VR花子さんの怪

マイきぃ

文字の大きさ
11 / 16
第一部 VR花子さんの怪

第十話 ウニアバターの話

しおりを挟む
 アラフォースさんの話が始まった。

「どうも、アラフォースです。先に言っておきますが、私が使っているVR機器はメタバースト2です。純正の拡張パッケージでメタバースト3X相当に拡張してあるタイプですね。
 では、私が経験した事象をお話します。
 その日はフレンドたちとFPSをしていました。銃撃戦で相手を倒していくシューティングです。教会にある金庫を守る側と攻める側にチームがわかれて戦います。
 私はその日の最終戦、チームを外れてゴーストとして参戦しました。ゴーストはプレイとは関係ない観戦者的なもので、研究やプレイを録画するときに使えるモードです。毎回一人チームを外れて録画するのですが……今回は私が最終戦だったわけです。

 開始とともに動画の撮影を始めました。その時、目の前に煙が出現しました。いきなりスモークグレネードでも焚かれたかと思い消えるのを待ちました。すると煙は徐々に人型になって、黒髪黒目の少女に変身したんです。
 もちろん知らないアバターです。しかも、今いるワールドは鍵付きでパスワードを知らなければ入れません。なので、始めはハッキングされたのかと思いました。
 けれども、しばらく前にVR花子さんの話を聞かされていた私は、その話と一致した見た目の少女をVR花子さんと認識しました。

 このあと、現実に何かが起こりそうな予感がして警戒しましたが、何も起きませんでした。目の前にいる黒髪黒目の少女は困り顔でこちらを見て、その後すぐに消えました。いったいなんだったんだ? ……と、気分を切り替えて撮影を始めます。その時でした。
 プレイヤーたちのアバターがおかしくなったのです! 全てのアタバーの表面がウニのように尖りうごめき、まるでエイリアンたちが戦っている……そんな光景を目の当たりにしました。

 VR花子さんの出現に続いてこの異常な状況……私のVR機器はウイルスにでも感染したのでしょうか……。
 一応戦闘が終わるまで撮影をしました。これがその時の動画です」

 動画が視界に映し出される。映像のスタート位置は十字架の置かれた教会の懺悔室。しばらくそこに待機した後、裏へまわり、梯子を上って教会の鐘の屋根上へと移動。そこから見えるプレイヤー同士の戦いは、どう見てもウニが何かを飛ばして戦っているようにしか見えない。ちょっと笑える光景だ。
 それはいいとして、話だと撮影開始直後にVR花子さんとの遭遇があるはずなのだがその映像はない。これはどういうことなのだろうか。

「見てわかる通り、ウニが戦っているように見えます。それもありますが、撮影開始直後に現れた筈のVR花子さんが録画されていないんです。最初の懺悔室にいた筈なんですが……最初から映っていなかったと言われればそれまでなのですけど、確かに映っていたんです……。
 そのあと仲間に『ウイルスにでも感染したんじゃないか』と心配され、一応チェックしました。結果は検出無しです。いったいあれは何だったのでしょうか……ただのバグだったらいいのですけど……私の話は以上です」


 アラフォースの話が終わった。住職が挨拶をする。

「アラフォースさん、ありがとうございましたぁ! それでは今の話についての視聴者コメントを見てみたいと思います」


──動画のコメントボード──

……
……
懺悔が足りない。
これ、ウニバグだよね。
修正されたんじゃないの?
更新で直る。
VR花子さんはバグじゃないよ。
VR花子さんの呪いです。
……
……


 話を検証してみることにする。
 まず、メタバースト2拡張パッケージの説明。これはメタバースト3Xの生産が決まっていない頃に出回っていたものだ。あまりにも拡張パッケージの売れ行きが良かったため、全ての機能を搭載したメタバースト3が生産されたわけだ。
 コメントボードにあるウニバグだが、これは拡張仕様のメタバースト2拡張パッケージ初期のシステムバグだ。バグが発生したシステムバージョンは2.9.1。内容は特定のワールド内に流動性のあるジオメトリをもつアバターが一人でもいると、ウニバグが起こるらしい。詳しいことはわからないが、これはたしかシステムバージョンを更新するだけで直るはずだ。メタバースト3Xの場合、この手の更新は自動でしてくれるのだけど拡張パッケージの場合は手動で更新しなければならない。その為、忘れてしまう人も多いので注意が必要だ。
 けれど、ここでVR花子さんを見たという証言もある。まあ、こっちが本命だけど……。
 出現理由は青い薔薇の時同様、このバグが起こることを伝えるために出てきたのか、それとも単なる気まぐれか……残念ながら話としては中途半端なのでこれ以上のことはわからない。

 コメントボードにはトラブルシューティングのようなコメントが流れていた。アラフォースがそれに納得したころ、住職が言葉を添える。

「どうやらこれ、ウニバグらしいですね。私もこれ聞いたことありますよぉ」
「バグは更新してなかったのが原因だったのですね……じゃあ、あのVR花子さんはいったい……」
「VR花子さんについては、何事もなくてよかったですねぇ~と申し上げておきます。それではろうそくの火をお願いしまぁす」

 アラフォースは住職にそういわれるとろうそくを吹く動作をする。ろうそくの火がまた一つ消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...