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第十六話 王妃と謁見
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馬車は町を出た。日が落ちてしばらく進むと、近くの砦へと入場した。
門をくぐり終えると、馬車が止まった。
「ほら、出ろ」
衛兵の声がしたので、馬車を降りる。すると衛兵たちは、僕に鉄球付きの足かせを付け、牢へと放り込む。
乱暴な扱いだ──って、あたりまえか──僕は今、罪人扱いなのだから──。
牢は鉄格子に石の壁で作られていた。
気になったのは天井にはめてあるクリスタルだ。おそらく、魔力を吸収するドレインクリスタルと言われているものだろう。どうやらこの砦は、かなり厳重な場所のようだ。
衛兵の一人が、こちらに話しかけてくる。
「おい、お前! 名前は何だ!」
「ぼ、僕ですか? 僕は、ライトといいますけど……」
「では、ライト! お前には明日、王妃と謁見してもらう。拒否はできない。くれぐれも失礼のないようにな」
「ええ……王妃……どうして!?」
──予想外の展開だ。
「よかったな。もしかしたら、罪を軽減できるかもしれんぞ」
「ほ、本当に!? でも、どうして王妃が僕に謁見を……」
「お前に知る権利はない!」
ここでお約束のセリフが出た。展開の雲行きが怪しい。王妃の謁見理由の心当たりは──おそらく、僕が勇者だからだろう。
──だが、いったい何のために!?
これは、この強引な話の流れに乗って、事の成り行きを見極めなくてはならなそうだ。
***
しばらく大人しくしていると、上の方から声が聞こえてきた。
「マスター。スマホをお持ちしました」
「セカンドか! ありがとう、その小窓から投げてくれ」
セカンドの投げたスマホをキャッチする。
ようやくスマホを手にすることができた。
「マスター。申し訳ありません。ここへ来るのにスキルを使用したので、銅貨120枚程使わせていただきました」
「ああ、それは構わない。それと……ちょっと用事ができた。しばらくこのまま様子を見る。仲間ストレージ内で待機してくれ」
「はい、マスター」
セカンドは体を粒子化させ、きらびやかな電子エフェクトとともに、スマホの中へ入りこんだ。
***
──次の日──ぼくは、城へ呼ばれ、王妃と謁見した。
見た目はメデューサのような威圧感のある女王。その目で睨まれただけで石化してしまいそうだ。
王妃は玉座から立ち上がると、神聖な雰囲気の声で話始めた。
「あなた……この世界の女性たちの胸を、どう思いますか?」
いきなり胸の話だ。ここは、無難に──
「どうって……小さくて、とてもかわいいです」
王妃に貧乳だなんて言ったら、即座に死刑になりかねない。
だが、そんな気遣いを察してか、王妃は柔らかい声で、訪ねてきた。
「いいえ、本当の事を言ってみてください」
「ええ! いいんですか! でも……それ言ったら打ち首とかないですよね……」
「私が保証します」
「そうですか……わかりました」
大きく息を吸い──
「皆、貧乳です! サー!」
と、例えば軍人が上官の命令でそれを言わされている──そんな状況をイメージし、僕は勢いで言い切った。
「……改めて聞くと、カチンとくる言葉ですね……」
「え……」
「まあ、いいでしょう」
気が付くと、僕はその一言にホッと溜息をもらしていた。どうやら、ピンチは脱出したらしい。
王妃の話は続く。
「かれこれ15年ほど前、世の女性には豊満な胸がありました。ですが大きな雷がなった日を境に胸がしぼみ始めたのです」
「15年前!?」
その雷はおそらく、僕の生まれた時だ。まさか、僕がそれに関係しているのだろうか。
「その頃から、魔王が活発に動き始めました」
「魔王!?」
「偵察の方から聞いた話だと、魔王はとてつもなく豊満な胸を持っています。それを聞いて私は確信しました。魔王は、私たちの胸の力を吸い取っています」
「胸の力!?」
「そうです。この希望にあふれる胸! 夢あふれる胸! 生命を育む為の胸! この素晴らしい力を奪い、人間を疲弊させようとしているのです!」
「な……!?」
──魔王。それが不明な干渉の力の正体だったのか!
「さあ、選びなさい! ここで罪人として一生を終えるか、それとも、魔王と戦い、勝利を手にするか!」
やっぱり、罪人のままのようだ。これだと、選択肢は一択しかない。それに、この異世界での最終目標でもあることだ。
僕は、その問いの答えを出す。
「人々の夢と希望の詰まったおっぱいを、こんなふうにしてしまった魔王を、僕は許しません! 必ず倒してみせます!」
「よくぞ言った! それでこそ勇者よ! そなたに、我が希望を託したぞ」
その託した希望は僕にとっては重すぎる──だが、これで、何が何でも魔王を倒さなければならなくなった。
門をくぐり終えると、馬車が止まった。
「ほら、出ろ」
衛兵の声がしたので、馬車を降りる。すると衛兵たちは、僕に鉄球付きの足かせを付け、牢へと放り込む。
乱暴な扱いだ──って、あたりまえか──僕は今、罪人扱いなのだから──。
牢は鉄格子に石の壁で作られていた。
気になったのは天井にはめてあるクリスタルだ。おそらく、魔力を吸収するドレインクリスタルと言われているものだろう。どうやらこの砦は、かなり厳重な場所のようだ。
衛兵の一人が、こちらに話しかけてくる。
「おい、お前! 名前は何だ!」
「ぼ、僕ですか? 僕は、ライトといいますけど……」
「では、ライト! お前には明日、王妃と謁見してもらう。拒否はできない。くれぐれも失礼のないようにな」
「ええ……王妃……どうして!?」
──予想外の展開だ。
「よかったな。もしかしたら、罪を軽減できるかもしれんぞ」
「ほ、本当に!? でも、どうして王妃が僕に謁見を……」
「お前に知る権利はない!」
ここでお約束のセリフが出た。展開の雲行きが怪しい。王妃の謁見理由の心当たりは──おそらく、僕が勇者だからだろう。
──だが、いったい何のために!?
これは、この強引な話の流れに乗って、事の成り行きを見極めなくてはならなそうだ。
***
しばらく大人しくしていると、上の方から声が聞こえてきた。
「マスター。スマホをお持ちしました」
「セカンドか! ありがとう、その小窓から投げてくれ」
セカンドの投げたスマホをキャッチする。
ようやくスマホを手にすることができた。
「マスター。申し訳ありません。ここへ来るのにスキルを使用したので、銅貨120枚程使わせていただきました」
「ああ、それは構わない。それと……ちょっと用事ができた。しばらくこのまま様子を見る。仲間ストレージ内で待機してくれ」
「はい、マスター」
セカンドは体を粒子化させ、きらびやかな電子エフェクトとともに、スマホの中へ入りこんだ。
***
──次の日──ぼくは、城へ呼ばれ、王妃と謁見した。
見た目はメデューサのような威圧感のある女王。その目で睨まれただけで石化してしまいそうだ。
王妃は玉座から立ち上がると、神聖な雰囲気の声で話始めた。
「あなた……この世界の女性たちの胸を、どう思いますか?」
いきなり胸の話だ。ここは、無難に──
「どうって……小さくて、とてもかわいいです」
王妃に貧乳だなんて言ったら、即座に死刑になりかねない。
だが、そんな気遣いを察してか、王妃は柔らかい声で、訪ねてきた。
「いいえ、本当の事を言ってみてください」
「ええ! いいんですか! でも……それ言ったら打ち首とかないですよね……」
「私が保証します」
「そうですか……わかりました」
大きく息を吸い──
「皆、貧乳です! サー!」
と、例えば軍人が上官の命令でそれを言わされている──そんな状況をイメージし、僕は勢いで言い切った。
「……改めて聞くと、カチンとくる言葉ですね……」
「え……」
「まあ、いいでしょう」
気が付くと、僕はその一言にホッと溜息をもらしていた。どうやら、ピンチは脱出したらしい。
王妃の話は続く。
「かれこれ15年ほど前、世の女性には豊満な胸がありました。ですが大きな雷がなった日を境に胸がしぼみ始めたのです」
「15年前!?」
その雷はおそらく、僕の生まれた時だ。まさか、僕がそれに関係しているのだろうか。
「その頃から、魔王が活発に動き始めました」
「魔王!?」
「偵察の方から聞いた話だと、魔王はとてつもなく豊満な胸を持っています。それを聞いて私は確信しました。魔王は、私たちの胸の力を吸い取っています」
「胸の力!?」
「そうです。この希望にあふれる胸! 夢あふれる胸! 生命を育む為の胸! この素晴らしい力を奪い、人間を疲弊させようとしているのです!」
「な……!?」
──魔王。それが不明な干渉の力の正体だったのか!
「さあ、選びなさい! ここで罪人として一生を終えるか、それとも、魔王と戦い、勝利を手にするか!」
やっぱり、罪人のままのようだ。これだと、選択肢は一択しかない。それに、この異世界での最終目標でもあることだ。
僕は、その問いの答えを出す。
「人々の夢と希望の詰まったおっぱいを、こんなふうにしてしまった魔王を、僕は許しません! 必ず倒してみせます!」
「よくぞ言った! それでこそ勇者よ! そなたに、我が希望を託したぞ」
その託した希望は僕にとっては重すぎる──だが、これで、何が何でも魔王を倒さなければならなくなった。
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