VR花子さんの怪

マイきぃ

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第一部 VR花子さんの怪

第三話 メタバース寺の住職の話

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──住職(シルキー)の話──

「最初は半信半疑でしたね。
 だって、VR花子さんですよ? ホラーゲーみたいなものですよね。
 もちろん花子さんといえばトイレ。なので片っ端からトイレのあるワールドいってみましたよ。
 VRにトイレ? と思いますけど実際あるんですよね。VRだけどトイレ。
 やっぱり花子さんといえば学校のトイレ。なので、木造校舎でいかにも出そうな学校のワールドに行ってきました。その学校のスクリーンショットがこれです」

 眼前に画像が張られる。暗がりに浮かぶ木造校舎。ところどころ木が腐り落ちていて人が寄り付かなそうな、いかにも何か出そうな学校のスクリーンショットだ。

「増える階段。誰もいないのに音がするピアノ。理科室の動く人体模型。目が動く美術室のモナリザ。三階建て校舎なのに四階がある。走る二宮金次郎像。そし て……トイレの花子さん!

 もちろん、出るといわれるトイレに行きました。薄暗いトイレの中待つこと5分……『紙、ありますか』と、左から三番目の個室からボイスの反応があったんですよ。もちろん、これはこのワールドの仕掛けです。掃除用具ロッカーの中にあるトイレットペーパーを取りまして、個室の上から投げ込むんですよ。すると『紙が足りない』と、また声が聞こえてきます。

 その後も『紙が足りない』と言われて三度目のトイレットペーパーを投げ込みます。そのトイレットペーパーは最後のストックです。『どんだけ紙つかうんじゃい!』 と言いたくなりますが、問題はこの後です。また『紙が足りない』と声が聞こえてきます。

 もちろん、紙はありません。なので仕方なくこれを放置していると……扉を激しく叩く音と地震のような視界の揺れが襲ってきました。
 さすがにこれはたまったものじゃないのでその場からの脱出を試みますが、トイレの入り口の戸がなぜか閉まって出られません。

 何が起きているんだ! そう思った瞬間、スプリンクラーのような水しぶきのエフェクトとトイレからの水の逆流。見る見るうちにトイレの中は水の中。その後水を流す音とともに回転しながら落下。気が付くと……セーフティーガードが勝手に起動して視界がリアル画面になっていたのです。

 VRのアプリは強制終了されていたようなので、一度VRゴーグルを置いてトイレに行きました。
 するとですね……家のトイレのドアの下の隙間から水が出ていたんですよ!
 びっくりした私は急いでドアを開けました。すると……

 トイレを流す水が便器からあふれていたんです! 逆流してたんですよ……トイレの水が!

 業者にメンテナンスを依頼しましたが、特に異常は無く原因は不明、トイレを詰まらせないように気を付けてくださいとだけ言われましたね。
 その時思いました。これは花子さんの祟りじゃないか……と。VR花子さんでもただの花子さんでも、安易にかかわってはいけないんですよ。
 これが私の経験した事象です。これが偶然なのか必然なのかはわかりませんが……どうぞ皆さん、お気をつけください。
 ……と私からは以上になりまぁす。では、視聴者からのコメントどうぞ!」

 視界の左側にコメントボードと呼ばれる掲示板が出現した。このイベントは動画サイトで配信されている。動画サイトを見ている人は自由にコメントをすることが可能だ。そのコメントをメタバースJP側で読み込んでくれるのがこのコメントボードだ。
 コメントボードを確認する。

──動画のコメントボード──

……
これって演出ちがうよね?
最後はウンチ棒を持った目の赤く光る花子さんが大量に現れて『紙! 紙!』と騒ぐところだよ。
説明感謝!
これは祟りです。
花子さんの祟りでトイレが詰まったんだよ。
このタイミングで?
VR花子さんはVRと現実を行き来できるんだよ。
このワールド仕様変わった?
レアな演出あるって聞いたことあるけど、これのことかも。
始めて見た。
強制ログアウトされるんだ。
今度試してみる。
……
……
……

 住職の話とコメントを合わせて軽く検証してみる。

 学校の七不思議系ワールドは結構ある。そのほとんどは現実の話をもとに作ってあるものなのだけど、同じものが多すぎる。なので最近では怪奇現象を盛ってるところが多い。住職が足を運んだワールドもその一つだ。

 そして、このワールドでのトイレでの事象。コメントから見るに意図していない演出の可能性もある。
 レアな演出の可能性もあるようだけど、そのレア演出の出現と同時に水の演出が自宅トイレを水浸しにすることがあるのだろうか。低確率な事象であることは間違いない。
 もしこれが偶然でないとすれば、VR花子さんは住職の自宅トイレに異常な効果を付与、もしくは異常を察知したことになる。
 住職宅の家のシステムも気になるが……それは一旦保留でいいだろう。


「……とまあ、こんな感じで行きたいと思いまぁす。そうです、VR花子さんはVRと現実を行き来する能力を持っている。これは一般的な要素です。新たな発見がありますよう、期待しましょう。それでは~っ」

 そう言って息を吹きかける仕草と同時に中央のろうそくに触れて火を消す住職。辺りは少しだけ薄暗くなった。これからゲストの百物語が始まる。
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