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第十九話 魔属領へ
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次の日の朝、部屋のテーブルの上の複製スマホが20個に増えているのを確認する。
「これだけあれば……なんとかなるか……」
その後も一時間ごとに作り続けるよう、スマホに指令をだす。新しくできたものは、空間ストレージに収納されるように設定した。
こればっかりは無くて困るものではないし、数はあったほうがいい──相手は魔王なのだから──。
宿を出て、魔王の住む地域へ向かう。
この地域には、セライヌ川という大きな川が、大陸を南北に二分している。北側が人間、その他友好種族の多い地域。南側が魔王軍、その他敵対種族の多い地域だ。
川を挟んでいるおかげで、警戒はしやすいが、さすがに全てを警戒することは無理だろう。前回のように魔王軍が攻めてきたり、ゴブリンが鉱山に巣を作ったりと、川を越えてくる魔物もいる──いったいどこから侵入してくるんだか──とにかく北側地域も安全ではないということだ。
セライヌ川にたどり着く。渡れる場所は一か所。小さな砦から伸びるアレクサン橋。欄干には綺麗な魔法陣の彫刻が施されている。だが、それはただの飾りではなく、橋を魔物から守る結界の役目も兼ねている。低級の魔物がこの橋に近づけば、おそらく一瞬で焼き尽くされることだろう。
最前線の砦の守衛に、軽く挨拶をする。
「ご苦労様です。橋、渡っても大丈夫?」
「冒険者の方ですね。お気をつけて」
守衛の見送りを受け、橋を渡る。渡り終えれば、魔属領だ。ここからは仲間のメイドを召喚して警戒を強化する。
ファーストは、パッドの位置を整え、気を引き締めている様子。
「ライト様、これから魔王討伐ですね」
「た、戦ってあげてもいいんだからねっ」
と、サードが呟く。なぜ設定にはないツンデレキャラをしているのかはわからないが、調子はいつも通りで安心した。
まず一人ずつ、複製スマホを持ってもらう。これは通信用だ。そして、セカンドに工作用スマホを10個ほど携帯してもらった。
「爆破のときは、連絡してくれ。離れている座標のものから爆発させるようにスマホに支持を出す」
「ちょっと待ってください」
「どうした?」
セカンドが、スマホをいじり始める。
「大体わかりました。こちらで起爆可能です」
「できるのか! そんなこと!?」
「管理者権限にアクセスしてパスワード入力を3回失敗すると、爆発する仕組みのようです。それと、初期設定は0000でしたので、変更することをお勧めします」
「ん……そうか……わかった」
セカンドの言う通りにパスワードを設定し直す。もちろん、自分の誕生日だ。
その間に、セカンドは設定の作業をしていた。
「何をしてるんだ?」
「すべてのスマホはあと1度パスを間違えると爆発モードに入るよう設定しました」
「用意周到だな……ははは……」
「当然の準備です」
頭脳タイプを一人入れておいて正解だった。それにしても、ここまで頭がいいとは──本当に大助かりだ。
スマホの赤外線サーモグラフィーを起動し、森林地帯に入る。今回は、動体検知も常時起動する(もちろん非課金)。
スマホの情報によると、この森には植物系モンスターも存在しているようだ。それらは熱を発しない為、赤外線サーモグラフィーで発見することができない。そこで動体検知が必要になってくる。
動体検知──仲間以外の不自然な動きをするものに反応し、場所を知らせてくれる。この際、使えるものは何でも使っておいたほうがいいだろう。
早速動体検知が敵を捕らえた。スマホの警戒ランプが光る。
「おい、スマホ。敵は何だ?」
『敵、識別完了しました。人食いフラワーレベル10です。前方に5体ほど確認しました』
「キャッ!」
僕の前方を歩くファーストが突然足を滑らせたように転んだ。
「どうした、ファースト!」
「なにこれ……ひゃっ!」
「何かいる~!」
続いて、セカンドとファーストも転ぶ。
「な、なにが起こってるんだ!?」
『これより先、人食いフラワーの攻撃範囲内です』
「それを先に言ってくれ!」
よく見ると、人食いフラワーは地面に蔓を伸ばしていた。その蔓は三人を捕まえ、体に侵食し、メイドたちを締め上げていく。そして、ズルズルと本体のほうに引き寄せ始める。おそらく、捕食するつもりだろう。
「は、放せ! そんなところを……締め上げるな」
「ああ、縛られていきます」
「この花、なんかエロいいーっ!」
蔓の浸食は、あまりにもいやらしかった。その展開を見てあっけにとられた僕は、ただ、その場に立ち尽くすだけだった。
「これだけあれば……なんとかなるか……」
その後も一時間ごとに作り続けるよう、スマホに指令をだす。新しくできたものは、空間ストレージに収納されるように設定した。
こればっかりは無くて困るものではないし、数はあったほうがいい──相手は魔王なのだから──。
宿を出て、魔王の住む地域へ向かう。
この地域には、セライヌ川という大きな川が、大陸を南北に二分している。北側が人間、その他友好種族の多い地域。南側が魔王軍、その他敵対種族の多い地域だ。
川を挟んでいるおかげで、警戒はしやすいが、さすがに全てを警戒することは無理だろう。前回のように魔王軍が攻めてきたり、ゴブリンが鉱山に巣を作ったりと、川を越えてくる魔物もいる──いったいどこから侵入してくるんだか──とにかく北側地域も安全ではないということだ。
セライヌ川にたどり着く。渡れる場所は一か所。小さな砦から伸びるアレクサン橋。欄干には綺麗な魔法陣の彫刻が施されている。だが、それはただの飾りではなく、橋を魔物から守る結界の役目も兼ねている。低級の魔物がこの橋に近づけば、おそらく一瞬で焼き尽くされることだろう。
最前線の砦の守衛に、軽く挨拶をする。
「ご苦労様です。橋、渡っても大丈夫?」
「冒険者の方ですね。お気をつけて」
守衛の見送りを受け、橋を渡る。渡り終えれば、魔属領だ。ここからは仲間のメイドを召喚して警戒を強化する。
ファーストは、パッドの位置を整え、気を引き締めている様子。
「ライト様、これから魔王討伐ですね」
「た、戦ってあげてもいいんだからねっ」
と、サードが呟く。なぜ設定にはないツンデレキャラをしているのかはわからないが、調子はいつも通りで安心した。
まず一人ずつ、複製スマホを持ってもらう。これは通信用だ。そして、セカンドに工作用スマホを10個ほど携帯してもらった。
「爆破のときは、連絡してくれ。離れている座標のものから爆発させるようにスマホに支持を出す」
「ちょっと待ってください」
「どうした?」
セカンドが、スマホをいじり始める。
「大体わかりました。こちらで起爆可能です」
「できるのか! そんなこと!?」
「管理者権限にアクセスしてパスワード入力を3回失敗すると、爆発する仕組みのようです。それと、初期設定は0000でしたので、変更することをお勧めします」
「ん……そうか……わかった」
セカンドの言う通りにパスワードを設定し直す。もちろん、自分の誕生日だ。
その間に、セカンドは設定の作業をしていた。
「何をしてるんだ?」
「すべてのスマホはあと1度パスを間違えると爆発モードに入るよう設定しました」
「用意周到だな……ははは……」
「当然の準備です」
頭脳タイプを一人入れておいて正解だった。それにしても、ここまで頭がいいとは──本当に大助かりだ。
スマホの赤外線サーモグラフィーを起動し、森林地帯に入る。今回は、動体検知も常時起動する(もちろん非課金)。
スマホの情報によると、この森には植物系モンスターも存在しているようだ。それらは熱を発しない為、赤外線サーモグラフィーで発見することができない。そこで動体検知が必要になってくる。
動体検知──仲間以外の不自然な動きをするものに反応し、場所を知らせてくれる。この際、使えるものは何でも使っておいたほうがいいだろう。
早速動体検知が敵を捕らえた。スマホの警戒ランプが光る。
「おい、スマホ。敵は何だ?」
『敵、識別完了しました。人食いフラワーレベル10です。前方に5体ほど確認しました』
「キャッ!」
僕の前方を歩くファーストが突然足を滑らせたように転んだ。
「どうした、ファースト!」
「なにこれ……ひゃっ!」
「何かいる~!」
続いて、セカンドとファーストも転ぶ。
「な、なにが起こってるんだ!?」
『これより先、人食いフラワーの攻撃範囲内です』
「それを先に言ってくれ!」
よく見ると、人食いフラワーは地面に蔓を伸ばしていた。その蔓は三人を捕まえ、体に侵食し、メイドたちを締め上げていく。そして、ズルズルと本体のほうに引き寄せ始める。おそらく、捕食するつもりだろう。
「は、放せ! そんなところを……締め上げるな」
「ああ、縛られていきます」
「この花、なんかエロいいーっ!」
蔓の浸食は、あまりにもいやらしかった。その展開を見てあっけにとられた僕は、ただ、その場に立ち尽くすだけだった。
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