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1章 どうやら転生したようだが
9話 ニガニガ、やぁ~
しおりを挟む「イナミ、イナミはおるか?」
玄関からの呼び声にイナミさんはレミーちゃんの部屋を出て行った。ナミルさんは薬を飲ませる為レミーちゃんを抱え起す。熱でぼーっとしてるようだ。潤んだ眼でこっちを見る。解熱薬をひと匙、その後水をコクリと飲む。問題は解毒薬、蜂蜜をいれてみたがかなりニガニガなんだよね。
「ゃぁ…にがぃ」
やっぱり、レミーちゃんって5歳くらいかな、子供には辛い苦さだ。ナミルさんが優しく諭す。
「レミー、このお薬を飲まないと元気になれないのよ」
「やぁ…まま」
よし、じゃあインベントリからゴソゴソ(インベントリ音しないから)…あった。
「レミーちゃん、ぽい」
「んん、あま~い、?おねーちゃんだあれ?甘いのおいしぃ…」
「おねーちゃんはパパのお友だちだよー、甘いのはね、金平糖っていうの」
そう、金平糖。これも子供の時パパンに貰ったモノ。確か色違いで5個ほど貰い、ちょっとづつ食べて最後は……忘れたのだね~エレーニアちゃん。ピンクの星が入った小さなガラス瓶をレミーちゃんの眼の前で振って見る。
「にがーいお薬をちゃんと飲めたらご褒美にあっま~い金平糖、レミーちゃんにあげるよ。だから頑張ろう」
レミーちゃんの視線が金平糖と薬を行ったり来たり、最後は金平糖をじいっと見た。
「…のむ」
「ん、いい子だね、レミーちゃん」
ナミルさんが口に薬を持っていくと、レミーちゃんはぎゅーっと目を瞑りイッキにごっくん、「んんん~」と言いながら手を彷徨わせ水を求める。ナミルさんが水を渡すとこれまた勢いよくごっくんした。こっちを見て“苦いの飲んだよ~”って涙目で訴える。キャワええのう。
「偉いね、はい、お口あーん」
まるで雛か鯉のようにパクリと開いた口に、ぽいっと金平糖を入れると、口角を上げた弱い笑いが可愛らしく、また力の無さが痛ましい。疲れた様子を見せたのでナミルさんはレミーちゃんを寝かせ毛皮をかけた。熱で体力奪われてるから金平糖はカロリー補給にもなるだろう。コルクの蓋を閉めて小瓶をレミーちゃんの手に持たせてあげた。
「ありあと、おねーちゃん」
「いいんですか?、そんな高価なものを」
恐縮するナミルさん。砂糖は平民には高価なのだ。その砂糖の塊と言っていい金平糖は当然高級品扱い。
「(7年くらい前のw)貰い物ですから気にしないで下さい」
レミーちゃんはすーすー寝息を立てはじめて眠ったのでナミルさんを残し部屋を出た。テーブルにイナミさんとお爺さんが座っていたが、私の姿を見て立ち上がる。
「イナミを助けていただき礼をいう、村長のワスカじゃ」
「いえ、運良く通りかかって、お助けできて良かったと思っています」
「ところでお前さん、身分証を門で確認しとらんじゃろう、見せてもらえんか」
おう、やっぱりそう来ましたか、スルーできるかと思ったけどパパンの指導行き渡ってるじゃん。
「デュナン領を出るときはあったんですが、領境で魔物に遭遇したときに驢馬ごと荷物を失くしまして困っている次第です」
デュナン領は王都とディヴァン領の間にある伯爵領だ。うちと違ってデュナン領は領主主体の魔物討伐はあまりされていない。なので塔の近くの領境の森は結構遭遇率が高い。パパンはデュナン伯爵に再三魔物討伐を依頼しているが放置され、ディヴァン領に流れてくるのだ。
そんな訳で領境で魔物に遭遇してもおかしくないし、驢馬と荷物を失くしたと言えば小さなバック(マジックバックだけどね)しか持っていなくとも怪しまれない。こんな荷物の少ない旅人はいないから。
「そうか、助けて貰っておいてなんだが、ディヴァン領では身分証の無い者を村におく訳にいかんのじゃ、すまんが出て行ってもらおう」
「そんな、村長、私とレミーを助けてくださった恩人です、そこをなんとか」
村長のことばにショックを受けたイナミさんが説得しようとしてくれる。でもまあいいや。パパンの指示をしっかり守ってる立派な村長さんだ。
「イナミさん、いいんですよ、身分証を持たない私が悪いのですから。村長さんは領主の指示を守る立派な方ではないですか」
「そんな…」
悔しそうなイナミさんににっこり微笑みかける。
「食料が乏しかったので小麦粉や乾燥野菜が欲しいところですが、エイデ領の領都ならば身分証がなくとも入都料を払えば入れますし。そこまで狩や採取をしながらいけばなんとかなるでしょう」
「いや、恩人に対して礼もせず追い出すほど恥知らずではないつもりだ。食料はこちらで用意しよう」
あら、言ってみるものね、食料ゲットだぜ!お肉は道々狩りながら集められるし、調味料も隣のエイデ領までは余裕と思う。まあインベントリに何がどれくらいあるのか確かめないといけないなぁ。
インベントリからモノを取り出すには欲しいものを思い浮かべ、該当するものがあれば脳内にリストアップされる感じなのだ。エレーニアちゃんは入れた事も忘れてる(と言うより意識的に忘却したふしがある。【片付けできない】状態からの逃避ではないかと私は思うのだよ)
「ありがとうございます、村長さん。ではお言葉に甘えさせていただきます」
村長に向かって頭を下げる。
「いや、礼を言うのはこちらの方じゃ。村人をゴブリンに襲われているところを助けてくれただけでなく、病気のレミーの薬まで分けて貰ったのだから、重ねて礼を言う」
村長も頭を下げてから、門の所で待ち合わせする約束をし、用意をすると言ってイナミさん家を出て言った。では私もそろそろお暇しよう。その前にインベントリから探し物。
「では私も失礼します。イナミさん、レミーちゃんの体力が落ちれば解熱薬の効きも悪くなるのでその時はコレを飲ませてあげてください」
インベントリから出した初級ポーションの小瓶を渡す。ナミルさんがレミーちゃんの部屋から出てきた。村長との話を聴いていたのだろう。
「色々よくしていただいたのにこれ以上はいただけません」
と、小瓶を押し返す。
「可愛い女の子が苦しんでいるのに見て見ぬふりはできませんよ、私にも小さな弟がいたんです…」
二人はハッと息を飲みお互いの顔を見合わした。
小さな弟がいた…嘘じゃ無いですよ、もう大きくなっただけで。こんな言い方すれば勘違いするでしょうけど、も一度言っとこう、嘘じゃ無いです。
「「ありがとうございます」」
二人は深々と頭を下げた。では門の所で村長が来るまで待ちますか。
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