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本編
第十話 おいしいフカヒレ
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小鳥のさえずるようなやさしい声が聞こえる。
「……きて……隆司くん……起きて……」
その声で、また眠りそうになる。
だが、それを我慢して、俺はうっすらと目を開けた。
どうやら俺は、車の助手席で寝ていたようだ。
ドアが開いている。
そして、そのドアの側に立っているのは、白いワンピース姿で黒いロングヘアーのかわいい女性。
幼馴染の志摩棗だった。
「あれ……棗か……」
「よかった……気がついた。何か胸騒ぎがして……」
「胸騒ぎ……そうだ、京谷は?」
運転席を見る。だが、京谷はいない。
さっきまでの記憶が頭に流れ込んでくる。
恐怖、悪臭、痛み……そして鮫人間……。
「今、部長たちと5人で近くの廃村に行ってるみたい」
一瞬狂いそうになる思考を棗の声が元の世界へと引き戻した。
俺は自分の手を握ったり開いたりしながら、生きていることを確かめる。
「そうか、無事だったんだな」
「何かあったの?」
夏目は、俺のことを心配そうに見つめていた。
俺は一瞬、さっきまでのことを話そうとした。けれども、とっさに口を閉じた。
信じてもらえるとは思わないし、それで心配をかけるわけにはいかない。
「いや、大したことじゃない……京谷の運転にびっくりして……」
とっさにごまかした。だが、棗にそんな態度は通用しない。
棗は刺すような疑いの目で俺をじっと睨みつける。
俺は軽く笑ってその場をやり過ごす。
その後、棗は呆れた顔でため息をつき、一言添える。
「そういえば、京谷さんが起きたら伝えてって。無理な運転して悪かったって」
「ああ、別に気にしちゃいない。そのおかげで……いや、なんでもない」
「変な隆司。あ、そうそう。もうすぐ民宿で夕食がくる頃だから、先に二人で食べましょ」
「もうそんな時間か……わかった、行こう」
車を降り、駐車場を出て向かい側の民宿へと向かった。
民宿は、古い歴史を感じさせるような二階建ての家だ。
引き戸を開け、棗と中に入る。すると、民宿の女将が出迎えてくれた。
「こんにちは。お連れの方ですね。ようこそいらっしゃいました。お部屋は二階になっております。案内いたします」
若くて綺麗な女将だ。
俺たちは、女将に案内され、二階への階段を上る。
それにしても静かだ。それに、女将の他には従業員の姿は見えない。
「そういえば、他の従業員はいないのですか?」
「今は忙しくないので、私と支配人の二人で営業しています。今、支配人は外出していますが、もし、何かありましたら、私に言ってもらえれば……」
夏目が口を挟む。
「もしかして、夫婦で営業ですか?」
「そういう事になります。ふふっ」
「大変そうですね」
「今は、あまり忙しくはありませんよ。料理は、村の料理屋が出来たものを運んでくれますので、安心してお出しできますし。もちろん、冷めないように温めるのはこちらの仕事ですけどね」
二階の部屋につく。
「こちらが部屋になっています」
部屋は20畳ほどの広さだ。障子の戸に畳の落ち着く和室だ。
外見とは裏腹に、部屋は新しい。新築の木材の香りがする。
「先に夕飯お召し上がりになりますか? それとも露天風呂でも……」
「風呂……か……」
すると、女将は少しにやついて話す。
「露天風呂は混浴になっております、お二人でどうですか? ふふっ」
「え、混浴?」
「隆司、入ろっか」
一瞬思考が止まった。仮にも昔の幼馴染だ。小さいころは、一緒に風呂に入ったこともあるが、それはそれで子供の時の話だ。今は、その頃とは違う。
と、真面目に考えてみたものの、してやったりという棗の表情を見て俺はすぐに「先に飯で」と切り返す。
棗は不貞腐れた様子で「うーっ」声を上げていた。
複雑だ。あの死の瞬間、ぼんやりと棗の顔が浮かんだ。
その時から、少しだけ棗を意識し始めた。
この気持ちがどういうものか、わからないわけではない。だが、この俺が棗のことを好きだなんて、あり得るのだろうか。
たぶん、気のせいだ。きっとそうだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺と棗は、しばらく部屋で休んでいた。
俺は体のストレッチ。棗は本を読んでいる。
普段、俺と棗は会話がない。だからと言って、仲が悪いわけではない。
二人でいるときは、お互い気を使わないだけなのである。
なので、自分のことだけに集中することができる。
その辺は似た者同士だ。
しばらくして夕食の時間になる。
俺と棗は階段を下り、食事処へと向かう。
そこは、円卓がある和室だった。
円卓には食器が並べられていた。
おそらく、出来た食事を、直接盛り付けるのだろう。
女将が、カートで食事を持ってくる。
そして、食事を二人分だけ盛り付ける。
「用意ができました。今日のメインはフカヒレの姿煮です。ごゆっくりどうぞ」
「フカヒレか。フカヒレといえば……たしか……鮫だよな……鮫……鮫!?」
「うん、鮫だよ。どうかした?」
「んんっ……なんでもない、なんでも……」
また鮫だ。今日は鮫の日なのだろうか。
だが、これはあくまで料理だ。鮫のフカヒレだ。
俺は、フカヒレの姿煮を見ながら、そう、心に言い聞かせた。
(今まで食われ続けたんだ。ここで仕返ししてやる!)
「いただきます!」
俺は、この憎い鮫を力いっぱいかみしめた。食物連鎖の頂点が誰なのかを、この鮫に思い知らせてやるために。
(このなめらかでプリっとした食感は最高だ。お前たちは、こうやって食べられるんだ!)
「ねえ、隆司。いつも以上に顔が固いよ。どうかしたの?」
「いや……別に……なんでもない、なんでも……」
少し、冷静さを失っていた自分に気付く。怒りに任せて食べていたのでは、せっかくの料理も味わうことができない。
俺は少し反省し、心を静めた。
しっかりとかみしめ、味わう。
スープが食感を際立たせる。臭みも少ない。いいフカヒレだ。この島で取れたものなのだろうか。
「うまい。まさか……こんなにフカヒレがうまいなんて……」
今までに味わったことのないうまさだ。
こんな孤島の民宿で、こんな絶品のフカヒレが食べられるなんて、夢にも思わなかった。
「うん、こんなのはじめて」
棗もフカヒレを味わっている。どうやら気に入ったようだ。
おいしいフカヒレを食べたら、途端に眠くなった。
「あれ、さっき寝たのに……また眠くなってきた」
「きっとお腹いっぱいになったせいだよ。私も眠い」
俺と棗は二人で大あくびをする。
「ちょっと横になる」
「私も~」
眠気に負け、ちょっとだけ仮眠を取ることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目が覚めると、部屋は薄暗かった。
背中にあった畳の感触は、固く冷たいものに置き換えられていた。まるで、金属のプレートのような感触だ。
異変に気づいた俺は、起きようとした。だが、体が動かない。
(まさか……金縛り……)
さらに、尻の穴の感触も変だ。力が入らない。
目を凝らして薄暗い部屋をよく見る。
すると、機械のようなものがいろいろ置いてあるのに気づいた。
(さっきの部屋じゃない。どういうことだ!?)
さらに、クレーンのようなもので2メートルぐらいの鮫が吊るされている。
(鮫人間……!? いや……あれは鮫だ……ただの……鮫だ……)
しばらくして、声が聞こえてきた。
声は、低い男の声だった。
「やっぱり、オスの鮫には男がちょうどいいのか」
──ブルン……ドッドッドッドッ──
エンジンのかかる音がした。男は何かを持っている。
そのシルエットは、まさしくチェーンソーそのものだった。
男が近づくにつれ、血生臭い悪臭が漂ってくる。
(何だこの臭い……鮫人間……なのか!?)
男は、チェーンソーをうならせながら、動けない俺に近づいてくる。
よく見ると、体は裸で緑色をしていた。
(違う……鮫人間じゃない……じゃあ、こいつはいったい)
「やっぱり、女より、男の方がいいな~」
そう言いながら、チェーンソーを振り上げた。
(何を言ってるんだ……や、やめろ!)
緑色の裸の男は、そのまま俺の首元に、チェーンソーを振り下ろす。
俺は、首元をえぐられる。激しい痛みを感じながら、意識を失った。
「……きて……隆司くん……起きて……」
その声で、また眠りそうになる。
だが、それを我慢して、俺はうっすらと目を開けた。
どうやら俺は、車の助手席で寝ていたようだ。
ドアが開いている。
そして、そのドアの側に立っているのは、白いワンピース姿で黒いロングヘアーのかわいい女性。
幼馴染の志摩棗だった。
「あれ……棗か……」
「よかった……気がついた。何か胸騒ぎがして……」
「胸騒ぎ……そうだ、京谷は?」
運転席を見る。だが、京谷はいない。
さっきまでの記憶が頭に流れ込んでくる。
恐怖、悪臭、痛み……そして鮫人間……。
「今、部長たちと5人で近くの廃村に行ってるみたい」
一瞬狂いそうになる思考を棗の声が元の世界へと引き戻した。
俺は自分の手を握ったり開いたりしながら、生きていることを確かめる。
「そうか、無事だったんだな」
「何かあったの?」
夏目は、俺のことを心配そうに見つめていた。
俺は一瞬、さっきまでのことを話そうとした。けれども、とっさに口を閉じた。
信じてもらえるとは思わないし、それで心配をかけるわけにはいかない。
「いや、大したことじゃない……京谷の運転にびっくりして……」
とっさにごまかした。だが、棗にそんな態度は通用しない。
棗は刺すような疑いの目で俺をじっと睨みつける。
俺は軽く笑ってその場をやり過ごす。
その後、棗は呆れた顔でため息をつき、一言添える。
「そういえば、京谷さんが起きたら伝えてって。無理な運転して悪かったって」
「ああ、別に気にしちゃいない。そのおかげで……いや、なんでもない」
「変な隆司。あ、そうそう。もうすぐ民宿で夕食がくる頃だから、先に二人で食べましょ」
「もうそんな時間か……わかった、行こう」
車を降り、駐車場を出て向かい側の民宿へと向かった。
民宿は、古い歴史を感じさせるような二階建ての家だ。
引き戸を開け、棗と中に入る。すると、民宿の女将が出迎えてくれた。
「こんにちは。お連れの方ですね。ようこそいらっしゃいました。お部屋は二階になっております。案内いたします」
若くて綺麗な女将だ。
俺たちは、女将に案内され、二階への階段を上る。
それにしても静かだ。それに、女将の他には従業員の姿は見えない。
「そういえば、他の従業員はいないのですか?」
「今は忙しくないので、私と支配人の二人で営業しています。今、支配人は外出していますが、もし、何かありましたら、私に言ってもらえれば……」
夏目が口を挟む。
「もしかして、夫婦で営業ですか?」
「そういう事になります。ふふっ」
「大変そうですね」
「今は、あまり忙しくはありませんよ。料理は、村の料理屋が出来たものを運んでくれますので、安心してお出しできますし。もちろん、冷めないように温めるのはこちらの仕事ですけどね」
二階の部屋につく。
「こちらが部屋になっています」
部屋は20畳ほどの広さだ。障子の戸に畳の落ち着く和室だ。
外見とは裏腹に、部屋は新しい。新築の木材の香りがする。
「先に夕飯お召し上がりになりますか? それとも露天風呂でも……」
「風呂……か……」
すると、女将は少しにやついて話す。
「露天風呂は混浴になっております、お二人でどうですか? ふふっ」
「え、混浴?」
「隆司、入ろっか」
一瞬思考が止まった。仮にも昔の幼馴染だ。小さいころは、一緒に風呂に入ったこともあるが、それはそれで子供の時の話だ。今は、その頃とは違う。
と、真面目に考えてみたものの、してやったりという棗の表情を見て俺はすぐに「先に飯で」と切り返す。
棗は不貞腐れた様子で「うーっ」声を上げていた。
複雑だ。あの死の瞬間、ぼんやりと棗の顔が浮かんだ。
その時から、少しだけ棗を意識し始めた。
この気持ちがどういうものか、わからないわけではない。だが、この俺が棗のことを好きだなんて、あり得るのだろうか。
たぶん、気のせいだ。きっとそうだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺と棗は、しばらく部屋で休んでいた。
俺は体のストレッチ。棗は本を読んでいる。
普段、俺と棗は会話がない。だからと言って、仲が悪いわけではない。
二人でいるときは、お互い気を使わないだけなのである。
なので、自分のことだけに集中することができる。
その辺は似た者同士だ。
しばらくして夕食の時間になる。
俺と棗は階段を下り、食事処へと向かう。
そこは、円卓がある和室だった。
円卓には食器が並べられていた。
おそらく、出来た食事を、直接盛り付けるのだろう。
女将が、カートで食事を持ってくる。
そして、食事を二人分だけ盛り付ける。
「用意ができました。今日のメインはフカヒレの姿煮です。ごゆっくりどうぞ」
「フカヒレか。フカヒレといえば……たしか……鮫だよな……鮫……鮫!?」
「うん、鮫だよ。どうかした?」
「んんっ……なんでもない、なんでも……」
また鮫だ。今日は鮫の日なのだろうか。
だが、これはあくまで料理だ。鮫のフカヒレだ。
俺は、フカヒレの姿煮を見ながら、そう、心に言い聞かせた。
(今まで食われ続けたんだ。ここで仕返ししてやる!)
「いただきます!」
俺は、この憎い鮫を力いっぱいかみしめた。食物連鎖の頂点が誰なのかを、この鮫に思い知らせてやるために。
(このなめらかでプリっとした食感は最高だ。お前たちは、こうやって食べられるんだ!)
「ねえ、隆司。いつも以上に顔が固いよ。どうかしたの?」
「いや……別に……なんでもない、なんでも……」
少し、冷静さを失っていた自分に気付く。怒りに任せて食べていたのでは、せっかくの料理も味わうことができない。
俺は少し反省し、心を静めた。
しっかりとかみしめ、味わう。
スープが食感を際立たせる。臭みも少ない。いいフカヒレだ。この島で取れたものなのだろうか。
「うまい。まさか……こんなにフカヒレがうまいなんて……」
今までに味わったことのないうまさだ。
こんな孤島の民宿で、こんな絶品のフカヒレが食べられるなんて、夢にも思わなかった。
「うん、こんなのはじめて」
棗もフカヒレを味わっている。どうやら気に入ったようだ。
おいしいフカヒレを食べたら、途端に眠くなった。
「あれ、さっき寝たのに……また眠くなってきた」
「きっとお腹いっぱいになったせいだよ。私も眠い」
俺と棗は二人で大あくびをする。
「ちょっと横になる」
「私も~」
眠気に負け、ちょっとだけ仮眠を取ることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目が覚めると、部屋は薄暗かった。
背中にあった畳の感触は、固く冷たいものに置き換えられていた。まるで、金属のプレートのような感触だ。
異変に気づいた俺は、起きようとした。だが、体が動かない。
(まさか……金縛り……)
さらに、尻の穴の感触も変だ。力が入らない。
目を凝らして薄暗い部屋をよく見る。
すると、機械のようなものがいろいろ置いてあるのに気づいた。
(さっきの部屋じゃない。どういうことだ!?)
さらに、クレーンのようなもので2メートルぐらいの鮫が吊るされている。
(鮫人間……!? いや……あれは鮫だ……ただの……鮫だ……)
しばらくして、声が聞こえてきた。
声は、低い男の声だった。
「やっぱり、オスの鮫には男がちょうどいいのか」
──ブルン……ドッドッドッドッ──
エンジンのかかる音がした。男は何かを持っている。
そのシルエットは、まさしくチェーンソーそのものだった。
男が近づくにつれ、血生臭い悪臭が漂ってくる。
(何だこの臭い……鮫人間……なのか!?)
男は、チェーンソーをうならせながら、動けない俺に近づいてくる。
よく見ると、体は裸で緑色をしていた。
(違う……鮫人間じゃない……じゃあ、こいつはいったい)
「やっぱり、女より、男の方がいいな~」
そう言いながら、チェーンソーを振り上げた。
(何を言ってるんだ……や、やめろ!)
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