16 / 140
1章 どうやら転生したようだが
閑話 その時のパパン②
しおりを挟む
今回も閑話
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そろそろ1週間が経つがエレーニアから連絡はないのか」
ディヴァン侯爵キースクリフはスチュアートに尋ねながら執務室をイライラと歩き回っていた。
「管理人夫婦からもなんの連絡もない、どういう事だ、ヘンリーとエドワーズを呼べ」
スチュアートは一礼をし、執務室を出て行ったが、程なく2人の騎士を連れて戻ってきた。
「お前たち、エレーニアを無事イラの湖の塔に送り届けたのか」
「「はい、間違いなく」」
「管理人は何か言っていたか?」
「は?いえ、管理人夫婦にはあっておりません」
ヘンリーが返事をすると、キースクリフは驚き2人の騎士に詰め寄る。
「お前たち、管理人夫婦に手紙を届けなかったのか?」
キースクリフの剣幕に驚きつつもエドワーズが、
「手紙はお預かりしとりませんですが…」
「何を、管理人夫婦に渡す…よう…に………、あ………」
己のミスに気付きキースクリフはフリーズする。そんな主人を横目にスチュアートは2人の騎士を下がらせた。
「侯爵様、すぐに飛行騎獣を持つものを行かせましょう。それと速文を飛ばし管理人夫婦にお嬢様の御様子を確かめるよう指示致します」
スチュアートの声にハッと我に帰るキースクリフ。
「そ、そうだな速文を…いや、私が直接行く、私のスレイプニルなら飛ばせば4時間ほどでつく、スチュアート支度を、お前も付いて来い」
◇◇◇◇◇
「すまん、アズスラ、無理をさせるが頑張ってくれ」
『主、了解した』
漆黒の八本足の巨馬は、キースクリフの言葉に応じ、スチュワートと二人を乗せ速度を上げる。怒涛のごとく裏街道を駆け抜けるスレイプニルの姿を見たものがいなかったのは幸運としか言えないだろう。
「塔が見えてきたぞ。ん、あれは…」
湖の手前にいたのは見知った男だった。減速しつつ近づくと男は蹄の音に気付き振り返る。
「侯爵様?なして此処へ?」
「お前こそ此処で何をしている?」
男は塔の管理を任せていた猟師フレドであった。
「それが、今朝方湖で大きな音がしたもんで、女房が見てこいつーもんで、確かめに来たところです。そったら、ヌシが水面まで上がって来ておったみたいで。滅多に上がってこん奴なのにどしたか思っとったんです」
「そんなことより塔は、塔は変わりないのか」
「はあ、特に。鍵はきっちり閉まっとります」
「鍵をかせっ!」
フレドからひったくる様に鍵を奪い急いで扉に向かう。慌てている為ガチャガチャと無駄に鍵を回しやっと開くと中に駆け込んだ。階段を上がり次々と魔法鍵の扉を開け、ついに部屋に飛び込んだ。
「エレーニア、エレーニアーーッ」
部屋数がある訳ではない、見渡して居ないのなら隠れるところなどないのだ。扉が開け放たれたままのバルコニーへ出るが誰もいない。手すりから下の湖を覗き込む。大きな音……まさか此処から飛び込ん……
「侯爵様」
スチュアートの声に部屋の中に引き返すと一枚の便箋と見事な銀の髪の束を渡される。貴族の風習として、志半ばで倒れる時、髪を切り後継に託すと言うものがある。それに担い、処刑される者や、自ら命を絶つ者も遺髪を残す事がある。手紙にはたった一行。
『お腹が空きましたわ』
その一行が意味するものは……
「ま、まさか、空腹に耐えきれず、自ら命を……バルコニーから身をなげて……」
キースクリフは便箋と髪を握りしめたままがくりと膝をつく。
「エレーニア……お、おお、おううぅ……そんな…」
とすんと座り込んだキースクリフ。
「エレーニアァァァァァーーッ!!」
「うるさいですわ、あなた。みっともない」
バルコニーからヒッポグリフに乗って現れた、ピンクブロンドの髪に菫色の瞳、とても二人の子持ちとは思えない美しい女性、ママンであった。
「クラリッサ、エレーニアが、エレーニアがぁ」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を見てママンは溜息をつきつつどこからかハンカチを取り出し、夫の顔を拭く。
「ほら、チーンして。エレーニアなら無事よ。私のヒッポグリフが教えてくれたの。エレーニアのグリフォンが呼び出されていっちゃったって」
エレーニアは雛だったレイディを育てる為ママンのヒッポグリフに里親になって貰ったのだ。その為2匹は仲が良く、今も一緒にいる事が多い。エレーニアがレイディを呼び出した時ちょうど2匹は一緒に過ごしていたのだった。(しかしヒッポグリフに育てられるグリフォンってどうよ)
「あの子のことだからレイディに乗ってその辺ぶらついているか……まあ、食事もなくほったらかされたので最悪家出くらいはしても仕方ないんじゃないかしら」
クラリッサの言葉にスチュアートは頷き、キースクリフは青くなってプルプル震えだす。
「い、い、家出…」
「心配しなくたって大丈夫よ。あなたが思っているほど弱い子じゃないんだから。さあ、とっとと帰るわよ。本当、いつまでたっても子離れできないんだから…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エレーニアが行動派なのはママン譲り?
ちょっと毎日更新が厳しくなって来ました。次話明後日更新になると思います。申し訳ありません。
2016.11.10一部言い回し変更と誤字修正
2016.11.12誤字修正
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そろそろ1週間が経つがエレーニアから連絡はないのか」
ディヴァン侯爵キースクリフはスチュアートに尋ねながら執務室をイライラと歩き回っていた。
「管理人夫婦からもなんの連絡もない、どういう事だ、ヘンリーとエドワーズを呼べ」
スチュアートは一礼をし、執務室を出て行ったが、程なく2人の騎士を連れて戻ってきた。
「お前たち、エレーニアを無事イラの湖の塔に送り届けたのか」
「「はい、間違いなく」」
「管理人は何か言っていたか?」
「は?いえ、管理人夫婦にはあっておりません」
ヘンリーが返事をすると、キースクリフは驚き2人の騎士に詰め寄る。
「お前たち、管理人夫婦に手紙を届けなかったのか?」
キースクリフの剣幕に驚きつつもエドワーズが、
「手紙はお預かりしとりませんですが…」
「何を、管理人夫婦に渡す…よう…に………、あ………」
己のミスに気付きキースクリフはフリーズする。そんな主人を横目にスチュアートは2人の騎士を下がらせた。
「侯爵様、すぐに飛行騎獣を持つものを行かせましょう。それと速文を飛ばし管理人夫婦にお嬢様の御様子を確かめるよう指示致します」
スチュアートの声にハッと我に帰るキースクリフ。
「そ、そうだな速文を…いや、私が直接行く、私のスレイプニルなら飛ばせば4時間ほどでつく、スチュアート支度を、お前も付いて来い」
◇◇◇◇◇
「すまん、アズスラ、無理をさせるが頑張ってくれ」
『主、了解した』
漆黒の八本足の巨馬は、キースクリフの言葉に応じ、スチュワートと二人を乗せ速度を上げる。怒涛のごとく裏街道を駆け抜けるスレイプニルの姿を見たものがいなかったのは幸運としか言えないだろう。
「塔が見えてきたぞ。ん、あれは…」
湖の手前にいたのは見知った男だった。減速しつつ近づくと男は蹄の音に気付き振り返る。
「侯爵様?なして此処へ?」
「お前こそ此処で何をしている?」
男は塔の管理を任せていた猟師フレドであった。
「それが、今朝方湖で大きな音がしたもんで、女房が見てこいつーもんで、確かめに来たところです。そったら、ヌシが水面まで上がって来ておったみたいで。滅多に上がってこん奴なのにどしたか思っとったんです」
「そんなことより塔は、塔は変わりないのか」
「はあ、特に。鍵はきっちり閉まっとります」
「鍵をかせっ!」
フレドからひったくる様に鍵を奪い急いで扉に向かう。慌てている為ガチャガチャと無駄に鍵を回しやっと開くと中に駆け込んだ。階段を上がり次々と魔法鍵の扉を開け、ついに部屋に飛び込んだ。
「エレーニア、エレーニアーーッ」
部屋数がある訳ではない、見渡して居ないのなら隠れるところなどないのだ。扉が開け放たれたままのバルコニーへ出るが誰もいない。手すりから下の湖を覗き込む。大きな音……まさか此処から飛び込ん……
「侯爵様」
スチュアートの声に部屋の中に引き返すと一枚の便箋と見事な銀の髪の束を渡される。貴族の風習として、志半ばで倒れる時、髪を切り後継に託すと言うものがある。それに担い、処刑される者や、自ら命を絶つ者も遺髪を残す事がある。手紙にはたった一行。
『お腹が空きましたわ』
その一行が意味するものは……
「ま、まさか、空腹に耐えきれず、自ら命を……バルコニーから身をなげて……」
キースクリフは便箋と髪を握りしめたままがくりと膝をつく。
「エレーニア……お、おお、おううぅ……そんな…」
とすんと座り込んだキースクリフ。
「エレーニアァァァァァーーッ!!」
「うるさいですわ、あなた。みっともない」
バルコニーからヒッポグリフに乗って現れた、ピンクブロンドの髪に菫色の瞳、とても二人の子持ちとは思えない美しい女性、ママンであった。
「クラリッサ、エレーニアが、エレーニアがぁ」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を見てママンは溜息をつきつつどこからかハンカチを取り出し、夫の顔を拭く。
「ほら、チーンして。エレーニアなら無事よ。私のヒッポグリフが教えてくれたの。エレーニアのグリフォンが呼び出されていっちゃったって」
エレーニアは雛だったレイディを育てる為ママンのヒッポグリフに里親になって貰ったのだ。その為2匹は仲が良く、今も一緒にいる事が多い。エレーニアがレイディを呼び出した時ちょうど2匹は一緒に過ごしていたのだった。(しかしヒッポグリフに育てられるグリフォンってどうよ)
「あの子のことだからレイディに乗ってその辺ぶらついているか……まあ、食事もなくほったらかされたので最悪家出くらいはしても仕方ないんじゃないかしら」
クラリッサの言葉にスチュアートは頷き、キースクリフは青くなってプルプル震えだす。
「い、い、家出…」
「心配しなくたって大丈夫よ。あなたが思っているほど弱い子じゃないんだから。さあ、とっとと帰るわよ。本当、いつまでたっても子離れできないんだから…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エレーニアが行動派なのはママン譲り?
ちょっと毎日更新が厳しくなって来ました。次話明後日更新になると思います。申し訳ありません。
2016.11.10一部言い回し変更と誤字修正
2016.11.12誤字修正
1
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる