VR花子さんの怪

マイきぃ

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第一部 VR花子さんの怪

第九話 危機を救ってくれた話

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 青い薔薇さんの話が始まった。

「まず初めに、私の使用しているVR機器はメタバースト3Xではありません。AWVR(アナザーワールドVR)だということをお伝えしておきます。つまり、VR花子さんの出現条件は、使用するVR機器を選ばないということを言いたいわけなのですよ。
 ……では始めます。先ほどエトラさんが言っていたワールド、幻影の花畑にいた時のことですね。その時、視界ハックが起きました。ただ、見えたのは魔界ではなく、知らない台所部屋でした。

 台所には黒髪で制服姿の少女がいました。肌はとても白く、美しい雰囲気がありました。その時はまだ、背中しか見ていないですけどね。VR花子さんの噂を聞いていたので、その可能性を疑いましたが恐怖は感じませんでした。
 台所で鍋物の料理をしているようです。何を作っていたのかはわかりません。ただ、ずっと電子音のような音が聞こえてた気がします。その電子音は、どこかで聞いたことのある電子音なのですが、その時はなぜか思い出せませんでした。

 しばらくして、少女が使っているガスコンロから煙が出ているのが見えました。次の瞬間、当然のように爆発します。まるで料理下手な少女を演じているかのようにです。
 その時、私は思い出しました……電子音の正体を……。その電子音はガス漏れの警報音だったのですよ。

 私はVRゴーグルを外し、急いで部屋を出て台所へと向かいました。かすかに臭う異臭、これはと思いすぐに元栓を閉めたのです。今思えば、元栓は使った後にしっかり閉めるのが普通なんですけどね。今のガスコンロは優秀だからと、過信していたのですよ。まあ、優秀といってもIoT家電ではないですけどね。
 原因を調べました。ガスコンロのホースの曲がり角が黒ずみ、干からびたようにボロボロになっていたんです。そこからガス漏れる音がしていました。警報とガス栓が連動していないので、もしそのまま放置していればガスが充満して何かの拍子に引火していたかもしれません。
 VR花子さんの台所爆発映像がなければ、私はそこで眠ってしまい、危うく大惨事を招いたかもしれないのですよ。これがVR花子さんの所業ならば、感謝しなければなりません。本当に助かりました。以上です」


 青い薔薇の話が終わった。住職が挨拶をする。

「青い薔薇さん、ありがとうございましたぁ! それでは今の話についての視聴者コメントを見てみたいと思います」


──動画のコメントボード──


……
……
夢っぽい。
それは幻覚だ!
電子ドラッグ。
精神に干渉されたんですね。
VR押しかけ女房。
自宅アラート花子。
……
……


 ……コメントはおいといて……検証してみることにする。

 まず、VR機器の違いだ。現状で分かっていることだが、VR花子さんはメタバースト3XとAWVRでの目撃例が多発している。時期的にはメタバースト3Xが先でその後からAWVRでも出没するようになったらしい。VR花子さんがメタバースト3Xで生まれてAWVRに感染したのではないかという話も一時期あったのだけど、まだ確証は得られていない。

 次に事象のあったワールドだ。青い薔薇が仮眠モードを使用したかどうかはわからないが、幻影の花畑で仮眠モードが使えるとなると、メタバースト3Xのセルフコンディション相当のシステムが搭載されていることになる。AWVRの仕様をチェックする必要がありそうだ。

 最後に夢の可能性を考えてみる。仮に仮眠モードで眠くなった場合、夢を見ることもあるだろう。なんらかのストレスからそんな夢を見ていても不思議ではない。偶然の出来事の可能性もある。もし、催眠誘導で夢を支配する能力が付いているのならこれはこれですごいことだ。
 あとは、これが夢じゃない場合だ。VR花子さんが台所を爆発させて危機を伝えたことがちょっと気になる。伝えるだけなら文字表示でもいい……なぜそれをしないのだろうか。それと、システム外の家の状態を把握するならIoT家電でもない限り難しい。どうやって把握したのかとても気になるところだ。

 ともかく、VR花子さんという事象は悪い時もあればいい時もある……気まぐれな存在なのかもしれない……と、そう自分は感じ取るしかなかった。


 コメントが流れ終え、住職と青い薔薇が会話する。

「いやぁ、大惨事にならなくてよかったですねぇ。それにしてもガスは本当に注意してくださいね」
「そうですねぇ~。元栓は必ず閉めるように気を付けます」
「それではろうそくの火をお願いしまぁす」

 青い薔薇は住職にそういわれるとろうそくを吹く動作をする。ろうそくの火がまた一つ消えた。
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