お前は呪われた子。皆に災厄をもたらす子だから』
母の声と共に、目の前に大雨の夜の光景が浮かんだ。
メルバ河流域の決戦の光景だ。
ガーヴィスは粛清騎士に支給された複数の特殊薬品を懐に、強化された連射型の弩と、刃が厚く鋸刃になった殺傷用の剣を握りしめ、全力で敵陣の奥を目指していた。
――閃光弾で浮き足立たせれば、敵将のところまで走れる。
もう、何もかもが滅茶苦茶だった。突然の鉄砲水で双方の陣は無秩序に分断され、ロドン側もサンバリス側も指揮系統が混乱していた。
誰が誰なのかわからず、訓練不足の兵の一部は逃げ惑い始めている。
――見ろ、見るんだ、准将ならば肩の飾りが雨で濡れて光るはず……
斬りかかってきた男を一刀のもとに斬り捨て、ガーヴィスは走った。次に襲いかかってきた男も、わずかな躊躇もなく切り捨てる。
鋸刃の剣は力がなければ肉に刃が食い込み、抜けずに命取りになる。その分、確実に敵を無力化できるのだ。
渾身の力で刃を振るい終えたガーヴィスは、懐に手を入れた。
瓶に入った二剤の発火剤を、封を破って混ぜ合わせ、勢いよく投げつける。瓶は混乱の中で踏みつけられ、水と反応した発火剤がどん、と音を立てて火柱を上げた。
人々の混乱が激しくなる。ガーヴィスは炎を避けて空いた道にためらいもなく駆け込み、次の『道具』を取り出した。去年開発されたばかりの閃光弾だ。今日が初めてのお披露目になる。
――ちゃんと光ってくれよ。
そう思いながら、ガーヴィスは密栓を抜いて、閃光弾を敵陣のあるはずの場所に投げつけた。
一瞬後に、まばゆい光が、降り注ぐ雨と濡れそぼった人々の姿を照らし出した。
閃光弾の威力に、あちこちで悲鳴が上がる。暗闇に慣れ始めた目は、しばらくの間、潰れてしまうだろう。
『また、災厄をもたらすんだな、お前さえいなければ、死なずに済んだのにな』
雨の中を駆け抜けるガーヴィスの頭の中に、声が聞こえた。
『お前がいなければ、きっと皆、死なずに済んだんだろうに』
それは、母の声であり、父の声でもあった。
――ああ、そうだ、俺がいなければ殺されずに済んだのにな!
ガーヴィスは斬りかかってきた将官と斬り結ぶ。敵将を守っているだけあり、かなりの腕だ。だが鉄砲水で泥を被ったせいか、相手は柄を握る手をわずかに滑らせた。
容赦なく敵の剣を払いのけたガーヴィスは、獣のような咆哮と共に異形の剣を振り下ろす。頭を割られた男の身体を蹴り飛ばし、敵将のいる天幕に最後の道具を投げつける。鋭い臭気が立ち上り、中から数名の人間が転がり出してきた。肩に飾りをつけた男を見つけた。
獣じみた絶叫と共に、ガーヴィスは目を見開く男に飛びかかる。
真っ赤な血が飛び散り、雨に溶けて流れていく。ガーヴィスは頽れる身体から階級章をむしり取り、最後の力を振り絞って、声を張り上げた。
『サンバリス軍准将を討ち取った!』
あの瞬間、ガーヴィスは『勇者』になってしまったのだ。血まみれの悪鬼となって殺し続け、呪われた自分を許容しながら生きる人生は断たれてしまった。
――どうして……俺は……こんなことに……
ガーヴィスは、口内に広がる血の味で我に返った。
荒ぶる鼓動が緩やかに鎮まっていく。
ガーヴィスを焼く狂乱の炎は鎮まってきたようだ。
――俺には仕事がある。明日も、朝が早い……。去年壊されたままの砦の修復計画を練らねば。一度現地を訪問しないとな。
大きく息を吸い、ガーヴィスは寝台に身を投げ出す。
人生で、赤の他人から向けられた数少ない善意を……リーナの手を思い出す。
血まみれの自分が、誰かにあんな風に気にかけられる日が来るとは思っていなかった。
ガーヴィスが信用できるのは、粛清騎士団の仲間だけ。同じように血まみれになり、正義という大義名分を盾に刃を振るう『同類』だけだと思っていたのに。
――リーナ様は俺のことなど覚えていない。俺は、リーナ様にとっては、たまたま見舞った負傷兵の一人に過ぎなかったのだから。呪いで汚れた人間は切り離して、王家の姫君として、子供と二人で幸せになってほしい。
自分に犯され、身体をこわばらせるリーナを思い出したら、鋭い痛みが胸を刺した。
なぜあんな真似をしたのかわからない。考えたくない。今後は永遠に一人でいい。これ以上、災厄を呼びたくない。そう思った。
◆
「リーナ様、どうかお気を確かに!」
産婆の声が聞こえる。
顔を叩かれリーナは我に返った。気を失っていたようだ。
赤ん坊の産声を聞いたあと、どのくらいの時間が経ったのだろう。医者がリーナの顔を覗き込み、まぶたを引っ張って何かを観察しているのが見えた。
「意識を回復されたようです」
「よかった……リーナ様に何かあったら……」
医者の声や侍女たちの声が聞こえる。だが、身動きすらできなかった。
――私……生きてる……もう赤ちゃんも私ももたないって言われたけど……産めたんだ……
リーナは、あの冷たい一夜で授かった子を、二日がかりで産み落とした。
夫の冷たさを恨み、ひどい体調不良に苦しみ、王女として弱音を吐くことも許されず、まったく余裕がないまま十月十日を過ごした。
極めつけに難産で疲れ切り、今はもう目を開ける元気もない。
ただひたすら、産んだら終わりだから、産めば王女の義務を果たせるからと、なんとか堪えて乗り越えたのだ。
それらの苦痛もようやく終わった。あの世に行きかけていたが、戻って生き延びたようだ。
――赤ちゃんは無事かしら、元気に泣いているけれど……
そう思った刹那、にわかに産室が騒がしくなった。
「男孫が生まれたか!」
――お父様……?
どかどかと踏み込んでくる足音と、か細い赤ん坊の泣き声、それから産婆や侍女たちの押しとどめる声が聞こえる。
「おお、これでロドン王家の血筋もやや安泰だ。弟のところも息子が一人しかおらず心細かったのだ」
跡継ぎの心配しかしていない父の声に、死にかけていたリーナはわずかに身じろぎした。
――何なの、ガーヴィス様もお父様も、殿方って皆最低ではなくて……?
「どうして父様はそんなことしか言えないの? 姉上が大変な思いをなさったのに!」
弟の泣き声が聞こえたので、心の中で今の発言を訂正した。
――ごめんなさい、マリス。あなたはまともな優しい男性よね。
その時、赤ん坊のか細い泣き声が聞こえ、失望と疲弊の果てで死にかけていたリーナはカッと目を開けた。
――何事……?
「陛下ッ! 新生児をそのように抱かれてはなりませんっ! 落ちてしまいます!」
「うるさい、ちゃんと抱いているだろうが」
落とすという言葉に、失血の悪寒とは違う鳥肌が立つ。
リーナは、渾身の力で目を開き、顔を上げた。
「ひ、姫さま、急に動いてはいけません、今お助けしますわ」
付き添っていた侍女が、あわてたように手を添えてくれた。
頷き返すと、弟のマリスが飛びついてきた。
「姉上! 大丈夫ですか! 姉上……心配しました……」
泣いているマリスの様子に胸が痛んだ。案じてくれていた人々の存在が、ようやくはっきりと認識できる。
声を出す元気もないが、父王から赤子を取り返さなくては。
――私はこのまま死ねない。お父様が、赤ちゃんを勝手にいじくり回して、うっかり死なせてしまうかもしれないもの。
そう思ったら、さらに気力が蘇った。
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