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本編
第十一話 岩風呂
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小鳥のさえずるようなやさしい声が聞こえる。
「……きて……隆司くん……起きて……」
棗の声がした。その声で、俺は、ハッと目が覚めた。
死ぬ寸前の光景がまだ目に焼き付いている。
工場、チェーンソー、血生臭い臭い、緑の体の男。
俺は、新しい恐怖に震えていた。
「ねえ、隆司くん。大丈夫?」
棗は心配そうな声でつぶやく。
俺はとっさに声を返す。
「ああ、生きてる」
俺は京谷の車の中にいる。側にいる棗、見覚えのある駐車場……どうやら、また時間が巻き戻ったようだ。
「よかった……気がついた。何か胸騒ぎがしたの。死ぬような目にでもあった?」
「あ…………きょ……京谷の運転が凄かったからな……」
「そっか。京谷さん、謝ってたけど、そんなにひどい運転だったのなら、私から言っておくね」
「ああ……悪い……」
「あ、そうそう。みんなは今廃村に行ってるみたい。私は京谷が起きるまでおここで留守番だったのね。たぶん、もうすぐ夕食ができるから、民宿に戻った方がいいかな」
「ああ……そうだな」
俺は車を降り、棗と二人で民宿へと歩き始めた。
歩きながら、死んだ原因を考える。
そういえば、俺は民宿でフカヒレの姿煮を食べた。
その後、眠くなり、気がついたらあの工場で動けなくなっていた。
となると、あの民宿は何かやばい気がする。
それともう一つ。腕輪の鱗だ。
俺は左腕を確認する。今回の死で黒くなった鱗は10個。
そういえば、この鱗、全部でいくつあるのかまだ数えていない。目測だと黒くなった部分も含めて80個前後。だとすれば、あと70回も死ねるということなのだろうか。
「ねえ、この腕輪……何?」
棗は、腕輪を見て尋ね、疑いの目を向ける。
知らない少女から貰ったとはとても言いにくい。なので、とっさにごまかす。
「あ、ああ……これは……お土産屋さんで買ったんだ。ほら、人魚の鱗みたいだろ。この島、人魚伝説があるから、記念に……な」
「ふう~ん」
さらに疑念の目で睨みつける棗……さすがに幼馴染の棗の前では、嘘は隠せない。
「ああ、わかった。誰にも言うなよ……」
信じてもらえるとは思わないが、一応能力の事を含め、本当の事を話してみることにした。
「実はこれ……」
……と、話そうとしたその時だ。
誰かが通路の角から飛び出し、俺に向かっていきなりにタックルを仕掛けてきた。
俺はそのタックルを受け、地面へと転ぶ。
タックルを仕掛けてきたのは、セーラー服を着た女子中学生……そう……鱗のついた腕輪をくれた例の少女だ。
少女は、倒れたまま俺の体にがっちりとしがみついている。
しばらくすると少女は、厳しい顔で俺を睨み、耳元でそっと囁く。
「持ち主以外の普通の人間が璃星の腕輪の本当の効果を知ると一緒に戻れなくなる」
そう言うと、今度は表情を緩め、普通の声を出した。
「ごめんなさい。怪我、ないですか……」
そう言って、少女は立ち上がり、「ごめんなさい、急いでいます」と、そう言ってすぐにその場を立ち去った。
「ちょ……ちょっと……まってくれ!」
大声を出したが、声は少女には届かなかった。
そういえば、あの少女は前回、遭遇しなかったはずだ。
なぜ、今回に限って現れたのだろうか。
それと、気になるのはさっき囁いた言葉だ。
どうやらこの腕輪は璃星の腕輪というらしい。
そして、少女の言葉から推測するに、伝えたかったことは、腕輪の効果の縛りのことだろう。
とすれば、もしこの腕輪の効果を京谷に話していたら、京谷は死んだままだったということなのだろうか。
それでも、一度だけ先に起きたことを話している。それで、何の問題もなかったということは、あくまで腕輪の効果のことを話した場合だけの可能性が高い。
だが、京谷がそれを信じていないので、セーフだった場合もありうる。
あくまで可能性なので確証はない。腕輪の力のことには触れない方がよさそうだ。
「危ないね。気をつけないとね。それで……その腕輪……」
まだ、棗は聞く気のようだ。
だが、おそらく腕輪の秘密を棗に話してはいけない気がした。
「ごめん……詳しいことは話せない。今は、魔よけの道具だとしか言えない」
(本当の効果を話したわけではないので、セーフだといいのだけど……)
「……そっか……真顔で言われると……魔よけ……ね。わかった。そのことにはもう触れないわ」
棗は不思議そうに腕輪を見る。何か感じるものがあるのだろうか。
どうあれ、棗の腕輪への興味がそれたことに俺は安堵した。
それよりも、俺たちの泊まる民宿だ。
眠った原因は今のところ、あのフカヒレの姿煮以外、考えられない。
だが、これといった証拠はない。もしかすると、別な要因かもしれない。
そして、あの緑色の体をしたチェーンソーの男。奴は鮫人間と何か関係があるのだろうか。
普通なら、逃げ出したいぐらいだが、何度も死んだせいで、いい加減死ぬのが怖くなくなってきた。それでも、死ぬのは嫌だが……。
いずれにせよ、今の俺は一番危険な精神状態だ。
腕輪の力のおかげで怖いもの見たさが増してきている。
それでも、腕輪を利用して色々な選択肢を試してみる価値はある。
断じてこれは、能力の悪用ではない……はずだ。
民宿の前まで来た。棗が玄関の引き戸を開ける。
中に入ると、民宿の女将が出迎えてくれた。
「こんにちは。お連れの方ですね。ようこそいらっしゃいました。お部屋は二階になっております。案内いたします」
俺たちは、女将に案内され、二階への階段を上る。
「そういえば、今日の夕食はなんですか」
俺はさりげなく聞いた。
「今日は、新鮮なフカヒレの姿煮の定食です」
「フカヒレ……ですか……俺、フカヒレ苦手なんですよね……」
「それはきっと、不味いフカヒレばかり食べたからですよ。うちのフカヒレを食べたら、きっと考えが変わります」
「でも、やっぱり遠慮したいです」
「そうですか……では、今回は特別に何か別ものを用意しますね。(チッ)お時間がかかりますので、先に風呂でもいかがでしょうか」
「ええ、そうします」
一瞬、女将の顔が引きつった気がした。この女将、やはり怪しい。だが、もし女将が俺たちを殺す目的であれば、俺たちはとっくに殺されている。
それがないということは…………何か目的がある。もしくは、俺たちを殺す力がない。の、どちらかだ。
女将は、にやけ顔で話す。
「露天風呂は混浴になっております、お二人でどうですか? ふふっ」
「俺が先に入ります」
「え~! 一緒じゃないのー?」
棗は不貞腐れた様子で文句を言う。
「子供じゃないんだぜ」
「減るもんじゃないのに~」
まだ、何があるかわからない。
俺が先に確認してからでも、遅くはないだろう。
二階の部屋についた俺は、すぐに浴衣に着替え、露天風呂へと出向いた。
脱衣所で服を脱ぎ、戸を開けて大量の湯気の中を進む。するとその先には、小さくて綺麗な岩風呂があった。
(おっと、ここでいきなり風呂を頂いてはマナー違反だな)
俺は流し場の椅子に座り、体を洗い始めた。
久しぶりの温泉だ。本当は棗に先に入ってもらいたがったが、今はそういう状況じゃない。この先、どんな危険があるかわからない。
しばらくして、後ろから、ヒタヒタと、誰かが近づく音がした。
嫌な予感がする。
俺は、恐る恐る後ろを振り向いた。
するとそこには…………
「へへへ、来ちゃった」
…………白い湯気に包まれた一糸まとわぬ姿の棗がそこにいた。
「背中流してあげよっか」
棗は、癒されるような優しい声をかけてくる。
「いいよ、しなくても」
「遠慮しなくていいから、こんな時ぐらい、背中流させてよ」
「しょ……しょうがねえなぁ……」
大胆すぎる。
やはり、こういう場所へ来ると、女は大胆になるものなのだろうか。
ということは、棗は今、覚悟を決めてここにいる。
ならば、俺もそれなりに覚悟を決めなければならない。
棗は、ゆっくりと俺の背中を流している。
大人びたその優しい動きと、やさしい香水の匂いは俺の心を落ち着かせた。
「大きな背中。よく見ると、こんなに大きいんだね」
「ま……まあな……」
「前の方も……する?」
「どうなっても知らないぞ」
「じゃあまず、腕からね……あれ、腕輪……子供みたいな腕輪が好きなの?」
「そういうわけじゃ……ないんだが……」
その時、ふと何かがかみ合っていないことに気付いた。
さっき棗は、腕輪のことには触れないと言ったはずだ。
それに、香水の匂いだ。さっきまで一緒にいて、こんないい匂いはしなかったはずだ。
嫌な予感がする。俺はとっさに後ろを振り向いた。
するとそこには…………
「ああ、もうちょっと前を向いていてほしかったのに……でも、ま……いいかぁ……」
…………緑色の液状に崩れている棗の姿があった。
「棗、おい……どうしたんだ……あれ……」
体が思うように動かなかった。
「効いてる効いてる」
緑の棗はそう言って、動けなくなった俺の体をゆっくりと引きずり、岩風呂へと放り込んだ。
俺は、必死に動けない体を強引に動かし、水面に顔を出す。
「な……なにを……」
緑の棗は、岩風呂に入ってくる。
「やっぱり、お湯だとよく溶けるわぁ。じゃあ、一つになりましょう……」
緑の体は風呂の中へ溶け出し、完全な液体となる。その液体は、俺の体を覆った。
そして…………口の穴、鼻の穴、目の穴、耳の穴、etc…………体のありとあらゆる穴に入り込んでいく。
(や……やめろぉ……)
「……きて……隆司くん……起きて……」
棗の声がした。その声で、俺は、ハッと目が覚めた。
死ぬ寸前の光景がまだ目に焼き付いている。
工場、チェーンソー、血生臭い臭い、緑の体の男。
俺は、新しい恐怖に震えていた。
「ねえ、隆司くん。大丈夫?」
棗は心配そうな声でつぶやく。
俺はとっさに声を返す。
「ああ、生きてる」
俺は京谷の車の中にいる。側にいる棗、見覚えのある駐車場……どうやら、また時間が巻き戻ったようだ。
「よかった……気がついた。何か胸騒ぎがしたの。死ぬような目にでもあった?」
「あ…………きょ……京谷の運転が凄かったからな……」
「そっか。京谷さん、謝ってたけど、そんなにひどい運転だったのなら、私から言っておくね」
「ああ……悪い……」
「あ、そうそう。みんなは今廃村に行ってるみたい。私は京谷が起きるまでおここで留守番だったのね。たぶん、もうすぐ夕食ができるから、民宿に戻った方がいいかな」
「ああ……そうだな」
俺は車を降り、棗と二人で民宿へと歩き始めた。
歩きながら、死んだ原因を考える。
そういえば、俺は民宿でフカヒレの姿煮を食べた。
その後、眠くなり、気がついたらあの工場で動けなくなっていた。
となると、あの民宿は何かやばい気がする。
それともう一つ。腕輪の鱗だ。
俺は左腕を確認する。今回の死で黒くなった鱗は10個。
そういえば、この鱗、全部でいくつあるのかまだ数えていない。目測だと黒くなった部分も含めて80個前後。だとすれば、あと70回も死ねるということなのだろうか。
「ねえ、この腕輪……何?」
棗は、腕輪を見て尋ね、疑いの目を向ける。
知らない少女から貰ったとはとても言いにくい。なので、とっさにごまかす。
「あ、ああ……これは……お土産屋さんで買ったんだ。ほら、人魚の鱗みたいだろ。この島、人魚伝説があるから、記念に……な」
「ふう~ん」
さらに疑念の目で睨みつける棗……さすがに幼馴染の棗の前では、嘘は隠せない。
「ああ、わかった。誰にも言うなよ……」
信じてもらえるとは思わないが、一応能力の事を含め、本当の事を話してみることにした。
「実はこれ……」
……と、話そうとしたその時だ。
誰かが通路の角から飛び出し、俺に向かっていきなりにタックルを仕掛けてきた。
俺はそのタックルを受け、地面へと転ぶ。
タックルを仕掛けてきたのは、セーラー服を着た女子中学生……そう……鱗のついた腕輪をくれた例の少女だ。
少女は、倒れたまま俺の体にがっちりとしがみついている。
しばらくすると少女は、厳しい顔で俺を睨み、耳元でそっと囁く。
「持ち主以外の普通の人間が璃星の腕輪の本当の効果を知ると一緒に戻れなくなる」
そう言うと、今度は表情を緩め、普通の声を出した。
「ごめんなさい。怪我、ないですか……」
そう言って、少女は立ち上がり、「ごめんなさい、急いでいます」と、そう言ってすぐにその場を立ち去った。
「ちょ……ちょっと……まってくれ!」
大声を出したが、声は少女には届かなかった。
そういえば、あの少女は前回、遭遇しなかったはずだ。
なぜ、今回に限って現れたのだろうか。
それと、気になるのはさっき囁いた言葉だ。
どうやらこの腕輪は璃星の腕輪というらしい。
そして、少女の言葉から推測するに、伝えたかったことは、腕輪の効果の縛りのことだろう。
とすれば、もしこの腕輪の効果を京谷に話していたら、京谷は死んだままだったということなのだろうか。
それでも、一度だけ先に起きたことを話している。それで、何の問題もなかったということは、あくまで腕輪の効果のことを話した場合だけの可能性が高い。
だが、京谷がそれを信じていないので、セーフだった場合もありうる。
あくまで可能性なので確証はない。腕輪の力のことには触れない方がよさそうだ。
「危ないね。気をつけないとね。それで……その腕輪……」
まだ、棗は聞く気のようだ。
だが、おそらく腕輪の秘密を棗に話してはいけない気がした。
「ごめん……詳しいことは話せない。今は、魔よけの道具だとしか言えない」
(本当の効果を話したわけではないので、セーフだといいのだけど……)
「……そっか……真顔で言われると……魔よけ……ね。わかった。そのことにはもう触れないわ」
棗は不思議そうに腕輪を見る。何か感じるものがあるのだろうか。
どうあれ、棗の腕輪への興味がそれたことに俺は安堵した。
それよりも、俺たちの泊まる民宿だ。
眠った原因は今のところ、あのフカヒレの姿煮以外、考えられない。
だが、これといった証拠はない。もしかすると、別な要因かもしれない。
そして、あの緑色の体をしたチェーンソーの男。奴は鮫人間と何か関係があるのだろうか。
普通なら、逃げ出したいぐらいだが、何度も死んだせいで、いい加減死ぬのが怖くなくなってきた。それでも、死ぬのは嫌だが……。
いずれにせよ、今の俺は一番危険な精神状態だ。
腕輪の力のおかげで怖いもの見たさが増してきている。
それでも、腕輪を利用して色々な選択肢を試してみる価値はある。
断じてこれは、能力の悪用ではない……はずだ。
民宿の前まで来た。棗が玄関の引き戸を開ける。
中に入ると、民宿の女将が出迎えてくれた。
「こんにちは。お連れの方ですね。ようこそいらっしゃいました。お部屋は二階になっております。案内いたします」
俺たちは、女将に案内され、二階への階段を上る。
「そういえば、今日の夕食はなんですか」
俺はさりげなく聞いた。
「今日は、新鮮なフカヒレの姿煮の定食です」
「フカヒレ……ですか……俺、フカヒレ苦手なんですよね……」
「それはきっと、不味いフカヒレばかり食べたからですよ。うちのフカヒレを食べたら、きっと考えが変わります」
「でも、やっぱり遠慮したいです」
「そうですか……では、今回は特別に何か別ものを用意しますね。(チッ)お時間がかかりますので、先に風呂でもいかがでしょうか」
「ええ、そうします」
一瞬、女将の顔が引きつった気がした。この女将、やはり怪しい。だが、もし女将が俺たちを殺す目的であれば、俺たちはとっくに殺されている。
それがないということは…………何か目的がある。もしくは、俺たちを殺す力がない。の、どちらかだ。
女将は、にやけ顔で話す。
「露天風呂は混浴になっております、お二人でどうですか? ふふっ」
「俺が先に入ります」
「え~! 一緒じゃないのー?」
棗は不貞腐れた様子で文句を言う。
「子供じゃないんだぜ」
「減るもんじゃないのに~」
まだ、何があるかわからない。
俺が先に確認してからでも、遅くはないだろう。
二階の部屋についた俺は、すぐに浴衣に着替え、露天風呂へと出向いた。
脱衣所で服を脱ぎ、戸を開けて大量の湯気の中を進む。するとその先には、小さくて綺麗な岩風呂があった。
(おっと、ここでいきなり風呂を頂いてはマナー違反だな)
俺は流し場の椅子に座り、体を洗い始めた。
久しぶりの温泉だ。本当は棗に先に入ってもらいたがったが、今はそういう状況じゃない。この先、どんな危険があるかわからない。
しばらくして、後ろから、ヒタヒタと、誰かが近づく音がした。
嫌な予感がする。
俺は、恐る恐る後ろを振り向いた。
するとそこには…………
「へへへ、来ちゃった」
…………白い湯気に包まれた一糸まとわぬ姿の棗がそこにいた。
「背中流してあげよっか」
棗は、癒されるような優しい声をかけてくる。
「いいよ、しなくても」
「遠慮しなくていいから、こんな時ぐらい、背中流させてよ」
「しょ……しょうがねえなぁ……」
大胆すぎる。
やはり、こういう場所へ来ると、女は大胆になるものなのだろうか。
ということは、棗は今、覚悟を決めてここにいる。
ならば、俺もそれなりに覚悟を決めなければならない。
棗は、ゆっくりと俺の背中を流している。
大人びたその優しい動きと、やさしい香水の匂いは俺の心を落ち着かせた。
「大きな背中。よく見ると、こんなに大きいんだね」
「ま……まあな……」
「前の方も……する?」
「どうなっても知らないぞ」
「じゃあまず、腕からね……あれ、腕輪……子供みたいな腕輪が好きなの?」
「そういうわけじゃ……ないんだが……」
その時、ふと何かがかみ合っていないことに気付いた。
さっき棗は、腕輪のことには触れないと言ったはずだ。
それに、香水の匂いだ。さっきまで一緒にいて、こんないい匂いはしなかったはずだ。
嫌な予感がする。俺はとっさに後ろを振り向いた。
するとそこには…………
「ああ、もうちょっと前を向いていてほしかったのに……でも、ま……いいかぁ……」
…………緑色の液状に崩れている棗の姿があった。
「棗、おい……どうしたんだ……あれ……」
体が思うように動かなかった。
「効いてる効いてる」
緑の棗はそう言って、動けなくなった俺の体をゆっくりと引きずり、岩風呂へと放り込んだ。
俺は、必死に動けない体を強引に動かし、水面に顔を出す。
「な……なにを……」
緑の棗は、岩風呂に入ってくる。
「やっぱり、お湯だとよく溶けるわぁ。じゃあ、一つになりましょう……」
緑の体は風呂の中へ溶け出し、完全な液体となる。その液体は、俺の体を覆った。
そして…………口の穴、鼻の穴、目の穴、耳の穴、etc…………体のありとあらゆる穴に入り込んでいく。
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