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第一部 VR花子さんの怪
第十四話 ろうそくの消えた後
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突然、稲妻のような光が障子戸を照らした。そこに無数の人影が映る。次の瞬間、障子戸が倒れる。すると、オチな音楽とともにVR花子さんの軍勢が……!
ゾンビのような花子さん、幽霊な花子さん、這いよる花子さん、メカメカしい花子さん、植物姿? の花子さん、その他いろいろなデザインのVR花子さんが部屋の中を走り回る。ガオーと襲ってくるVR花子さんもいれば巨大ハンマーやチェーンソーを振り回すVR花子さんもいる……もう暴れたい放題だ。人数的には軽く100人を超えている。おそらくこのイベント用に観客側が用意した手作りVR花子さんなのだろう。
まじめな座談会だと少しでも思ってしまった自分が恥ずかしい。このイベント主、住職シルキーは、実はこれがやりたかったのだと今確信した。こうなったらこの波に乗ってリアクションを決めるしかない。
自分は両腕を上げて「た、たぁすけてぇ~」と棒なセリフを叫びながら逃げ回った。自分以外のゲストも騒ぎ楽しんでいる。まあ、メタバースならしょうがない……楽しんだもの勝ちだからね。
しばらく逃げ走っていると視界がカクカクとし始め、突然フリーズした。無理もない……これだけの人数が動き回るのだからフリーズしないほうがおかしい。こうなったら一度アプリを落として再起動するしかない。
……と、アプリを落とす操作をしようとしたその時、一人だけフリーズした中で動くかわいいVR花子さんアバターを視界の中に捉えた。
画面はフリーズしているのにその少女だけは動いている。これは通常ではありえない……まさか、百物語がVR花子さんを呼び寄せてしまったのだろうか……。ただ、アバターからはいつものような不気味さは感じられない。それでも、この状況で動くアバターがいるという不自然さは間違いなくVR花子さんそのものだ。
いつもと違うVR花子さん……いったい何しにここへ……もしや、この百物語にお怒りになっているのでは……とうことではなさそうだ。VR花子さんはまっすぐこちらを見つめ、困った顔で話しかけてきた。
「あ……の……」
女性の声の音声合成。雑音交じりでよく聞き取れない。
「……の……メタ……バーストを……更新……して……」と、その言葉を発した後、VR花子さんはその場で消えてしまった。
……メタバースト3Xのシステムバージョンを更新しろということなのだろうか……。
一応メタバースト3X事自体を再起動し、公式サポートで最新バージョンかどうかを確認してみる……システムバージョンは3.03のまま更新はない。もちろん今装着しているメタバースト3Xは更新されているので最新だ。
唯一更新していないのは……スペア用にとっておいたメタバースト3Xだ。VR花子さん目撃の件以来、メタバースには接続してはいない。まさか、VR花子さんはこれのことを言っているのだろうか……。
──と、その時ふと、ファントム・アイのことを思い出した。システムバージョン3.01……彼はそれを借りたがっていた。やはり、更新されていないメタバースト3Xに何か秘密がありそうだ。だとすれば……スペアはこのまま使わず保管しておいた方がいいだろう。VR花子さんが更新を促したということは、そのバージョンに知られてはまずい何かがある可能性があるということかもしれない。それと……今すぐとは言わないが、ファントム・アイへの協力も考えておいた方がいいだろう。もちろん、情報を共有するという前提条件付きでだ。
一方イベントの方だが……動画で確認すると、やはりフリーズ画面になり、再起動をしている様子がうかがえた。まだイベントは続いているので自分も再接続し、元の部屋へと戻る。部屋では住職とゲストが壇上に並んでいた。何人かのゲストも落ちた様子……まあ、戻ってこれて幸いだ。
住職が話をする。
「アクシデントがありましたが、無事百物語が終わりました。どうでしたか? VR花子さんとはいったい何なのか! それでは思うことをメッセージボックスに書いて投票してください!」
視界にメッセージボックスが現れた。触れると文字入力モードに切り替わり、視界にキーボードが現れる。自分にとってのVR花子さんは──。
投票を終えると、住職は自分のメッセージボードを確認し、発表に移った。
「それではぁ、投票を見てみましょう! ……仕様と書かれた方……1人! まあ、仕様の可能性もありますねぇ……。次に、ウイルスと書かれた方が2人! セキュリティーはしっかりしないといけませんねぇ。そして、霊と書かれた方が3人! 心霊現象はメタバースにも波及してしまったのかぁ! 最後に! ……電子精霊! 4人がほぼ一致の見解を示しました! 電子精霊の存在……本当に存在するならば、メタバースにおいての革新的な存在となるでしょう! これにより、VR花子さんは電子精霊だった説が有力ということがわかりましたぁ! けれども、これは今日集まった私たちの見解でぇす。ひょっとすると、また、別の、何かという可能性もあるのでぇす! メタバースの数だけVR花子さんがいるのでぇす! それではこれにて終了とさせていただきます。ありがとうございました!」
お化け屋敷の音声に拍手が混じった不思議な喝采音とともに、百物語の幕は閉じられた。今回のイベントは住職シルキーの趣味が入ったようなイベントだ。本格的なイベントとは程遠いが、それでも情報についての収穫はあったのだ。イベント主には感謝したい。
──それから一か月後、メタバースト3Xのシステムバージョンが3.04に更新された。それにより、VR花子さんの出現率は低下したようだ。それでも、VR花子さんはメタバースの都市伝説……いや、メタ伝説としてこれからもずっと語り継がれるだろう。
ゾンビのような花子さん、幽霊な花子さん、這いよる花子さん、メカメカしい花子さん、植物姿? の花子さん、その他いろいろなデザインのVR花子さんが部屋の中を走り回る。ガオーと襲ってくるVR花子さんもいれば巨大ハンマーやチェーンソーを振り回すVR花子さんもいる……もう暴れたい放題だ。人数的には軽く100人を超えている。おそらくこのイベント用に観客側が用意した手作りVR花子さんなのだろう。
まじめな座談会だと少しでも思ってしまった自分が恥ずかしい。このイベント主、住職シルキーは、実はこれがやりたかったのだと今確信した。こうなったらこの波に乗ってリアクションを決めるしかない。
自分は両腕を上げて「た、たぁすけてぇ~」と棒なセリフを叫びながら逃げ回った。自分以外のゲストも騒ぎ楽しんでいる。まあ、メタバースならしょうがない……楽しんだもの勝ちだからね。
しばらく逃げ走っていると視界がカクカクとし始め、突然フリーズした。無理もない……これだけの人数が動き回るのだからフリーズしないほうがおかしい。こうなったら一度アプリを落として再起動するしかない。
……と、アプリを落とす操作をしようとしたその時、一人だけフリーズした中で動くかわいいVR花子さんアバターを視界の中に捉えた。
画面はフリーズしているのにその少女だけは動いている。これは通常ではありえない……まさか、百物語がVR花子さんを呼び寄せてしまったのだろうか……。ただ、アバターからはいつものような不気味さは感じられない。それでも、この状況で動くアバターがいるという不自然さは間違いなくVR花子さんそのものだ。
いつもと違うVR花子さん……いったい何しにここへ……もしや、この百物語にお怒りになっているのでは……とうことではなさそうだ。VR花子さんはまっすぐこちらを見つめ、困った顔で話しかけてきた。
「あ……の……」
女性の声の音声合成。雑音交じりでよく聞き取れない。
「……の……メタ……バーストを……更新……して……」と、その言葉を発した後、VR花子さんはその場で消えてしまった。
……メタバースト3Xのシステムバージョンを更新しろということなのだろうか……。
一応メタバースト3X事自体を再起動し、公式サポートで最新バージョンかどうかを確認してみる……システムバージョンは3.03のまま更新はない。もちろん今装着しているメタバースト3Xは更新されているので最新だ。
唯一更新していないのは……スペア用にとっておいたメタバースト3Xだ。VR花子さん目撃の件以来、メタバースには接続してはいない。まさか、VR花子さんはこれのことを言っているのだろうか……。
──と、その時ふと、ファントム・アイのことを思い出した。システムバージョン3.01……彼はそれを借りたがっていた。やはり、更新されていないメタバースト3Xに何か秘密がありそうだ。だとすれば……スペアはこのまま使わず保管しておいた方がいいだろう。VR花子さんが更新を促したということは、そのバージョンに知られてはまずい何かがある可能性があるということかもしれない。それと……今すぐとは言わないが、ファントム・アイへの協力も考えておいた方がいいだろう。もちろん、情報を共有するという前提条件付きでだ。
一方イベントの方だが……動画で確認すると、やはりフリーズ画面になり、再起動をしている様子がうかがえた。まだイベントは続いているので自分も再接続し、元の部屋へと戻る。部屋では住職とゲストが壇上に並んでいた。何人かのゲストも落ちた様子……まあ、戻ってこれて幸いだ。
住職が話をする。
「アクシデントがありましたが、無事百物語が終わりました。どうでしたか? VR花子さんとはいったい何なのか! それでは思うことをメッセージボックスに書いて投票してください!」
視界にメッセージボックスが現れた。触れると文字入力モードに切り替わり、視界にキーボードが現れる。自分にとってのVR花子さんは──。
投票を終えると、住職は自分のメッセージボードを確認し、発表に移った。
「それではぁ、投票を見てみましょう! ……仕様と書かれた方……1人! まあ、仕様の可能性もありますねぇ……。次に、ウイルスと書かれた方が2人! セキュリティーはしっかりしないといけませんねぇ。そして、霊と書かれた方が3人! 心霊現象はメタバースにも波及してしまったのかぁ! 最後に! ……電子精霊! 4人がほぼ一致の見解を示しました! 電子精霊の存在……本当に存在するならば、メタバースにおいての革新的な存在となるでしょう! これにより、VR花子さんは電子精霊だった説が有力ということがわかりましたぁ! けれども、これは今日集まった私たちの見解でぇす。ひょっとすると、また、別の、何かという可能性もあるのでぇす! メタバースの数だけVR花子さんがいるのでぇす! それではこれにて終了とさせていただきます。ありがとうございました!」
お化け屋敷の音声に拍手が混じった不思議な喝采音とともに、百物語の幕は閉じられた。今回のイベントは住職シルキーの趣味が入ったようなイベントだ。本格的なイベントとは程遠いが、それでも情報についての収穫はあったのだ。イベント主には感謝したい。
──それから一か月後、メタバースト3Xのシステムバージョンが3.04に更新された。それにより、VR花子さんの出現率は低下したようだ。それでも、VR花子さんはメタバースの都市伝説……いや、メタ伝説としてこれからもずっと語り継がれるだろう。
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