honey 番外編

栢野すばる

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書籍版ダイジェスト

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 みなさんは恋ってしたことありますか?

 俺はありませんでした。
 名門大富豪の長男に生まれ、自分で言うのもなんだけどルックスにも恵まれ、いろんな人達に囲まれてチヤホヤされてきた人間ですが、まともに恋なんかしたことなかったのです。


 あ、すみません。
 まずは自己紹介します。俺は澤菱寛親。アダ名はチカちゃん。29歳独身。
 澤菱っていうのはあの澤菱で合ってます。
 澤菱商事とか澤菱建設とか澤菱製薬とか、古くは銀行もあったな、合併して別の名前になったけど……あれらのグループの創業者一族の生まれで、当主の孫息子なんですわ。
 要するに、客観的に見た俺という人間は、超がつくほどのボンボンなのだ。
 世間ですか? 箱入りなのでよく知りませんな。
 だけど最近、俺が生まれた頃から母親が不倫の常習犯だったこと、オヤジが仮面夫婦の鬱屈が爆発したのか外に女を作って「真剣な恋なので、こっちと再婚を考える」などと口走り始めたことなどが原因で胃壁と自我が崩壊し、大吐血して入院してウンウン唸って悩んで、結局家出しました。
 金がありすぎる家ってろくなもんじゃないって言うじゃん。
 じっさい、我が家もろくなもんじゃないね。最悪。
 某国策銀行の頭取の娘に生まれ、現役の大臣を兄に持ち、生まれた時から「労働? なにそれ美味しいのかしら?」状態のお嬢様である母も、澤菱家の次期ご当主様としてゴキゲントリ類・コメツキバッタ目のイキモノ達を従えて生きてきたオヤジも、どっちも頭おかしい。
 特権階級の人間なんてろくなもんじゃねえ。
 母は「結婚生活が本当に嫌だったので、主人が浮気してくれて離婚の良い口実が出来ました」と言って、さっさと出て行った。今はドイツでピアノのお勉強して暮らしてる。若い頃からの夢だったんだとさ。俺と弟がいるから、夢が何も叶わなかったんだとさ。
 一方オヤジの方は「愛する彼女を本当に幸せにするには還暦近い自分では不相応だ。手切れ金を渡して生活を保証し、彼女の幸せを祈って別れる」とかほざいて、熱愛していた愛人と手を切った。
 両親にとって俺と弟は何だったの? 
 産んでしまった以上、育てねばならない足かせか何かだったのか?
 もしくは澤菱家のための次世代人柱かよ。
 マジでうちの両親は恋愛脳スイーツなお花畑共だ。
 俺はあんな奴らのことは知らんぞ。
 もう生涯関わりたくない。
 だから、俺は不良の家出息子になってやったワケ。
 俺の出奔を悲しんでくれたのは、俺を可愛がってくれたお祖父様だけだった。 


 ところで、湿っぽい話はもう良いよね。
 次は俺のこれまでの人生も語ろうかな。
 俺は、これまではファッションモデル(ただし女装)として、ラグジュアリーブランドのデザイナー達にミューズと呼ばれ溺愛され、世界中のランウェイを闊歩してきたんだ。
 何で女装かというと……よくわかんないよ。たしか留学中に、冗談でヅラ被って女の子のカッコしたら『カワイイ綺麗、奇跡の東洋人!』って絶賛されたんだよな。ヨーロピアンの上流階級の皆様にさ。
 ちなみに自分で言うのもなんだけれど、トップモデル(ただし女装)だったんだよ。俺。
 モデルになったきっかけは、海外のボーディングスクールを卒業してドイツの大学に入り、そこで某グランメゾンのオーナーの息子と仲良くなって、お父様に気に入られ……みたいな展開だったっけ。シンデレラ・ストーリーだよね、オレ男だけど。
 あの頃は学業とモデル業の両立が辛かったけど、わりと楽しかった。向いてたんだよね、ド派手な世界でチヤホヤされて、虚飾に満ちた世界を泳ぎまわるのが。
 でもなあ、二十五過ぎた辺りから、女装がキツくなってきて……。
 二十前後の頃は『性別がない天使!』とか言われてたけど、歳を重ねるごとに完全にカラダが青年になっちゃってなあ。そもそもオレはあんまり女顔じゃないし。俺の美意識が女装モデルを続けることを許さなくなってきたわけよ。
 で、俺は日本に戻ってきた。おセレブな交友関係や、ヨーロッパやアメリカでの華やかな生活のことは忘れ、日本でちょこちょこ女装モデルの仕事しつつ、実家での居候ぐらしをしていた。
 まあ短時間の撮影とかなら、気合入れればまだまだ女装モデルとしてもイケたしね。
 そんな生活の中で突発的に起きたのが、親のW不倫という大問題なわけ。
 俺は、俺を育んでくれた家庭と両親に失望し、深く心傷ついた。
 以降、家出してすったもんだありつつも、会社で働く真面目な働くお兄さんになったのだ。
 ただ、モデルの仕事しかしたことがなかったので履歴書というものが真っ白で、就職できる場所が実家の名前を冠する公益法人しかなかったワケだけど……。コネ採用ばんざい!
 俺の勤め先である公益法人は、お祖父様が作った美術館とか、学術支援基金の管理などをしている団体だった。
 偏った世間しか知らない俺には分からないのだが、一応一流の勤め先らしい。
 給与は月八十万。安いの? 高いの? 
 安いよね?
 ぶっちゃけ、海外でモデルしてた頃はもっともっと貰ってたもん。
 だが、給与に文句は言うまい。
 俺、普通の暮らしをしたこと無いから給与相場とか全然わかんないしさ……。


 そんなこんなでサラリーマンになったわけだが、正直に言おう。
 仕事が辛い。
 いきなり弱音かよ! と思うだろうが、まあお固い仕事というのは辛いものだ。
 モデル時代も独特の辛さ(主にダイエットと、男の身でカワイイ外見を保ち続ける怨念に近い努力)があったのだが、サラリーマンの辛さはまた別のものがある。
 今の俺のメインの仕事は、実家の持ついくつかの美術館の展示戦略を練ることだ。
 なんか知らんけど、でっかい美術館を色んな所に建ててるんだよな。ウチ。
 澤菱の当主であるお祖父様は、
「金はいくら使ってもいい。自分の目で見て確かめて、良いと思ったものを借りてこい。澤菱の名に恥じない美術展をやってくれ。『日本初登場』とポスターに書きたい」
 などと気軽に言うが、有名な美術品の持ち主は、そもそも国だったり海外の貴族だったり超一流美術館だったり、一筋縄じゃ行かない相手ばっかり。
 交渉のテーブルに着くきっかけを、実家のコネ、俺自身のコネを総動員して必死に作って、何回も会いに行ってメリットを説明してキュレーターさんにも同行してもらってコンセプトをプレゼンし英語とフランス語の企画書を作り……寝る暇ないわ!
 
 というわけで、俺は無理やり休みをもぎ取って、日曜日、モデル時代の友人のカフェに遊びに来たのだった。
 ガチで疲れるんだよねこの生活……昨日も寝たの夜三時だし。サラリーマン辛い。
 だからたまにはカフェでまったりして、服でも買って帰ろうと思ってさ……。そんなことすら最近出来てないもん。

 そのカフェで俺は、一人の美人さんに会った。
 どっかで見たことある子だな、と思ったら、一月ほど前、俺の知り合いと痴話喧嘩してた女の子だった。
 東京駅近くのレストランで、俺はたまたまその痴話げんかの場面に遭遇したんだよ。
 一度見た顔はナカナカ忘れないタイプだとはいえ、彼女のことは強烈に覚えていた。
 何しろ、痴話喧嘩の相手は俺の知り合いだったからね。ちなみに、彼女は俺のことを100%知らない。
 どうしようかなと思いつつ、俺はその子をナンパすることにした。
 どうよこの選択肢。……間が持たないな、と思うとすぐナンパしちゃうこの癖どうにかしたい。
 あんまりオトコを感じさせないと評判の――つまりオカマみたいだってことだと思うけど――俺の笑顔で警戒心を緩ませ聞きだした所、彼女の名前は今井利都ちゃんというのだそうだ。
 りっちゃんて馴れ馴れしく呼んでも、まじめにハイ!って返事してくれるイイコだった。
 いいなぁ、美人で真面目なOLさん。俺にはあんまりカタギの友達いないから、仲良く慣れたら嬉しいかも! って思った。
 で、メルアド渡してランチのお約束して、俺はその日はりっちゃんとバイバイした。
 ナンパ成功だ。来週お話してみて楽しかったら、ランチの後どっかでお茶でもしようかな。
 俺、自分が女装モデルだっただけあって、女の子と遊ぶの結構好きなんだよね。
 ちなみに遊ぶっていうのはセックスって意味じゃねえよ。
 純粋なレジャーだからな。
 俺は外見ハデだから尻軽そうに見えるけど、セックスする相手は厳選してるのであしからず。


 ……で、りっちゃんと俺はさっそく翌週デートしたわけだけど、いいね……真面目な女の子。
 素直な女の子って良いわぁ。男心知り尽くしてる美人ビッチちゃんとか、海外の大学でMBA取ったとかいう才女サマも悪くはないんだけど、普通の子の可愛さに滅茶苦茶癒される。
 若干やつれの目立つりっちゃんは、メイクしてあげただけで別人みたいに可憐になったし、本気で目をキラキラさせながら喜んでいるし、俺も悪い気はしなかった。
 何しろ俺のメイクの腕は男子である俺を、女子であるチカちゃんに化けさせるレベルだからな。
 お疲れ女子をキラキラ女子にしてあげた満足感でゴキゲンになった俺は、彼女を穴場の珈琲屋さんに誘った。
 そこで自己紹介っぽいことをしたり、ケーキ食べたりとまったり過ごしてたんだわ、途中までは。
 俺、自分の家が金持ちで僕はおセレブ様なんです!みたいな自己紹介大っ嫌いなんだよ。口が裂けても言いたくない。なんか生まれ育ちのせいで近づいてくる友達が限定される気がする。それも悪い方に。
 なので「俺は澤菱って苗字だけど、もろもろ気のせいDAYO!」ってごまかした。素直なりっちゃんは俺のいうことを信じてくれた。
 なんかほんとカワイイわー。
 ピュアで可愛い女の子にデレてしまった俺は、若干疲れてたのかもしれない。
 普段は、俺、女の子相手に隙なんか見せること無いんだけど、なんかしらんけど、話の流れで親の離婚話とか愚痴っちゃったんだよね。
 俺、バカなの?
 何でこんなに心許してんだろう? この子うさぎちゃんみたいなかわいこちゃんに。
 正直言うと本音など言い慣れていない、虚飾の申し子チカちゃんは動揺した。
 それを取り繕うために、適当なことを言ったんだ。
「りっちゃんも嫌なことがあったら貯めこまないで、綺麗に吐き出して忘れたほうが良いよ!」って。
 ……そしたら睨まれたね。
 あのカワイイお顔にはハッキリ絶望が刻み込まれていた。
 貴方に何がわかるのって、真っ黒なつぶらな目には書いてあった。
 りっちゃんをただカワイイカワイイとしか思ってなかった俺は度肝を抜かれた。
 なんで?
 君はただ可愛くて素直で、一時的に俺の機嫌を良くしてくれるだけの、スイートな存在じゃなかったの?
 そう思うと同時に、彼女がそんな顔をする理由を知りたいと思った。
 ふわふわしててカワイイりっちゃんが、なぜそんな顔するの? って。
「チカさんはそういうけど、私は辛いことを忘れる方法がどうしてもわからない」
 りっちゃんは俺にそういった。
 むき出しの心が俺に突きつけたのは、俺と同じような、心に空いた大きな穴だった。
 どんなにヘラヘラと自虐的になろうと、仕事に打ち込んで自分をいじめ抜こうと、忘れられないことはある。
 ――どうしてオヤジは俺たちを裏切って女に走ったの? おふくろのせい? それとも、オヤジにとって、家族はそんなに軽かったの……?
 信じきっていたものが剥落して、大きな穴になってしまった心を抱えながら、俺は今でもそう思ってる。
 なんか、よくわかんないけど、俺は、俺と同じくらい何かに傷ついているりっちゃんの前で、言葉を失ったまま呆然としてしまった。
 えっと……。
 この子大丈夫かな?
 こんなに自分の弱さむき出しで生きてて、誰かに取って食われたりしないのかな。
 すごくか弱そうなのに、その弱々しさの中に、彼女には不似合いの苦しみを抱えて歯を食いしばってるのは何故なのかな?
 そんなことが気になった。
 自分のことを後回しにして、すぐに人のことに首を突っ込んじゃうのは、おせっかい野郎の俺の悪い癖だ。
 俺はりっちゃんの見せた、意外な激しさに動転してた。
 動転したまま、ものすごくどうでもいいことを口走った。
「そんな顔、男の前でしないほうが良いよ」って。
 だって世の中、チカちゃんみたいな紳士くんばっかりじゃないわけですよ?
 野獣がいっぱい居るわけですよ?
 ダメでしょ。
 よその男の前でもこんな顔してたら絶対ダメでしょ……! 
 取って食われたらどうすんの??
 とまあ、この辺りで、俺の調子が狂い始めたわけだが、俺自身はまだよく分かってなかった。
 よくわからないなりに、何故か「りっちゃんにこんな、心の傷丸出しの顔をさせたままではいけない。とりあえずこの顔を止めさせなくては。俺が責任をもってこんな顔を止めさせてみせる……!」という謎の使命感にかられてしまったのだ。
 冷静に考えれば『お前に何の関係があるんだよ』って話だけど……そういうふうにしか考えられなくなっていた。


 これが、俺が人生初めての恋に落ちた瞬間だったんだ。
 その時ははっきりと気づいていなかったんだけどね。
 そして俺は、ズブズブとその蜂蜜一杯のあま~い海に落ちていく羽目になったのだ。

 
 あ、そういや俺、りっちゃんに「君のこと前から知ってる」なんて思わせぶりな話をしてて、なんにも説明してないや。
 でもさぁ、痴話喧嘩してるとこ見たなんて言いにくいよな。
 などとモゾモゾしていたが、よく考えたらこれはりっちゃんに電話をするチャンス……!と思って電話を掛けることにしたんだ。
 そしたら電話口でりっちゃん、『変質者に襲われて首絞められた』とか言って泣いてるし。
 その時俺が思ったことは……。
「だから! りっちゃんは一人でフラフラしてたら危ないんだ!」
 ということだった。
 成人済みのOLさん捕まえて何言ってんだ、という話だけど、何故か俺はそう思ったのだ。
 理由はよくわかんない。
 俺は、結構保護欲が強いというかなんというか、身内を庇いたい欲が強いというか、昔からそういうタイプなんだけど……まあぐちゃぐちゃ言い訳するのをやめてすっぱり言うと、俺はその時『何でりっちゃんに触る変質者がいるわけ? 変質者ブッ殺す! 今から助けに行くよ姫!』などというような、異様な思考になってしまったのだ。
 俺は自分のことを「世間知らずの御曹司」だと思ってたけど、実際のところはただのストーカーだったのかな?
 そうかもしれない。
 だって自分でもおかしいと思うもん。
 俺はスーツ姿で会社を飛び出し、俺はりっちゃんが放心してへたり込んでいるというファミレスに駆けつけた。
 ボロボロに敗れたタイツや、コートの中でぐちゃぐちゃになっているらしいブラウスの汚れた襟を見て、俺の心はメチャクチャ痛んだ。
 俺がそばにいたら、りっちゃんをこんな目にはあわせなかったのに、って。
 虐待された小さな動物を見てるみたいで、ものすごくつらい気持ちになった。
 ……なんで抵抗できない非力で小柄なりっちゃんを平気で襲えるんだよクズ野郎。死ねよゲス。死ねっていうか俺が殺すわ。まじで。
 腹の底からそう思った。
 泣いているりっちゃんを家まで送り、怪我の手当をしてその日はバイバイしたけど、怒りは収まらない。
 なんでりっちゃんを傷つける奴が居るのマジで。ふざけんな殺す、という気持ちはずっと渦巻いたままだった。
 正直に言おう。俺は、自分が怖くなってきた……主に自分のストーカー能力の高さに関して……。


 それから。
 俺は仕事をしながらも、時折、りっちゃんのことを思い出してた。
 いや、時折じゃないな。退屈な会議の間とか、ボールペンを手にしたままぼんやりと、甘い香りのするサラサラの髪のこととか、はにかんだような笑顔のこととか、俺には見せてくれない心の闇のこととかを思いを馳せていた。
 あの、お人形さんみたいな可愛らしい彼女の中に、どんな絶望が眠っているんだろう。それを俺に見せてくれる日は来るんだろうか。俺は彼女と、それをわかちあうことは出来るんだろうか。そんなことばっかりを、グルグル考えていた。
 りっちゃんからメールが来れば、心は弾んだ。
 俺に少しでも近づいてくれる証拠のように、心を許してくれたしるしのように思えたからだ。
 あの静かで鈴を振るような声を聞きたくて、金曜の夜に会社を抜けだして屋上で電話をかけた。誰にも邪魔されないところで、俺の心のなかで再生し続けた彼女の声を聞こうと思って、震える手で電話をした。
 ああ、りっちゃんと話せてめちゃくちゃ嬉しかったなあ。
 だって一緒にドライブ行ってくれるって、約束してくれたんだもん。俺のこと信用してくれたってことじゃない?
 誰からも「どうせ遊んでるんでしょ!」と言われる俺が女の子に信用されるなんて……!
 そうだよ俺は狼じゃないよ! 純情可憐な男の子なんだよ!
 俺は浮かれまくり、俄然張り切った。
 ウキウキしながら仕事に戻り、翌朝は気合で早起きして車にりっちゃん用のブランケットを積み込み、アロマオイルポットにラベンダーとスイートオレンジとマジョラムを混ぜた香りを垂らして準備を整えた。
 気合入れ過ぎか。
 入れ過ぎだよな。わかってるよ。
 俺は何がこんなに嬉しいんだろうって思いながら、うきうきと愛車でりっちゃんを迎えに行った。
 女の子に会いたくて眠れないなんて……どうしちゃったの俺。純情になったの? なんて思いながらね。
 今日のりっちゃんはどんな顔で俺を見るんだろう?
 今日のりっちゃんは俺のことをどんな風に思うんだろう?
 
 
 この日のデートはまあ成功に終わった気がする。一日中楽しかった。
 海とか行っちゃったもんね。
 りっちゃんは楽しそうだったと思う。そう思いたい。
 一日ふわふわと甘ったるい気分で過ごした俺は、無事にりっちゃんとほのぼのデートを終え、次回の約束まで取り交わすことが出来た。
 翌週は、弟のピアノのコンサートに行ってやると約束をしていたので、そのコンサートにりっちゃんを誘ったのだ。
 うん、と言ってもらえて幸せだった。
 俺は、今日一日、ずっとりっちゃんと手をつないでいた事を思い出した。
 手を繋いでも怒られないことが嬉しくてたまらないし、彼女のぬくもりを感じるたびにめちゃくちゃドキドキする。
 りっちゃんの手は小さくて柔らかくて、なんだか子猫の手みたいだ。
 さくらんぼみたいな唇を見るたびに「キスしたいです」という欲求が湧き上がってくるのが耐え難いのだが、俺にそんな権利はないのが分かっているので耐えた。お友達から痴漢に格下げされたら取り返しがつかないもん。
 今日の俺は相当挙動不審だっただろうと思う。
 りっちゃんと丸一日おデートできるのが嬉しすぎて、普段どんな顔して過ごしてるのかとか、どうやって女の子エスコートしてたっけ、とか、全く思い出せなくなってしまったからだ。
 舞い上がったまま俺は涙をのんで、殺伐としたお仕事ばかりの日常に戻った。
 ああ……。
 何だか落ち着かない。
 りっちゃんを他の男に取られたらどうしよう。こんな気持ち、生まれて初めて感じた。
 だって俺は、自分で言うのも最低だが、めちゃくちゃモテたのだ。
 女の子って俺に寄ってきて、離れずにそばに居てくれるもんだと思って生きてきたヤツなのだ。
 神様、これ、完全にぼくの初恋です。どうしたらいいですか? 声が聞きたいんですが毎日電話して大丈夫ですか? メールは一日十通くらいなら……誰か俺に適切な接触回数を教えてくれ! 嫌われたくない!!!
 そうだ、なんかプレゼントあげよう。りっちゃんに。
 俺はふとそんなことを思いついた。
 全然ストーカー的発想から逃れられてはいないのだが……とにかくプレゼントをあげる事にした。
 可憐な彼女を飾るような何かを、りっちゃんにプレゼントしてあげたい。彼女に似合うのは透き通るピンクだと俺は思う。
 さっそく、友達のハンドクラフト作家に電話して、何かいい作品がないかを問い合わせてみた。友達から送られてきた幾つかの写真の中から、俺はピンクの桜の枝のブローチを選んで、購入することにした。ふんわりしてて静かで可憐なりっちゃんは、桜の枝みたいだな、と俺は思った。
 ブローチは週末に間に合うように送ってくれるらしい。オンラインで代金の振り込みを済ませ、俺はようやく少し満足してその日は眠りについた。

 だが、満を持して挑んだ弟のピアノのコンサートデートは、失敗だった。
 なぜなら取り巻きをお引き連れになったお父様がいらしていたからである。
 オヤジは俺が清楚で可憐な女の子を連れているのを見て、妙に嬉しそうに自己紹介なんかしやがった……。
 おいオヤジ! あんたは有名人なんだからやめろ!
 俺が誰なのか芋づる式にバレるだろうが!
 あありっちゃんどうか俺のこと気づかないで、そのへんに居る普通のチカちゃんだと思っていてくれ。
 俺は御曹司だとか澤菱家の跡継ぎ息子だとか思われたくないんだ。
 りっちゃんにとっての優しいチカさんであれば満足なんだ。
 しかしそんな祈りは何の意味もなく、俺の正体は数秒でバレた。
 俺のことを、その辺のお兄ちゃんだと思って仲良くしてくれていたりっちゃんは、悲しそうな顔をしていた。
 だから嫌なんだよ、無駄な御曹司設定……! 俺の身には余るものだよ!
 どうしようもなくなった俺は、ブローチをりっちゃんにプレゼントしてお茶を濁した。
 りっちゃんは気を取り直したのか、それを着けてニッコリ笑ってくれた。
 天使……マジでこの人は天使だ……。
 というわけで、俺はオヤジの『息子の彼女が気になる!』というゲスな勘ぐりから逃げるため、りっちゃんを連れてコンサートの会場を抜けだした。
 俺の天使をオヤジのような不倫野郎の目に晒したくないからな。
 だが、突然のオヤジの登場にパニクって頭が沸いてしまった俺は、気づいたらりっちゃんにオヤジの愚痴を垂れ流していた。
 そんな楽しくない話より、他に話すことはいっぱいあるのに。
 俺ごときが甘えていい相手じゃないんだ、りっちゃんは! 天使なのに! マジの天使なのにさ!!
 でも、こんなどーしようもない俺の話を彼女は真剣に聞いてくれ、愚痴なら聞くからとまで言ってくれたのだ。
 さくらんぼみたいな唇からこぼれる可憐な言葉たちが、アホな俺の足元をすくって、空高く放り投げたような気がした。
 で、気づいたら俺は、りっちゃんにちゅーしていたのだ。
 ……嫌がられはしなかった。
 ただ、外人みたいなことするね、と言われただけだった。
 いや、俺のオヤジはクオーターだが、俺はほぼ日本人だ。見た目が先祖返りしてるだけで日本人なのだ。
 今のキスだって挨拶ではなく、もっとドロっとした情欲たぎるものなのだが……と思ったけど、言わなかった。嫌われたくなかったからだ。
 キスできて幸せだった。俺は、りっちゃんが好きだ。坂道を転げ落ちるように好きになる。
 もはや俺は、この時点で彼女が好きだという気持ちを制御出来なくなっていた。
 相手の気持なんか何も聞いちゃいないのにな。

 
 このように完全に頭が湧いた俺は、さらに週末の約束を確認すべく、金曜の夜にりっちゃんに電話をした。
 公明正大な理由で電話をかけられる数少ないチャンスである。
 俺の心はゴムまりのように弾んでいた。
 だが、りっちゃんは出なかった。
 ……出るまで掛け続けようかと思ったが、そんなことをする奴はどう優しく見てもストーカーさんなので耐えた。
 そして一時間後にまた掛けた。
 ……出ない! 何故! まさか何かあったのかな? 
 髪をかきむしりたい気持ちで山のような仕事を片付け、俺はまた一時間後に電話をかけた。
 出ない。メールも来ない。何故だ、何故……。
 だんだんヤバい感情が俺の中に鬱積していく。
 なぜりっちゃんは急に連絡をくれなくなったのだろう。倒れてるのかな。具合悪いのかな。
 大丈夫かな、まさかまた変質者に……!
 いやいや流石に気をつけてるだろ、賢い子だし。
 もしかしたら俺と一緒には出かけたくなくなったのかな。OK。だとしたら今から屋上に行って飛び降ります。
 そんな風に、もんもんとしながらりっちゃんからの連絡をまった。
 だってもう十二時だよ夜の。
 何で? どうして? いつも返事くれるじゃん。
 完全な恋するメンヘラ男子になってる俺は、もう一度電話をかける。
 りっちゃんは、疲れきった声で、電話に出てくれた。
 明日どうしても出かけたくて遅くまで仕事をしたかったのだそうだ。
 今までのドロッドロの怨念のようなものが、りっちゃんの澄んだ声で一瞬にして晴れ渡る。
 こんな感覚は、寄ってくる女の子に対しては精神的に優位に立ち続け、ある意味傲慢極まりない系男子だった俺にとっては初めてのものだった。
 でもよかった。りっちゃんと話せて。
 そう思った俺の耳に飛び込んできたのは……どう考えてもオトコの声でした。え? りっちゃんオトコと居るの? どういうこと? 
 終電逃したの?
 電車で帰れなくてファミレスに泊まったの?
 は? 意味わかんねぇ。
 何で俺を呼ばないの? まあ呼ばないよね、俺、彼氏じゃないし。
 でもさぁ、夜の一時前にファミレスでオトコと何してんの? ねえ?
 りっちゃんは電話の向こうで、迎えに来なくても良いとかこの人は会社の先輩とか、そんな意味分かんないことをしゃべっていた。
 俺は頭に血が上りすぎてよく覚えていないのだ。りっちゃんの言い訳を。
 嫉妬に狂った俺は、背広代わりにカーディガンを羽織っただけの格好で家を飛び出し、車でりっちゃんがいると思しきファミレスに突撃した。
 頭おかしい。絶対に俺は頭おかしい。
 何の権利が、資格があってこんな真似をしてるんだろう。
 彼氏じゃないのに。ただの友達なのに……畜生!
 俺はイケメンさんとボックス席に座っていたりっちゃんを店から引っ張りだし、残業をこんな時間までするなとか言いながらブチ切れてしまった。
 りっちゃんは絶句してた。多分ストーカーって本当に怖い、とか思ってたに違いない。
 でも俺は、愚行を止められなかった。
 俺が女の子のオトコ関係に嫉妬する日が来るなんて夢みたい! 
 もちろん夢って言っても、悪夢の方のな!
 狂乱状態の俺は、ビビっているりっちゃんを車に無理やり乗せ、夜中にファミレスに泊まろうとするな、とガン切れしながら、気づいたら思いっきり舌入れてキスをして、好きです! と告白をしていたのだった。
 こうして俺の恋は終わった。
 その後は警察を呼ばれ、強制わいせつ未遂の疑いで取り調べを受ける事になったのだ。

 …………と言いたいところなのだが……。

 そうではなかった。
 そうではなかったのだ。
 りっちゃんは俺の腕の中で泣きながら、私も好きだと言ってくれたのだ。
 夢なのだろうか。
 そうだよね。夢だよね?
 ブタ箱ぶち込まれてうたた寝しながら見てる夢かもしれない! そうかもしれない! 夢だとしたらりっちゃんが俺の恋人になってくれるかもしれない。
 そう思った俺は、今すぐ恋人になってくれ! 恋人に! 好きだ! とりっちゃんに取りすがったのだった。
 だって他の男に取られたらと思ったら、焦りすぎてわけ分かんなくなったんだもん。
 だって好きなんだよ俺は。りっちゃんが好きなんだ、好きだ、誰にも渡したくない!

 王子様ってやつががこの世にいるとしたら、俺とは真逆の存在だろうな……。

 りっちゃんを無理やりだだっ広いだけの寒々しい我が家に連れ帰って、俺は初めてりっちゃんを抱いた。
 お風呂に入りたいって言って半べそかいてる顔が最高だった。危うく汚いほうが興奮するとか言いそうになってヤバかった。
 しかもりっちゃんはあまりこのような行為に慣れていないらしく、最中はぼろぼろと涙を流して俺にしがみついていて、その様子がめちゃくちゃ可愛く、やはりよそのオトコになど指一本触れさせたくないなと俺は思った。
 りっちゃんはかわいい。かわいいんだ。なんでこんなにかわいいんだよ!
 ちなみに、事後に聞いたところによると、今までにセックスは7回位したことがあるそうだ。こういう自分が若干惨めになる質問って興奮するんだよなぁ。何でそんなに正直なんだりっちゃんは。
 なるほどね。7回ねOK。

 じゃあ8回目からは、俺 が 初 め て の 男 になるんだね……!?
 
 
 こうして俺達は、晴れてお付き合いを始めた。
 らぶらぶの恋人同士として仲良く半同棲しているのだ。
 りっちゃんは一人暮らしなのにお父さんが厳しいらしく、あまり俺の家には泊まりたがらない。
 だが、俺がねだれば一緒にいてくれるし、泊まってくれるし、早く帰った日はご飯も作ってくれる。
 俺の人生は、そもそも母親はアレだし、中学出てからずっと海外にいたしで、家庭的なぬくもりとかあんまりなかったんだけど、今のこのカンジがすごい幸せすぎてなんだか泣ける。
 早くりっちゃんにプロポーズしたい。
 あまり早すぎても信用されなそうだからちょっと時間を置いてからしたい。
 ……他の女の子が、こんな風に俺に甲斐甲斐しく尽くしてくれたとしても、多分俺はこれほどまでには幸せではなかっただろう。
 俺はりっちゃんという人と恋に落ちてしまったのだ。
 恋って、すごく舞い上がる事だろうし、幸せだろうし、何故「落ちる」ものなんだろう? とおもっていたけど、今ならしっくり来る。
 文字通り自分を取り巻く世界が激変し、別の世界に落ちてしまったようなカンジがする。
 俺が今まで歩いていた地面はなくなった。
 不思議の国のアリスみたいに新しい世界に落っこちて、そこにはりっちゃんがいたんだ。
 落ちた先が「天国」だった俺は幸せものなんだな……。
 オヤジの愚痴を延々言い続ける俺の話も聞いてくれるし、そもそも可愛いし、抱き心地は天国だし、可愛いし、可愛いし、最高に可愛い。
 俺も愚痴ばっか言ってないで強くならなきゃな……でもりっちゃんに優しくされるとアホみたいに甘えてしまうのだ。
 この俺が女に甘えるとかありえなくね?
 逆ギレだけどありえねーよ。
 自分が怖いわ!
 だけどグズグズと親の離婚が納得行かないとぐずり続けている俺にりっちゃんが言ってくれたんだ。
 お父さんは間違ったことをしただけで、決して変わってしまったわけじゃないと思うって。
 ……知ってるよ。
 あの人は昔から子煩悩で優しくて、俺と同じで恋愛すると馬鹿になっちゃう男なんだよ……。
 でも俺は、その言葉をくれたりっちゃんに感謝して、ますます惚れ込んでしまったのだ。 

 とかベタベタのろけまくって幸せ満喫していたら、俺にいきなり1ヶ月の海外出張が入ってしまった。

 しょうがないんだよね。俺の仕事相手は海外の人ばっかりだもん。
 でもヤダ。
 ハニーに1ヶ月も会えないとか……そんなの無理だろ。俺には無理だ。
 だが、仕事の手を抜いてダサい男になっては、真面目なりっちゃんを悲しませてしまう……。
 俺はこの長期出張予定をきっかけに、新たに悟りを開いた。
 そうだよな。
 オトコは仕事出来てなんぼだよな。
 りっちゃんはバリバリ仕事ができる、一流のオトコのそばにいるほうが幸せなはずだ! ってな。
 俺はまず、愛する人の傍らに堂々と立つにあたり、「家出息子」であることをやめようと思い立った。
 で、実家と和解することを決めた。
 お祖父様は気が短いので、可愛い俺が家出したことをネチネチ怒りつつも、俺の出戻りを許してくれた。
 オヤジは何も言わなかった。
 ふん、オヤジのこと、許したわけじゃねえよ。歩み寄ってやろうと思ってるだけだよ。
 というわけで、今日からは俺は、昔の通り澤菱の御曹司サマに戻ったわけだ。
 その分責任持って今よりバリバリ働いてやる。
 りっちゃんに安心幸せな彼女ライフを送ってもらうためならなんでもする。
 バカな家出息子の恋人になんか絶対にしないと決めたのだ。
 幸い今の仕事は、モデルの仕事で華やかな社交界を泳ぎまわってきた俺には向いているようだし。
 もっともっと実績を残して、りっちゃんに素敵なダーリン、って思われたい。
 このように妄想は膨らむ一方なのだが、その前にプロポーズをしなければならない。
 俺はさり気なく探った指輪のサイズを元に、結構ワガママを聞いてくれる馴染みのブランドで指輪をオーダーした。
 もちろんこれは、ふたりきりのプロポーズ用の、取り急ぎの品だ。
 結納用には別のを作る。
 結納まで行きつけるかわかんないけど。
 今後の展開に関しては全部俺の妄想だけど。
 指輪に関しては、りっちゃんが『他のデザインが良い』と言ったら一緒に新しく探しに行ってもいいし。
 まずは俺の脳内妄想である「りっちゃんと結婚する」という案を現実のものにするために、渾身のプロポーズを成功させなければ。

 どこでしようかな。旅先がいいかな。海外は行ってる暇がないしなぁ……そうだ、うちの持ってるホテルの温泉付きロイヤルスイートでしようかな。景色が最高なんだよねあそこ。
 
 俺はりっちゃんを温泉に誘い、OKをもらった。
 素直な彼女は、何も疑っていないようだ。
 ドキドキしつつホッとしつつ、俺は密かにプロポーズの計画を練り続けた。
 オーダーした指輪も、ムリ目の期間ながらも無事に仕上がった。さすがおふくろが毎年八桁以上買い物してた店。息子の俺のワガママもきっちり叶えててくださった。ありがとうございます。
 俺がりっちゃんにあげるのは、大きめのクオリティの高いダイヤをフルエタニティに仕立てたリングだ。
 ダイヤが大きいので、キラキラしていて綺麗だと思う。
 このブランドはダイヤのセッティングがいいのだ。爪が邪魔していなくて、虹色の光が目に眩しい。
 喜んで受け取ってくれるかな……りっちゃん。
 振られたらどうしよう。
 いや、そんなことは今は考えなくていい。
 絶対に成功させるのだ。
 半月後、俺は指輪をしっかりとバッグに入れて、車でりっちゃんと旅行にでかけた。
 りっちゃんは温泉に入れると言って、無邪気に喜んでいた。
 優しいし、とくに贅沢を言わないし、俺と居る時はいつもニコニコしているりっちゃん。
 このまま根無し草になって自滅しよう、ってくらい親の不倫問題に傷ついてた俺に、立ち直ってまともになる切っ掛けをくれた人。
 辛いことがあっても俺に泣きつかないで、自分でなんとかしてしまう、はかなげな見た目と裏腹にしっかりものの彼女。
 いつもりんとしていて美しいりっちゃん。
 元カレ(あの極上ボディを前にしてセックス七回しかしなかった変わった人)や親友さんとこじれた時だって、りっちゃんは結局、自分の知恵と勇気でなんとかした。
 助けてあげるという俺の言葉にちゃんと感謝をしてくれつつも、問題解決のために自力で頑張ったのだ。本当にいい女だと思う。
 俺はどうしても彼女を手放したくない。
 りっちゃんは万事において控えめで、俺に何も要求しないけど、俺は要求したい。
 俺と一生一緒にいてくれと要求したいんだ。

 
 ……そして。
 死ぬ気でかました俺のプロポーズは、無事に成功に終わった。
 りっちゃんは、嬉しいと言ってくれている。
 俺といっしょにいたいと言ってくれている。
 夢じゃないのだ。
 りっちゃんの真っ黒な美しい目には、俺の半泣きの笑顔がしっかり映っていたから。

 ああ、これですこし安心して出張にいける。遠慮がちなりっちゃんに変な不安を与えたまま一人にしなくて済むし、何より俺が嫉妬妄想半狂乱のまま過ごさずに済む。
 あとは、りっちゃんのご両親に頭を下げに行くだけだ。

 りっちゃんのお父さんとお母さんはどんな人なんだろう?
 『お父さんは元機動隊員で、ゴリラによく似た体格の柔道黒帯所持者で、毎日腕立て伏せを百回している』などとりっちゃんは言っているが、聞き間違いだろうか?
 清楚で可憐で菫の花みたいなりっちゃんのお父さんが、ゴリラに似ているわけないよね……?
 俺、玄関前でぶっ飛ばされて、敷居すらまたがせてもらえない、とか、無いよね……??




 to be continued……(本編続編へ)
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