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はじめてのモフモフ
第13話 ハサミ使い
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僕は、認識阻害のスキルを発動した。そして、ハサミがジャキジャキと鳴らしているジョーの腕を抑えつけた。
「なんだね君! なぜ私の腕をつかんでいるのですか」
「え、わかるの?」
びっくりして、ジョーの腕をつかんだ手を放す。だが、その瞬間、ジョーの態度が変わった。怒りと不信感をあらわにした。
「何、消えた! わたしをおちょくっているのですか……何をしたというのですか!」
まさか、相手に触れると能力の効果が無くなるのか!
フィオラは黒装束を脱ぎ捨て、構えを取った。さらにメリルも黒装束を脱ぎ、サーベルを握りしめる。これで後へは引けなくなった。
「それよりもいったい……何の真似ですか。あなたたち、本当にケゾール信者なのですか?」
「信者ですニャ!」
フィオラの発した言葉は真剣だったが、目は、すでに笑っていた。完全にふざけているという意思は、ジョーにも伝わってしまっただろう。これでもう、戦闘は不可避だ。
「なるほど……そういうわけですか。じゃあ、仕方ありませんね……。君たち二人には、丸坊主になってもらいましょうか!」
────ジャキジャキーン!
ジョーの目つきが鋭くなる。完全に怒らせてしまったようだ。ジョーは、華麗なハサミさばきで、フィオラに襲いかかる。それを防ぐかのように、メリルがサーベルでハサミを受けた。ギリギリと、ジョーのハサミがメリルのサーベルに食い込む。メリルは、それを押し返し、距離を取った。
「丸坊主は嫌なのニャ」
「あなたたち……スパイですね。だったら容赦はしませんよ」
ジョーは、ハサミをもった腕を交差して力を溜め始めた。なんだかやばい攻撃を仕掛けてきそうだ。僕は、もう一度ジョーに近づき、体当たりをした。だが、ジョーは体勢を崩すどころか、びくともしない。そして、「フンッ!」っと息を吐く。僕の体は、その気合のようなものに吹っ飛ばされた。
──まずいっ!
「今こそ、浄化の時! くらえ、【シザースイリュージョン】!」
溜めた力を放出したように、ジョーは胸から大量のハサミの幻影を射出した。その幻影のハサミは、フィオラに向けて飛んで行く。
「な……なんなのニャ!」
フィオラは、慌てて飛びのいた。だが、幻影のハサミは、フィオラの飛びのいた方向に向きを変え、また襲ってくる。
「追っかけてくるのニャ~!」
──追尾してくるのか……これじゃあ……。
その時だ! 何もしていなかったペスが、突然フィオラの目の前に飛び出した。ペスは、体を大の字にして、フィオラをかばった。幻影のハサミは、ペスの黒装束を切り刻む!
「アッヒャアアアアァァァァ!」
ペスの、悲鳴が洞窟内にこだまする。ペスは毛のない無残なピンクの体を露出する。さらに、狩り残しのアソコの毛まで刈り取られてしまった!
「アッッッッガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァァ!」
そこには、所々に切り傷を負い、それでも勇ましく立っているペスの姿があった。
「大丈夫ですから……わたしは……それより早く、奴を……」
「ペス、恩に着るニャ」そう言うとフィオラは、脱ぎ捨てた黒装束を拾い、ペスの体にかぶせた。危機一髪だったフィオラは、目つきが変わり、より一層警戒心を強めたようだ。
「信者、いや……そうではなさそうですね。やはり信者のように毛を剃ったスパイでしたか。怠惰な毛を排除した心意気は見事なものです。しかし、信仰心のかけらもない。心を入れ替えなくてはなりませんね」
ジョーは、ペスの毛のない姿に敬意を表していた。やはり、毛を全て剃るという行為は、この世界の住人にとって、勇気がいることなのだろう。だが、攻撃の手は緩めてはくれなそうだ。
そういえば、メリルをモフった後、スキルに突進があったはずだ。今はフィオラをモフった時のスキルで認識阻害になってはいるが、もう一度メリルをモフって突進を使えるようになれば、勝機はあるかもしれない。
僕はフィオラに声をかける。
「フィオラ、奴を食い止めてくれないか、少しの時間だけでいい!」
「なんかいい方法が見つかったのかニャ。さすがは柔人なのニャ!」
フィオラは体勢を低くした。そして獣のように動いてみせた。まるで、最初に出会った時に僕が四つん這いになって戦った時の動きを真似ているようだった。
「なんですか、四つん這いになって……プライドを捨てましたか」
「これは、柔人が編み出した格闘術なのニャ!」
フィオラは、ジョーの挑発に自信満々に問い返す。
──まさか……。
この世界の住人は、獣の本来の動きを知らないのだろうか、だとすれば、フィオラにも勝機はある。だが、やはり保険は必要だ。僕は、この隙に、メリルにモフりつくことにした。
「メリル! 悪い、モフる!」
僕は、かじりつくようにメリルの背中をモフリ始めた。
「もっふもふー! もっふもふー!」
「ちょっ……柔人殿……そんな、いきなり……」
全身に別な力がみなぎってきた!
「もっふもふー! もっふもふー!」
「そんなにされたら……わたしは……」
嫌がるメリルを無視して、モフモフチャージをする。
「ああっ! もう……!」
耐えきれなくなったメリルは、裏声を上げる。
「ンハッ! モフモフチャージ────完了!」
メリルはモフモフショックでその場に倒れた。もうメリルは戦闘に加われない。なので、僕がなんとかするしかない。
「【ステイト】!」
ステータスを確認する。
[
SRA 羊 LV 8
HP 100(210)
MFP --(1100)
+AP 15(21)
+DP 25(31)
+SP 12(18)
SK 突進
▼(点滅中)
]
メリルをモフモフした後のステータスだ。だが、一つ気になることがあった。スキルにあったはずの回復が消えていた。いったいこれは、どういうことなのだろうか。それは、あとで考えるとする。
それと、今回、試したいものがあった。それは、UIだ。ステータスのページを送ってみる。
[
M.gauge 100%(羊)
S.gauge 2%
UI OFF ▼
Mail 0件 ▼
Help ▼
]
気になっていたのは【UI】だ。おそらく、ユーザーインターフェースのことだろう。これをONにすれば、視界にもっといろいろなものが表示されるはずだ。僕は、視界の表示を操作し、UIをONにした。
するとどうだろう、視界の下の方にHPと表示された長いバーが現れ、その下にMFP、S.gaugeのバーが表示された。まるでゲームをやっている気分だ。だが、このほうが詳細がわかって戦いやすい。
[
LV:2
【200/210】HP//////////
【1100/1100】MFP//////////
【2%】S.gauge/
【EX】250/300
]
さらに、場にいる仲間全員の頭に、▼のカーソルが着いた。それに触れると、各々のステータスが出現する。
[
Name フィオラ
SRA 猫 LV 15
HP 110/110
MP 200/200
AP 23
DP 15
SP 20
SK 地獄耳
]
[
Name メリル
SRA 羊 LV 8
HP 210/210
MP 0
AP 15
DP 25
SP 12
SK アーマー
]
[
Name ペス
SRA 犬 LV 15
HP 11/150
MP 0
AP 20
DP 20
SP 15
SK
]
ジョーの表示は赤く表示されたNameだけだった。この状況を確認して一つ言えることは、ペスがほとんど戦えないという状態だということだ。回復スキルを誰も持っていないのが苦しいところだが、なんとか乗り切るしかない。
フィオラは、四つん這いの能力を生かして、ジョーを翻弄していた。フィオラのひっかき攻撃は鋭く、ジョーに溜をつくる隙を与えなかった。だが、基本の能力が違うのだろか、攻撃は簡単に見切られ、わずかに毛を刈られてしまう。深手を負ってないので、戦えてはいるが、このままでは致命傷を負いかねない。
僕は、フィオラとジョーの戦っている場所から距離を取り、メリルをモフって得たスキル、【突進】を発動した。
「なんだね君! なぜ私の腕をつかんでいるのですか」
「え、わかるの?」
びっくりして、ジョーの腕をつかんだ手を放す。だが、その瞬間、ジョーの態度が変わった。怒りと不信感をあらわにした。
「何、消えた! わたしをおちょくっているのですか……何をしたというのですか!」
まさか、相手に触れると能力の効果が無くなるのか!
フィオラは黒装束を脱ぎ捨て、構えを取った。さらにメリルも黒装束を脱ぎ、サーベルを握りしめる。これで後へは引けなくなった。
「それよりもいったい……何の真似ですか。あなたたち、本当にケゾール信者なのですか?」
「信者ですニャ!」
フィオラの発した言葉は真剣だったが、目は、すでに笑っていた。完全にふざけているという意思は、ジョーにも伝わってしまっただろう。これでもう、戦闘は不可避だ。
「なるほど……そういうわけですか。じゃあ、仕方ありませんね……。君たち二人には、丸坊主になってもらいましょうか!」
────ジャキジャキーン!
ジョーの目つきが鋭くなる。完全に怒らせてしまったようだ。ジョーは、華麗なハサミさばきで、フィオラに襲いかかる。それを防ぐかのように、メリルがサーベルでハサミを受けた。ギリギリと、ジョーのハサミがメリルのサーベルに食い込む。メリルは、それを押し返し、距離を取った。
「丸坊主は嫌なのニャ」
「あなたたち……スパイですね。だったら容赦はしませんよ」
ジョーは、ハサミをもった腕を交差して力を溜め始めた。なんだかやばい攻撃を仕掛けてきそうだ。僕は、もう一度ジョーに近づき、体当たりをした。だが、ジョーは体勢を崩すどころか、びくともしない。そして、「フンッ!」っと息を吐く。僕の体は、その気合のようなものに吹っ飛ばされた。
──まずいっ!
「今こそ、浄化の時! くらえ、【シザースイリュージョン】!」
溜めた力を放出したように、ジョーは胸から大量のハサミの幻影を射出した。その幻影のハサミは、フィオラに向けて飛んで行く。
「な……なんなのニャ!」
フィオラは、慌てて飛びのいた。だが、幻影のハサミは、フィオラの飛びのいた方向に向きを変え、また襲ってくる。
「追っかけてくるのニャ~!」
──追尾してくるのか……これじゃあ……。
その時だ! 何もしていなかったペスが、突然フィオラの目の前に飛び出した。ペスは、体を大の字にして、フィオラをかばった。幻影のハサミは、ペスの黒装束を切り刻む!
「アッヒャアアアアァァァァ!」
ペスの、悲鳴が洞窟内にこだまする。ペスは毛のない無残なピンクの体を露出する。さらに、狩り残しのアソコの毛まで刈り取られてしまった!
「アッッッッガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァァ!」
そこには、所々に切り傷を負い、それでも勇ましく立っているペスの姿があった。
「大丈夫ですから……わたしは……それより早く、奴を……」
「ペス、恩に着るニャ」そう言うとフィオラは、脱ぎ捨てた黒装束を拾い、ペスの体にかぶせた。危機一髪だったフィオラは、目つきが変わり、より一層警戒心を強めたようだ。
「信者、いや……そうではなさそうですね。やはり信者のように毛を剃ったスパイでしたか。怠惰な毛を排除した心意気は見事なものです。しかし、信仰心のかけらもない。心を入れ替えなくてはなりませんね」
ジョーは、ペスの毛のない姿に敬意を表していた。やはり、毛を全て剃るという行為は、この世界の住人にとって、勇気がいることなのだろう。だが、攻撃の手は緩めてはくれなそうだ。
そういえば、メリルをモフった後、スキルに突進があったはずだ。今はフィオラをモフった時のスキルで認識阻害になってはいるが、もう一度メリルをモフって突進を使えるようになれば、勝機はあるかもしれない。
僕はフィオラに声をかける。
「フィオラ、奴を食い止めてくれないか、少しの時間だけでいい!」
「なんかいい方法が見つかったのかニャ。さすがは柔人なのニャ!」
フィオラは体勢を低くした。そして獣のように動いてみせた。まるで、最初に出会った時に僕が四つん這いになって戦った時の動きを真似ているようだった。
「なんですか、四つん這いになって……プライドを捨てましたか」
「これは、柔人が編み出した格闘術なのニャ!」
フィオラは、ジョーの挑発に自信満々に問い返す。
──まさか……。
この世界の住人は、獣の本来の動きを知らないのだろうか、だとすれば、フィオラにも勝機はある。だが、やはり保険は必要だ。僕は、この隙に、メリルにモフりつくことにした。
「メリル! 悪い、モフる!」
僕は、かじりつくようにメリルの背中をモフリ始めた。
「もっふもふー! もっふもふー!」
「ちょっ……柔人殿……そんな、いきなり……」
全身に別な力がみなぎってきた!
「もっふもふー! もっふもふー!」
「そんなにされたら……わたしは……」
嫌がるメリルを無視して、モフモフチャージをする。
「ああっ! もう……!」
耐えきれなくなったメリルは、裏声を上げる。
「ンハッ! モフモフチャージ────完了!」
メリルはモフモフショックでその場に倒れた。もうメリルは戦闘に加われない。なので、僕がなんとかするしかない。
「【ステイト】!」
ステータスを確認する。
[
SRA 羊 LV 8
HP 100(210)
MFP --(1100)
+AP 15(21)
+DP 25(31)
+SP 12(18)
SK 突進
▼(点滅中)
]
メリルをモフモフした後のステータスだ。だが、一つ気になることがあった。スキルにあったはずの回復が消えていた。いったいこれは、どういうことなのだろうか。それは、あとで考えるとする。
それと、今回、試したいものがあった。それは、UIだ。ステータスのページを送ってみる。
[
M.gauge 100%(羊)
S.gauge 2%
UI OFF ▼
Mail 0件 ▼
Help ▼
]
気になっていたのは【UI】だ。おそらく、ユーザーインターフェースのことだろう。これをONにすれば、視界にもっといろいろなものが表示されるはずだ。僕は、視界の表示を操作し、UIをONにした。
するとどうだろう、視界の下の方にHPと表示された長いバーが現れ、その下にMFP、S.gaugeのバーが表示された。まるでゲームをやっている気分だ。だが、このほうが詳細がわかって戦いやすい。
[
LV:2
【200/210】HP//////////
【1100/1100】MFP//////////
【2%】S.gauge/
【EX】250/300
]
さらに、場にいる仲間全員の頭に、▼のカーソルが着いた。それに触れると、各々のステータスが出現する。
[
Name フィオラ
SRA 猫 LV 15
HP 110/110
MP 200/200
AP 23
DP 15
SP 20
SK 地獄耳
]
[
Name メリル
SRA 羊 LV 8
HP 210/210
MP 0
AP 15
DP 25
SP 12
SK アーマー
]
[
Name ペス
SRA 犬 LV 15
HP 11/150
MP 0
AP 20
DP 20
SP 15
SK
]
ジョーの表示は赤く表示されたNameだけだった。この状況を確認して一つ言えることは、ペスがほとんど戦えないという状態だということだ。回復スキルを誰も持っていないのが苦しいところだが、なんとか乗り切るしかない。
フィオラは、四つん這いの能力を生かして、ジョーを翻弄していた。フィオラのひっかき攻撃は鋭く、ジョーに溜をつくる隙を与えなかった。だが、基本の能力が違うのだろか、攻撃は簡単に見切られ、わずかに毛を刈られてしまう。深手を負ってないので、戦えてはいるが、このままでは致命傷を負いかねない。
僕は、フィオラとジョーの戦っている場所から距離を取り、メリルをモフって得たスキル、【突進】を発動した。
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