VR花子さんの怪

マイきぃ

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第一部 VR花子さんの怪

第四話 メタバースバーチャルアイドルの話

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 ヤーコンの話が始まった。

「ええとですねー、私が経験したVR花子さんの事象を言います。
 一か月前のVRライブイベントの時でした。バーチャルアイドル10人との合同イベントがあった日です。来てくれた方ありがとうございます!
 それでですね、ライブ終了後に恒例のアバター撮影会やったんですよ。来てくれた人たちといっしょに会場のいろんな場所でスクショ撮るんです。その時の会場は学校だったのでとても広かったです。
 その時一人の子に女子トイレでいっしょにスクショ取りたいと頼まれたんですね。私のアバター衣装買って着てきてくれた子です。ありがとうございます!
 その時はVR花子の霊が映るかも~とか冗談で言っていたんですよ。それで一応撮ったんですけど……これがその時のスクショです!」

 ヤーコンとそのファンが同じ衣装でトイレで怪しいポーズを決めているスクショが視界に映る。悩殺ポーズとまではいかないが微妙にセクシーなスクリーンショットだ。

「……で、ですね、実はこれはそのファンがSNSに投稿したスクショなんです。本命は私が撮ったスクショです!」

 視界の映像は別なスクリーンショットに切り替わる。さっきと同じスクリーンショット……なのだけど、足元をよく見ると……。

「見てもらえましたか? 違い、わかりますよね。……そう、足元です……左の足元! 影になってるところに人の顔があるんです」

 人の顔の影……それは自分が見た女性の顔と一致した。少しだけ背筋が凍り付くような感覚を覚える。前に噛まれた首筋に痛みが走った気がした。今すぐにVRゴーグルを外したい……でもここは我慢。
 ざわつく会場内。他のゲストの何人かは動揺している。おそらく同じものを見ているのかもしれない。

「他のアバターがトイレに入ってきた気配はもちろんなかったです。見てなかっただけかもですけど……。
 あとですね、イベントが終わってVRゴーグルを外した直後、左足の小指に激痛が走ったんですよ。なんだろうと思ってよく見たら爪が縦に割れてて……すごく痛かったです。次の日病院に行きました。でも、ぶつけた記憶はないんですよ……もしかしてこれってやっぱり……VR花子さんの祟り?
 私の話は以上になります。ありがとうございました~」

 ヤーコンの話が終わり住職が挨拶をする。

「ヤーコンさん、ありがとうございましたぁ! それでは今の話についての視聴者コメントを見てみたいと思います」

──動画のコメントボード──

……
……
今日もかわいいよ!
次の動画いつ?
VR花子さんは俺がお祓いしてやるからね!
ヤーコンの足が早く治りますように!
……
……

 視聴者のコメントは……そのほとんどがヤーコンを応援するメッセージなので、ほとんど当てにならない。それにしても、さすがバーチャルアイドルだ。ファンの数だけこのイベントの動画の再生回数は伸びるだろう。
 ……と、それはいいとして、ヤーコンの話だけを軽く検証してみる。

 まず、トイレで撮ったスクリーンショットについてだ。
 ファンの撮ったスクリーンショトにはVR花子は写っていない。けれどもヤーコンのスクリーンショットにだけは写っている。
 可能性を上げるなら、スクリーンショットを撮るタイミングは二人とも別々で、たまたまヤーコンのスクリーンショットの時にVR花子さんに似せた誰かがトイレに侵入、そして手の込んだいたずらをした──この可能性が考えられる。もしそうならVR花子さんに似せたアバターをわざわざ作ってまでいたずらする根性に敬意を払おう。

 次に、足の爪の怪我。VR花子さんが写っていた場所に怪我の発生。これは自分にも当てはまる。(実際には噛まれたのだけど……)
 これから判断するに、VR花子さんとの接触は怪我を負う可能性があるということが考えられる。

 あと、これはどうしたものかと思うのだけど、住職とヤーコンの話ではどちらもトイレが関係してくる。自分の事象とは全く別のパターンだ。
 基本的にVR花子さんは、花子というだけあってトイレという印象が強い。なのでトイレに関連した話がここに集まっているともいえる。自分の事象以外にトイレが関係していない話があることを願いたい。そうなじゃなかったら、一人だけ違う話をすることになってしまうからね……

 コメントが流れ終え、住職とヤーコンが会話する。

「視聴者コメントもいただきましたぁ! すごい人気ですねぇヤーコンさん。その後、足の爪の具合はどうですか?」
「そうですね。爪は固定してあるので無理なことはできませんけど……それでもメタバースなら大丈夫! 方法はいくらでもありますからね!」
「さすがはバーチャルアイドルです。素晴らしい! それではろうそくの火をお願いしまぁす」

 ヤーコンは住職にそういわれるとろうそくを吹く動作をする。ろうそくの火がまた一つ消えた。
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