魔女の巣から

栢野すばる

文字の大きさ
4 / 7

虫の巣立ち

しおりを挟む
「チカ、そろそろ起きたらどうだ?」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
 唐突な声に、俺は驚愕して飛び起きた。
 何で家に人がいるんだよ! 俺はバクバク言う心臓を抱えて、俺を覗き込む男から距離を取った。
「なぜそんなに驚く」
 僕の枕元に正座していたのは、俺の従兄弟の総一郎お兄サマだった。
 っていうか、不法侵入だろうが!
 いくらババアのヤリ部屋だった薄汚い家だからって、ここはまだ一応チカちゃんのお家ですよ?!
「あ、あ、あのさ、総ちゃん、病人の心臓止めに来たの?」
「起こしただけだろう、大げさな。そうだチカ、お茶をもらえるかな。朝から子どもたちの面倒を見ていて水すら飲んでいないんだ」
「ったく……」
 相変わらず人の話を聞く気すらない総ちゃんの態度に肩をすくめ、俺はせんべい布団から這い出した。
 何もない家の中、総ちゃんの大金の掛かった装いだけが浮きまくっている。
 フルオーダーのジャケットに、同じくオーダーの濃紺のウールのスラックス。中に着ているシャツは最近気に入っているらしいエジプシャンコットンのアイボリーホワイトだ。二児の父になっても着道楽は相変わらずらしい。
「はい、麦茶」
「ありがとう」
 うなずいて、総ちゃんが俺の手からコップを受け取り、引き締まった喉をそらして麦茶を飲み干した。
 いつどこで何をしていても、総ちゃんは王様のようだ。
 フローリングの床の上に正座していてもビシっと伸びた背中といい、威厳あふれる精悍な表情といい、いつでもゴロゴロうだうだ、床と同化している俺とは雲泥の差を感じる。
「ねー、どうやって入ってきたの?」
「お祖父様に鍵を借りた」
「はぁ……」
 なるほど。
 ここに引っ越すときに、お祖父様にスペアキーを預けたことを思い出し、俺は肩を落とした。
 一人暮らしなんか初めてだし、病後だし、いきなり倒れたら……と思って家族に預けようと思ったんだよね。
 親父には預けたくなかったし、弟の高明は本当にバカだからなくすかなと思って。必然的に預ける相手はお祖父様しか居なかったわけだが。
「なにしに来たの?」
「家出すると伯父さんに聞いて迎えに来た」
 わお、斬新な発想……。
「いや、家出はするけどさぁ、総ちゃんが迎えに来なくていいよ……何言ってんのかワケワカンネ」
 俺は呆れ果ててそういい、立ち上がった。
 顔を洗おう。ボンボンキングの相手してるとなんか調子狂うわ。
「チカ」
「はいはーい」
 コットンで化粧水をぱたぱたと叩き込みながら俺は返事をした。俺の取り柄は顔しかないのだ。この顔の維持には時間を投下せねば。
 総ちゃんが肌の手入れをする俺をボーッと見ながら、鏡越しに話しかけてくる。
「もう10時半だ、早く朝食に行こう。パークヒルズのラウンジならそこそこマシな物が出てくるはずだ」
 うわぁ。朝からバターにジャムにカフェイン責めのコンチネンタルブレックファーストとか勘弁してよー。
「お腹へってないよぉ……朝からホテル飯とか食いたくないよぉ」
「僕はこどもたちの授乳と朝食で自分の朝食を食べそこねたんだ。鍵を借りに行った時、お祖父様が一緒に朝食を取ろうとおっしゃってくださったが、お前と食べると言って断ってきたんだぞ」
 頼んでねえよ。ほんっとうに、徹頭徹尾自分の都合しかないね! 知ってるけどね! 総ちゃんがワガママなのは!
「知らねえよ……重い物食いたくない……つーか食えない……」
「お前の事情は分かったから、さっさと着替えて」
「うー」
 俺は髪を適当にとかし、床に投げ捨てたTシャツを素肌に羽織り、同じく脱ぎ捨てたデニムに足を通した。
「はい準備出来た! お待たせ総ちゃん」
「何だその格好は」
「いいじゃん」
「ダメだ」
 うるさいな……相変わらず。俺は舌打ちをし、服を積み上げた物置部屋から、オヤジの若い頃の服を引っ張りだす。
 オヤジは嫌いだけどオヤジの服に罪はない。何しろばかみたいに高級な品ばっかりだからな。今じゃテーラーが廃業してて作ってもらえない、買えないような服もあるし。
「はいはい、これでいいでしょ」
 総ちゃんを真似て、綿シャツに焦げ茶のウールのパンツを合わせた。ジャケットは昔、フランスのデザイナーのオジサマに『愛する私のミューズ!』とか言って作ってもらったしましまのやつにしようっと。
「うん、悪くないな、行こう。そのジャケットは珍しいデザインだ」
 勝手に麦茶のおかわりを飲んでいた総ちゃんが立ち上がった。
 ったく……俺は半病人なんだよ。朝からこってりホテル飯なんか行きたくねえんだよな。
 人生初の、澤菱家の力を借りない自力でのお引っ越しのために、まず家ってものをどうやって探すのかとか、引っ越しってどうやるのかとか、そういうことを調べなきゃいけないしさぁ……。
 
 
 
「わぁ中華粥うまい、うまいうまい」
 なんとワガママ大王が連れて来てくれたのは、先月から始まったという中華レストランのブランチであった。
 よかった。
 ここなら胃が悪い俺でも食えるものがあった。蒸しどりとレタスの入ったおかゆだ。
 情けない話だけど、朝食うにはこのくらいが限界なのである。
「それは良かった。点心ブランチも悪くないな」
 総ちゃんが機嫌よく言って、いい匂いのジャスミンティーをすする。
「エイジングが利いてる。いい味だ」
「俺は水でいい。カフェインはやめとく」
 そう言って、俺は頼んだミネラルウォーターをグラスに注いだ。
 総ちゃんはワガママを言って持ってきてもらったお茶のメニューに夢中だ。ポットで三千円もするお茶を飲んでいるのでひなちゃんに怒られないか心配だが、機嫌がいいので放っておこう。
「棒々鶏も久しぶりに食べた。翡翠餃子もエビが甘くてなかなかいい」
「総ちゃんが中華食べるなんて珍しいねえ」
 五臓六腑にしみわたるお粥をちまちまと食べながら、俺は言った。
「レンジでチンする生協の無添加餃子がみちるの大好物なんだよ。アレなら僕でも処理できて、みちるにすぐに食べさせてやれるからね。みちるが残した分は僕が食べて片付けているんだ」
「レンジでチンする……」
 まさか総ちゃんの口からそんな言葉を聞く日が来るとは。
「そうだ、電子レンジで三分だ。それを割って冷まして食べさせている。あの子はぺろりと平らげるよ。もう離乳食も卒業した」
 娘のみっちゃんと、息子のキヨちゃんの話をするとき、総ちゃんはびっくりするほど優しい顔になる。
 俺は、総ちゃんは一生ワガママで一生どうしようもない奴のままなのかな、って思ってたのに。
「ところでチカは恋愛しないの」
「ゴフッ……」
 唐突な総ちゃんの質問に、俺はお粥を吹きそうになった。
「いや、僕も三十二だから思うんだけど……チカはなぜ恋人を僕に紹介してくれないのかと思って」
「恋人イナイ」
「なぜ?」
「いや、なぜって……なぜでしょう?」
「僕は三十二だから思うけど、チカはそういう話を一切してくれないよね」
 総ちゃんが三十二歳であることと、俺が物心ついてからセフレしか作れないクズであることには何の関係もねえだろうが……! 
 口説くオンナ口説くオンナ、全員セフレに変貌してしまう俺の呪いについて語れっていうの?
 多分俺が女の子の精神世界に共感しすぎるのが悪いんだろうなぁ。
 誰といい仲になっても『間違いなくにラブはある、仲もいい、なのに恋人ではなくセックスする女友達』みたいになっちゃうんだよな。
 恋愛とかもうわかんないよ。
 自分的にはしてるはずなのに、本当はしてないのかも。恋愛。
 みんな俺のことを、優しい、綺麗だ、好きだ、って言ってくれるけど、そんなふうに好意を投げかけてくれる誰とも、ホントは恋なんかしたことないんじゃないかな。
 俺と女の子たちの間にあったものって何なんだろ?
 だめだ、わからん。
 俺がヒメガミであり、人間とはちょっと違うからうまくいかないのかな。それとも俺自身の性格の問題なのかな。
「お祖父様も最近お前の結婚について心配している。この間、お前のお嫁さん候補のリストを作って僕に見せてくれた。ヒメガミの雌ではないが、皆なかなか良さそうなご令嬢だった」
「あっそ、興味ないからいいや」
 お嬢様と結婚とかマジ勘弁してよ。
 親父と母さんもそういう結婚で、結果、破綻したというのに。
「じゃあ恋すればいいのに」
 総ちゃんがそう言って、お茶を飲み干す。
「恋……」
 そんなセリフがこの自己中心という言葉の権化から出てくる日が来るとは。
 『レンジでチンする』以上の衝撃が俺を襲う。
 俺は受け流すふりをして、ミネラルウォーターを流し込んだ。
 いきなり恋愛の話を、他ならぬこの総ちゃんに振られて動揺したのだ。
「僕は、自分が恋する日が来ると想像したこともなかった。だけど、してみればそれが恋だと一瞬でわかった」
 相変わらずロマンティストだな。美しい物しか愛してないこのカンジ。いかにも総ちゃんらしい。
「彼女は居たってば、オカマなりに」
「ふうん……」
「だから心配しなくていいよ。それなりに適当にやるよ」
 でも多分、最終的にセフレにしかならないんだもんな。
 お互い本気になれないんだもん。
 はぁ、朝から生臭い話だな。胃が痛くなってきたからもうやめよう。
「恋愛とは、適当にするものではないように思う」
 めずらしく、流そうとした話に総ちゃんが食い下がってきた。
「そお? 俺はいつも適当だよ」
 俺、いつもヤッてからその先を考えてるしな。適当っていうか、無思考状態に近いかも。
「いや、適当なものではないと思う。チカも運命の相手に会えば、恋とは何か雷が落ちたように悟るんじゃないかと思うんだが」
「俺には運命の相手とか居ないんじゃないの? 残念ながら」
 なんとかお粥を食べ終えて、俺は手を合わせた。
「ごちそうさまー。美味しかった!」
「とにかく僕はお祖父様に頼まれたんだ。昔からの兄代わりとして、奥手な寛親の世話を焼いてやってくれと。先に細君を娶った先輩として助言をしてやって欲しいとね」
 なんか妙だと思ったらお祖父様の入れ知恵か。
 苛つくので、ホント余計なことしないで欲しい。
「いらないよ!」
 俺は椅子の背もたれによりかかり、ヘラヘラ笑いながら手を振った。
「べつに女にこまってないもん。それに俺、家出して、アホでも出来る仕事探して暮らすつもりだし。いわゆるフリーターってやつだよ。総ちゃんも知ってるでしょ? フリーター。だから結婚なんか出来ないもん。妻子養えなくなるもん」
 これから更なるクズになってやるんだぜ。
 そんで、野垂れ死にするんだよ。クズである俺にふさわしくな。
 そう思ってせせら笑っている俺に、総ちゃんが言った。
「その点は心配しなくていい」
「は?」
「入社の準備は進めているから、来月から時短で働いてくれればいい。体調が戻ったら全日勤務でいいから」
 何言ってんだこいつ……また唐突にわけのわからないことを。
 笑顔のまま固まった俺に、総ちゃんが言った。
「僕はあまり海外出張をしたくない」
「あっそ」
「まだ子どもたちが幼いから、長い間頻繁に家を開けたくないんだ」
「それは優しいことで」
 なんだ?
 この話はどこに流れていくんだ……?
「でも僕は、職員の使う英語がすこし気に入らない。美術品も見慣れているという割に見慣れていないように思えるし、海外にネットワークも持っていないように見える。だから、ぼくの代理人には信用できる人間を立てたいんだ。生育歴や感性が僕に似たレイヤーに居る人間を」
「……あの、総ちゃん?」
 なんか嫌な予感がしてきた。
「お前が『ふりーたー』とやらになるのは勝手だが、子供の頃から澤菱家の長男として遇され、留学先やモデルの仕事で有用な人脈を培ってきたお前の経験を殺すのはもったいないとも考えている。だからうちの財団法人で、お祖父様や僕の助手として働いてもらうことに決めた」
「いや決めないで、何言ってんの? 俺、家出するんだって言ってるよね?」
「無理だろう。お前は世間知らずだ。家の借り方を知ってるの? 身の隠し方は?」
 俺は、総ちゃんの問に言葉に詰まった。
「それは……これからネットとか、友達に聞いて調べようと……」
「誰がお前に、僕やお祖父様から隠れる方法を教えてくれるんだ」
「っ、だから、それは」
 俺は唇を噛んだ。
 確かに俺は筋金入りのクソボンボン野郎で、総ちゃんの簡単な質問にさえ答えられない。
「チカ、『ふりーたー』を名乗りたかったら、財団法人の仕事と兼務で名乗ればいい。僕が人事に話を通しておく」
「いや、あの、兼務で名乗るようなもんじゃないんですけど」
 やばい。
 総ちゃんが『僕の言うことは絶対通らなきゃおかしい』モードになってしまった。
「とにかくお前の兄代わりとしてお前に『指示』させてもらうよ。お前の持っている能力は、今後も僕を助けるために使ってくれ。伯父さんに会いたくないなら、お前の家は僕が準備する。この前勝手に買ってしまって、ひな子に怒鳴られたペントハウスに住んでくれればいい。チカのために準備したといえば、ひな子は許してくれる」
「まって、断ってるんだけど日本語通じてる?」
「とにかく僕は海外出張をしたくないんだ! お前のために人事部も採用の準備をしてくれている。お前の座る席を掃除して、お前のパソコンを購入申請してくれているんだ。よって、来てもらわないと困る」
「ヤダよ!」
「ふざけるな、まじめに働け!」
 総ちゃんの一喝に、俺はびくりとして、一瞬言葉を失ってしまった。
 俺の一番痛いところを突き刺す言葉だったからだ。
 俺が逃げようとしていることを、的確に言い当てた言葉だったからだ。
 親父の期待に応えられなくて、ぶっ潰れた俺にとっては一番言われたくない言葉だったからだ。
「チカ、下らない言い訳はやめて、まじめに働くんだ。僕の代わりに海外出張に行って、僕が衝動買いしてしまったペントハウスに住むんだ。ちなみに場所は港区だからそんなに悪く無い。僕の家からも職場からも近所だ」
「……あの……」
 俺は真人間になれと叱られてるの?
 それとも総ちゃんの尻拭いをすればいいの?
 もしかして、両方?
「じゃあ、半年くらいお試しで働いてみる」
 俺は不承不承、そう言った。もう無理なのだ。総ちゃんがこうなったらどこに逃げても捕まるだろうし、言うことを聞くまでしつこくしつこくつきまとうに決まっている。赤ん坊の頃からよく知っているではないか、総ちゃんの異様なしつこさは。
 まじめに働け、って、おまえが言うなよ。そう言いつつも、思い切り心を殴られたような痛みに、俺は小さく唇を噛み締めた。
 俺に出来るんだろうか。
 クズの俺に、真面目な労働者なんて出来るんだろうか。親父に見捨てられた俺に。不倫クズ野郎にすら見捨てられた真のクズに。
「そのかわり、澤菱って名乗りたくない。普通のサラリーマンの仕事がいい」
 俺の言葉に、総ちゃんが鼻で笑った。
「安心しろ、仕事内容は普通のサラリーマンのものだ。苗字の件もチカの気持ちを尊重しよう」

 こうして俺は、家出を実行する事もできぬまま、偉大なる総一郎お兄サマに首根っこをひっつかまれて、就職することになったのだった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...